笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》 作:バスクランサー
いやー、案外難しかったです…
では、本編どうぞ。
ーーー第35鎮守府
「はい、そうですか…分かりました、では失礼します」
俺は電話を切った。向こうの提督の悔しそうな声が、受話器を離しても耳からは離れない。第41鎮守府の調査艦隊が、全員大破で帰投、戦闘によると思われるショックで、敵の正体は不明…という。詳しいことは後で分かり次第伝えるというが…。
「どうだった、司令官」
「調査の結果はどうだったのじゃ?」
結果を気にする響、利根に、俺は首を横に振った。
「ダメだったというのか…!?」
「敵の正体も不明らしい」
「あの第41鎮守府の調査艦隊が…」
「ああ…今日は第30鎮守府で、その次…明日がここだ」
極東支部の、神奈川県横須賀の第1鎮守府や、広島県は呉の第2鎮守府を海域主力攻略部隊とするなら、昨日出撃の第41鎮守府や今日の第30鎮守府は、海域調査部隊の色が強い。作戦対象となった海域に真っ先に出向き、正確なデータを提供する…戦闘力と調査力、さらに臨機応変な対応力ではそこが双璧だ。しかしそこがこの結果となると…
「提督…こうしてはいられません!とにかく敵の正体を特定しないと!」
焦る筑摩。しかし、すかさずミライさんが止めに入る。
「落ち着いてください筑摩さん!
敵の正体はおろか、今何が起きているかの詳細すら掴めていない中…下手に動けば、余計にリスクが大きくなります」
「…すみません、憲兵さん」
「いえ。こういう時に焦ってしまうのはよくあることですし」
「とにかく、後で第41鎮守府から詳細が送られてくるはずだ。明日の出撃までまだ時間がある、できる限りのデータを集めよう」ーーー
ーーー数時間後。
会議室には、俺と響、利根に筑摩、ミライさん、さらに用務員としての仕事報告に来ていた長門とレイ。
「はい、はい…分かりました、はい。ありがとうございます、では」
その時再び鳴った会議室の電話は、第30鎮守府からだった。結果は…第41鎮守府と同じく、全員大破撤退、ということだった。
「精鋭部隊を二度も大破させて返り討ちにさせるとは…」
結果を聞いて険しい顔をする長門。すると、長門に着いてきたレイが質問してきた。
「あの…
おそらく、敵はかなりの力を持ってるんですよね?」
「そうとしか言えないな…。この結果を見る限り」
「…じゃあ…なんでしつこく攻めてこないで、撤退を許しているんでしょう…データを取られる恐れもゼロじゃないですし…」
「!!」
その場の全員の顔色が変わる。
「…確かに気になるね、司令官」
「ああ。何かあるとすれば…」
「狙いは、主力鎮守府の部隊…」
断言したのはミライさんだった。
「ど、どういうことなのじゃ…?」
「…そうか!」
首を傾げる利根に対し、俺はミライさんの言っていることを理解した。
「あえて完全に倒さないで撤退させる、これを繰り返していけば、第1や第2といったこちら側の主力部隊が泊地に大挙するのは時間の問題…そこで初めて本気を出し、主力部隊を全滅させる…。ミライさんの言いたいことは、こういうことじゃないですか?」
「はい、まさしくそうです。しかし、これもあくまでも仮説ですし、詳しい状況がわからない限りは…」
その時。
唐突に再び会議室に電話の音が鳴り響いた。俺は受話器をつかむ。
相手は、第41鎮守府だった。
「はい、はい。…えっ!?
妨害電波…!?それは本当ですか!?」ーーー
ーーー第41鎮守府からたった今送られてきたデータによると、艦隊の艤装に、妨害電波の痕跡が残っていたという。
「通信が途切れていた理由は、これと判断して間違いないみたいだな…」
「妨害電波なんて…いったいどういう…」
「とにかくこれだけでもありがたい。長門とレイは工廠に行って、明石と夕張に対妨害電波用の艤装を作るよう言ってくれ」
「分かった!」
「行きましょう、長門さん!」
「大淀、明日の出撃予定のメンバーをここに集めてくれ。状況の確認と対策について協議する」
「はい!」ーーー
ーーーその後、明日の出撃について話し合いに話し合いを重ね、気づいたらもう夜遅くになっていた。工廠からは装置完成の一報が一時間前に来ている。
「…ふう…よし、今日はもう寝るか。
響ももう、自室に戻っていいよ」
「分かった」
ドアが閉まり、俺は机の上を軽く整え、冷蔵庫の茶を飲み、大本営から支給された就寝用の浴衣に着替えた。と、その時。
「提督さん、夜分遅くすみません…今、大丈夫ですか?」
この声は、ミライさん?ーーー
ーーー「すみません、こんな遅くに」
「いいですよ、そんな気にしないでください。それで、何の御用ですか?」
「…実は…明日の出撃に、自分を同行させてほしいんです」
彼の目は真剣そのものだった。
「…理由を聞こう」
「明日の出撃、利根さんが旗艦となっていますよね」
「ああ、そうだ。」
「…なんというか、利根さんのことを信じていない訳ではないんですけど…この出撃は彼女の強い希望によるものですが、まだ彼女は完全に立ち直った訳ではありません。だからその…自分が近くにいて、彼女を支えてあげたいんです」
俺は黙って、ミライさんの話に相槌をうつ。
「…提督さんの職業柄とか、あとはあなたのお祖父さんが、僕のいたGUYSを含め数々の防衛チームにいたことからしても…おそらく提督さんは、僕の正体はご存じですよね…?」
「…ああ。」
「だから、あの…僕の力で、少しでも何か利根さんに出来ることがあるとしたら…それで、利根さんを支えたいんです」
恐らくミライさんは気づいていないだろう。彼の頬はほんのりと紅く染まっている。恐らく彼は、利根のことを…
「だからお願いします…僕も明日の出撃に、行かせてください!」
きっと共にここで過ごしていて、そのうちに利根の様々な面に気づいていったのだろう。そして、最近の利根の様子を見る限り、きっと利根も…
「提督さん?あの…?」
「…ああぁ、すまんすまん」
「すみません、お疲れの中…それで、その…」
ミライさんが言い終わらないうちに、俺は彼にあるものを手渡した。
「えっ」
俺がいつもジオマスケッティで出撃する時に使う、ヘルメットだ。
「…これって…!」
「ああ。
ミライさん、利根を頼みます」
はい!
ミライさんは元気に返事した。その後、俺は簡潔にジオマスケッティの装備や操縦方法をミライさんにレクチャーして、今日の執務は終わりを迎えた。
ふと布団の中で思ったのだが、ドラマでよくある娘を嫁に出す父親の気持ちが、なんとなく分かった…ような気がするーーー
ーーー翌日
出撃待機場所に集まった、俺が調査艦隊に命じた6人…利根、筑摩、日向、飛鷹、木曾、島風。全員、妨害電波対策用のアタッチメント式艤装を装備している。
「今回の出撃は、あくまでも調査が目的だ。だが、場合によっては救助、またこれまでの鎮守府の結果からして戦闘に巻き込まれることも十分ありえる。各自、臨機応変に対応きてくれ。
そして、目的を果たすことは重要ではあるが、絶対、命だけは持って帰ってくるんだぞ」
「「「「「「はい!」」」」」」
「それから、だ。万一に備え、今回は憲兵のミライさんにも、大型緊急避難艇を搭載したスカイマスケッティで出撃に同行してもらう」
「そ、それは本当か!?」
「姉さん、落ち着いて…」
「はっ!…す、すまん…」
顔を赤らめて俯く利根。
「利根は余程、ミライといられるのが楽しいようだな」
「お顔真っ赤っかだぁー!」
冷やかす日向、島風。
「そ、そんなこと…!う、嬉しいとか、そ、そんなのは…」
「嬉しく…ありませんか?」
そこへ突然姿を現すミライ。
「すみません、大型緊急避難艇の搭載に時間がかかりまして…それでその、利根さん…」
「あ、いやあの、その…本当は、とても嬉しいのじゃ…ありがとうなのじゃ…」
「なら、よかったです。僕もそう言ってもらえて、嬉しい、です…」
よくよく見るとミライさんの顔も紅潮している。
「これはいいムードね…!」
「いつ結ばれてもおかしくないぜ…」
コソコソと話している飛鷹と木曾。しかしそれさえも聞こえてないのか、二人は相変わらずいいムードだ。
しかしこのムードをいつまでも続けるわけにもいかない。出撃前のリラックスは大事だが、気が緩み過ぎては逆効果だ。おまけに下手すれば死亡フラグにもなりうる。
「…コホン、とりあえずだ。絶対に無理はしないで、帰ってきてくれ。
ミライさん、皆を頼む」
「はい!」
「提督、行ってくるのじゃ!」
調査艦隊の6人がリフトの上に立ち、艤装を展開すると、暗い出撃用トンネルに次々と明かりが手前から灯っていく。
出撃を知らせるサイレンの中、6人を載せたリフトは、ゆっくりと下にある海面に向けて下降を開始した。
「ファーストゲート・オープン!
ファーストゲート・オープン!」
大淀の声によるアナウンスに合わせ、リフトが回転して、「1」の文字が書かれた重々しい金属扉の前にリフトが到着、海面に着水した。
「システムチェック・オールグリーン!
システムチェック・オールグリーン!」
鎮守府の仲間が増えた頃に導入した、出撃前の最新鋭自動艤装チェックシステムが、異常なしをコールする。利根にもこれで精神的な余裕ができた。アナウンスに対応し、扉がゆっくりと開いていき、青い海面が目の前いっぱいに広がる。
外からは、鎮守府そばの山の岩肌が、突然開いたように見える。かつてのチーム・ウルトラ警備隊を手本に改良を重ねた出撃ゾーンは、全てこの山の中だ。
そして、扉が完全に開き、頭上のシグナルが赤から青に変わる!
「出撃!」
利根の一声。調査艦隊の6人は、一斉に脚部の推進艤装を全速作動させ、目的の第102泊地へと進んでいく。
一方、そことは反対側の山の表面も、同じように開き、機体下部のコンテナに大型緊急避難艇を搭載した戦闘機、スカイマスケッティが姿を現す。そのコックピットの自動車・ジオアトスには、提督の使っているヘルメットを着用したミライ。
海の中から滑走路が浮上し、ジェットエネルギー反射板が機体後部に展開した。
「スカイマスケッティ・バーナー・オン!」
スカイマスケッティのエンジンが起動し、ジェットを噴き出し、滑走路上を加速していく。やがて、コンテナ下部の車輪が地面から離れ、スカイマスケッティは完全に離陸した。
「こちらミライ、離陸成功。艦隊と合流し、目標ポイントに向かいます!」ーーー
今回も読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m
感想や評価、お気に入り登録してもらえると励みになります、よければお願いしますm(_ _)m
ではまた次回で!