IS-Lost/Load-   作:reizen

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ep.35 摩訶不思議! 篠ノ之束、推参

 合宿2日目。しかしその日こそがこの合宿の目的だ。

 そう。2日目は新武装を試験使用できるのだ。できるのだ!! だから、

 

「せんせー! コア・ネットワークとかあなたの弟さんぐらいしかわからない常識です! とっとと終わらせろ!!」

「………だそうだ」

 

 おそらく今俺の脳内を調べると「実験」の二文字が占領しているだろう。それほどまでに今のテンションは異常だ。

 

「まぁいい。それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行え。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

 さて、俺は俺で早速やりますか。

 早速武装を展開すると同時に的も放ち、ちゃんと周囲に気を配りながら配置させる。

 そしてお待ちかね。俺は追加武装である「ジェットブースター」を装着した。名前そのものはよくあるものだが、脚部に装着したそれは高機動装備でもある。もっともただの高機動装備ではない。

 

「とても分厚いですわね、それ。動けますの?」

「これにより、ISは海上を素早く動けるようになったけど、真価はそこじゃねえよ」

「じゃあ何ですの?」

「戦闘機に変形できる」

 

 微妙な顔をするオルコット。その顔を殴りたい。

 

「言っておくけどな、戦闘機がISに劣る理由って単に反転できないだけなんだからな! 元々ISの武装は戦闘機とか戦車とかの武装を参考にしているし、そもそもBT兵器だって原型を言えばISじゃないし!」

 

 だから欲しがったんだけど、これ以上色々と困惑しているオルコットを混乱させるのはマズいと思った俺は彼女の肩を置いて言った。

 

「君は所詮女だ。俺に付いていけなくて当たり前さ」

「それはそれで何かイラっと来ますわ!!」

 

 全く。これだからお嬢様は。

 すると簪が暗い表情でこっちに近付いてくる。

 

「あら、どうしましたの?」

 

 もしかして、俺がオルコットを弄っている事に苛立ちを覚え―――

 

「………今の専用機、捨てたい」

 

 一体何があったか気になった。

 もしかしてコアが簪に拒否反応でも起こしたのだろうか? 確かにそれは問題―――

 

「送られてきたのは威力を増しただけのバズーカとか、他にも似たような武装とか………倉持は何をやっているの。勝手に武装を送って来たかと思ったらどれもこれも似たようなものばかり。しかもマルチロックオン・システムを完成させたかと思ったら透さんの物の完全劣化品。処理能力は遅いしシステムはクソ重いし……何なの? アホなの? 死ぬの?」

 

 俺は思わず簪を抱きしめると、簪はまるであやされた赤ん坊のように大人しくなった。

 

「………一体何がありましたの?」

「まぁ、所詮打鉄弐式は打鉄の発展機でしかないって証拠だな。おそらく似たようなものばかり送られてきてウンザリしているんだろ。ただで簪は日本で唯一IS関係で俺に近付けたからな。敢えて粗悪品でも送って俺に作成させようという腹だろ。そもそも、マルチロックオン・システムは倉持が開発していたものだからな。データを奪われた形跡もなく男性操縦者の1人が勝手に作り上げたとなれば気が気でないんだろ。何で標準装備ごときでそんなにテンションを上げるんだろ」

「開発者にとっては泣きたくなることですわね」

 

 それはどうでも良いんだけどな。そんなことより、俺はさっきから篠ノ之と織斑先生が何を話しているのかが気になった。

 

「ちーちゃぁあああああああああああんっ!!!」

 

 と思ったら今度は謎の……っていうかあれ、篠ノ之束じゃね?

 意外にも早く移動している彼女は砂場というのにも関わらず―――そもそも崖を平然と降りている時点で人間を止めているようだ。似たようなのが友人にいるから少し驚いている。

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめ―――ぶへっ!!」

 

 ………やはりそうだったのか。

 

「どうやら織斑先生は近親相姦以外にもレズでも行けるクチらしい」

「………遠慮する」

「ちょっと待て!! そこ!! 私はノーマルだ!!」

「そうだよ!! 私以外にもいっくんぐらいしか無理―――ってそれ以上は流石に痛いよちーちゃん!! っていうかどうしたの? 何か今にも私の事を殺しそうな勢いなんだけど」

「奇遇だな。ちょうど貴様を殺そうと思ったところだ。覚悟しろ」

 

 なんかあそこが別の意味の修羅場に発展しているんだが、止める奴は誰もいないな―――と思ったら1人いた。篠ノ之だ。

 

「それで、頼んでおいたものは……?」

「うっふっふっ。それは既に準備済みだよ! さぁ、大空をご覧あれ!!」

 

 頼んでいたもの? まさかとうとう……か?

 

「今、箒さんは「頼んでいたもの」と言っていましたわね? 確か箒さんのお姉さんは―――」

「篠ノ之束、ISコアを生み出した本人だな」

「その方にISを頼むということはとんでもないことなのでは?」

「気持ちはわからなくはないがな。とはいえ篠ノ之の現状を考えれば仕方ない。それに何も篠ノ之はその機体を使って商売をするってわけじゃないんだから。したところで俺が罰として拘束した織斑の前で生乳を揉みしだくが」

「………随分と残虐な事をしますのね、あなたは」

 

 どうやらオルコットも嫌なようなので、彼女に好きな人ができたら実践してやろう。

 にしても、銀色のキューブが落ちて随分と揺れたな。まるで―――

 

「篠ノ之の胸が揺れたんだけど、織斑、どう思う?」

「何で俺に振るんだよ!?」

「!? 今の反応、まさか見てしまったのか!? 立ち上がっているのか、愚息が!!」

「何の話だよ!? 俺に子どもなんていねえよ!?」

 

 別にそう言う話じゃないんだけどな。

 とは気のせいか。ただデカパイが好きなら好きでそれで良いんだけど、織斑の反応はイマイチだ。でも、今はそれ以上に気になることがある。

 

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃんの専用機こと「紅椿」! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製のISだよ!」

 

 と言った瞬間にオルコットと簪、そして凰が俺の方を見たのは何かの間違いだと思いたかった。

 

「あー、別になんでもいいんじゃね? 俺は拘らねえよ?」

 

 ぶっちゃけた話、いもしない奴の話をしたところで何かが起こるわけでもないのだし、勝手に比較しろって話だ。いや、マジで興味ないんだけどな。っていうか俺が気になってんのはそこじゃねえよ。

 俺はひっそりと織斑千冬の所に移動して聞いた。

 

「こういうことになるって知ってて織斑に白式を使わせていたのか?」

「何がだ?」

「紅椿の背部の機構、どう見ても《雪片弐型》が零落白夜を発動する時に動くそれと同じ、もしくは同質だろ」

 

 気付いていなかったのか、織斑千冬の肩がわずかに震えた。

 

「わかるのか?」

「全てってわけじゃない。だが、おそらくは動く。中の機構とかがどうなっているかは流石にわからないがな」

 

 そう。あくまで見ただけという話だ。おそらくエネルギーを消失させることはできないだろうが、何かある。ああ、あれか。展開装甲、か。

 

「………その話は後でしよう」

「……そうだな。んで、姉妹の仲は………悪いわけではないんだろうが、あそこまでマイペースな姉を相手にしているなら真面目な妹は負担が多いだろうな」

「そういうことだ。察してやれ。私とて付き合うのは疲れる」

「俺はアンタが担任だということに疲れているがな」

 

 その言葉はかなり効いたようで、少し動いた。

 

「さあ! 箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズを始めようか! 私が補佐するからすぐに終わるよん」

 

 そう言いながらとても早く投影型キーボードを打っていく。俺もそれなりに自信はあったが、彼女は余裕でその上を行っていた。

 

「まさしく天才と言わざる得ないな」

「嫉妬したか?」

「いや? 別に。天才はこの世に1人だけってわけじゃないし、俺は天才になるために行動しているわけじゃない。結果的に天才と言われているだけに過ぎないだけだ。他人の肩書きになんて興味ねえよ」

 

 ましてやこの世界ってISが普及している割には技術水準低いしな。何で「あって当然」のことでそこまで驚くのか本気でわからないぐらいに。

 そのことを思いながらため息を吐いた俺は持ち場に戻る。さて、試験の続きだ。……単に武器で攻撃したいだけとか言えないが。

 

「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの………? 身内ってだけで」

「だよねぇ。何かズルいよねぇ」

 

 その言葉に反応してか、篠ノ之の姉はそいつらに向かって何かを言おうとしたが、その前に俺が行動を起こした。

 片方の女の首を左手で掴んだ俺はキレても出さないであろう声を出してそいつに言った。

 

「で、お前はいつに吐くんだ?」

「な……何が……」

「テメェの姉のことだ。テメェの姉、篠ノ之束がISを生み出したせいでこっちは迷惑してんだよ! 喋れよ! 早く!!」

 

 普段は見せないから耐性がないのか、その女は今にも泣きそうになっていた。さて、仕上げをしようか。

 

「何だんまりこいてんだ! 犯すぞ!! 服ひん剥いてテメェの裸を全国に公開してやろうか!! ええっ?!」

 

 銃を出してそいつの眉間に銃口を向ける。当然、引き金には既に指がある。

 

「おい、待て夜塚! お前は一体何をしているのかわかっているのか!?」

「なーんて、な。今のはあくまで演技だよ、演技。あ、ちなみにこれも―――おもちゃだ」

 

 引き金を引くと、中から鳩やら旗やらが出てきた。

 

「だがまぁ、よく見ろよ。篠ノ之のボディラインはお前らよりもはるかに綺麗だぜ? 何時からああいう体型をしているかはわからないが、場合によっては既に処女喪失も―――」

「してないぞ!? 流石にそこまでもされていないからな!!」

「わからないぞ? 下手すればお前が子どもができたらそいつにも魔の手が及ぶ可能性もあるし。ハッ!? まさか政府ぐるみで篠ノ之繁栄を阻止されてる!?」

「阿呆か。そんなわけがないだろ」

「世界一と言っても過言じゃないアホにアホって言われた!! 酷い!! 残酷!! 外道!!」

「………なんか、姉さんが2人いる気分だ」

「箒ちゃん、それは酷いよ!」

「………つまり、俺が女に変身すれば篠ノ之の胸を合法的に揉み放題………」

「そんなことさせるか! 箒ちゃんのおっぱいは私が揉む!」

「よし、2人共そこに並べ」

 

 殺意を露わにする篠ノ之。俺は手を挙げてそれを止めて続けた。

 

「まぁ、何が言いたいかって言うとだ、お前らみたいに超兵器を自分を盛り立てる道具としか見ていない奴がISを持つなって言いたいんだ。ましてや―――お前らは世界すべてと戦う覚悟はあるのか?」

 

 その言葉に一体何を感じたのか、全員が俺から何かを感じ取るように下がった。

 

「それでいい。そして今一度考えるんだな。今のISを持つという事がどういうことか。ISの世界に入ることがどれだけ―――無様か」

 

 俺に恐怖したいなら恐怖すればいい。いずれ俺は消えるのだからな。

 

「………夜塚」

「まぁ、こんなもんだろ。どうせこいつらは大した覚悟も持たない連中だ。篠ノ之束がすべて作成したISを使うことがどれだけ危険と隣り合わせかということがわからない、そんな連中にはこれくらい言って当然だろう」

 

 下手すれば今後外に出れない可能性だって出てくる。篠ノ之は素人だし、これからは率先して鍛えないとな。とすれば、まず知るべきは―――紅椿のスペックだな。

 

「で、付かぬことをお伺いするが、篠ノ之束さん。紅椿のスペックに関して教えてもらえないだろうか? できればその戦い方とかもな」

「………………」

「…………おーい」

 

 無視!? まさかの無視?!

 無反応の上に心なしか処理能力も上がっているような。

 

「無駄だ夜塚、姉さんは興味を持った人間としか話さない」

「………それは困るんだがな。紅椿を直す時のためのデータが欲しいんだが」

「…………おい」

 

 咄嗟に俺は後ろに下がり、金属物をやり過ごす。ってスパナかよ。割とシャレにならないんだが。

 

「あっぶね」

「束、止めろ」

「さっきから聞いてればさ、ゴミムシの分際で何? 死にたいの?」

 

 と、殺気を放ってきているけどその後ろで織斑先生が殴り飛ばした。

 

「そこまでにしろ、束。奴は何もお前に喧嘩を売っているわけではない」

「離してちーちゃん! そもそもこいつ、最初っから気に食わなかったの! だから今殺る! この場で!!」

「わー、とても10年前に自称天才科学者共にこっぴどく言われて裏で泣いてた奴と同一人物とは思えねぇ」

「何でそんなこと知ってるんだよ!?」

 

 篠ノ之が驚いた風に自分の姉を見る。お前は自分の姉を何だと思ってるんだ。

 

「言っておくが篠ノ之、一応お前の姉は人間だぞ」

「一応って何だよ一応って! 私はむしろ神だ!!」

「うわぁ。痛い女だ。自分で神とか言ってるし。年齢的に10年くらい前にはとっくに中学二年生は卒業したんじゃないのかね?」

「殺す! お前を、今ここで、殺す!!」

 

 喚く篠ノ之束にそれを止める織斑千冬。俺はその光景を見て笑ってた。

 

「………すげぇ。透の奴、束さんを手玉を取ってるよ」

 

 とりあえず、未だに敬語を使わない織斑には蹴りを入れておいた。

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