インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第四話

「どうだ、クロエにラウラ。もうここには慣れたか?」

 

クロエとラウラが皇宮に来てから一週間がたった。クロエとラウラは一般常識を教わりながらメイドとして皇宮の掃除などをしていた。ヴィルヘルム六世は空いた時間を見つけては二人のもとに現れては様子をうかがっていた。

 

二人は現在皇宮にある資料室の窓ふきをしており一生懸命に窓を拭く姿は見ていてとても可愛らしいものがあった。しかし、いつまでも見ていては悪いとヴィルヘルム六世は名残惜しくも二人の都合がよさそうな時を見計らっ

て声をかけた。

 

「あ、皇帝陛下」

 

声をかけられた二人は一瞬驚くも普通に挨拶を返してくる。さすがに毎日顔を合わせていればこのくらいは慣れるものだ。二人は掃除道具を地面に置いてヴィルヘルム六世に近づく。その様子を見て一週間まえの初めて使う掃除道具を四苦八苦しながら使っていたのを思い出すが表には出さずに表面上は微笑む。

 

「いろいろとありがとうございます。おかげで様々なことを学ばせてもらっています」

 

「ありがとうございます」

 

クロエの後にラウラが続く。最近になり分かったことだが基本クロエがしゃべり始めてそれにラウラが少しずつ話すようだ。ヴィルヘルム六世はそう思いつつ本題に入る。今日は二人の様子を見に来ただけではなく二人をとある場所につれていこうと考えていた。

 

「今日は二人に手伝ってもらうことがあってな」

 

ヴィルヘルム六世はそう言う。二人は何のことかわからずに首をかしげている。

 

「あの、窓ふきが終わっていないのですが…」

 

「ああ、それなら別の人に頼んである。もうすぐ来るはずだ」

 

「そうですか…。それで私たちは何をすればよいのですか?」

 

「それはな」

 

ヴィルヘルム六世はいったん区切って間をおいて再び言う。

 

「第二回モンド・グロッソを一緒に見に行くことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一回モンド・グロッソはIS開発国である日本で行われたが次の開催国は世界最大の国家であるドイツ帝国の首都ベルリンで行われることなった。ドイツ帝国は西はフランス、北はデンマーク、東はウラル山脈、南はアフリカまでを支配下に置きオセアニア諸島にも領土を持っていた。そのため第二回モンド・グロッソの開催国に選ばれるのは必然と言えた。

 

日本は第二次世界大戦でドイツ帝国を含む枢軸国と同盟を結んでいたがアメリカにやられた後はアメリカ政府が改革を行ったために平成になるまで国交はなかった。現在ですらISのことを話すために技術者が互いの国を行ったり来たりしている程度である。

 

また、戦後アメリカが立ち上げた国際連合にドイツ帝国は参加しておらずドイツ帝国に近いヨーロッパ諸国やドイツ帝国の影響力が強い国がうまく入らず国連もアメリカに近い国や影響力のある国に限定されていた。

 

そんなドイツ帝国の首都ベルリンは人であふれかえっていた。大通りは車と人で賑わい、みんなとある場所に向かおうと波のように進んでいた。その先にはドイツ帝国が総力を結集して作られた巨大な闘技場があった。見た目はローマのコロッセオに似ているがその中は近代技術であふれかえっていた。押し寄せる観客もすっぽり入ってしまいそうな観客席の上には各国の高官が座る席とドイツ帝国皇帝が座る席が存在していた。高さは同じ。各国の首脳と皇帝はあくまで平等を現していた。

 

「どうだ?なかなか立派だろう?」

 

そんな闘技場にクロエとラウラをつれてきたヴィルヘルム六世は呆然とする二人の表情を面白そうに見つめていた。皇宮の窓からも見えていたとはいえ目の前に来るとその大きさがよくわかり中に入ればとてつもないハイテク設備に余計に目を回していた。皇宮にはこのようなことはなかったため二人からすればここはハイテクなワンダーランドであろう。

 

「もうすぐ開会式で俺もスピーチで行かないといけないからしばらくここで待っていてくれ。何かあったらそこにいる女性に言ってくれ」

 

ヴィルヘルム六世が指し示す方向には黒軍服を着た女性が控えておりヴィルヘルム六世の言葉に反応して敬礼をした。

 

「分かりました。ここで陛下のスピーチを見させてもらいます」

 

クロエがそう言ってラウラが頷いた。それを見て満足そうにヴィルヘルム六世は微笑むのであった。

 





【挿絵表示】

紫→ドイツ帝国領
薄紫→ドイツ帝国の影響力が強い国、地域
赤→イタリア王国領
緑→オスマン帝国領
薄緑→オスマン帝国の影響力が強い国
後悔はしていない。

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