IS-Lost/Load-   作:reizen

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ep.37 すべての物事は順調に

 俺たちは各機の送られてきた武装を特徴だけを共有し、後は旅館周辺に福音が現れた時の事を打ち合わせしてオルコットを引き連れて先に出た。

 

「……………」

『オルコット、膨れているところ悪いがお前にだけ先に伝えておきたいことがある』

『な、何ですの……?』

『展開装甲の弱点だ』

 

 通信を個人間秘匿通信に切り替えてオルコットに説明する。

 そう、展開装甲にはある弱点が存在している。それは―――零落白夜並みのエネルギー消費率なのだ。

 おそらく天才の事だからそれなりのカバーは施しているとは思うんだが、とはいえ途中でエネルギー切れは考えておくべきか。

 

『展開装甲は確かにロマンあふれる武装であり、戦闘力で言えばIS素人の篠ノ之が一気に強者クラスへと上がるほど強いが、だからと言ってエネルギーが無限にあるわけではない。いざとなれば紅椿は使い物にならなくなる』

『そ、それを知ってどうして出しましたの!?』

『その前に落とせば良い。そう思っただけさ』

 

 ま、本当の理由は色々とある。例えばこれを機に篠ノ之自身の経験値を上げる、とかな。いざとなれば俺たちもいるしどうにかなると考えたのは確かだけど。

 

『とはいえ作戦が上手く行くかどうかはわからない。もしマズいと思ったらその時は、わかるな?』

『………このわたくしを運搬係にさせられるのは少々異論を唱えたいですが、それは後にしますわ』

 

 物分かりが良くて助かる。

 そろそろ福音と接触を行うのでオルコットを近くの岩場の上で捨て、飛行形態のまま突貫―――バレルロールを使ってすれ違う。

 

「透さん!?」

 

 すると福音に爆発が起こる。俺はその間にISの状態に戻って加速して福音の背中にパイルバンカーを当てて攻撃した。

 福音は警戒はしていただろうが、生憎こっちは「ここに爆弾があるよ」と教えるほど優しくない。

 

「さぁ、見せてもらおうか。アメリカ軍の、軍用ISの性能とやらを」

 

 下から「何を言っていますの!?」と聞こえるが、こういう時こそ言うべきセリフだろう。

 

【敵機確認。迎撃モードへ移行。《銀の鐘(シルバー・ベル)》、稼働開始】

「来るか、新兵器」

 

 高速移動をしながら、しかしてその機動力は流石と言うべきだった。ある時は弾幕を張り、ある時は逃げようとする。やれやれ―――そんな消極的な戦い方で俺に勝てるわけがないだろう。

 

(さて、そろそろ近接戦に移行するか)

 

 瞬時加速で懐に入り、敢えて刀型の近接ブレードを展開して攻撃する。しかし近接武装はないのかその攻撃を回避、または格闘プログラムもあるのかそのまま破壊しにかかる。

 

『透さん、先程篠ノ之さんたちがこちらを出発しました。3分後にそちらに到着します』

『了解した。データは?』

『すでに転送済みです。後は、彼女たちが来るまで敵を引きついておいてください』

 

 ま、外しそうだもんな。仕方ない、仕方ない。

 しばらくして織斑たちがやってくる。それにしても凄い加速だ。しかもなんかカッコいい。

 

「うぉおおおおッ!!」

 

 叫びながら接近する織斑。何であの男はわざわざ叫ぶのだろうか? それならば「俺はここにいるぞ!」と位置を知らせているようなものだ。

 案の定、福音は攻撃を回避する。さて、俺は少し後ろに下がって援護しようかね。

 

「墜ちな!」

 

 高出力ビームが撃てる大型のライフルを展開して2人が当たらない最適なタイミングで攻撃する。にしても、まるで2機は最初からそう作られていたかのようにタイミングが合っている。これは読みを外したか。

 

「箒、左右から同時に攻めるぞ。左は頼んだ!」

「了解した!」

 

 これ、凰が出る幕ないのでは?

 そう思ったが口には出さず、今は援護に徹する。

 

(にしてもかなりの機動力だな。軍用ISは伊達じゃないってか?)

 

 今は援護で行動を制限しているが、まるで見えているかのようにその攻撃すら避ける福音。じれったくなったのか篠ノ之は織斑に指示した。

 

「一夏! 私が動きを止める!! 夜塚も、ここは私が―――」

「わかった!」

「行ってこい」

 

 篠ノ之は2本の近接ブレードを展開する。そう言えば、篠ノ之道場は一刀流をメインで教えているが元々は二刀流である実力に達したら教えるんだっけ? もしかしたら、父親が先を見越して篠ノ之に渡していたかもしれないな。それはともかく、紅椿も結構やるな。流石は篠ノ之専用のIS。いやぁ、勝手に作らないで良かった。しかもオートビット付き。

 1人で行くとは言っていたが、一応準備はしておくか。

 福音が光弾を吐き、篠ノ之を落とそうとするが防御に物を言わせて篠ノ之は突っ込んだ。瞬間、俺は嫌な予感がして下に降りる。そしてそれは―――何故か織斑もだった。

 

「何をしている織斑!?」

 

 そう叫んだが、どうやら織斑は光弾を消しに来たようだ。あの馬鹿、零落白夜を無駄に使うな。

 

「何をしている!? せっかくのチャンスに―――」

「船がいるんだ! 海上は先生たちが封鎖したはずなのに―――ああくそっ、密漁船か!」

「いや、俺がいるだろうが! 何勝手にチャンスを潰しているんだ!!」

 

 篠ノ之は専用機をもらってある程度浮かれていると思ったがそれは予め計算に入れていた。だがこいつは本当に余計なことをする。

 

「夜塚の言う通りだ! 犯罪者などを庇って! そんな奴らは―――」

「箒!!」

 

 すると何故かそこから2人の声が聞こえなくなる。オルコットと簪に確認するが、どちらも音声を拾えていないようだ。だから俺は―――織斑を撃った。

 

「!? な、何するんだよ!?」

「何をする? 馬鹿か? 今ここがどこかすら忘れたのか?」

「そうか。上から来るぞ」

 

 福音は光弾の雨を降らせる。俺は回避したが織斑は密漁船を守った。

 

「チッ。余計なことをするな、織斑! そいつらは見捨てろ!!」

「何でだよ!? この人達はまだ生きてるかもしれないだろ!? ―――って、エネルギー切れ!?」

 

 こいつはどうやら計算ができないらしい。あれだけ瞬時加速と零落白夜を使用すればエネルギー効率が悪い白式ならばすぐに空になる。

 

「一夏!!」

 

 篠ノ之が織斑に抱き着いて密漁船から引き剥がす。織斑を狙って放たれた光弾は密漁船に襲い掛かった。

 

「箒! 何で!?」

「篠ノ之の判断が正しい―――また来るぞ!!」

 

 篠ノ之が織斑を離したところで織斑が文句を言うが、それを止めようとしたタイミングで光弾が迫った。俺たちは回避したが、光弾は篠ノ之の方に飛ぶ。そして―――篠ノ之にもその時が来た。

 

「箒!!」

 

 今度は織斑が篠ノ之に抱き着いた。どうやら男らしく庇ったようだ。

 2人揃って海に落ちる。バイタルを確認するが、どうやら織斑は眠ってしまっているらしい。

 

「オルコット、2人を回収しろ。俺が殿を務める」

「………夜塚さん」

「安心しろ。エネルギーは補給できる」

「………わ、わかりましたわ」

 

 福音はまだ織斑たちを追うつもりか、落ちた場所に接近しているのでビームでそれを阻害する。

 

「負傷者を狙う気か? 趣味が悪いとは言えないな。………俺が相手になってやる。かかってこい」

 

 しかし福音は無視して織斑たちを狙う。俺はため息を吐き、笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セシリアが一夏、そして箒を引き連れて防衛隊展開圏内に入ったことを確認した千冬はすぐにインカムを起動させて透に言った。

 

「夜塚、3人は撤退した。お前も離脱しろ」

『……………』

 

 福音はまた一夏たちが向かった方角に足を向けようとするが、途中で動きを止める。

 

【行動に障害が発生。付近に存在する敵機をBランク危険分子と断定。削除を開始する】

「何をしている、夜塚。お前も早く撤退しろ!!」

 

 叫ぶ千冬だが、透からは中々連絡が帰ってこない。すると、

 

『………ククク……クハハハハハハッ!!』

 

 笑い始めた透のIS「荒鋼」は光を帯び、また姿を変えた。

 

『おいおい冗談だろ、福音。この俺が、やったこと全てがあらゆる存在の頂点に立つこの俺様が「Bランク」だとは―――アメリカの測定器はただの阿呆か?』

 

 透は福音を蹴り飛ばす。その衝撃で装甲が一部吹き飛んだ。旅館にいる全員が驚きを露わにした。

 当然だ。さっきまでの透は攻撃を当てるだけで精一杯だったはず。だが今は易々と当て、装甲を抉った。

 

(しかし、それでは中にいる操縦者を直に見てしまう)

 

 ―――それでは透の凶暴性が薄れてしまうのではないか?

 

 そう心配した千冬だが、おそらくそれを本人が聞けばまた馬鹿にするだろう。何故なら透は―――生身だろうがなんだろうが怒れば相手が誰であれ潰す存在なのだから。

 

 福音は脅威を感じ、透のランクを「A」に変え、損傷した箇所を修復するためにその場から離脱を図った。

 しかし透はそれを逃がしはせず、ただの加速で福音に追いつき、背中に蹴りを入れつつ装甲を抉った。

 

『遅い』

 

 光弾を連続で放つ福音。それに当たった透は福音から離れてしまうが荒鋼から何かが射出された。

 

 ―――手?

 

 その光景を見ていた全員は唖然とするが、ただ1人簪だけがその後の展開を予想して安堵した。

 

 ―――ドンッ!!

 

 大きな音が1発。そこから連続して福音は何かに撃たれて体勢を崩し、とうとう手に捕まり海面に叩きつけられた。

 

「腕が……伸びてる………」

「どれだけ規格外なんだ、あの機体は」

 

 シャルロットとラウラが唖然とするが、簪にとってそれは馴染み深いものだ。

 透は伸縮する腕とビット兵器を駆使して徐々に福音を追い詰めていく。すると福音は―――槍を展開した。

 データでは福音は試験稼働中であり、武装は大型ウイングのみだと記載されていた―――はずなのに唐突のことに全員が驚く。さらに驚いたことに、その槍の先端からはビームが飛ぶのだ。

 全員が撤退させることを忘れて透を見守る。どう見ても当たる距離。全員が恐れたその瞬間、透はシールドを展開してビームを反射させて彼方に飛ばした。

 

「………対応……した……?」

「そんな……あり得ない……」

 

 誰もが透の行動に驚きを露わにする。明らかに直撃する距離と思ったからだ。だが、透にとっては最初から送られてきたデータなんかあてにしていなかったのである。

 

『やっと本気になったか』

 

 そう呟いた透は同じく槍型の武装を展開する。しかし先端には三角状の刃以外にも少し下の位置、片方に斧そのものが装着されている。もう片方に透は赤いクリスタルを出して刺し込んだ。

 

『これぞ名付けて、フレイムハルバートってね』

 

 するとハルバートの刃部分が炎を帯び、透は福音に接近する。福音もそれに倣うように透に接近し、槍型同士の激しい打ち合いが始まった―――だがその勝負は簡単についた。

 福音の装甲が7割程度吹き飛んだ後、福音は足を使い始めたのである。透はそれを捌いた瞬間、彼の心臓がある部分を刀身が貫いたのだ。

 全員が唖然とする。その中で透はそのままハルバートを振って福音の装甲をさらに抉った。

 

「透さん!!」

 

 簪は叫ぶが、透には届いてないのか返事がない。福音は槍を抜くと透はそのまま海面に叩きつけられ、沈んでいった。

 

 

 

 

 

 その光景はあまりにも信じられなかった。

 誰もが「透なら何とかしてくれるかも」と思った結果、そうなったのである。千冬はすぐさま教員たちに透を探させるように命じた。福音は透を貫いた後に旅館にも向かわず元来た道を戻るように撤退した。

 

 ―――そしてしばらくして

 

 簪は気を遣われ、一人で廊下を歩いている。簪もまた、信じられなかった。だからこそさっき見た出来事を受け入れられなかった。

 

(………さっさと……撤退するように言えば良かった……)

 

 過ちを後悔したところで時間は戻らない。だが今の簪には「後悔する」という行為以外何も思いつかなかった。

 

「………透さん」

 

 名前を呼んだところで、ここにいるわけではないのだから返事が返されるわけがない。簪はまた後悔する。

 

「………やっぱり………あの時襲えば良かった。……だったらこんなことにならなかったのに……」

 

 完全な独り言。当然、誰からも返事が戻ってくるわけがない―――はずだった。

 

「―――いや、ずっと言っているけど、俺は俺で結構理性が崩壊しないように我慢しているだけだからな?」

「……………でも………私は透さんと…………一緒に………一緒……に……」

 

 簪はゆっくりと振り返り、何食わぬ顔でそこに立っている透を目撃した―――が、目の前に立っている事が理解できない簪はどういう反応をすれば良いのかわからなかった。

 

「………どうして……刺されたはず……なのに……」

「それよりも風呂だよ風呂。あー疲れた。やっぱりボス戦前はちゃんと用意しないとダメだな~」

 

 そう愚痴る透に簪は飛び掛かった。当然傷跡を確認するためだ。

 

「………ない」

「当然だろ。だってあれ、幻覚だし」

「……え?」

「まぁ、話をすれば長くなるんだけど、粒子反射作用による疑似映像を展開していただけだ。でもあれってビット兵器以上に脳操作力が必要になるからオルコットには無理だな」

 

 そう説明する透の前に簪は膝を付いて安堵する。

 

「………良かった………本当に……良かった……」

「……簪、さりげなくパンツを掴むのは止めてもらおうか」

 

 簪は舌打ちするが、透はその姿に萌えて頭を撫でる。その数10分後、千冬の怒鳴り声が周囲に轟いたのは言うまでもない。




今回は今回で新しいパターンです。刺されたっと思ったら生きてます。
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