笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》   作:バスクランサー

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えー、テストやら本体の不調やら更にはめっちゃくちゃ案を選ぶのに迷ってこんなに遅くなりました。
大変申し訳ございませんm(_ _)m

これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

※尚、今回で鋭い人は敵の正体がもしかしたら分かってしまうかもしれませんが、感想欄へのネタバレ投稿はご遠慮いただくようお願いします。


深海棲艦の秘密…

ーーー「やった…やったぁぁああ!」

「よしっ!やったぞ!!」

歓声に包まれる艦隊。強敵撃破、そして救出の完遂。いくつもの困難も、仲間たちの力を合わせて乗り越えたからこそ、この大勝利は得られたのだ。

「ありがとう、コスモス、カオス…」

「こちらこそだ。君たちの力が無くては、この勝利はなかった。」

「よく頑張ったね。

それから千代田さん、あそこを見るんだ。」

「え?」

言われるがままに指さされた方向を見る千代田。

そこには…

 

「…お姉…お姉!!」

両脇を明石と提督に抱えられながらも、しっかりとその目は千代田を見つめていた。

「いっておいで」

「…!はい!」

戦いの疲れなど、もう気にもならない。

出せる限りの速度で、千代田は尊敬する姉の元へと向かった。

「千歳お姉ーーー!!」

「千代田…千代田…!!」

互いの名を叫び合い、そして抱き合う。

「千歳お姉…!よがっだ、本当によがっだぁぁ…!」

「千代田…ありがとう…助けてくれて、本当にありがどぉぉ!!」

お互い顔は涙でぐしゃぐしゃ。それでも、この再会を喜ばずにいられるはずなどなかった。

よかった、本当によかった。二人だけでなく、その場の全員が思った。

「さて、とりあえず千歳たちの治療をしなくてはならないな。スカイマスケッティも、鎮守府までの飛行が出来るほどには修理ができている」

「他の皆さんも、意識こそ戻っていませんが、命には別状ありません。とにかく、この海域を離脱して鎮守府に戻りましょう」

艦隊は撤退の準備を整え始めた。

一方で…

 

「どうした?コスモスよ」

「いや…少し考え事さ。

あいつ…僕の浄化技が全く効かなかったんだ。落ち着くどころか、動きの鈍りさえ感じられなかったんだ…カオス、君はあいつに取りついた身として、何か分かったかい?」

しかし、コスモスの呼び掛けに、今度はカオスが思索を巡らせてなかなか答えない。

そして唐突に、彼は顔を上げた。

「…そうか…そういうことだったのか!

ありがとうコスモス、私も少し違和感があったのだが…

君の話を聞いて、有力な仮説が浮かんだ。状況が落ち着いたら、提督さんとやらたちにも話さねばな」

「分かった、とにかく彼らを護衛して、鎮守府に戻ろう」ーーー

 

ーーー第35鎮守府

千歳を含め、捕えられていた艦娘たちをすぐにドッグへと送り、俺は大本営本部や彼女たちの元いた鎮守府への連絡に追われた。

「はい、はい…じゃあその日に…」

「…という形です、詳しいことは報告書にて…」

中でも一番厄介と思われたのが、千歳の所属していた第15鎮守府との連絡だった。

他の艦娘は失踪から今までの期間がそれほど長くはなかったが、千歳は2ヶ月を超えている。2ヶ月を超して失踪扱いになった艦娘は、所属の鎮守府にある籍が無効になるという規則があるのだ。

ただ見つかった以上、このことはやらなければならない。俺は覚悟を決め、執務室の電話の受話器を取った。

「こちら第35鎮守府です」ーーー

 

ーーー幸い、損傷自体は少なかったため、千歳は氷の磔台による凍傷や低体温症の治療と入渠だけで済んだ。

「…体の方は大丈夫か?まだ慣れていないだろうし、何かあったらすぐに周りの仲間に言ってくれ。あと、服も新しいものに交換しておいた」

「ありがとうございます、長門さん」

ドッグの脱衣場で、長門から受け取った新しい服に袖を通す千歳。しっかりと礼を言い、外の廊下へと向かう。

すると、そこに提督がいた。

「千歳、少し失礼する。

急だが、君の所属について話があるんだ」ーーー

 

ーーー千代田の部屋

座布団に腰掛けながら、千代田は待っていた。尊敬する姉のことを。

しばらく前に、スマホで検査も問題ないという明石からの知らせを受け取ったが、やはり心配だった。と、そこへ…

「千代田、いるか?」

提督の声だ。

「提督?今開けるね」

ドアを開ける千代田。

「どうしたの、提督ーーー」

その瞬間、彼女は驚きの表情を見せた。

 

「助けてくれて本当にありがとう、千代田。あなたの戦っている姿…とても格好よかっあわ」

「千歳お姉!!」

感動のあまり抱きつく千代田。千歳も笑顔のまま抱き返す。

「君に朗報だ、千代田。少し部屋に邪魔するぞ」

やがて全員がちゃぶ台の周りに腰掛ける。

 

「先程、第15鎮守府との話し合いをして、その結果…千歳、君のここへの異動が正式に決まったんだ。あちらの提督さんからも、千歳と千代田を応援している、という励ましをもらった。」

「ってことは…私、お姉と一緒にこれから過ごせるの!?」

「そうよ千代田。改めて、これからよろしくね」

一瞬信じられない、という顔をしていた千代田だが、

「うん…こちらこそよろしくね、お姉!

あと、それと…」

キョトンとする千歳に、千代田は申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。

ずっと、謝りたかったのだ。

「お姉が、行方不明になる前…酷いこと言っちゃって…本当にごめんね」

千歳は少し面食らったような顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、

「大丈夫よ。私こそ、あなたの気持ちを汲みきれなくてごめんなさい。

…あなたが戦っているところ、本当に格好よかったわ。すごく成長したじゃない!」

「お姉…」

千代田もまた、笑顔に戻った。

「ありがとう…!

この提督さんや周りのみんな、それから…あのウルトラマン達が私を支えてくれたの。

だから…私は成長できたんだな、って思う」

なんだか少し照れくさい気持ちになってしまった。

しかし、そんな時に一本の通信が入った。

 

「提督さん?ムサシです。

あなたたちに話したい、重要なことがあります。都合がよければ会議室へお願いします」

ムサシさんか…。重要なこととは?

「…すまない、少し用ができた。

しばらく、姉妹水入らずの会話を楽しんでいてくれ」

「分かったわ。

提督、本当にありがとう」

「ああ。

それから千歳、俺からも、これからよろしくな」

「はい!」

俺は二人にそう言ったあと、会議室へ急いだーーー

 

ーーー会議室

メンバーは、俺に加え、響、レイ、そして長門に大淀、ミライさん。ムサシさんがパソコンとプロジェクターを操作して、スクリーンに映し出す。

「今日の戦いで、分かったことがあってね。

僕は明後日から別の依頼があるし、カオスもジュランに戻らなければならない。

だからこれは、どうしても今話さなければならないんだ。」

ムサシさんはそう言いつつ、パソコンのキーボードを叩き、スクリーンに画像を映し出す。そこには、全身金色の、巨大な天使のようなものが。

「…これは?」

「ああ、カオスヘッダー…つまり、先程のカオスと同じものだよ」

「えっ、コンピューターの中にも入れるんだ…」

「まあ、カオスヘッダーは光のウイルスだからね…だから、試しにコンピューターに侵入してもらったら、こんな感じで上手くいったんだよ」

「コンピューターウイルス…」

若干放心状態の響。多分何が起こっているか分かりきっていないのだろう。

「まあ、ここからの解説はカオスヘッダーに頼もうか」

「よし、分かった。」

スピーカーを通じて、コンピュータ回線上のカオスの声が響く。

「今回私がこれから話すのは…

ズバリ、深海棲艦獣の精神の構造についてだ。」

「奴らの精神構造?」

「ああ。

君たちも見ただろう。コスモスの浄化技は、あのレイキュバスに全く通じなかった。以前、コスモスと敵対関係にあった頃の私は、怪獣に取りついた時何度も技をくらって、ようやくそれに対する抗力…言わば免疫のようなものをつけたんだ。」

「確かに、あの怪獣はコスモスとは初めて戦う怪獣だ。技に対する抗体のようなものがあるとは思えない…」

「でも何故それと、怪獣の精神に関係が…?」

納得する響、そして問題を投げかける大淀。

「うむ、これから少し例え話をしよう。」

カオスヘッダーは画面の右側に動き、手を差し出す。そしてそこには…

「…セーター…?」

何故か画面に映し出されたのは、白いセーターだった。

「このセーターは、『白い羊の毛をそのまま使った』ものだと思ってほしい。そして同時に、普通の怪獣の精神だと仮定してくれ。」

カオスの話が続く。

「白、つまり汚れなき状態は、怪獣は大人しい。そこへ、かつて敵対していたころの私が取りつき、精神を凶暴化させたのが…このような状態だ」

すると、画面のセーターが、インクのようなものを浴びせられ、黒く汚れてしまった。

「かつての私は、このような形式で怪獣を凶暴化させ、その体を借りてコスモスと幾度も戦ったんだ。ここでは、黒=悪意のある心と思ってほしい。

そしてコスモスが、怪獣に対して浄化技を使う…どういうことか、もう分かるな?」

「…そうか、分かったぞ!」

長門が目を見開く。

 

「コスモスの浄化技は、カオスの汚れに対し、それを落として心のセーターを綺麗にする…洗剤や石鹸のようなものか…!」

 

「その通りだ。」

画面のセーターは石鹸の泡に包まれ、再び真っ白な状態に戻る。

「でも…だったら深海棲艦獣は、どのような点が違うんだろう…?」

レイが考え込む。

「…私は通常の怪獣を、『白い羊の毛をそのまま使った』セーターに例えた。それに対し、深海棲艦獣の、いやおそらくはすべての深海棲艦の心は…

 

『黒い羊の毛をそのまま使った黒いセーター』とでも表現すればいいだろうか…?」

 

「…黒い羊の毛を、そのまま…まさか!?」

俺の脳内に閃光が走った。

「確かに…元から黒い毛は、洗剤や石鹸で色を落とすことはできない…!」

「正解だ。これこそが、深海棲艦の精神構造の秘密なのだ。コスモスの技も、改心の余地がなく、根本からの悪には通用しない。」

しかし、そんな中レイが呟く。

「でも…私たちの仲間は、みんなとても優しくて…なのに、なんで…

みんなの心は、カオスヘッダーさんが言っていた、『白いセーター』なはずなのに…」

すると、カオスヘッダーはこう言った。

「それこそが最大の注目すべき点だ。

二つの精神構造を例えたセーター、その毛の元となる羊は全くの別物。

ここは私の推測が入るが…

敵の技術は、洗脳という言葉の定義を超越したところまで行っている可能性が高い。

洗脳、つまり心の中身を書き換えるのではなく…

 

レイ君のような元の生物から、心を抜き取って、そして、元から用意していた百パーセント悪の、別の心と入れ替える…

心そのものを移植するんだ。

あくまでも推測だが、現状これ以外に事の真相を証明できる可能性のある説がないんだ。

敵にとって、確実に作戦を実行するには、何かのきっかけで善の心を取り戻す可能性がある洗脳に比べ、この方法はこれ以上ない効果的な方法なんだ。」

 

「そんな…!!」

絶望的な表情になるレイ。

「もう…みんなは…深海棲艦になってしまった仲間は、元には戻らないのですか…?」

ボロボロと涙をこぼし出すレイ。嗚咽が漏れる中、答えたのはムサシさんだった。

「いや、まだ可能性はある」

「…え?」

「心を入れ替えた、ということは、先程の『白いセーター』の心がまだどこかにあるはずだ。

生き物の心は、決して消滅させることなどできない。敵は必ず、どこかにその心を保管しているはずだ…!」

「その心を取り戻せれば…!」

ミライさんの言葉に頷くムサシさん。

「元の心は、その生物本来の心。きっとそれを取り戻すことが出来れば、レイさんの仲間たちも元に戻るはずだ!」

「しかし、それには敵の正体が分からないと…」

長門が悔しそうに言うが、ムサシさんはこう返した。

「いや、でも今カオスが伝えたこと…それだけでも、敵の正体を探る手がかりにはなる」

「そうですね。少し話を整理しましょう。」

大淀がホワイトボードに書き込んでいく。

「敵は超深海生命体を誘拐、心を移植して完全な悪に仕立てた上で、改造を施し、深海棲艦として地球の海に送っている…ということで間違いないですね?」

「はい。」

「それから…おそらく心の移植技術は、洗脳を基礎とした技術の延長線上の果てにある…敵はおそらく、高い洗脳技術を有しているに違いない」

「なるほど…」

「それからこれまでの事例を見て、敵は宇宙にいて、生命体の身体改造技術も高い…これもまず間違いないね」

「ああ。だいぶ条件的には絞れてきたが…該当するものがあるのか…」

…ん?んん!?

「…どうしたんだい、司令官」

「…いや、なんでもない」

俺は、一瞬浮かんだ考えを自ら否定した。自分の思った勢力は、とっくに滅んだはずなのだ。

 

その後もしばらく議論がかわされたが、正体の特定までには至らなかったーーー

 

ーーー「ムサシさんもカオスヘッダーも、これ以上は厳しそうなので、とりあえず今回はここまでにしておきましょうか。

ここからは我々が敵の正体を探ります。

ムサシさん、そしてカオスヘッダー…本当にありがとうございました。」

俺は彼らにお礼を言った。

「こちらこそ、色々と意見交換が出来て学ぶことができた」

「あとはよろしく頼む」ーーー

 

ーーー翌日 マルハチマルマル

第35鎮守府 航空機発着場

ムサシさんは別の依頼、そしてカオスヘッダーはジュランの守護に復帰すべく今日ここを発つ。

「本当に…ありがとうございました!

お姉や提督、ここのみんなと…これからも一緒に頑張っていきます!」

「その意気だよ千代田さん!僕も応援しているからね!」

ムサシさんは千代田と握手を交わした後、乗ってきたテックスピナーへと再び乗り込んだ。

「みんな、どうかお元気で!」

「ありがとうございましたー!!」

青空の中、一つの機影と一つの光の天使が、空の彼方へと飛んでいったーーー

 

ーーー宇宙空間

「…そういえば、今思ったんだけど…

カオスはなぜあの時、僕たちのピンチが分かったのかい?」

ムサシが、並行するカオスヘッダーに問いかける。

「いや…それが…

声に呼ばれた、としか言いようがないというか…」

「声?」

「ああ。

ジュランのパトロールをしていたら、急に空の彼方から、『お前の大切な者が、地球で危機に陥っている』と聞こえたんだ。

それで、地球に行っていた君を思い出し、駆けつけたというわけだ」

「そうか…

いったいその声は…何者なんだろう…。」ーーー

 

ーーーM78星雲 宇宙警備隊本部

「ゾフィー兄さん、メビウスから敵の正体に関する議論の結果が送られてきました」

「おお、そうかタロウ。」

ウルトラ兄弟を始めとする歴戦の勇士たちが一堂に会し、ミライ=メビウスからのデータを共有し、話し合っていた。

「…これが敵の精神構造…」

「心を移植する技術とは…なんという…!」

「とにかく、これで敵の正体に一歩近づくことが出来るかもしれない。」

「…そういえば、大隊長はどこに行ったんだ?」

大隊長…つまりウルトラの父がここにいない事に、ウルトラマンが気づいた。

「大隊長は、先程別に大切な用事があると、今は席を外している」

「そうか。よほど重要なことなのだろう…。」

そんな中。一人の戦士は、何も言わず考え込んでいた。

 

「まさか…いや、奴らは…だがしかし…」

彼にとって、どこかに引っかかるものがあった。頭の中に、かつて戦った敵の姿が思い浮かぶ。

そしてそれは、第35鎮守府の提督が思い浮かべていた敵と、一致していたのであるーーー

 

ーーーM78星雲 プラズマスパークタワー

「…ベリアルが復活した時と同じだ…やはり異常な反応が強くなっている。」

宇宙警備隊大隊長・ウルトラの父は、目の前のエネルギーを見つめながら呟いた。その時…

「…やはり、そちらの宇宙にも干渉が入っているのでしょう…。

こちらとしては、だいぶ敵の正体が掴めてきましたぞ、ウルトラの父よ」

「それは本当ですか?」

「はい。

まだ確証には至らぬが…我々が戦っているもの、そしてあなた方の宇宙においての地球で、『深海棲艦』などというものを操る存在…

おそらくそれらは同一の存在じゃろう。」

「わかりました。ありがとうございます。」

会話の相手はそこにいない。ウルトラの父は、プラズマスパークタワーにある、光の国の生命線・プラズマスパークエネルギーを応用し、別宇宙のある者と話し合っていたのだ。

「こちらも正体を確実に突き止めたら、また連絡する」

「よろしくお願いします」ーーー




というわけで最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m

励みになるので、評価や感想よければお願いしますm(_ _)m

繰り返しになりますが、感想欄へのネタバレ投稿はご遠慮くださいm(_ _)m

それではまた次回。

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