インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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連続投稿です。若干アンチが入ります。


第五話

「ヴィルヘルム皇帝陛下、本日はお日柄もよく…」

 

「皇帝陛下!我が国と国交を結べば今以上の利益を…」

 

「皇帝陛下、わが娘を妃にしてはどうでしょうか?我が娘は上品で愛想もよくきっと気に入ると思われます」

 

開会式でのスピーチを終えてヴィルヘルム六世を出迎えたのは各国の使者たちであった。これらはすべてドイツ帝国と国交を結んでいない者たちで中々取り合ってもらえる機会がなくこの機会を逃すまいと各国は躍起になって自国をアピールし、王政の国王自ら挨拶に来る国もあった。

 

ドイツ帝国と国交を結んでいる国はとても少ない。これは一時期暗殺が頻繁に起きていた時期があり時の皇帝は信頼している国と世界大戦前からの友好国以外との国交を断絶したのだ。ドイツ帝国は世界最大の国家。ドイツ帝国は技術大国なだけあり様々な製品を輸出しているがそれは国交を結んだ国のみに制限されており輸出された製品を倍以上の金額で買い取るしかできなかった。さらにISが登場して日本を超えるIS大国となると各国はさらにあの手この手を使いドイツ帝国と国交を結ぼうとしたが失敗していたのである。

 

ヴィルヘルム六世は一週間前に襲った刺客は他国のものであることが判明しているため時の皇帝の政策を続けると取り合わずにクロエとラウラが待つ皇帝専用席に向かおうとしたがヴィルヘルム六世は足を止めた。彼の前には日本のISスーツに身を包んだ一人の女性がいたからだ。釣り目が特徴の女性はヴィルヘルム六世の前までくる。その姿を見たヴィルヘルム六世は声をかける。

 

「久しぶりだなブリュンヒルデ」

 

ブリュンヒルデ事織斑千冬はヴィルヘルム六世に頭を下げる。

 

「お久しぶりです。フリードリヒ皇帝」

 

その言葉を聞いた護衛役の武装親衛隊は詰め寄ろうとするがそれをヴィルヘルム六世は手で制す。

 

「…今回も出るそうだな」

 

「はい」

 

「…前回は我が国が敗れたが今回はあの時よりも練度が高くなっている。ブリュンヒルデへの道も近い」

 

「それはあり得ませんよ、フリードリヒ皇帝」

 

その言葉にさすがにヴィルヘルム六世はこめかみに手を当てる。フリードリヒとは彼の名前で本来は皇帝陛下やヴィルヘルム皇帝と呼ばなければいけない。フリードリヒと呼ばれるのは相手を下に見ていると思われても仕方のないことであった。

 

「…知っているかもしれんがフリードリヒは俺の名前だ。それを呼ぶことは…」

 

「…もちろんわかっていますよ皇帝」

 

全く反省すらしていない態度に武装親衛隊は顔を真っ赤にして今にも携える小銃でハチの巣にしてやると顔に書いてあった。その姿を見ても千冬は態度を変えようとはしなかった。

 

「…そろそろ試合が始まるだろう。俺はこれで失礼するよ。邪魔をしてはいけないからな」

 

「別にあなた程度いてもいなくても変わりません」

 

それだけ言うと千冬はその場を後にした。残されたのは忠義を誓う人物を馬鹿にされ憤る武装親衛隊と千冬を無表情で見るヴィルヘルム六世だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロエとラウラ、今戻った…」

 

皇帝専用席についたヴィルヘルム六世が扉を開けるとそこにはクロエとラウラに懐かれた武装親衛隊の女性隊員の姿があった。

 

「ねえ、もう一回やって」

 

「私も私も!」

 

「仕方がないですね…、行きますよ。それ!」

 

クロエとラウラにせがまれて仕方なくと言いつつ顔をにやけながら女性隊員は二人を持ち上げていた。その姿はとても芸術的で彫刻にして飾っておきたいと思わせる光景であった。一緒に入ってきた武装親衛隊は鼻と股間を抑えて前かがみになっていた。精鋭の武装親衛隊を倒すとは…恐るべし。

 

「あ、陛下」

 

「陛下」

 

「え!?へ、陛下!?」

 

クロエとラウラはヴィルヘルム六世が戻ってきたことを喜び二人を持ち上げていた女性隊員は陛下が戻ってきたということでパニックになっていた。

 

「ああ、二人のお守りお疲れ様。悪いがしばらく相手をしてやってくれ」

 

「い、いえ。へ、陛下が良いと仰るなら、お、仰せのままに…」

 

女性隊員はまだパニックになっているようでしどろもどろに答える。そんな女性隊員をよそに第二回モンド・グロッソの一回戦が開始されていた。

 

「ほら、試合が始まったぞ。尤も、他国ではあるが」

 

ヴィルヘルム六世の言う通り一回戦はイギリス対カナダの試合であった。一進一退の末イギリスが勝利して次の試合へと駒を進めた。その試合を見てヴィルヘルム六世は呟く。

 

「さすがに第三世代を開発してはいないか」

 

最近はようやく第二世代が主流になってきたところであるがドイツ帝国では第三世代の開発が進められていた。これはISの開発者篠ノ之束と同等の頭脳を持ち「東西の天災」と呼ばれている技術者のおかげであるがそれはおいおい話すとしよう。

 

「ん?次は我が国か」

 

ヴィルヘルム六世が言う通りドイツ帝国対オスマン帝国と書かれていた。

 

「ほう、かの国との対戦とは…。あいつも燃えているだろうな」

 

ヴィルヘルム六世は各国の首脳が座る席のとある部分を見てそうつぶやくのであった。

 


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