IS-Lost/Load-   作:reizen

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ep.41 女性優遇制度はむしろ一部を優遇していない

 悠夜が残した傷跡は、まぁ思いの外こっちに得があった。主に船の残骸なんだが、俺相手に戦う気だったのか武器まで積んでいた。

 

「………で、こいつらは―――」

「然るべき措置を取らせてもらうしかあるまい。リーダー格が機能するなら、の話だがな」

「全員燃やすか」

「おい!」

 

 織斑千冬からの鋭いツッコミが炸裂するわけがなかった。反射的に受け止める。

 

「いや、だって正直思ったんだけどさ、それが科学の進化を目的としたならともかく、自分たちの利益しか考えずに今にも俺に迫ってくる悪魔なんかに技術なんか提供したくないし」

 

 全く。こっちは将来的には世界的に必要な技術を生み出そうと計画しているのに、ここまで人間が愚かならば「より良い世界作り」と称して人間を選別したくなっちゃうよ。

 

「まぁ、姉として弟があんな目に遭っているのに突っ込まなくて良いのか気になるけどな」

「…………アレに関しては自業自得だ」

「その割には一生懸命通信しようとしていたよな?」

「唐突に暴れ始めたらこちらも対処に困る。それだけだ」

 

 今、織斑は両手両足を拘束された状態で正座させられ、膝の上には重石が載せられている。もっとも俺はそれで許す気はさらさらないが。

 

「とか言って、本当はどうにかして止めたいとか考えていたりして」

「それはない、な。今回の処分の一件に関わることは認めるが、その前にだ―――すべて話してもらおうか」

 

 すべてを話せ、か。

 

「どうしてお前たち姉弟がデキていることを知ったのかってことか?」

「違う!! そもそも私たちはそんな関係ではない!!」

「またまたぁ………ま、それに関してはどうでも良いんだけど―――」

 

 そう言って俺は一段、また一段と組み上げていく。

 

「ところで夜塚、それは何だ?」

「効率的な集団火葬術式。別名「キャンプファイヤー」」

 

 正直に答えるとものの見事に破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風花の間に入ると、専用機持ちと織斑千冬が待機していた。山田先生を含めた他の先生は負傷した男性陣や機体整備などの後始末をやらせている。ただし、ここには織斑一夏の姿はなかった。別室でこの話が聞こえない場所で今も罰則を食らっているからだ。

 

「さて、話してもらおうか」

 

 織斑千冬が急かしてくる。まぁ、気にならないわけはないだろう。

 

「先に言っておくが、最後の乱入者に関しては俺は何も言えない。少なくとも一般人で、まず100%福音に関しては何も知らない」

「………何故そう断言できる?」

「アイツ、妹以外の人間は基本的に「ゴミ屑」としか思っていないから」

 

 俺たちのように一部は除くが、昔虐められていたからかあまり興味を持っていない。

 

「だから詮索はしないことをお勧めする。今回のことも「突発的に竜巻が発生した」程度に捉えておいてくれ」

「…………良いだろう。それよりも気になることがあるからな」

 

 流石はブリュンヒルデと言うべきか、彼女の言葉に全員が頷いた

 

「夜塚、お前は一度落とされた後に巨大化して戻ってきたな。あれは一体なんだ?」

「………………」

「何か言ったらどうだ?」

「すまん。まさかISの最先端にいる女からそんな()()を問われるとは思わなかったんだ。あれは何の変哲もない。IS部分をコックピットとして展開して、上半身と下半身に分けたパーツをコックピットを中心に合体させただけだ。中もちゃんとしたコックピットになっている。ま、ISに勝てたらそれはそれだと思ったんだけどな」

 

 将来的には基礎設計図の特許を取ってウハウハ生活を夢見ていたんだが。

 

「…………何を言っている。そんなことをすればお前も、お前の家族も狙われることになるんだぞ!?」

「まぁ、それはそれこれはこれって奴だ。それに、たぶん狙ったところでそのための費用は間違いなく割に合わないし、男権団の被害なんて「ちっぽけ」程度で済むから」

 

 破壊的な実力で言えば、俺の方が圧倒的に上だ。………ただ、以前飢えられたトラウマが怖くて怖くて……。

 

「それに忘れているようだから言っておくけど、ISはそもそも「宇宙開拓用」だから。そこんところちゃんと理解してくれよ」

 

 何度も言うが、白騎士の装備は宇宙開拓をするなら普通だ。むしろどんな危険があるかわからないのに、武装を持たないのは自殺志願者のすることだ。

 

「まぁ、今回はデモンストレーションって言うのもあるけど、流石に荒鋼の全力は高が軍用じゃ可哀想だからって」

「………つまり」

「そう。スペックだけで言ったら、めでたくって言うかなんて言うか、紅椿超えてたわ」

 

 全員が青い顔をした。

 だって仕方ないじゃん。こっちはこれからも狙われるんだから、その対策ぐらいするっての。

 

「………この馬鹿が!! そんなことをしたら間違いなく狙われるぞ!!」

「大丈夫。俺の家は下手すればイギリス王家の特注シェルターより強固だから」

「そういう問題ではない!!」

 

 って言っても、流石にあのクソジジイに保護されているから心配だ。IS学園の方は強固だけど。

 

「全く。お前はもうなんというか、束以上に厄介だな」

「でも男だから落とす方法はたくさんあるけど、織斑先生は無理だな。流石に論外だ」

 

 地味にショックを受けている織斑千冬は放置して、俺は簪を抱きかかえて撫でた。

 

「で、話は終わりか?」

「…………そうだな。もういい。とりあえずは休め」

「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらうよ。織斑の罰則を加算させてから」

 

 全員が顔をさらに青くして全力で止められたので渋々止めた。………ジョギング10㎞、腕立て、腹筋、背筋起こし、スクワット各500回に加えて、俺はいつも木刀500回の素振りはしているんだけど普通じゃないのか。そうなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気に入らないと束は思った。

 まるで最初から透の掌の上で踊っているだけみたいで、気に入らない。それに結局、最後は自分のアクセスすら無理矢理壊していく始末。

 

「……気に入らない」

 

 今まで束には「ライバル」という以前に、千冬以外に対等だと思える存在がいなかった。しかも千冬はどちらかと言えばオーラは力で圧倒するタイプであり、透のように「突出した力を持ちながら調和を保つ存在」に会ったことがない。それほどまで、千冬と束の存在は他者を圧倒していた。

 だというのに、透は全く気にも留めないように振舞っている。束にとってそれが気に入らなかった。

 

「―――何を殺すつもりだ、お前は」

 

 唐突に話しかけられて少し驚く束だった。次第に怒りを露わにして殺気を飛ばした。

 

「何のつもり?」

「は? 何を言っている?」

「おまえ、ちーちゃんじゃないな?」

 

 しかし千冬は驚くばかりであり、束は彼女の腹部に腕を突き刺した。すると千冬は霧散して消える。

 

「………夜塚透じゃないんだ」

「そうね。おそらく今の彼は寝ているんじゃない。何だかんだで瀕死だったし」

 

 どこかおどけた様子でそう答え、束の後ろに霧散した何かが再び人を形成する。

 

「………誰、お前」

「酷いわねぇ。かつて「失敗作」と勝手に壊して捨てた存在を忘れるなんて」

 

 と言いながらも笑みを浮かべる少女。彼女は透から「ゼロ」と呼ばれたものだった。

 先程の発言から束も彼女の正体に気付き、驚きを露わにする。

 

「何で……」

「幸か不幸か、アンタ並みにぶっとんだ存在に拾われたのよ。どうやらその前にアンタと面識はあったみたいだけど」

「………そう。だからアレが紅椿を超える機体を作れたんだ」

 

 すべてが腑に落ちた。そして束はゼロを殺そうと接近したが、伸ばされた腕をゼロがいなして距離を取る。

 

「ああ、勘違いしないで。夜塚透はあなたと戦う気はこれっぽっちもないわ」

「………は?」

「今回、私があなたの所に来たのもそれが理由。共闘はあっても本人はあなたと戦う気はないわ」

 

 束は何を言われたのか理解できなかったようだが、時間が経つに連れて顔が笑みで歪んでいく。

 

「つまりそれって降伏宣言だよね? まさか臆したの?」

「……………やっぱり、アンタって馬鹿でしょ」

 

 呆れたゼロはそう言うと束は笑顔のまま固まった。

 

「悪いけど、こっちは10年もアイツと一緒にいたからわかる。透とアンタが全力で戦ったら世界は崩壊する。透はそれがわかっているからこそ、アンタとの戦いはできるだけ回避したいの。それはアンタも同じなはずよ。篠ノ之箒が透のお気に入りではあれど好きな人ではない。それがどういうことか―――アンタはわかるわよね?」

 

 つまり、それは「障害になるなら殺す」という宣言だった。

 実際、透は箒に入れ込んでいるのはあくまで「さらに高見を目指すため、敢えて障害として立ちはだかってもらえるために強くしている」だけであり、簪のように心から入れ込める存在として認識していない。

 

「透はアンタと同じタイプ。だけど、アンタよりも俗世に融け込むことができるわ。今では織斑千冬すら「天才」としての器はあなたよりも上だと思っているはずだわ」

「何を根拠に―――」

「彼女は自分が「力だけ」というのを無意識に感じ取っているから、だから「教員」という立場でいられるの。ま、IS学園だから問題になっていないけど、あんな教師は普通潰されているわよ」

 

 唯一の救いは、彼女自身が今日この場において「女尊男卑などくそくらえ」と宣言したことか。今頃それが教員を経由し、一般生徒を通じて他学年にも伝わっているはずだ。

 そしてそれが後々に波乱を呼ぶことになるとは、まだ彼女は気付いていない。

 

「……………ふーん」

「ま、たぶん透はちょっかい程度なら許してくれるんじゃない。敵になったら潰すだろうけど」

 

 そう言ってゼロはまた霧散して姿を消す―――と思ったら、

 

「あ、これだけ言っておくわ」

「何?」

「アンタが今飼ってるコ、透の前に出さない方が良いわよ。十中八九持ち帰って可愛がるから」

 

 その言葉のせいか、彼女はしばらく束に愛でられることになるが、それはまた別の話。

 

 ちなみに束はここに来た時に乗ってきたニンジン型の輸送機を呼んだが、「電波を送信できませんでした」と表示されたので、助けを呼ぶ羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――魔剣『ダークカリバー』

 

 それが悠夜が持っていた剣であり、実は悠夜以外の人間は使うことができない。

 実は悠夜があそこまで動けたのは剣の中にある闇の力なるもののおかげであり、俺が調べた結果としては「未知の力が入っている」ことだけはわかった程度。ただ、試すなら宇宙空間じゃないと無理だな。実験失敗=周囲終了のお知らせする間もなく消滅だろうから。

 その説明をしていないことに気付かれた織斑千冬に聞かれそうになったが、ひたすらノーコメントを貫いた。

 

(………わからないことがあるとすれば、あれがつい最近の技術で作られたことだよな)

 

 ISじゃないのに待機状態があるし………今度、悠夜の家でその技術を調べさせてもらおうかな。…………いや、アウトな声を聞いたらまた別の事案が発生するから、2日目の朝に見つけたニンジン型の輸送機を回収したから、その技術を使った簡易研究所を使って庭に移動するか。流石女権団幹部の家と言うべきか、桂木家の庭は小さな小屋程度なら建てても支障がないほど大きいのだ。

 

「あなたが夜塚透君、で良いのよね?」

 

 なんて考えていると、どこかで見たことがある女性が近付いてきた。

 

「そうだが、何の用だ? 俺に喧嘩を売るって言うんだったら―――」

「そうじゃないの? ただ、ちょっと立ってもらえたらなぁって思うけど」

「………何を企んでいるんだ?」

「何も企んでないわよ?」

 

 視線が一瞬下に行った気がしなくもないが、とりあえず俺は警戒心を持ちながら立ち上がると、急に首に腕を回され、顔が接近するので素早く屈みつつ腕を取った投げた。

 

「やっつー………」

 

 何で隣に座る布仏は呆れながら俺を見るのかね?

 と思っていたら、誰かがバスの中に入ってきた。

 

「おいナタル、今の音は―――ナタル!?」

「あ、イーリ」

 

 これまたどこかで見た覚えがある女性が入ってくる。たぶん雑誌か何かだろう。たまに俺、ISの雑誌を見てるし。当然、機体がかっこいいかどうかだけどな!

 

「おいテメェ、ナタルに何をした!」

「投げただけだが?」

「投げただぁ? テメェ、ちょっと頭が良いからって舐めてんじゃねえぞ!!」

「舐めてねぇし。後ちょっとじゃねえ」

 

 あと誰だっけ? 全く思い出せねえ。

 

「おい貴様ら、喧嘩なら外でやれ」

 

 と、いきなり現れた女帝(笑)が現れて俺たちを追い出した。

 

「って、何で俺まで―――あと引っ付くな」

「いや、その、こうしておかないと引かれる気がして」

「とっくに引いてるわ!!」

 

 怒鳴ると涙を流す謎の女A。

 

「テメェ、ナタルを泣かしてんじゃねえよ」

「いや、知らねえよ。って言うかアンタら誰だ」

「なっ!? オレ様を知らねえのかよ!?」

「知らんな」

 

 興味ねえし。大方、女で自信があるとすればIS操縦者関連だが、入学前は日本の国家代表くらいしか知らなかったからな。たまたま従姉だっただけだが。

 

「オレはイーリス・コーリングだ! で、こっちがナターシャ・ファイルス」

「昨日はお世話になりました」

「…………もしかして、銀の福音の操縦者?」

「はい!」

 

 にしてもおかしいな。大抵、俺に接触してくる女はコーリングみたいに敵意剥き出しなんだが、何故かファイルスは俺に対して心を開いているみたいだ。見た目は「デキる金髪女」って感じなのに、色々とおかしい。

 

「その……気持ち良かったです」

「え? 何が?」

 

 俺は何もしていないだが、その言葉でコーリングでブチ切れている。

 

「テメェ、ナタルに何をした?」

「何もしてねぇよ。邪魔だから一緒にいたチビに預けただけだ。エロいことはしてねえよ」

 

 そもそも俺、年上は興味ないし。

 

「あの、それで………もしよかったら………私と付き合ってください」

「ごめん。俺、年上は範囲外だから」

 

 そう言って俺は立ち上がってズボンに着いたゴミを払いつつ、バスに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、1人のIS操縦者が壊れた。喚き、騒ぎ、女性優遇制度を貶して政府は無能だと叫んだ。

 

「何が女性優遇制度よ!! 何が女権団に入れよ!! 結局損しているのは私たちみたいに幸せな結婚生活を望む女性が不幸になっているじゃない!! 変な法律を作ってんじゃないわよ!!」

 

 それを去り際に聞いた山田真耶が耳にし、後に日米の女権団が2人の悪魔によって完膚なきまでに破壊され、かつてない淫乱な状況に陥れられるがそれはまた別の話。




なお、「反女権団」の中にはかの有名な織斑千冬がいたらしいが、それを知る者は誰もいなかった(気にしている余裕がなかった)


ということで41話で第3章を終了させていただきます。何故、彼女が告白したのかは次話で明らかにするつもりです。
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