「ええ、そうよ。あなたは本当なら主席合格だったわ」
昼休み。俺は織斑から誘われた昼休みを華麗に蹴って楯無の所に行って事実を確認したが、やはりオルコットやデュノアの言う通りだった。
「………そうか………そうなのか……」
「………別に隠していたわけじゃ。ただ、それをこっちから伝えるのもどうかって思って―――」
「つまり俺は黒葉にいながらIS学園のレベルを余裕で超えた天才だな。全校生徒の前で「跪け、愚民共!!」と叫んでも全く問題ないわけだな」
「問題大ありよ!! ちょっと待って、流石にそれは困るわ!」
「え? じゃあ、一緒に寝る? あ、勿論土曜日の夜だけど」
「何をするかわかり切ってるじゃない! この変態!!」
「男が変態で何が悪い! いや、男はすべて変態なのだ! 変態紳士なのだ!! むしろあれだけ言い寄られて気付かない織斑が異常だ!!!」
生徒会室内でシャウトする。すると布仏虚が鬱陶しそうに俺に言った。
「下らないことで騒がないでください。というかわざわざそんなことで私たちの仕事の邪魔をしに来たのですか?」
「嫉妬するなよ、布仏虚。なんだったら休憩がわりに相手を………いや、永久的に襲っても良いけど」
「死ね」
あら冷たい。それに割と布仏虚が可愛い顔をしているからかMじゃない俺はとても傷ついた。自業自得だけど傷ついた!
「落ち着いて虚ちゃん。私としては良い縁談だと思うけど?」
「お嬢様?」
「あ、はい。すみません。ごめんなさい」
「弱いなお前」
「あなたは本気で怒った虚ちゃんを知らないからそんなことを言えるのよ!!」
「聞こえてますよ?」
まぁ、冗談は置いといて。
「でだ。1つ聞きたいんだが………デュノアのことどう思う?」
「………そっちが本題かしら?」
「まぁな。まぁ、IS学園の生徒がすべて俺の中で「有象無象」に変わるか変わらないか重要なことでもあるが、だが所詮は二の次だ。結果で示せばいいんだからな。………それで?」
「………まだこっちとしてもすべての事情を把握しているわけではないけれど、黒ね。理由はわからないけど、あなたと織斑君を狙っていることは間違いないわ」
「言っておくがあそこにはもう誰も入れるつもりはないぞ?」
「わかっているわ。こっちだって妹の生死が関わるかもしれない以上、全力で阻止させてもらったわよ」
「そいつはありがたい」
生死と言わずともデータが奪われる可能性があるからな。用心するに越したことはない。………もし仮に簪を殺そうものなら、俺と楯無でデュノア社を物理的に消し飛ばすかもしれないが。
「………本当はあなたからも離したいのだけれど」
「措置としては間違っていないが、まだ手を出す段階ではないし手を出しても責任は取れないからな。据え膳食わぬは男の恥という諺があるが、所詮はゴミや蛆虫の言い訳でしかない」
「………それを理解した上であなたはセクハラをするんですか?」
「本音は本音、現実は現実。俺は常に区別しているだけである」
褒められたことではない? そんなの知るか。
「それで、デュノアは織斑と同居することになるのか?」
「そうね。まぁ、良い機会ね。問題は織斑君がムードに流されて狼になってしまうかどうかだけど………」
「あんまりそれはねえだろ。もしNTR趣味のクソ野郎だって言うんだったら先に俺が潰しておくしな」
もちろん精神もだが物理的にだ。……その時になったら楯無も動くと思うが。
「まぁ、見張りはこっちに任せておけって。簪に手を出すって言うならキッチリ潰すから」
「………別にあなたに対して牙を向けてきた時でも良いのよ?」
「その時はその時だ。切り抜ける方法もあるしな」
とっておきの秘策。とはいえ、結構無理はあるけどな。
デュノアとボーデヴィッヒ……問題児疑惑を持つ奴と問題児が転校してきて5日が経った。
IS学園は土曜日にも授業はあるが午前授業のみ。後はアリーナで混んでいるが練習することになる。………もっとも、ここまで人が混むかどうかは謎だが。なにせ第三アリーナに学園の半分の人間がいるのではないかと錯覚するほど生徒がいるのだから。………たぶん、いや絶対織斑とデュノアのせいである。
「こう、ずばーっとやってから、がきんっ! どかんっ! という感じだ」
「なんとなくわかるでしょ? 感覚よ感覚。………はぁ? 何でわかんないのよバカ!」
「防御の時は右半身を斜め上前方へ5度向けて、回避の時は後方へ20度反転ですわ」
………オルコットはまだわからなくもないが、後の2人はアウトだ。
「篠ノ之と凰、お前ら教員免許を取りに行くなよ。織斑の知能数の問題じゃねえよ」
「「そこまで言う(か)!?」」
「え? わたくしは構いませんの?」
「ただし偏差値が高い学校に限る」
俺はわかった。わかったけど要は頭の出来の問題だろう。織斑はあの藍越学園を受験するつもりだったらしいが、その試験会場を探している時にISを動かしたという話をしたが、周りが褒めている時に俺は現実を見せてやりたいと思ったのは悪くない。具体的には―――
『お前の頭本当に大丈夫か? 試験会場を探しているのにISを触るとか、お前の脳みそにはゴミしか詰まってねえの? というかお前の人生が上手く行っているのって単純に姉の力とたまたま友人が空気読んでいただけだからな? 良かったなお前。俺みたいに前向きな奴じゃなかったら薬盛られて殺されても文句言えねえからな? もし姉が喚いても「あなたの弟さんが現状を把握できるほどの知能数がなかったからww」で終わるから。で? いつ死ぬの? 今でしょ?』
これくらい言ってもおかしくはないというか、むしろ言わせろ。
「一夏、ちょっと相手してくれる? 白式と戦ってみたいんだ」
「シャルル! わかった! というわけだから、また後でな」
まさしく助け船だったらしい。織斑はその餌に食いついたが、一方的にやられる未来しか見えないが―――実際そうだった。
「おーい、死んでるー?」
「いや、生きてるっての……」
「あの、夜塚さん。できればお相手を―――」
「悪いがパス。そろそろ学年別トーナメントだし、手の内を晒さない主義なの」
念には念を、と言う奴だ。
「それに今はちょっと改造を考えていてな。そういうのはトーナメントまで待ってくれ」
「そ、そうなんですか……」
「ああ、もしかして試合中に女の子を落とす方法でも聞きたかったのか? だったら簡単な方法がある。まずは相手の部屋に監視カメラを設置して脅すための証拠を準備して―――」
「ち、違います!」
なんだ。違うのか。それはそれでショックなんだが………というか少しは女の子に興味を持っている素振りを見せた方が良いんだけどな。なにせIS学園の女子は腐っている奴らがいるから。
「なぁ、前々から思っていたんだけどさ、何でシャルルって透に敬語で話すんだ?」
「え? だって彼って年上だし。それにとっても有名人だよ?」
「そもそも、本来なら全生徒は俺に敬語かつ通るたびに平伏すくらいはするべきなんだけどな」
「………そ、それは………」
「ちなみに冗談だからな?」
気持ち的にそれくらいの態度は示してほしい。だって俺、IS学園の卒業生を超えてしまったからな。
「そうなのか?」
「うん。一夏、日都大学って知ってる?」
「な、名前だけなら……」
結構有名だしな。だが一般市民してみれば日都みたいなレベルが高いところに受けようという考えなんて持つ方が難しいだろう。
「夜塚さんはそこで一番レベルが高い総合工業学科に現役で首席で合格したほどで、世界的にも有名なんだよ」
「そ、そうなのか? 凄いなそれ………」
微妙な反応をしている織斑だが、その近くで篠ノ之が唖然としていた。
「………そ、それはいくらなんでも冗談だろう?」
「え? 何か知ってるの?」
「知ってるも何も、言わば夜塚はIS学園生でも現役合格が難しいと言われている所に現役で受かっていて、しかも主席だぞ!? やったことは、姉さん並みに凄い」
「………そ、それほどですの……」
「ああ。だがこれで合点がいった。何故夜塚には別宅が用意されていたのか、そこに夜塚専用の研究所があるのかも、な」
もし篠ノ之が用意される機体がどこにも帰属しないものなら彼女にも用意されるだろう。
「ということだ。以後生徒は全員俺に平伏す様に」
「は、ははぁ」
「ストップ篠ノ之! 本気でするな!」
いくら何でも恥ずかしいわ!!
にしても意外と篠ノ之って勉強家だな。まさか知っているとは思わなかった。
「言っちゃああれだが、俺のやったこととか正直お前の姉ちゃんに比べたら大したことないから、マジで」
「……そうなのか? だが、いやむしろ姉さんよりも教え方などは適切だと思うぞ?」
「……そうですわね。わたくしの弱点を克服するための練習も上手く行ってますし……。下手な教官よりもよほど良いですわ」
「え? なにそれ? アタシ知らないんだけど……」
「そりゃあ、お前と一緒に練習したことないからだろ」
いてもアドバイスするかどうかはその時の気分次第だけど、とか言えない。
なんて騒いでいると、いつの間にかデュノアと織斑は射撃訓練をしていた。織斑が銃を使っているという事は、おそらくデュノアが使用許諾した武装を使っていると思われる。
「にしても織斑って射撃苦手なんだな。………篠ノ之はそれなりにできるのに」
「私の場合はたまに弓で射ていたからだ。一夏の場合は千冬さんがしていないのなら経験は皆無に近い」
「………やっぱり白式はこっちに渡すべきだったな。俺だったら改造って手があるけど織斑の場合は知識すらないからな」
「………流石に勝手に改造はいけませんわよ?」
えー、させてよぉ。具体的にはイギリスでBT適性を調べたいんだけどー。
ダメだとはわかっているが、それでもああいう脳内操作タイプの小型武装ってロマンを感じてしまう。
「ということは、やっぱり訓練機を改造するしかないのか。それはそれで面白いし楽しいしワクワクするし……年端も行かぬ少女たちが絶望し懇願するだろう未来を想像するのは」
「「おい!」」
篠ノ之と凰から鋭い突っ込みが入り、オルコットは後ろで苦笑いしている。そんなある意味微笑ましいやり取りをしていると、周囲が急に騒がしくなった。
(……何かが起きそうだな)
俺は騒ぎの元凶の所に勘付かれないように移動を始めた。にしても織斑とデュノアってくっつきすぎてたよな。もしかしてデュノアは織斑に気があるのだろうか? もしくは計算? 何それ怖い。
「おい」
「何だよ」
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」
………専用機持ちって血気盛んだよな。今では鳴りを潜めているがオルコットもそうだったし。やっぱり選ばれた人間というのは無自覚な戦闘狂なんだろうか。
「嫌だ。理由がねえよ」
「貴様にはなくても私にはある」
にしてもアリーナの端から端は遠いな。これでも早くなったつもりなんだけど。
「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業を成し得ただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を―――貴様の存在を認めない」
………そう言えば、織斑千冬って第二回モンド・グロッソの決勝戦で棄権してたっけ? それが織斑に関係しているってどういうことだ? まさか……いや、それはないな。弟可愛さのあまりに日本に勝手に帰ったとかなさそうだ。
それはともかく、ボーデヴィッヒの後ろを取ることには成功した。
「今でなくていいだろ。もうすぐ学年別トーナメントなんだから、その時で」
「そうか……ならば―――戦わざるを得ないようにして―――」
「はいはい、そこでストップストップ」
するとボーデヴィッヒは俺にビームタイプの刃を突きつけてきた。
「貴様……」
「あ、悪い。ちょっとそれひっこめてくれ……流石に怖いです」
「……ふん」
って、やらせるか!
俺はイーグ……もとい、素早くISを展開してボーデヴィッヒの口に丸くて太いものをぶっこんだ! たぶん、傍から見たらロリが大人の飴を舐めている風にしか見えていないだろう。
ボーデヴィッヒは無言で俺の方を見て、殺気を出す。
『殺されたいか?』
「おっと、落ち着け。脳内にあるであろうエアコンで適切な温度に保つんだ」
『殺す』
そして今度こそ俺にビームっぽい刃を向けるが、瞬時に出てきた緊急脱出方法を思い浮かんだので言った。
「織斑姉弟は毎晩セックスしているって、知ってる?」
「な、何だと!?」
「は!? 何言ってんだ透?!」
「まぁ、冗談だけど」
ここからの展開はまぁ予想はついた。殺気立つボーデヴィッヒの耳に息を吹きかけて脱力させた俺は忍ばせていた騒音玉をアリーナ中に鳴らし、教員を呼んだ。本当は楯無辺りを呼んでおきたかったが奴は仕事だし色々と迷惑をかけているからここらでは自重をしておく。布仏虚に関しても、今彼女は簪の機体を手伝っているはずだし却下。
その結果、ボーデヴィッヒは撤退した。
「まぁ、本当は胸というか乳首を握り潰そうと思ったんだけどな」
「「アウト!!」」
そっちの方が女に対して効果的なんだよ!!
「今日はもうあがろっか。指定時間を過ぎたし」
「そうだな。あ、銃サンキュ。色々と参考になった」
「それなら良かった」
本当に参考になったのか、それを活かせるかは気になるな。もしそうじゃなかったら俺は性格悪いから1日中笑っているだろう。
さて、そろそろ俺も帰って続きをするか―――と思ったら、織斑がホモホモしいことをしていたので慌てて止めに入った。