インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

41 / 45
第三十九話

「…終わったな」

 

皇帝専用席から試合を眺めていた皇帝は笑みを浮かべていたがすぐに表情を引き締めた。

 

「…帰るぞ。ハインリヒの反則負けについて抗議しなくてはいけないし書類がたまっているだろうからな」

 

「それと、そこで絶望している女を連れて来いよ」と顔を絶望にゆがめて地面に崩れるように座ったシャルロット・デュノアに連れてくるように言ってその場を後にするのであった。

 

また、自室謹慎を受けていたヴィルヘルム六世とラウラは学年別タッグマッチトーナメントが終了したことと皇帝が帰るため、見送りに出る許可をもらって一足先にヘリポートへと来ていた。

 

「残念でしたね。クラーラ殿たちの雄姿が見れなくて」

 

「その辺は愛佳に頼んであるからな。大丈夫だとは思うがやはり生では見たかったな。更に言えば戦ってみたかったが」

 

「その辺は仕方ありませんよ。きっと陛下が正式に抗議するでしょうし」

 

「そうだな。別にこれで終わりってわけではないしな」

 

二人でそう話しているとドイツ帝国からきている先輩がやってきた。クラーラとコルネリアは表彰やインタビューでしばらく来ないだろう。

 

「そういえば又聞きなんだがイギリス代表候補生のセシリア・オルコットの父親は貴族の出なんだよな?」

 

「はい、そう聞いております。それが何か?」

 

いきなりの話にラウラは若干戸惑いながら答える。

 

「いや、何。それならセシリア・オルコットも呼んだ方がいいのかなと思ってな」

 

「しかし、彼女はイギリスの者です。それに決勝戦で気絶したと聞きました。恐らくまだ起きていないかと」

 

その様に先輩の一人が言った。ちなみにここにいるドイツ帝国からきた生徒は全員目の前にいるハインリヒ・フォン・ヴァレンシュタインが皇帝であると知っており今皇帝になっているのが替え玉ということも分かっている。しかし、それを踏まえても彼が今のところここでは一番階級が上である。

 

「そうか。なら安静にしておくのがいいか」

 

「それがよろしいかと」

 

その後もしばらく雑談していたが漸くクラーラとコルネリアがやって来てその数分後に皇帝が現れた。その後ろには織斑千冬を始めとした教師陣とシャルロット・デュノア、何故か織斑一夏がいた。

 

「クラーラにコルネリアよ。優勝おめでとう」

 

見送りに来ていた二人に気付いた皇帝はそう答える。

 

「は!ありがとうございます!」

 

「これからも怠らずに力を強めていくんだぞ」

 

「了解しました!」

 

「了解しましたぁ」

 

コルネリアもいつもみたいな口調は抑えているがそれでも微妙に抑えきれていなかった。そして次に皇帝はヴィルヘルム六世とラウラに気付く。

 

「…織斑千冬、この二人が如何様をしたというのは本当ですか?」

 

皇帝が無表情になりつつ問う。それに対して織斑千冬は自信満々に答える。

 

「ええ、それは事実です」

 

「…それは何を根拠にそう言っている?」

 

「教師の者たちがそう言っているので間違いはありません」

 

「…そうですか」

 

皇帝は話す価値もないと判断したのか二人に声をかける。

 

「恐らく如何様はしていないのであろう?それは理解できる。ドイツに戻り次第このことは正式に抗議するからそれまでの辛抱だ」

 

後ろで織斑千冬の取り巻きが騒ぐも護衛の武装親衛隊の睨みによって黙らせる。

 

「私は問題ありません。また別の機会で励めばいいのですから」

 

「わ、私も同じです」

 

「…そうか」

 

それだけ言うと皇帝はヘリへと乗り込んだ。シャルロット・デュノアも織斑一夏と何やら話していたが別のヘリに乗せられる。

 

やがてヘリが離陸していき、ヴィルヘルム六世たちはそれを敬礼で見送った。

 

そしてIS学園から離れた時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォン!

 

皇帝が乗っていたヘリに砲弾のようなものが直撃、爆発を起こした。

 

「な!?」

 

これにはヴィルヘルム六世たちが驚くがすぐにヴィルヘルム六世は立ち直りISを展開する。しかし、ここで邪魔が入る。

 

「ヴァレンシュタインとボーデヴィッヒは部屋に戻れ」

 

「は?何を言っているんだ」

 

「ここは織斑に任せる。ヴァレンシュタインとボーデヴィッヒはまだ謹慎は解けていない。直ぐに部屋へ戻れ」

 

瞬間、ヴィルヘルム六世の中で何かが切れた。

 

「…ふざけんじゃねぇぞ!織斑千冬!」

 

その怒りにラウラは驚く。今まで一度もヴィルヘルム六世が怒るところを見たことがなかったからだ。しかし、織斑千冬は構わずに続ける。

 

「IS学園に所属している以上非常時の指揮権は私にある。故にIS学園の生徒であるヴァレンシュタインは私に従う義務がある」

 

「黙れ!貴様の命令など聞くものか!クラーラとコルネリアは陛下の安否を確認!見つけ次第応急処置をしろ!ラウラは俺と一緒に来い!」

 

「まて!勝手な行動は許さん!」

 

「勝手な行動?貴様のような奴が指揮をとれるのか!?少なくとも俺はあんたの指図には従わない。クラーラ!コルネリア!急げ!」

 

ヴィルヘルム六世が命令している中織斑千冬が言ってはいけないことを口にしてしまう。

 

「勝手な行動をするなと言っている!どうせあの爆発だ!ヴィルヘルム六世など既に死んでいよう!あんな奴の死体など放っておけ!」

 

「…なんだと!」

 

ここで遂に織斑千冬の言葉に二、三年生も切れて織斑千冬につかみかかる。そのすきにヴィルヘルム六世はヘリの場所へと急行する。既にヘリは半数が落とされており急いでこちらに戻ってきていた。

 

「ラウラ!砲撃は何処からだ!」

 

「二時の方向です!」

 

ヴィルヘルム六世がそちらの方を見る。肉眼では見えなかったがISの機能を使うとISのようなものが見えた。しかし、現存のISとは違っていた。

 

スラスターに当たる部分は存在せず腕が足元に届きそうなぐらい長く全身を鎧のようなもので覆っていた。ヴィルヘルム六世は捕捉して叫ぶ。

 

「貴様か!絶対に生きて返さない!絶望に陥れてやる!」

 

ヴィルヘルム六世はスラスターの出力を最大にし一気に近づくのであった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。