笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》 作:バスクランサー
今回でこの章は終わり、次回からは本格的に救出作戦に入ります。
それでは本編どうぞ。
ーーー第35鎮守府
鎮守府に設置されていた双眼鏡で、レイは戦いの様子を見ていた。そしてその視界に、倒れ込むウルトラマンガイア、ウルトラマンアグルが入る。
「!!」
レイの脳裏に、先程聞いた言葉がよぎる。
『エネルギーバランスが崩れた今の地球の状況を考えると…そう長くはもたない。満足に戦うことすら、出来ないかもしれないんだ。
いや、それだけならまだいい、最悪エネルギーバランスの崩れの影響をモロに受ければ…俺たちは死ぬかもしれない…。』
いてもたってもいられず、レイは走り出した。階段を駆け下り、地下シェルターに戻る。
「レイ!どうしたんだ慌てて!二人は!?」
しかしそんな長門の言葉をよそに、レイは一直線に大淀に駆け寄る。
「大淀さん!提督さんと通信繋げて!」
「えっ!?」
「いいから急いで!!」
そのあまりにも真剣な様子に、大淀はシェルターに設置されている通信設備を操作する。
「これで…」
「ありがとう!」
するとレイは、マイクをひったくるように取ると、すぐさま叫ぶ。
「提督さん!」
「レイ?どうしたんだ!?」
「高山さんと藤宮さんが、ウルトラマンになって、戦っているんだ!」
「レイ、お前も知っていたのか!?」
「でも…戦う前に二人が言ってたんだ、最悪エネルギーバランスの崩れの影響で、死ぬかもしれないって…!
お願い!二人を…二人を助けて!!」
「分かった!あとは任せろ!」ーーー
ーーー洋上
レイからの通信により、今二人に何が起きているのかを知ることが出来た。そして、上空から二人の姿を見る。
「高山さん、藤宮さん…いや、ガイアとアグル…」
双子怪獣は再びギラススピンを始め、再び相手の一方的展開と化している。光線や砲弾が、容赦なく二人に直撃していく。発生する暴風が艦娘たちを阻んでいる。そしてついに、二人の胸、ライフゲージが青から赤に変わり、警告音とともに点滅を始めた。
「うぉぉぉおおおお!!!」
気付けば、自分はスカイマスケッティを急上昇させていた。上空で急旋回、機首を真下に向け、ギラススピンの中心部へとミサイルを放つ。
はるか下、爆発が起き、双子怪獣が引き離される。
「みんな、よく聞いてくれ!」
俺はマイクに叫ぶ。
「今…ガイアとアグルは、地球のエネルギーバランスの乱れのせいで、命を落とすかもしれない、そんな状況の中で必死に戦っている…。
彼らを全力で援護するんだ!彼らの思いに応え、全員で守りきろう!」
了解!!!!
マイクの向こうから、決意に満ち溢れたその声がいくつも返ってきた。
「行動開始だ!」
「駆逐艦、軽巡及び雷巡の者は機動力を生かして奴らの動きを封じるんだ!」
「はい!
魚雷一斉発射、行きます!」
大井の号令とともに、双子怪獣それぞれを取り囲んだ彼女たち。何十もの魚雷による攻撃が襲いかかる。足元に大きなダメージを喰らい、たじろぐ双子怪獣。だが、そんな中でもその砲台を、ウルトラマンたちの方へと向けた。
「重巡!二人を守るんだ!」
「了解!弾幕斉射、開始!」
答えた足柄をはじめとし、巨大な敵の強力な攻撃を完璧に見切り、的確に弾幕を張って全てを相殺していく。
「戦艦と空母!敵の艤装を集中攻撃だ!」
「分かりました!全力で参ります!」
榛名を先頭に、一気に間合いを詰める戦艦たち。
「皆さんを援護して!艦載機の皆さん、やっちゃってください!」
千歳たちによるXIGファイターの援護射撃とともに、強烈な砲撃が次々と命中していき、艤装の一部が破壊される。
「ナンナンダ、コイツラ…!」
「サッキヨリ、強クナッテイルダト…!?」
双子怪獣も恐れ始めるほど、確かに艦娘たちの動きが良くなっていた。
「ギリギリまで踏ん張るっ!」
「大切なものを、守るために!」
「最後の力が、枯れるまで!」
「ここから、一歩も、下がらないっ!」
戦局は完全にこちらに傾いていた。しかし、双子怪獣もどこまでも食い下がる。
「オノレ、調子ニ乗ルナア!」
「今度コソ、全テ破壊シツクシテヤル!!」
まずい!双子怪獣の角にエネルギーが溜まっていく。津波発生光線を撃つつもりだ!
「「終ワリダァァァァ!!」ーーー
「そうはっ!!」「させるかぁ!!」
ーーー二つの影が宙を舞い、双子怪獣に飛びかかる。
ウルトラマンガイアとウルトラマンアグルだ!!
「「グオオッ!?」」
勢いのままに押し倒され、津波発生光線はまたしても不発に終わる。頷く二人を見て、提督は咄嗟に指示を出す。
「今だ!奴らの頭頂部の角を破壊しろ!」
抑え込まれた双子怪獣に、艦娘たちが総攻撃!爆煙が晴れた時、その角は完全に崩れ去っていた。
「何故ダ…何故屈サナイ…!」
「ウルトラマンドモメ、貴様ラニハモウ戦ウ力ナドモウ残ッテイナイハズダ…!」
なんとかガイアとアグルを振り払った双子怪獣の問に、二人はこう答えた。
「守りたいものがある限り!」
「何度倒れようとも、俺たちはその度に強くなり、立ち上がることが出来る!」
「「ホザケェェェ!!」」
猪突猛進とはこのことか、感情に任せて突っ込んでくる双子怪獣。
「ガイア、変身だ!」
「おう!」
ガイアは天に両腕を突き上げ、胸に下ろすと同時にそれを勢いよく左右に広げた。エネルギーが全身を包み、そして両腕が下ろされた時、ガイアの姿は、赤が増し、さらに黒、青の入った、より神々しいものへと変化した。
これこそウルトラマンガイアの最強形態・スプリームヴァージョンだ!
「デュワッッ!!」
ガイアはアグルとタイミングを合わせ、突進してくる怪獣を、二人で軽々と受け止めた!
そのまま、ガイアは受け止めたレッドギラスを連続で投げ始める。首を掴み勢いよく前に投げたと思えば、即座に背部の角を掴んで後ろに強引に投げ倒す。さらには倒れたレッドギラスを高々と持ち上げ、海面に投げ落とす。パワー抜群の投げ技の連続に、もうレッドギラスはボロボロだ。
一方アグルも、右手に発生させた光の剣・アグルセイバーを使い、鋭い突き攻撃でブラックギラスを翻弄する。洗練された動きで相手に反撃の隙を一切与えず、次々と攻撃を決めていくさまは、まさに『蝶のように舞い、蜂のように刺す』という言葉を体現したかのようだ。
もちろん二人には、バランスの崩れによるダメージが絶えずのしかかっている。しかし今、戦っている彼らは、艦娘たちや提督の援護、さらには、
「頑張れ!ウルトラマン!」
「負けるな!ウルトラマン!」
鎮守府のシェルターの艦娘たちや、町の避難所に避難していた住民たちの声援。これら全てが、彼らを支えていた。その支えを受けた彼らは、まさしく無敵の地球の勇士。どんな敵にも、決して負けないのだ!
「「グァァァァァァァァ!」」
ギラススピンで最後の抵抗を試みる双子怪獣。しかし、提督のスカイマスケッティが即座に行動に出た!
「させるかっ!照明弾、発射!!」
近づく二体のちょうど中央で照明弾が炸裂。目を潰された双子怪獣の動きが止まった!
今だ!!ウルトラマン!!
皆のその思いを一瞬で感じ取り、ガイアとアグルは並び、前に怪獣を見据える。
その体にエネルギーを巡らせて放つは、ガイア最強の光線・フォトンストリーム、アグル最強の光線・アグルストリーム!
そして二つの光線は交じりあって一筋の強烈な光となる!
見よ!必殺の合体技・バーストストリームを!!
「「グワァァァァァァァァァァァ!!!」」
光線が双子怪獣をまとめて貫く。そして次の瞬間、二つの断末魔を残して、その体は木っ端微塵に爆発したのであったーーー
ーーー第35鎮守府
勝利を手に収めた艦娘たちが、提督とともに帰還してくる。そして皆を守るように、二人のウルトラマンもその後を飛んでくる。
「皆さん!おかえりなさい!」
レイを筆頭に、避難していた鎮守府のメンバーが寄ってくる。勝利を共に分かち、喜び合っている。そしてその輪の中に…
「みんな」
「お疲れ様。そして、ありがとう」
我夢と藤宮が、入ってきた。
「君たちの支えがあったから、僕達は最後まで戦えた。」
「この勝利も、みんなで掴み取ったものだな。本当にありがとう。」
艦娘たちから巻き起こる拍手。レイが二人に駆け寄る。
「帰ってきてくれて…よかった…!」
「当たり前さ。約束しただろう?」
涙目のまま抱きついてきたレイを、藤宮は優しくなでる。
「もう僕達は…ウルトラマンとして戦うことは出来ない。それでも、今の自分に出来ることを、最大限やっていくつもりだよ」
「そうすれば、いつの日かきっとまた、光になれる。
まだまだレイの件も終わっていない。また、頼めるな?」
「はい!これからもよろしくお願いします!!」ーーー
ーーー翌日
俺たちは再び、特異点へと足を運んだ。実験機材を並べ、装置を調節する高山さんと藤宮さん。明石と夕張が手伝う。
「前回のデータからして、これなら行けるかもしれない」
「やってみます」
目を閉じ、レイが意識を集中させる。俺が、響が、長門が、明石が、夕張が、そして高山さんと藤宮さんが。
全員が固唾を飲んで見つめる中、レイの表情が一瞬変わった。口角が僅かながらもしっかりと上がり、口も若干開いたように見えた。
そして、その数分後。
「皆さん、ありがとうございます…!仲間たちとコミュニケーションが取れました!!」
満面の笑み、はつらつとした声で成果を報告するレイ。
「よし!やった!」
「よく頑張ったな!!」
「これで、一歩前進です!」
「すごい!奇跡みたいです!」
高山さんと藤宮さんも、レイの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「君の思いが通じたんだ!」
「おめでとう、やったじゃないか!」
「はい!ありがとうございます!」
「ああ!
…それで、どんなことを話したのかい?」
高山さんの問に、レイが再び思いつめた表情になる。
「確かに、仲間は生き残って、ちゃんとコミュニケーションも取れましたが…もう、数がどんどん少なくなって…連絡のつく仲間は、千人を下回ったそうです…本来は、二、三十万人はいたんですが…」
「減少ペースは尋常じゃないな。地球が新しい超深海生命体を生み出したそばから誘拐していっているのか…」
「いずれにせよ、これからが本当のスタートだ。ですね、提督さん」
藤宮さんの言葉に、俺は大きく頷いた。
「これより、超深海生命体救出作戦を本格的に始動する。
皆、協力をよろしく頼む!」ーーー
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
評価や感想など貰えると嬉しいです、よろしくお願いしますm(_ _)m
また次回をお楽しみに!