地味で平凡で目立った所のない普通の女の子の白蓮ちゃん
そんな彼女ですが実は太守さんをやってたりします。偉いんですよ?
でも彼女のお城には、碌に仕事が出来る文官さんが一人もいません。
そういうわけで今日も今日とて、竹簡の山に埋もれる白蓮ちゃんでしたとさ。
「うわわゎーーーーん。私に休みをくれえええーーーーー!!!!!」
がんばれ!白蓮ちゃん 第二話 『御使い様だよ!白蓮ちゃん』
「天の御使い?」
朝から竹簡の山に埋もれていた白蓮ちゃんでしたが、今は何とか時間を見繕って、趙雲さんをお供に領内の見回り中です。ちなみにこの趙雲さん、真名は星さんと言います。今後は此方で呼びましょう。
この星さん、槍の名手でめっぽう強い方なんですが、残念ながら白蓮ちゃんの本当の部下ではなくて、客将なんですね。なんでも真の主を探すべく諸国を漫遊中だとか…どちらかといえば、メンマ探しが主な旅の目的のような気もしますが…。今は旅の路銀が尽きたのでその旅費を稼ぐ為、白蓮ちゃんの所で客将をやってるそうなんです。
「そういえば
白蓮ちゃんの妹である睡蓮ちゃん、今は白蓮ちゃんの代わりに文官のお仕事をやってます。
この姉妹、姉が文官の仕事をしてる時には妹が武官を、姉が武官の仕事の時は妹が文官をと代わりばんこにやっております。姉妹そろってどんな仕事でもある程度こなす代わりに、何か特出しる才能というものが無いみたいです。ようするに器用貧乏なんですね。
「それで今から向かう山の麓が、民からの訴えがあったという“巨大な流星と共に天の御使いが降り立った”と言われてる場所ってわけか」
「グビッグビッ…ぷふう~、ええそうですな。某は正直“天の御使い”とやらに関しては半信半疑と言った所ですが、何かが天から落ちてきたのは事実のようですからな。グビッグビッ…例の民達の間で流行っていると言う噂のこともある。もしかしたら流星と共に天の御使いとやらが本当に降って来たのかもしれませんぞ…ぷっは~っ」
「まあそうだよな。…でもな~本当に御使いとやらがいたとしたって、私みたいな地味なやつのところになんて来る訳ないしな…って、なに真昼間から酒なんて飲んでんだよ!星」
「グビッグビッ…うん?ああ、いやいやこれは酒ではありませんぞ伯圭殿。これはですな…そう!幽州水です!」
「うそつけ!なんだその取って付けた様な嘘くさい言い訳は」
「おやご存知ではない?幽州遼東郡の太守ともあろうお方が、それはいけませんな、グビッぷふう…これは幽州に古くは周の時代から伝わる幻の水、勃海の奥深くにある霊山の麓に十年に一度だけ湧き出すと言われる湧き水で、味はどんな銘酒よりも甘露でありながら決して酔うことはなく、飲めば疲労回復はもちろん肌は艶を増し、しかも寿命が十年は延びるとまで云われた神水ですぞ。某が此れを手に入れるためにどのような辛酸を味わったことか…グビッ!」
「星…そうだったのか、それはすまなかったな。そんな大変な水がこの幽州にあったなんて…まったく知らなかったんだ」
「ごくごくっぷっは~もちろん嘘ですぞ(キリッ)」
「星ーーー!!」
あらあら白蓮ちゃん、顔を真っ赤にしながら両手をジタバタとさせて怒ってますね。星さんはそんな白蓮ちゃんを見ながら顔をニヤニヤとさせてますし、ついて来た兵隊さんたちも苦笑しながらもどこか生暖かく見守ってますし、どうやらこんなやり取りは二人の間ではいつもの事のようですね。ああちなみに、“伯圭”とは白蓮ちゃんの
「は~あっ頼むよ星、客将とはいえ今はお前も家の将なんだからさ、お前がそれじゃ兵達に示しがつかないだろう。それに冗談が過ぎるようだとまた睡蓮に怒られるぞ」
「ははは、すみませんな。おニ方が生真面目なもので、ついついからかいたくなってしまう」
「…なんだよ私が単純だとでも言うのか」
おや白蓮ちゃん。今度は口を尖らせて拗ねてしまいましたか。
「そうですな、単純というよりは“馬鹿”が付くほどのお人好し…と言ったところですかな」
そう言ってまたニヤニヤと白蓮ちゃんを見てる星さんですが、その目なにか温かいものでも見るようですね。
「ふん、またそうやってすぐ人をからかう。まあいいさ、それより少し急ごう余り遅くなると今日中に城に帰れなくなるぞ」
「そうですな、あまり遅くまで伯圭殿を連れまわしておると、また心配性の妹御にしかられてしまいますからな」
「言ってろ…それでは皆、行軍速度を速めるぞ全騎駆け足、駆け足!」
白蓮ちゃん達がそうして右手を前へと振ると、全員が見事に足並みを揃えて駆けて行きました。
◇◇◇◇◇◇◇◇
そんなこんなで馬を走らすこと二刻余り。白蓮ちゃん達は噂の山の麓へと到着してました。周囲を深い霧で覆われたこの山は、確かに何か得体の知れぬ者でも出そうな、そんな不気味な静けさがありました。
「…それでここがその流星が落ちてきたと訴えがあった場所なのか?」
(確かにいかにもなんか出そうな雰囲気があるよな…ちょっと怖いぞ)
「はっ近くの民達によると晴天にも係わらず、突如雷鳴が轟きその中を一筋の流星が天から落ちたとか、雷鳴の中、“白き竜が落ちるのを見た”とかいろいろ噂しあっているそうです」
白蓮ちゃんの問い掛けに一緒について来ていた兵隊さんの中の一人がそう答えました。兵装が他の人より立派そうですし、隊長さんでしょうか
「白き竜ねえ…いよいよ胡散臭くなってきたなあ。まあいいそれじゃあもう少し奥まで行って見るぞ、ここからは徒歩だ馬はここにつないで置け。それと見張りに二~三人残して置けよ。それと星、お前は私と一緒だ。“え~”じゃない、見張りの名目でここで酒盛りを始めようとするんじゃない。ええい駄々を捏ねるな、不貞腐れるな、酒瓶から手を離せ!ああもう~ほらいくぞ」
白蓮ちゃんは駄々を捏ねる星さんの手を握ると引き摺るようにして木々が多い茂る中へと入っていきました。
それから四半刻ほど歩いたでしょうか。そろそろ山裾にかかろうかと言う森の中、見れば前方になにやら開けた場所があるではありませんか。
「むむ、見てくだされ伯圭殿。前方の森の途切れた場所になにやら人影らしき物が倒れておりますぞ」
何か見つけたらしい星さんが指し示すほうへと白蓮ちゃんが視線をこらすと、確かに人影らしき物を捕らえました。
「…まさか本当に見つかるとは…天の御使い…本物なのか…」
慌てて人影に駆け寄る白蓮ちゃん、それにしてもこの人影何やら光ってるようにも見えますね。
「お、おい大丈夫か、しっかりしろ」
恐る恐ると言った感じに倒れ伏せた人影を抱き起こす伯圭殿。見た限り、普通の華奢な青年に見えますね。
「どうですかな伯圭殿?その御仁、ご存命ですかな」
「…ああ、息も穏やかだし、脈もちゃんとある、どうやら気を失っているだけのようだな。それにしても…」
白蓮ちゃん、この青年の着てる服に興味を持ったようですね。確かにこのように陽の光を受け光を放つ服など見たことも無いですからね。
「見ろよ星この服…こんなふうに光る服なんて私は初めて見るぞ」
「確かに見たことも無い素材で出来ておりますな。どれ…おお!このようなツルツルとした手触り…初めて感じる感触ですな」
などと二人してワイワイとやっているといるとどうやら青年が起き出したようです。まああれだけ耳元で騒げば、気がつきますな。
「…う、う~んなんだか五月蝿いな…ってここは何処だ?…俺、確かに寮で寝ていたはずなのに…って君誰?なんで俺、見知らぬ女の人に抱きかかえられてるの!?」
「あ、気がついたか」
赤面しながら、パッっとはなれる青年…初心ですねえ。白蓮ちゃんはさほど気にした様子もなく青年の正面に向き直りました。
「私は幽州は遼東郡の太守をしております公孫賛と申します。貴方はもしや天の御使いでは?」
「天の御使い?なにそれ、聞いたこと無いよ。それよりここ何処かな?浅草でもなさそうだけど?」
「あさくさ?そんな邑あったっけ?」
二人して頭を抱えていると、星さんが一歩前にと出てきました。
「失礼、私は伯圭殿…いや公孫賛殿のところの客将で、趙雲子龍と申す者。そのあさくさとか申す邑がどちらの州にあるか教えていただけますかな」
「おお美人…って今、趙雲って言わなかった?」
「おや?私の名をご存知でしたかな。いやはや天の御使いにまで名を知られているとは、私も有名になったものだ」
「…趙雲に、公孫賛…じゃあここはまさか…でもなんで女の人に…そもそもタイムスリップなんて…SFじゃあるまいし…でも」
おやおや何やらブツブツと言いながら考え込んでしまいましたね。
「ふむ、とりあえずこれからどうしますかな伯圭殿?」
「そうだないつまでもここにいてもしかたないし…天の御使い殿!」
「…もしやパラレルワールド?それとも夢落ち…って、え?何、俺?」
「天の御使い殿、折り入ってお願いしたいことがあります」
そう言って
「ちょっちょっと待ってくれ。天の御使いとか、俺そんなんじゃないから!俺の名前は“北郷一刀”聖フランチェスカに通う普通の学生だよ」
おや白蓮ちゃんと星さん、なにやら納得顔ですね。フランチェスカとやらに心当たりでも?
「なるほど、天の王朝は“せいふらんちぇすか”と言うのですか」
「ふむ、ちと発音しにくい名ですな」
「いや、違う!」
「では“せいふらんちぇすかの御使い殿”改めてお願いが」
そう言い再び膝を折る白蓮ちゃん。
「幽州のいやこの大陸すべての民達の笑顔を護る為、不肖この公孫伯圭に力をおかしください!」
「いやだから違うって、お願い人の話を聞いてくれーー!!」
こうしてここ幽州の地に“天の御使い”が降り立ちました。漢王朝の落日と共に風雲急をつげるこの大陸で、この出会いは白蓮ちゃんの運命をどう導くのでしょう…では今日のお話はここまで、また続きは次回に…。
【予告】
「…姉上、これが“天の御使い”…ですか?知性の欠片も感じませぬ…とても信じられませぬが…」
「…ははははっまあ俺は御使いとやらじゃないけどね。…馬鹿でゴメンなさい…」
「こら睡蓮!失礼だろう」
「大変です!北方より賊数千攻め込んでまいりました!」
「なんだって!こんな時に!」
「…ちょうどいいじゃないですか。噂の“天の御使い”の力…見せてもらいましょう」
「睡蓮!こんな時にそんな事を言ってる場合じゃないだろ!」
次回 がんばれ!白蓮ちゃん 第三話 『初陣だよ!御使い様』
にご期待下さい。
※予告については一部未定な所もあり、実際と大きく異なる場合もありますのでご了承下さい。