インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第六話

ドイツ帝国においてIS操縦者は全て軍人である。これは企業に所属する者も例外ではなく軍人以外がIS操縦者になることは不可能で厳しく取り締まられていた。何故軍人ではないといけないのかと言うとISは宇宙開発の道具であると同時に人を簡単に殺せる兵器であるとヴィルヘルム六世が言ったため直接命のやり取りをする軍人にのみ操縦できることとなったのだ。

 

そのためドイツ帝国国家代表のアルビーナ・フォン・バッケスホーフもIS操縦者でありドイツ帝国空軍中佐の座を二十歳で手に入れた実力者である。

 

そんな彼女は控え室でISの最終調整を行っていた。彼女が使う機体はドイツ帝国の北方技術研究所が開発した第二世代機「モーゲンタウ」である。これはドイツ語で朝露を意味している。

 

アルビーナは自身用にカスタマイズされたISを一通り確認を終えて一息ついた。それと同時に自分の番がやって来る。

 

手早く片付けピットへ向かう。画面にはドイツ帝国対オスマン帝国と出ており両国のIS操縦者が出ていないにも関わらず観客席は熱気で包まれていた。

 

そんな歓声を意識の隅に追いやり集中する。既にモーゲンタウを装着しており何時でも出られる用意ができていた。

 

[お待たせいたしました!両者ともに準備が整ったようです!]

 

その声が聞こえると同時に準備完了の法が入りアルビーナは機体を浮かせて一気にアリーナの中央まで飛ぶ。同じタイミングでオスマン帝国の代表も現れ先程以上の歓声が聞こえてくる。

 

中央まで飛ぶと重くのし掛かるような視線を感じた。そちらの方を見ればこちらを見る皇帝ヴィルヘルム六世の姿がありアルビーナは一礼した。

 

「…あたしのことは無視なのか?」

 

と、そこへ対戦相手を見ないアルビーナにイラついたのかオスマン帝国代表のアイセルはムッとした表情で言う。アルビーナは頭をあげてアイセルの方を向いて話す。

 

「そんなことはない。だが、皇帝陛下がいらっしゃるのに無視をするのはドイツ帝国の国民としておかしいと思っただけだ」

 

「ふうん、まあ、こっちも座っているのが皇帝陛下だったら挨拶もするんだけどあいつじゃねぇ」

 

そう言ってアイセルが向く方向にはふっくらとした体型のおっさんがいた。

 

「オスマン帝国IS技術部の総まとめ役だ。でも実際のところあいつが何かする訳じゃないのに色々と横流しや賄賂を受け取って私腹を肥やしているって噂が絶えなくてね」

 

「よくその状態をオスマン皇帝閣下は許しているな」

 

「単純にあいつの影響力が大きいんだ。今あいつを粛清してもオスマン帝国は混乱しちまう。…オスマン帝国もそろそろ限界かもね」

 

オスマン帝国関係者が聞いていたら卒倒しそうなことをアイセルは普通に言ってくる。

 

「…つっても、一応あたしもオスマン帝国の代表。手を抜くことは決してしないけどね」

 

アイセルはそう言って斧型の近接ブレードを構える。アルビーナもアサルトライフルを取り出して準備を整える。

 

『それでは、試合開始!』

 

そのアナウンスが聞こえると同時にアイセルはアルビーナに接近してアルビーナは上空へと回避する。

 

「っちぃ!」

 

アイセルは直ぐに体制を整えてアルビーナの後を追う。アルビーナの方は牽制にアサルトライフルを放つ。しかし、ダメージを与えている様子はなかった。

 

アイセルがまとうIS「スレイマン」はオスマン帝国の第二世代機で防御力と加速に力を入れた期待で加速したところからの一撃は日本代表織斑千冬の専用機「暮桜」の単一仕様能力零落白夜にも迫る威力を誇っている。

 

「どうした!?そんなちゃちな豆鉄砲じゃ傷一つつけることはできないよ!?」

 

アイセルがブレードを横なぎに払う。すると衝撃波が生まれ高速でアルビーナの肩の装甲に直撃する。大したダメージではなかったが衝撃波によって体勢が少し揺らいでしまった。

 

そのすきを逃すほどアイセルは甘くはなく一気に加速してブレードをアルビーナに振り下ろした。アルビーナはアサルトライフルを盾代わりにアイセルの一撃を受け止めるがアサルトライフルは見事に二つに折れて勢いを少し失った程度のブレードがアルビーナに直撃してアリーナに思いっきり叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちゃ~、やっぱりオスマン帝国のISは半端ないな」

 

皇帝専用席から試合の様子を見ていたヴィルヘルム六世は叩きつけられた自国の代表を見てそうつぶやく。クロエとラウラも二人の試合を真剣に見つめていた。

 

「さすがにバランスタイプでは特化型に勝つのは難しいか」

 

ドイツ帝国は広いだけにたくさんのISを研究する研究所や企業がある。操縦者は軍人ではないといけないがISの研究自体は違法なことに手を出さない限り許可を出している。主なところではパリに本社を置くデュノア社やモスクワのフリゲート社がある。国家の研究所も中央、北方、南方、西方、東方、太平洋がある。そしてIS操縦者の中で優秀なものは専用機をもらえそうでないものもどのISに乗るか決めることができる。日本にあるIS学園よりも種類は豊富である。

 

アルビーナの乗るISは北方研究所の「モーゲンタウ」でこれはバランスタイプであった。対してオスマン帝国の代表が乗るISは加速と防御に優れた特化型であった。

 

「さて、アルビーナ・フォン・バッケスホーフよ。これからどんな試合を見せてくれるのかな?」

 

ヴィルヘルム六世は今後の試合を予想して一人笑うのであった。

 


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