岡部の反乱、その鎮圧から数日、獅子吼の許可を貰い俺達は大和GPを見に来ていた。獅子吼は教育の途中だからと行かせる事を渋っていたのだが、なんと冬太がたまには休むことが必要だと獅子吼を説得してくれたのだ。
「冬太、ありがとな」
「いえ、雄飛様がお疲れのようでしたので、従者として当然の事でございます」
久しぶりの休暇に心が躍る。久しぶりに
日程の都合上、予選は見ることができなかったため本戦からの観戦になったがそれで十分だ。わくわくしながら開会を待つ、用意されたパンフレットに目を落とす。タムラと翔京、横鍛、本命達の中に見慣れない名前がある。プライベーター・
《大和初、装甲競技アーマーレース国内統一選手権……大和GP。決勝まで勝ち残った二十の戦隊チーム。そして、彼等の戦いを見るために詰め掛けた観客席の人々……。麿がなぜこの大会を開いたか教えましょう》
準備が整ったのだろう。アナウンスの後、開会の言葉が読み上げられる。だが、どうも普段の大会とは違うようだ。主催者本人、即ち小弓公方、今川雷蝶が喋っているようだ。そうこの大会は今川雷蝶主催なのだ。ちなみに招待状が篠川にも送られてきており、それを見つけた俺が行きたいと漏らしたのが事の始まりだったりする。
《美よ!
麿は美しいものを見たいのよ!
強い者は美しい!
巧な者は美しい!
賢い者は美しい!
そして、速い者も美しいッ!
風すらも置き去りにして直向に駆け抜ける姿は、ただそれだけで目を奪われる美しさに満ち満ちている!》
獅子吼は今川雷蝶の事を武人としては一流だと評していた。どんな立派な武人なのか知らないが、これから会うこともあるだろう。当然、気が抜けない相手だ。
《ここに――大和GP、決勝戦の開始を宣言する!!》
そんな事を考えていると、開会の宣言が放たれ会場が一気に沸騰する。……しまったせっかくの休暇なのに気分が乗り切れていないようだ。これからは全力で楽しもう、そう思い、レースに意識を戻す。
《えー、程良い感じにナチュラルジャンキーな開会挨拶でした。ありがとうございます。決勝開始までもう間もなく!司会と解説はワタクシ、
《なんでよッ!?》
《放送席で大声出すなよケバ太》
《誰がケバ太かっ!司会も解説も麿の手配した人間がちゃんといるはずでしょ!?なんであんたなの!》
《あー、あいつら腹痛で休み。賞味期限の切れた牛乳なんて飲むから》
《……牛乳?》
《や、ここんとこ伊豆高原の牛乳の売れ行きが悪くてさー。
《あんたが飲ませたんじゃないのッ!!》
コントのような掛け合い。だが、若干困惑する。放送席に座っているのは小弓公方本人の筈なのだ。それに対してああも開けっぴろげに絡める相手は誰なのだろうか?ダンガンライガーとか名乗っていたが……。?記憶に何か引っかかる物がある気がする。
「なぁ、冬太。放送席に居るダンガンライガーって何者だ?」
「……おそらくですが、堀越公方足利茶々丸様かと」
冬太が一瞬考え込むような仕草を見せた後、自信なさげに答える。だが、もし堀越公方だとすればあの気安い態度も納得できる。何せ同格の相手なのだ。
《さー、各チームとも現在ピットで騎航準備に余念がありません!ミスは許されない!戦いは既に始まっている!ではここで最速を争う二○チームを順々に紹介していきましょう。まずはポールポジション――翔京ワークス"三城七騎衆"騎体は黄金の翼の"
《……そうね。今のところはここが一番期待できるかしら。ともすれば俗っぽい黄金の翼も、全国制覇の意気の顕れと思えば悪くなくってよ。美しく闘いなさい!その黄金が鍍金メッキと笑われないようにね!》
ポールポジションに陣取る黄金の騎体に目を引かれる。
《続いてタムラワークス"T・F・Fタムラ・ファイティング・ファクトリー"!騎体は青く輝く"
《せめて、まぐれではないことを期待するわ。決勝をつまらない勝負にはして欲しくないもの。限界を究めなさい!その青いボディにかけて!》
騎体から感じるのは狂気。煮え滾り、煮詰めきり、ドロドロになった怨念のような熱意。ただの岩を芸術品に叩き上げたような不安定さ、見ていて不安になる。だが、決して目を離す事はできない。
《なんと今回紹介する機体は真打劔冑です!プライベーターの閃光の雷ライジングサンダー。騎体は白い閃光、不知火!真打が装甲競技でも遅れを取らないという証明をすべく騎航します》
《アーマーレースに真打なんて無粋ね、あり得ないわ。それになにあの騎体、腰部に合当理をマウントするなんてなにを考えているのかしら……あれじゃあ、重心位置がずれて空気抵抗が大きくなるだけじゃない》
《おや?予備予選と予選は見ていない?……なるほどならじっくり御覧ください》
纏う雰囲気が他の騎体と明らかに違う。浮いていると言っても過言じゃないのかも知れない。だが、決して弱さなど感じない。信念の基づき鍛え上げられた一本の剣。以前乗っていた双発の騎体によく似ている。だが、今回の騎体にサンダーボルトの面影はない。いやむしろ知っている限りの
「なぁ、冬太、どこが勝つと思う?」
「そうですね……難しいですね。技術と金を注ぎ込んで勝ちに来た翔京、異端のアイデアを見事に形にしたタムラ、ダークホースの不知火、どこが勝ってもおかしくないと思います。……ですが、翔京はあまり好きじゃないですね」
「だな、金の力で勝っても面白くないしな」
そしてレースが始まる。レースはデッドヒートだった。序盤はウルティマ・シュールの独壇場。王者に相応しい
そこから一進一退の攻防、直線のアベンジ、コーナーの不知火、技のウルティマ。三つ巴の戦いはアベンジと不知火による決闘になり、そしてクラッシュ。あの時は何が起こったのか一瞬把握できなかった。事態を把握した時には再び不知火は駆け出していた。その身に秘める本当の力を曝け出して。そこからは執念と言っていいだろう。墜落しながらのゴールは本当に心臓に悪かった。