インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第三十五話

「…陛下、大丈夫ですか?」

 

クラーラとコルネリアが戦っているころヴィルヘルム六世とラウラは自室謹慎のため大人しく部屋で待機していた。ちなみに反省文はすでに終わらせてある。

 

ラウラは昼近くになるのにベッドから出てこないヴィルヘルム六世を心配する。自室謹慎を言い渡された後反省文を終わらせてからヴィルヘルム六世はベッドから起きてこなかった。

 

「…はあ」

 

ラウラも今回のことについては納得がいっていないが今の自分では何もできなかった。

 

「…ラウラ」

 

そこへようやくヴィルヘルム六世から返事が来た。ラウラは急いで近くにより声をかける。

 

「何でしょうか?」

 

「…今何時だ?」

 

「十一時五分です」

 

「…そうか。そうなるとベルリン(あっち)は早朝か」

 

ヴィルヘルム六世はベッドから出る。その姿は少し弱弱しく感じた。

 

「陛下、大丈夫ですか?」

 

「…ああ、まさかここまでやるとは思わなかったがな」

 

ヴィルヘルム六世は血が出るくらい手を握っており悔しいのがよく分かった。

 

「…恐らく俺の反則負けというのは広がっているだろう。そうなるとクラーラたちが何か言っているはずだ」

 

「それでも謹慎が解けないのは」

 

「却下された可能性が高いな」

 

そこまで考えたときに扉をノックする音が聞こえた。それにラウラが答え扉を開ける。そこにいたのは少し涙目の愛佳であった。

 

「貴様は確か…」

 

「山口愛佳です。ハインリヒさんと同じ部屋って聞いたのですが」

 

「あ、ああ。ちょっと待ってくれ」

 

そう言ってラウラは聞きに行こうとするがすでに後ろにはヴィルヘルム六世が立っていた。

 

「大佐!?」

 

「愛佳か。入っていいぞ」

 

「お、お邪魔します」

 

愛佳はタッグマッチトーナメントの前にあったラウラの嫉妬騒動で傷ついていた時以上のヴィルヘルム六世に驚きつつも部屋に入る。

 

「…で?何しに来たんだ?」

 

愛佳を椅子に座らせてヴィルヘルム六世とラウラは自身のベッドに腰かける。

 

「…如何様をして反則負けになったと聞きました」

 

「…そうらしいな」

 

愛佳は少し話しづらそうにしつつも続きを話す。

 

「…私はハインリヒさんはそんなことはしていないと思っています。そのくらい強いと思っています」

 

「へぇ、何でだ?」

 

「タッグマッチトーナメントで戦っている姿を見ましたがそんな風には見えませんでした。それに、ドイツ帝国の人はとても強いと聞きました」

 

最後に言われた事にヴィルヘルム六世は苦笑してしまう。ドイツ帝国と国交がない国の国民は又聞きでしか聞くことが出来ないため憶測な噂が多く出回っていた。

 

特に多いのは「ドイツ帝国の人は全員が一騎当千の実力を持っている」というものだ。流石にこれはない。いくらドイツ帝国が世界最強の軍勢を持っていても国民までがつよいわけではない。それどころか軍人でも出来るのは武装親衛隊ぐらいである。

 

「それはうれしいが謹慎はもう決まってしまったし、俺らが出る予定だった試合はもう終わっただろう?」

 

「…はい、先ほど。クラーラさん達の圧勝でした」

 

だろうな、とヴィルヘルム六世は思う。あの女尊男卑のパートナーはともかくあの女程度に負けるはずがない。

 

「まあ、クラーラが優勝してくれればそれでいいがな。…とはいっても俺も出たかったけどな」

 

「…私も可笑しいと思って織斑先生に抗議しに行ったのですが頭に一発を貰ってしまって」

 

そのせいで来た時に涙目だったのかと涙目を見ていたラウラは思う。

 

「まあ、この件についてはドイツ帝国が正式に抗議するだろうからな。問題はない。それで、聞くがこの話を信じているのは見た感じ多いか?」

 

現状ヴィルヘルム六世はIS学園から孤立しており情報が入って来ていなかった。

 

「…信じているのは見た限り半数、くらいです。信じているのは日本人やアメリカの人が多いです。ただ、そのことで口論になっていたりして」

 

「そうなのか?」

 

「はい、フィンランドからきている人が今回のことを悪く言っている人に「ドイツ帝国の人はそんな卑怯なことはしない!」と怒鳴って口論に」

 

「ああ、フィンランドね」

 

フィンランドは第二次世界大戦終結までロシアの圧迫を受けておりそのロシアを倒したドイツ帝国を尊敬していたのだ。それが現在まで続いており世界一の親独国と自称するほどであった。尤も、親独国を自称する国はたくさんあるのだが。

 

「あと、根も葉もない噂が結構広がっています。友人から聞いたのですがハインリヒさんを貶す噂が流れているそうです」

 

一瞬友人から聞いたと愛佳が言った時に涙目で話す女性が浮かんできたが気のせいと思いヴィルヘルム六世は話を聞いた。そして、話を聞くにつれてヴィルヘルム六世の眉は険しくなっていきラウラに至っては殺気まで放っていた。

 

「…ひどい、としか言いようがないな」

 

あまりにも酷い内容に思わずそう言ってしまう。

 

「これも信じているのは一部だけなのか?」

 

「はい、これらの噂を信じているのは少ないのですが…」

 

そこまで言って愛佳は言いづらそうにする。

 

「どうした?」

 

「そ、それが。一部の噂は織斑君が話していたと」

 

「…はぁ」

 

あいつは何をしているんだ、とヴィルヘルム六世は心の中で毒づく。恐らくシャルロット・デュノアの収容所送りを取り消させるためにやっているのかもしれないがあまりにも可笑しい行動に怒る気力すら出てこなかった。

 

「…これは謹慎が解けた後が大変そうだ」

 

ヴィルヘルム六世は噂を信じたやつが強固な手段を取らないことを祈りつつ愛佳の話を聞くのであった。

 


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