インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第四十一話

「大佐殿!大丈夫ですか!」

 

「う、ラ、ラウラか?」

 

IS学園の周りには小さな島がいくつかある。そのうちの一つにラウラはヴィルヘルム六世を寝かせていた。

 

「今ナノマシンを打つので少し我慢してください!」

 

「く!す、すまないな。ラウラ」

 

ヴィルヘルム六世のけがはかなり酷かった。右腕は肩まで大やけどを負っており顔の一部にも軽度のやけどがあった。

 

「くそ、まさかあのタイミングで砲撃するとは」

 

ヴィルヘルム六世は自身が落ちる前のことを思う。あの時ヴィルヘルム六世が振り下ろしたレーザーブレードは敵の左肩に少しだけあたる程度でよけられたのだ。直ぐに次の攻撃を行おうとするが敵が右腕の砲門をゼロ距離で発射したのだ。この際右腕で防御したがシールドエネルギーは空になりそのままヴィルヘルム六世の右腕を襲ったのだ。

 

「状況は?」

 

「現在コルネリア少尉が第五部隊隊員二名とともに交戦中、陛下は無事病院船に運ばれました。現在手術中です」

 

「そうか…。戦況は?」

 

「それは…」

 

ラウラが言おうとしたとき上空からものすごい早さで何かが落ちてきた。それはヴィルヘルム六世とラウラがいる島の近くに落下して大きな水しぶきをあげた。

 

「…戦況は敵に大きく傾いています」

 

落下して来たのはコルネリアと敵に挑んでいた武装親衛隊隊員であった。隊員は見ただけで死んでいると分かるほどひどい有り様であった。顔の右上、左脇腹にはサッカーボール程の穴が開いており左足が根本から抉られたように無くなっていた。

 

ヴィルヘルム六世は隊員の冥福を祈りつつ上半身を起こす。

 

「…ラウラ。エネルギーは残っているか?」

 

「はい、三分の二は残っていますが…」

 

「ならそれを分けてくれ。…こうなっては致し方ない。ヨルムンガルドを使う」

 

「ヨルムンガルドを!?しかしあれは大佐殿自ら封印すると仰ったではありませんか!」

 

「だが、現状あれを使わないと被害は拡大するばかりだ。最悪の場合陛下がいる病院船を襲う可能性がある」

 

「そうですが…」

 

ヴィルヘルム六世の言葉にラウラはまだ納得が行っていない様子であった。それもそのはずでヴィルヘルム六世が使おうとしている物は出力が安定せず暴走する危険があったからだ。

 

しかし、ヴィルヘルム六世は強い意志でラウラを見る。

 

「今はこれしかないのだラウラ」

 

「…分かりました。無事を祈っています」

 

そう言ってラウラはヴィルヘルム六世のISにエネルギーを渡し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

コルネリアが右手を振りかぶって敵に振り下ろす。敵はそれをひらりとかわし右手で裏拳を繰り出してくる。

 

「ちぃ!」

 

コルネリアはこれを後方に飛ぶ事で避けるが途端に敵は両腕につけられた砲門を向けて撃ってくる。これを氷の弾で相殺するがその瞬間敵は一気に距離を詰めて右腕で殴ってくる。

 

「そう簡単に、食らうかよ!」

 

コルネリアは敵の右腕に自身の左手で針路をそらすが次の瞬間には上半身のみが回転してそらした筈の右腕が左から襲ってくる。この人間には難しい攻撃にはコルネリアも対処しきれずに右の脇腹にもろにヒットする。

 

「ぐ!ああ!…いてぇが、捕まえたぜ。撃て!」

 

バキバキと何かが折れる音を聞きつつコルネリアは相手の右腕を掴み脂汗を流しつつ不敵に笑い叫ぶ。敵が左を見れば「モーゲンタウ」を装備した武装親衛隊隊員が「ウェスティン・フォックス」を構えていた。瞬間それが火を噴き銃弾が敵に向かってくる。しかし、

 

「…な!?がぁ!」

 

「!?少尉!」

 

敵は恐ろしい力でコルネリアを自身と銃弾の間にずらしたのだ。これにはコルネリアも驚き止まってしまいもろに銃弾を受けてしまう。これによりコルネリアのシールドエネルギーは空になりコルネリアのISが解除されるが敵はその大きい腕でコルネリアを捕まえる。

 

「グッ!?この!放せ!」

 

コルネリアは拘束から逃れようとするが思うようにいかず更に敵の握る手が強まっていく。現状コルネリアはISが解除された状態のためこのまま力を入れればコルネリアの体はへし折れて絶命するであろう。段々と死の恐怖がコルネリアを襲ってくる。例え獰猛な獣のようになったとしてもコルネリアとて死への恐怖は持っていた。しかし、コルネリアはその感情を押し殺して敵の拘束から逃れようともがき続ける。

 

「私は、こんなところで、死んでいられないんだよ!」

 

全ては敬愛する皇帝ヴィルヘルム六世の為に。コルネリアは必死にもがく。しかし、敵は無情にもコルネリアのもがきすら抵抗の内に入っていないようであった。そして、敵は一気に力を込めて握りつぶそうとして、

 

「させるか!」

 

ヴィルヘルム六世のレーザーブレードによってコルネリアを掴んでいた左腕を両断された。切られた先は焼けているが電流が走り人の用な肉はなく機械があった。

 

「やはり無人機!…!?コルネリア!」

 

ヴィルヘルム六世はすぐにコルネリアの救出に向かう。コルネリアは助かったと安堵したのか気絶しているようであった。ヴィルヘルム六世はギリギリコルネリアをキャッチすることが出来た。

 

「コルネリア!無事か!? 」

 

ヴィルヘルム六世は必死に呼び掛ける。やがて眉が動きコルネリアの目が開く。

 

「…陛下?」

 

「よかった、今ラウラのところに運んでやるからな」

 

「も、申し訳ありません。敵を倒すどころか負けてしまいました」

 

コルネリアは力が入らない手を握りしめる。そんなコルネリアの頭をヴィルヘルム六世は撫でる。

 

「そんな顔するな。お前のお陰でまだ希望はあるんだ。今は傷を直せ。いいな」

 

「はい」

 

コルネリアは安心したのか意識を失うが呼吸はしっかりとしていた。

 

ヴィルヘルム六世は敵への憎しみを燃やし必ず落とすと誓うのであった。

 


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