・深刻なトータル・イクリプスのネタバレがあります。
・アニメ版・小説版
・トータル・イクリプス(PS3 or PC版)をやっていないと意味不明かも知れませんが仕様です。
・以上のことが許容できない方は次の話に移動してください。
異世界への道(マブラヴ編)
不知火・弐型を生かすために
ソ連内部の権力闘争の結果、謀殺されそうになっていたラトロア中佐は俺と同様にバラキン司令に匿われていた。そしてそんな中佐と俺はバラキン司令に呼び出され、ある『お願い』をされた。
この『お願い』というのが意外と厄介なのだ。バラキン司令に匿われてはいても指揮権や不知火・弐型に関する権利をバラキン司令は建前上、持っていない。しかし、当然の事だが、このソ連の地でイーニァと不知火を守りながら生きていけるのはバラキン司令の思惑による所が非常に大きい。サンダーク大尉を始めとした中央戦略開発軍団の陰謀の証人であり証拠でもある俺達は存在するだけでバラキン司令の手札になる、とは言えその立場は弱い。
バラキン司令はそんな状況で意外な事に不知火のデータを積極的に取る事をしていない。仮にも西側製のステルス機であるにも関わらず、だ。もちろん裏ではこっそりとデータの収集をしているのだろうが、そんなコソコソしなくとも堂々とデータを集める事も簡単な状況の筈なのだ。要するに俺達の扱いは十分以上に『配慮』されていると言って良い。
そんな関係が見えている中、バラキン司令が『お願い』してきたのだ。これは実質的に断ることのできない命令に等しい。その上、大きなリスクも予想されていないとなれば受ける以外の選択肢はなかった。ただどうにも俺は嫌な予感がしてならなかった。
任務の内容は単純な物だ。とある研究施設を襲撃し、そこに保管されている重要物資を強奪する。これだけだ。作戦の内容も敵の戦力も問題ない。唯一問題があるとすればその重要物資の内容だ。
G弾の試作品
G弾、即ちアメリカ秘蔵の兵器、その圧倒的な威力は横浜で実証されている。そして、そのソ連による試作品がその研究所には存在するというのだ。これはある意味当然とも言えるだろう。核と同じ様に片方だけが超兵器を持っていることを持たざるものは許容できない。
先日、『何者か』による襲撃によりソ連のG弾研究所は壊滅したのだが、実はその研究所には中央にも知らせていない独自の研究を行っていた一派が居たようなのだ。そしてその一派が一部のG元素を所持しており、それを元に独自のG弾を研究していたのだ。既に研究を行っていた研究者自体は中央に「保護」されているらしいのだが、その試作品を分裂した過激派が持ち逃げしているという。そしてそのG弾確保のため中央の部隊が向かっている、というのが現在の状況らしい。
そこでバラキン司令はこれを極秘裏に確保することでより優位な立場に立つことを目論んでいるようだ。そのために
唯一安心できる要素と言えば作戦の指揮をラトロア中佐が執っている事だろう。とは言え実際に戦闘を行うのはステルスの俺と突入する特殊部隊のみで、ラトロア中佐の部隊は不測の事態に備えて気づかれないように後方に待機しているだけなのだが。
ラトロア中佐の部隊をバックアップに残し、単機で目的地に接近する。敵の戦術機は一機のみ、まだこちらに気づいていない。素早く照準し120mmで狙撃する。
命中、敵機が二つに分解し崩れ落ちる。
苦戦するどころか気付かれる前に一撃で終了した。アクティブ・ステルスの力は絶大だった。
「ゆうや、かんたんだったね」
コ・パイロットとして後部座席に座っているイーニァがつまらなそうにそう言ってくる。
「そうだな、まぁ、楽な分には問題ないだろ。っと、こちらアルゴス1、敵機を無力化した。突入準備完了だ」
敵機の無力化をこの作戦を指揮しているラトロア中佐へ報告する。
「こちらプラーミァ1、アルゴス1突入準備完了、了解した。そのまま歩兵共の露払いもしてやれ、楽な任務なんだろ?少しは働いてこい」
「あいよ、アルゴス1了解、じゃあ、行ってくるぜ」
ラトロア中佐からの命令通りに特殊部隊の突入の露払いとして研究所に突入する。研究所と言っても戦術機のハンガーのような倉庫に機材を詰め込んだだけの簡易な物だ。周りに装甲車が一台あった程度で反撃すらろくにない。敵勢力の無力化を確認した後、正面のゲートを長刀で破壊し、内部を確認する。
内部からの反撃は、ない。研究者らしき人員が逃げ出しているのが確認できる程度だ。彼等は突入部隊が捕縛するなりなんなりしてくれるだろう。
「やれやれ、これで終了だな」
突入部隊が後方から近づいてくるのがセンサーで確認し、そう呟く。どうにか何事もなく終わるようだ。そう気を緩めかけた時の事だった。イーニァが警告を発する。
「ゆうや!あのひと!すごいいやなかんじがする!」
「!?ッツ、どいつだ!」
イーニァが示す方向には一人の研究者がコンソールを操作しているのが確認できる。そのコンソールは中央に置かれている球形の何かに接続されている事を確認した段階で俺は36mmを研究者に向け発砲する。本来人に向けるような火力ではない36mmは直撃を受け、研究者のみならず周辺にあったコンソールを始めとする機械類がなぎ払われる。
遅かったのか?それとも周辺機器の破壊がトリガーになったのか?中央に置かれていた球形の何か――おそらくはG弾の試作品――が名状しがたい状態へと変化を始める。周辺がまるで空間自体が湾曲しているかのようにグネグネと形を変える。その歪みが拡大し始める。
「プラーミァ1!G弾起爆!即時撤退する!」
そう言うのが早いか即座に跳躍ユニットを起動し退避行動へと移る。いつもなら頼りになる不知火・弐型の加速性能が今日に限って遅く感じる。迫る空間に向け背を向けたまま補助腕を使い36mmと120mmを斉射する。が、歯牙にも掛けずに空間は膨張を続ける。
「ゆうや!」
イーニァの焦った声に反応する余裕もなく必死で機体を飛ばすが、呆気無く膨張を続ける空間に飲み込まれてしまう。ユウヤ達を飲み込んだ空間はしばしその勢力を広げた後、急速に消滅する。その後には半球状の抉れた大地が残るのみだった。