インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結) 作:鈴木颯手
「…今回の被害を報告します」
首相官邸に集められた高官にアルベルトはこう言って始める。あの皇帝襲撃事件から一週間が経っており現在事後処理に追われていた。
「死者は600名、軽傷は50名、重傷者は360名、その内武装親衛隊は第一部隊に5名、第二部隊に3名、第五部隊に5名の死者が出ています。更に護送ヘリが二機、戦闘ヘリが204機、病院船一隻が破壊されました」
想像以上の被害に高官の間でざわめきが起こる。そのとき一人の高官が手を上げる。
「聞いた話では陛下が巻き込まれたという話を聞いたのだがそれは本当ですか?」
「事実であり嘘でもある」
その声はアルベルトではなく、声を聴いた高官たちは一斉に立ち上がる。声の正体はヴィルヘルム六世であった。彼の顔には火傷が少しある程度であったが右腕はギブスをしていた。
「確かに病院船の破壊で巻き込まれたがあくまでそいつは影武者だ。だが俺も軽く巻き込まれてな。この有様だ」
これには高官も驚きを隠せないがヴィルヘルム六世は確かに本物であると思わせる威厳があった。ヴィルヘルム六世は続ける。
「今回襲撃を仕掛けてきたのは
ヴィルヘルム六世は忌々しそうにそう吐き捨てる。それに対して高官が質問する。
「武装親衛隊が交戦したと聞きましたが、この被害だと奇襲でやられたのですか?」
「いや、敵はどうやら
そこまで言うと続きをドクトルに任せる。任されたドクトルは立ち上がり報告する。
「武装親衛隊の交戦記録からおおよそのスペックを割り出すことが出来ました。速度はイタリアのテンペスタと同等、装甲は固く大型の病院船を一撃で沈められる砲塔を両腕に装備しています。更にこの機体の特徴が三つあります」
ドクトルは一旦息を吸い、続きを言う。
「まず一つ目が敵の重量が驚くほど軽いことです。これによりふらりと攻撃を避ける機動が確保されているのでしょう。二つ目が敵が「零落白夜」を纏っていることです」
この報告に高官の間でざわめきが大きくなる。零落白夜は織斑千冬が第一、第二回モンド・グロッソで優勝を収める要因となった
「零落白夜はIS学園に通っている織斑一夏の専用機が使えるようですがこの機体はシールドエネルギーを消費していないようです」
「それでは敵は無敵のようなものではないか!」
ドクトルの言葉に高官の一人がそう言ってくる。確かに無敵のようなものであった。しかし、ドクトルは「いいえ」と答える。
「どうやら敵の零落白夜はそこまで強い訳ではないようです。出力の高いレーザーブレードや封印されていた兵器、ヨルムンガンドの攻撃は通っています。しかし、」
「出力が低い遠距離攻撃は効きにくい、というわけか」
どおりでレールカノンの効果が薄い訳だ、とヴィルヘルム六世は思う。レールカノンは磁力によって加速しているのはレーザーであるため効果が薄いのだ。
「しかし、敵の回避能力の高さでこれらの弱点すら補っているのでISより強いのは確実でしょう」
「成程、それで?残りの一つとは?」
「敵が無人機であることです」
この言葉は零落白夜以上の驚愕を高官にさせた。現在ドイツ帝国でも無人機は開発されているがそれはあくまで遠距離操作でしか実現しておらずあまり効率がいい訳ではなかった。
「敵の機体を調査した結果、高度なAIが搭載されていることが判明しました。これは私でも作ることは今のところ無理です。作るとしても残りの人生をかけてようやく一つ、下位互換が出来る程度でしょう」
「つまり敵の技術力はドイツ帝国を上回っているということだな?」
「はい、それも十年分は最低でも差が出来ています」
これは高官の誰もが黙ってしまう。彼らはドイツ帝国が世界一の技術力を持っていると信じてきたが襲撃してきたやつははるか上の技術力を有しているそうなのだ。高官は黙るしかなかった。そんな空気の中ヴィルヘルム六世が声を発する。
「…敵を倒した操縦者の話によると今回の襲撃は敵からの宣戦布告変わりだそうだ。俺はこれに乗ってやろうと思っている。諸君らの意見はどうだ?」
ヴィルヘルム六世の言葉に高官たちは周りを見回すが若い高官が「俺も賛成です!」と言った。
「やられっぱなしではドイツ帝国は腰抜けと思われても仕方ありません!ならば断固たる意志で敵を倒すと言った方がいいです!」
この高官の言葉に周りも賛同して賛成の言葉を上げていく。これらの言葉を受けてヴィルヘルム六世は立ち上がり宣言する。
「ならば現時刻をもってテロ集団、
「了解!」