笑顔は太陽のごとく…《決戦の海・ウルトラの光編》 作:バスクランサー
なぜか「那珂型軽巡洋艦」って出てきて軽くパニック。
解せぬ。
本編どうぞ。
ーーー翌日
「那珂…?いるか?」
俺は那珂の部屋のドアをノックした。すぐに応答はない。だけど、2回目を叩く前、少しだけ待ってみる。すると…
「提…督?」
中から彼女の声が。しばらくしてドアが開き、彼女の声がする。
「どうしたの…?」
いざとなると、少し罪悪感も覚える。が、ここはやってみるしかない。
「那珂…少し、散歩しに行かないか?」ーーー
ーーー「散歩って、どこに?」
「さあな。まあ、適当に進んでいくだけでも、十分に散歩ではあるからなぁ」
俺はこの日、響や大淀に執務を頼み、那珂を連れて散歩することにした。
俺たち2人は正面玄関を出て、町へ通じる森の小道に入っていく。やはり通常時でも恐怖は抜けきっていないのか、さっきから那珂はずっと俺の左腕にしがみついている。
「こっち、行ってみるか」
俺はできるだけ自然を装って、海に近づく道を辿っていく。が、少しづつ近づいていくにつれ、彼女の足取りが重くなっていくのが伝わってきた。そして、ある十字路で曲がろうとした時、俺の左腕は強く引っ張られた。
那珂が止まって、俺のことを引き止めていた。
「ごめんね、提督…。
多分、川内お姉ちゃんと神通お姉ちゃんから聞いてると思うけど…」
「そうか…すまなかった」
「別に、謝ることないよ、これは那珂ちゃんのせいだもん…」
「那珂…」
「私だって、このままじゃダメなのはわかってるけど…その…海の方は、今もやっぱり無理かな…」
「…わかった。じゃあ代わりに、商店街の方に行って、なんか食べようか」
「ありがとね、提督…」
俺は那珂を連れて道を引き返し、結局今日の散歩はお開きとなった。しかし、多少那珂との距離は縮められた…と信じたい。
その後も、俺は那珂を連れて時々散歩に行った。
「今日は…少し、海の方…行ってみようかな…」
そう言ってくれる日も、だんだんと増えてきた。しかし、その時はいつも、海とは反対側の俺の腕に強くしがみつき、海の方向さえ滅多に向こうとしなかった。
うーむ、このままだと何も変わらない…。俺は鎮守府に戻ってからも、その事について考えた。と、
「提督?入っていい?」
この声は…川内か。俺は許可を出し、彼女を中に入れた。と、さらに…
「失礼致します」
お、神通も一緒か。
「あの…あまりこのようなことを聞くのも気が引けるのですが…那珂ちゃんの方は、どのような様子ですか?」
おずおずと聞いてくる神通。俺は今の現状を全て話した。
「そっか…色々ごめんね。」
「いや、謝るのはこっちだ。もう少し進めればいいんだがな…」
「ありがとうございます。提督、よければ私たちも、今度散歩に一緒に行っていいですか?」
「暇な時とかはどんどん呼んでよ!」
「いいのか?正直助かるよ神通、川内。姉妹艦の君たちがいれば、那珂の気も少しは楽になるかもな。」
すると川内が思いがけず、こんなことを言った。
「あ、そうだ!もう1人、協力してくれるって娘がいるんだ!」
「ん?」
「入ってきてー!」
すると、執務室の中に入ってきたのは…
「こんにちはー!軽巡、阿賀野でーす!きらりーん!」
「阿賀野さん?あなたも協力してくれるのかい?」
響の問に、阿賀野はもちろん、と答えてくれた。
「私も、史実で那珂ちゃんと関わりはあるからさ、少しでも助けられたらなぁ、って思って!提督さん、どうかな?」
「もちろんだ。ありがとうな、阿賀野。君も頼りにさせてもらうよ」
「やったー!」
こうして3人の心強い協力者が加わってくれた。本当に有難い。
そして次の日、俺はその3人を連れて、那珂との散歩に出かけたーーー
「またお留守番…ぶぅー…」
「まあまあ響ちゃん、どぉどぉ」
…響にもなんかお土産買ってこ。俺は執務室を出た直後に聞こえた会話を聞いてそう思った。
そして散歩の方はと言うと。
今日も歩くは海沿いの道。だが、那珂のリアクションはいつも通りだ。ずっと海から目を背け、腕にしがみついている。
後ろを歩く川内、神通、阿賀野の3人も、やはり実際この様子を見て、かなり驚いているようだ。しかし、
「ねえねえ、那珂ちゃん」
阿賀野が突然、那珂の手を取った。
「あ…阿賀野ちゃん?」
阿賀野はちょっとだけ俺の顔を見上げた。「ここは私に任せて」、そう言っているかのように。俺は頷きで返した。すると阿賀野は…
「ちょっとこっち来て!」
いきなり那珂を引っ張って、堤防の階段を降り、砂浜へと連れていった。って、いきなりはやばいんじゃ…
「ちょっと、阿賀野ちゃん!?待って!やっ、そっちはやだ!」
「いいからいいから!」
俺は川内、神通を連れて砂浜へ。那珂は阿賀野の腕にしがみついている。
「やだよ…那珂ちゃん、怖いよ…」
「大丈夫大丈夫。阿賀野や提督さん、それにお姉ちゃんたちがついてるから、ね?」
そう言うと、阿賀野はその砂浜に腰を下ろした。俺たちも那珂の近くに座っていく。
「大丈夫。今、海がすごく綺麗なんだよ、那珂ちゃん」
「海が…綺麗?」
「うん。だから、ちょっとだけ。見てみようよ」
阿賀野の言葉を受け、那珂は少しだけ顔を上げる。その目の前には…どこまでも広がる、スカイブルーの海。
「わぁ……」
「那珂ちゃんの経験したこと、川内ちゃんや神通ちゃんから私も聞いた。…きっと、すごく辛かったよね」
「うん…」
「…だから、那珂ちゃんに一つ。
これから海に行く時や、怖いなーって思った時は…」
そう言うと、阿賀野は那珂の手を優しく握った。
「阿賀野ちゃん?」
「ここに私がいる、そう思って」
阿賀野はニコリと微笑んだ。
「ほら、提督さん!川内ちゃんに神通ちゃんも!」
手招きをする阿賀野。そうだな、ここはそうするか。
「那珂」
「提督…」
「「那珂ちゃん」」
「川内お姉ちゃん、神通お姉ちゃん…」
「俺達もいつもついてる。な?」
「離れていても、一緒だからね!」
「私もです、那珂ちゃん」
3人でもう片方の手を握る。
「みんな…ありがとう!」
那珂はこの鎮守府に来て、初めて満開の笑顔を見せてくれた。
「提督…遅くなっちゃったけど…これからは、少しづつ海に出てみようかな」
「那珂…!」
「それとさ…また、みんなでこの砂浜に散歩行こうね!」
「「「うん!」」」
こうして、仲間達との触れ合いで、那珂は心に光を取り戻したーーー
ーーー誰もがそう、その時は思った。
しかし、実際にはまだ、心の傷は完全に癒えていなかった。
それが分かったのは、この日から10日ほど後。
それまでリハビリとして、海沿いの散歩や、鎮守府の海上演習場を軽く航行するなどしていた。そしてその日、那珂はこう言ってきた。
「提督…そろそろ那珂ちゃん、遠征くらいには行ってみたいな」
きっと、彼女が考え抜いて出した事だろう、そう考えて俺は、その日の遠征艦隊に那珂を組み込んだ。
だが、遠征の最中、レーダーに敵影が映った時に、那珂は軽くパニックを起こしてしまった。那珂はその時、必死に阿賀野の言葉を思い出して落ち着こうとしていたのだが、さらにそこへ敵の偵察と思われる機体が数機、目視確認された時…彼女の心は限界を超えてしまった。
念のため第二艦隊を急遽編成、襲撃を受けることなく全員が無事に帰還したが…
「えぐっ…提督…ごめんなさい…那珂ちゃん…限界だった…」
「いや、謝ることは無いさ。よしよし…」
再び元の状況に、逆戻りしてしまった。俺は那珂を慰めつつ…またどうしようかを考え始めた。
しかし。
一見困難に見えたその課題に…一筋の光が差すまで、そう時間はかからなかった。
きっかけは、ある日大本営に所用があった時の鎮守府への帰りだったーーー
ーーー帰りのジオアトス 車内
「やばいな…」
「どうしたんだい、司令官」
「今日暑かったし、エアコンとか使ったろ?それに最近スカイマスケッティを使う機会も多かった。」
「つまり?」
「…車の充電が厳しいな…だいぶ鎮守府に近づいてはいるが、休憩も兼ねてどこかのスタンドに寄らないとだな…」
そこで、俺はちょうど近くにあった、電気自動車用の急速充電スタンドもある、某ほっと、もっと、きっとのガソリンスタンドに入った。
「いらっしゃいませ!」
気持ちのいい挨拶をしてくれる。
「急速充電ですね、こちらへどうぞ!」
専用スペースに案内され、俺たちは充電を待つことにした。すると、先程案内してくれた店員の青年が話しかけてきた。
「あの…〇〇さんって、知ってますか?」
…俺の祖父の名前だ。
「…私の祖父の名前ですが。祖父を、ご存知なのですか?」
「祖父…ということはお孫さんでしたか!すみません、昔お世話になって、その人に面影が似ていたもので、つい…」
「いえいえ。そういえば、どのような経緯で、祖父のことを?」
すると青年は、
「その制服…鎮守府の提督さん、ですよね」
「はい」
「ならいいかな…僕は昔、防衛チームに務めていたことがあるんです。」
「そうでしたか!それで、その…そのチームは?」
「えーと…
Mydoって、ご存知ですか?」
照れ笑いしながら訪ねてくる店員。その胸にかかっていた名札を見て、俺は「この人は頼れるかもしれない」と感じられた。
その名札には、
「店長:朝日 勝人」
の文字がーーー
というわけで今回も読んでいただきありがとうございました!
感想や評価、よければお願いしますm(_ _)m
ではまた次回!