装甲悪鬼村正 トータル・イクリプス   作:Flagile

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足利茶々丸

 景明達と朝食を食べる。いつも職人の技を感じるが今日は殊更だ。どうもいつもより気合が入っているように感じる。と言っても露骨なご馳走という訳ではない。いつもより一品多く、いつもより一手間掛ける、そんな感じだ。茶々丸の客人を格式張らず自然にもてなそうという意図が感じられる。

 

「だからさ、あてとしては言いたいわけよ。鯨獲るな鯨獲るなって最近にわかに喧しい白人ども、そもそも鯨の数を激減させたのはてめーらじゃねえかってな」

 

 鯨料理の話から流れて捕鯨問題へと話題が移り茶々丸の弁舌は止まらないどころか加速していた。日系アメリカ人の俺としてはどう反応していいか困る話題だった。

 

「大和の捕鯨は生態系まで破壊してねぇ。大量に獲れるほど船も捕鯨技術も発達してなかったし、一頭穫れば村が半年遊べるってくらい有効活用してたし」

「そうなのか?鯨はどんな風に使えるんだ?」

「肉はもちろん食べるし、ヒゲは人形浄瑠璃を始めとする伝統芸能で使用して、骨も根付けなんかに加工してたんだよ。――で、そもそも狭い島国のこったから需要がそんなになかった。需要があったのは――世界中の海で獲りに獲ってそれでも足りなかったのは、光源にするんで鯨油が幾らでも必要だったてめーらだろうがぁ!片脚船長(エイハブ)どもの乱獲が鯨を滅ぼしかけてんだよっ!!」

 

 どうにか話題を穏当な方向に持っていこうとしたのだが失敗に終わったようだ。机をバンバンと叩いて茶々丸はさらにヒートアップしている。景明も困っているのか黙って鯨の佃煮を食べている。

 

「いや、ちょっと待て確か大和も鯨油とか農薬にするために乱獲してたんじゃなかったか?」

「そうだけどさ……歴史が違うよ!歴史が。それに何だオイ。光源需要がなくなった途端、エコロジーに目覚めやがって。絶滅の危機だから保護しましょうだー?それが自分らの責任を認めて反省するって態度ならまぁ、聞く耳もあるけどさ。あいつら反省なんてカケラもしてねーじゃねえかっ!てめーの過去は棚に上げて、今のあてらの捕鯨だけ問題にしてぎゃーすか非難しやがる。NA・ME・N・NA!!」

「…………」

 

 どうやら何を言っても無駄なようだ。鯨の叩きに箸を伸ばしている景明と同じように大人しく鯨料理に舌鼓を打つのが正解のような気がしてきた。

 

「近頃は連中、鯨は頭のいい動物だから殺すのは野蛮だなんて妙なことまで言ってんな。アホか。じゃあその鯨の知能を解析して、コミュニケーション取ってこう言ってみろ、私はあなたの味方ですってな。賭けてもいいけど、クジラ君はツッコミの衝動を抑えられないと思うぜ」

「……確かに、妙な主張ではあります。知能が高いから殺すなというのは」

 

 一通り食事に手を付けた景明が会話に参加する。

 

「牛や豚は馬鹿だから食ってもいいけど鯨は賢いからだめだってんだからな。何言ってんのかわかんねー」

「文化の違いから来る思想の違いというものでしょうか」

「突き詰めると、人種差別思想が起因かな。白人的には、優秀な生物はそうでない生物よりも上等って考えは、侵略の歴史を支えてきた馴染み深い正義なんだろ」

「……成程」

「正義っていうか、どっちかって言うと宗教だな。奴等にとって|WASP《ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント》以外は人間じゃねえし、神が許せば何でもありだ」

 

 黙っているつもりだったが、思うところがありすぎる話題につい吐き捨てるように言う。

 

「なるほど、宗教、ね。ふん、馬鹿くせぇってーの。あては神なんかに縋らないし差別なんかしないもんね。牛も豚も鯨も平等に食う」

「……ユウヤさんはハーフなのですか?」

「ああ、日……大和系アメリカ人だ」

「そうなのですか、私もクォーターです」

「あ、そうなんだお兄さんもクォーターなんだ」

 

 どうやら茶々丸の興味は鯨から景明に移ったらしい。茶々丸の言葉に一つ頷くと、景明は箸を置いて、居住まいを正した。鯨の話題も一通り終わり頃合い良しと見たのだろう。

 

「あれ、もういいの?」

「は。充分に頂きました。……本題へ入りたく思うのですが、宜しいでしょうか」

「?なに?」

 

 茶々丸が分かっているくせに惚ける。ここまで景明はほとんど疑問を発していない。状況を見極めていたのだろう。そしてその見極めが終わった。もしくはこれ以上は無駄と判断したのだろう。自然とこちらも背筋が伸びる。

 

「銀星号は、今――ここにいるのですね?」

「今?いないよ」

 

 景明が固まる。景明は最初の一歩で盛大に躓いてしまったようだ。結局これで朝食は終わりになった。そして、庭が見える縁側に移動する。すぐに女中さんが熱い茶を用意してくれる。

 

「お茶どうぞー」

「……有難うございます」

「ああ、ありがとう」

 

 茶々丸と景明、そして自分の三人が縁側に並んで熱い煎茶を啜る。いつも通りとても美味い。元の世界ではもっぱらコーヒーばかりだったがこれもまた良い物だ。ちなみに支給される軍のコーヒーは劇的に不味かった。

 

「今日は雲が張っててだめだな」

「?」

「あっちの空。富士山がよく見えない」

「……あぁ。この北向きの庭は、富士を楽しむ仕立てでしたか」

「そっ」

 

 そう言われてみると晴れた日には綺麗な富士山が見えたような気がする。そんな心の余裕がなかったからじっくりと見たことがない。見えない富士をじっと見る。

 

「この辺りからだと、富士山のどてっぱらに開いたでっかい穴がちゃんと見えて面白いんだよ」

「そうですか……。して閣下」

 

 景明が気を取り直したのか再び茶々丸に挑むようだ。おそらく景明が知りたいことと俺が知りたいことはほぼ同じの筈だ。ならばここは景明が追求するに任せよう。

 

「あて?」

「はい」

「そんな他人行儀な呼び方をしなくても」

「他人です」

「クール……」

 

他人と言い切られて茶々丸がしょんぼりしている。茶々丸の方は以前から知っていたようだが、景明からすれば今日あったばかりだ。その態度もむべなるかなと言ったところか。とは言え告白まがいの事をされているのだ。もう少し意識しても良いと思うのだが……いや、それで距離感を測りかねているのか?

 

「お伺いしますが。何ゆえ、自分を伊豆まで連れてこられたのです?」

「鎌倉にいたら面倒なことになるからね。あて、東都防衛警備の月番だったもんでさ。八幡宮の事件はあての不手際だって言えばそう言えるわけで。雷蝶あたりから責任追及される前に、先手を打って本拠地に自主謹慎したのよ」

 

 茶々丸は答えたくないのかわざとピントをずらした回答をする。もちろんそれは景明にも分かったのだろう。さらに斬り込んでくる。

 

「閣下にお尋ねしたかったのは、自分の身柄をわざわざ回収された件についてです」

「あそこにほったらかしといたらまずいやん。お兄さん、事件の主犯に仕立て上げられて処刑よ?」

「しかしそれは、自分の都合に過ぎません」

「あての都合でもあるんだなァ」

「……どういう事でしょうか?」

「お茶うめぇー」

 

 露骨に惚ける。ここまで露骨だと答える気がなさすぎて追求する意味を感じない。その事は景明も分かったのだろう。切り口を変える。

 

「…………。では閣下の御都合に照らした場合、自分の身は今後どのように扱われるのでしょう」

「特に考えてないけど。お兄さん次第」

「……?自分の好きにして構わないと?」

 

 景明が困惑したように問い返す。

 

「もちろん。あては男を縛って食い物にするタイプではなく、陰から尽くすタイプなのです。邪魔はしないけど必要なことは何でもしてくれる女。当然処女。でも床上手だったり。……うわーなんて都合がいいんでしょう。色男は得だねーこのー」

「…………。鎌倉に戻ろうかと考えているのですが」

「そりゃさみしぃ……。あてはまだしばらく戻れないしなー。でもお兄さんがそうしたいなら仕方ないね。列車の手配しようか?船でちんたら行くよりいいでしょ」

「…………」

 

 茶々丸の真意が図れず景明が沈黙する。これはそろそろ俺も加勢した方が良さそうだ。少なくともなぜ銀星号に協力しているのかは知りたい。何となく答えが分かっているが、それでも、だ。そう思い口を開こうとした矢先だった。

 

「おや?」

「……何か?」

「しばらく現れないと思ってたんだけどな。お兄さんが起きたせいかな?」

「?」

「良かったね。待ち人来たれり。落ち着いた場所で向き合うのって久しぶりなんじゃない?」

 

 そう言って、茶々丸は廊下の先を指し示す。廊下の奥から一人の少女が悠然と歩んでくる。遠目に何度か見たことがある。長庚の局とか呼ばれていた少女だ。

 

「――――」

「光ッッ!!」

 

 悠然と現れた少女に向かって景明が駆ける。そのままどうしようとしたのだろうか、それが分かる前に少女が動く。流麗な動きで景明の勢いをそのままに、しかし優しく投げる。望遠で見ていたからどうにか見えたが恐ろしい早業だった。……景明は今確かに光と呼んでいた。この少女が銀星号の中身……?

 

「……景明……。そう熱烈に求められるのは、悪い気分ではないというか、光としても本望なのだがな。TCOはわきまえてくれ」

「……資産保有費用(TCO)……?」

「御姫、時と場所と場合(TPO)です」

「――TPOはわきまえるように。まだ朝方、ここは縁側、光は起き抜けだ。そして、親しき仲にも礼儀あり。まずは朝の挨拶からだ。おはよう、景明」

「…………お早う」

「おはよー、御姫」

 

 間違いないようだ。茶々丸が『御姫』と呼んでいる。コイツが銀の魔王、白銀の悪魔、殺戮者、銀星号だ。

 

「うむおはよう。今日は青空が見えるな。いい気分だ」

「光……」

「何だ?」

 

 ようやく景明が立ち上がる。再び襲いかかる事は――なかった。どうやらこの場は話し合いでどうにかなるらしい。俺も会話に混ざろうとするが、その機先を制して茶々丸が邪魔してくる。

 

「景明?」

「いや……」

「お前は……ずっとここに……堀越公方のもとにいたのか?」

「そうだな。故郷を離れてからこれまで、おおむねこの館を足場にしている」

「何故だ」

「なぜ?……ふむ。訊かれてみれば、格別の理由はない。故郷を出た後、真っ直ぐ進んでいたらここへ行き着いたというだけの話だな別にほかの場所へ移っても構わない――」

 

 そう光が言った時の事だった。茶々丸が泣きながら光を引き止めるように抱きつく。

 

「御姫ーっ!」

「――構わないのだが、嫌がるやつがいる。これが理由といえば理由か」

「引き止められているから……?それだけなのか」

「人から好意を向けられるのは嬉しいものだ。無闇にはねつけるのも気が引ける。光の目的の障害になるなら別だが、そうでなければ意に沿ってやっても構わん。それに伊豆は水も空気も良いしな。居心地はなかなかだ」

「姫ありがとーっ」

 

 驚いた。茶々丸と銀星号の関係だが、どう見ても銀星号の側が主導権を持っている。

 

「…………。閣下」

「うに」

「貴方は如何なる所以から、光の滞在を望まれるのですか」

「さっきも言ったけど恩人なんだよね」

「恩人……?」

「そうなのか」

 

 助けた当事者である筈の光が茶々丸に尋ねる。

 

「……忘れられてるよ……。うっかり殺されかかってたあての前に颯爽と現れてくれた御姫の勇姿、総天然色でマイ・メモリーに保存してあるのに……!」

「そういえば死に掛かっていたな。うむ、思い出した!見たところ戦えそうにないし、どうしてか汚染波(うた)の影響を受けないし、なんだか珍妙な生き物に思えたので殺すのをやめたんだった」

「そんな理由かよ」

 

 珍妙な生き物扱いは流石に心外だったのか頬を膨らまして抗議する茶々丸。

 

「いやまー、御姫にあてを助ける気なんてなかったのは最初から知ってたけどね。結果的にそーなったってだけで。――でも御姫が来てくれたおかげであてが救われたのは事実だし、なら恩に着るのは当然てもんでしょう」

 

 その掛け合いを俺と同じ様に見ていた景明が茶々丸に尋ねる。

 

「……敢えてお尋ねします。閣下が光を手元に留めておかれるのには、何か目的とするところがお有りなのではございませんか」

「うん」

 

 あっけらかんと肯定する茶々丸。それに毒気を抜かれた様子の景明。

 

「……」

「あるよ?」

「あると聞いているな」

「……それはどのような目的でしょうか」

「まだ内緒」

「内緒だと聞いている」

 

 思わずと言った風情で景明が頭を押さえる。

 

「…………。お前はそれでいいのか」

「構うまい。光が野望を抱いて生きるように、他の者にも望みがあるのは当然のこと。望みのため、光を利用したくばするがいい。それがおれの関知せぬ所で終始するのならどうでも構わぬことであるし、おれの妨げになるのなら戦って勝敗を決するまでのことだ」

「御姫と話してると、小さなことでいちいち悩んでる自分が馬鹿に思えてこない?あてはしょっちゅう」

「……は」

 

 逡巡の末、景明が短く答える。確かに馬鹿らしくなってきた。こうなると直接聞いた方が早い。

 

「――お前は何のために殺戮しているんだ?」

「む、おれか?無礼な奴め、質問するならまずは名乗ってからにしろ」

「あ、ああ。ユウヤ・ブリッジスだ。よろしく」

「うむ、よろしく。湊斗光だ。さて、質問の答えだが――天下布武。人類全てと闘い勝利し神となる。そして奪われた父を取り戻す。それがおれの望みだ」

「……他に道はないのか?」

「ない!!」

 

 銀星号が何を言ってるのか理解できなかった。論理自体は単純明快だ。なぜそうなるのかは全くの謎だが。説得の言葉を探す。論理が明確過ぎて反論の言葉は見つからない。次の言葉に迷っている間に茶々丸が言う。

 

「御姫、朝ごはんどうする?」

「貰う」

「厨房に言えばくれると思うよ」

「今日の当番は誰だ?」

「三千場のおっちゃん」

「あの職人か。なら期待できるな。行ってこよう」

 

 それをただ見送る景明と俺、その視界に茶々丸が割って入る。

 

「で。お兄さん、これからどうするの?鎌倉に帰る……?」

「…………」

「じゃ、そこら辺考えておいて、あてはちょっと仕事してくるから。あっ、そうそう部屋は自由に使っていいからね」

 

 混乱したまま場は解散となる。今は落ち着いて考えたい。そう言えばつくしの事もだいぶ放っておいているので部屋に戻ることにする。

 

「つくし、戻った」

「御堂、おかえり。茶々丸は何て?」

「あっ……」

 

 忘れていた。そう言えば術式に必要な計算が終わった事を伝えるために茶々丸を探していたのだ。それが衝撃的な話の連続ですっかり抜け落ちていた。

 

「……検算の方はどうなった?」

「後少しよ」

「じゃあ、それが終わってから報告に行くか……」

「了解」

 

――――――

 

「術式ができあがった」

 

 茶々丸に単刀直入に報告する。あの衝撃的な朝食から数時間。全く集中できなかった俺は、さんざんつくしに突っ込まれながら検算を終えた。これならつくしに任せておいた方が早かったのではないかと思う。

 

 それはさておき、検算まで終えた今、ここから先は茶々丸の協力が不可欠だった。残る課題は一つ、エネルギーだ。具体的には発電所一基分の電力相当のエネルギー。幾らなんでも個人の力で用意することはできない。これは完全に茶々丸を頼るしかない。

 

「それは異世界に行く準備が整ったって事?」

「その目標に向けて大きなステップを踏んだってとこだな。これから小規模な試験を行う。これは俺の熱量だけで賄える予定だ。だがその後に大規模な試験も行いたい」

「うん、分かってる。発電所、だね」

 

 茶々丸が分かってるとばかりに頷く。さすが茶々丸だ。話が早い。

 

「一つアテがあるんだけど、どれくらいの電力が要る?」

「最低でも約100MW、できればそれ以上欲しい」

 

 計算で弾き出した必要なエネルギー量を伝える。100MWというのは最新型の火力発電所をフル稼働させた時の出力に匹敵する。それを用意しろと言ってるのだ無茶は承知の上だった。

 

「――キツイね。最低ラインはどうにか用意できそうだけどそれ以上は今回の場所じゃ用意できそうにないね」

「仕方ない。どうにか省電力化できないか再検討してみる……が、できれば他の発電所の方も検討して欲しい」

 

 それから不知火・弐型の移動方法などさらに細かい条件を詰めていく。ようやっと実行可能な計画にまで落とし込めた時には日が傾いていた。

 

「ふはー、とりあえず準備できる事は準備し終わったかな?」

「そうだな。流石に疲れた。……それで茶々丸の方の準備はできてるのか?」

 

 仮にも幕閣として国の要職に付いているのだ。引き継ぎ作業など幾らでもあるだろう。そう思い、聞いてみる。

 

「あて?あての方はちょっとケジメを付けたい事があるんだ。長くても一月、最短で明日にでも。だから時間が欲しい」

 

 ケジメを付けたい事。それは引き継ぎではないのだろう。だが、茶々丸の事だ。無責任に投げ出すことはないと信じている。

 

「――それは銀星号が関わっているのか?」

「おっ、鋭いね。ユウヤ」

 

 茶々丸が茶化すように言う。

 

「茶々丸」

「――分かった。そうその通りだよ。銀星号の、御姫の結末を知りたいんだ」

「結末?」

「そう結末、御姫と湊斗景明(お兄さん)がどんな選択をするのか知りたいんだ」

 

 愛しそうに柔らかい表情で言う。

 

「それはこの前言っていた神を黙らせる事に繋がってるのか?」

「――うん。だけどユウヤが方法を見つけてくれたからそっちの計画はお兄さん(景明)に任せようと思う。――だけど御姫達の事は見届ける責任があると思う」

 

 銀星号と繋がっていた事をどう判断すべきか、未だに答えは出ない。ただ分かっているのは茶々丸がどうしようと銀星号は同じ様に行動しただろうという事だけは分かった。そして茶々丸がどれほど神の存在を疎ましく思っているかも知っているのだ。ラトロア中佐の言葉を借りるならば茶々丸は全てを分かった上で自身の戦いをしているのだ。それを責められるだろうか?

 

「責任、か。茶々丸、お前の決断――いや、違うな、俺達(・・)の決断が他人に犠牲を強いている事は分かっているよな?」

「何?ユウヤ、今更止めろって言うの?」

 

 一気に場が冷える。もしそうなら許さない。そんな気迫を感じる。

 

「いいや、違う。止めても被害は戻ってこない、死者は生き返らない。それを理解していながらそれでも俺達はやるって決めたんだ」

「そうだね。あては何があろうと神を黙らせるって決めた」

「そうだ。だが、だからこそ犠牲を強いた事を忘れちゃいけない。何を言ったって言い訳になる。死者は何も言わない。納得なんてしない。それでも向き合い続けるしかないんだ」

「向き合う……」

 

 思う。俺が殺した相手の事を。理不尽に奪った相手の事を。テロ犯がいた。武者がいた。兵士がいた。共感できる奴もいたし、理解できない奴もいた。その全てを俺は殺した。ただ、自分のために。命令だったこともある。だが最後に決断したのは自分なのだ。ならば責任は俺にある。

 

「贖罪しろなんて言わない。死者に意味を持たせろとも言わない。ただどんなスタンスであれ向き合い続けるそれが責任だと俺は思う」

「……分かった。考えてみるよ」

「ありがとう。俺も考える。その責任がある」

 

 

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