6番目のアーウェルンクスちゃんは女子力が高い   作:肩がこっているん

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真夜中の逢瀬

「いやはや、まさか本当にセッちゃんが「2人に増えた」とは」

 

 アルビレオ・イマは、すぐ横にいる「セクストゥム=六戸刹子」を見て、そう感想を漏らした。

 

 麻帆良図書館島、最深部。

 アルビレオ・イマの隠れ家。

 

 隠れ家というよりも、ファンタジーものにおける「ラスボスの間」のような場所を、アルと刹子は歩いていた。

 

 先ほど麻帆良へとやってきたばかりの刹子は、念話でアルに呼び出され、夜中にも関わらずこうして図書館島の最深部までやってきたのだ。

 

「念話のアドレス帳にセッちゃんの名前が2つ表示された時は何事かと思いましたが、実際に目にして納得しましたよ。これは以前私が使用した「分身体」とは訳が違いますね。ーー貴女は完全に「実体」である」

 

 アルは、刹子の全身を舐めるように見る。

 別段、気にした様子もない刹子。

 

「これからは2人のセッちゃんと念話を楽しむことができそうですね。……待ってください、2人ということはーー。セッちゃん、貴女が今所持している「花嫁修業(ハナヨメシュギョウ)」のカードなんですがーー」

 

「……はい、どうぞ。差し上げますよ」

 

 刹子はアルが言うよりも早く、懐から「花嫁修業(ハナヨメシュギョウ)」のカードを一枚取り出し、アルに渡した。

 それを、アルは震える手で受け取る。

 

「おお……ッ! 久しぶりの「中学生モード」の絵柄! ……そして本体のセッちゃんのカードは「10歳モード」のままではありませんか! 2枚のカードは、2人のセッちゃんを別々に認識している!?……これは、これはーー!!!」

 

 「10歳モード」と「中学生モード」2枚のカードを見比べながら、アルは何やら戦慄している。

 刹子はやれやれーーといった素振りを示す。

 

 いつもだったらこのまま放っておくのだが、刹子はまだ今晩アルが自分を呼び出した目的を聞かされていない。

 このままトリップされても困る。

 

「……アルさん、そろそろ教えてくださいよ。今回私を呼んだ目的ーー「面白いもの」とはなんなんですか?」

 

 

ーー長旅の疲れも残っているでしょうに、急に念話を繋いで申し訳ありません。

 

ーー面白いものを観てましてね。今からこちらにいらっしゃいませんか?

 

 

 アルは、刹子に念話でそのように言った。

 

 旅疲れを労った上で、それでも私を誘う理由とはなんなのかーー刹子はいい加減それを教えて欲しかった。

 

 

「ーーおっと。すいません、つい盛り上がってしまいました。ーーほら、着きましたよ」

 

 

 いつのまにか目的地にたどり着いていたらしい。

 

 2人がやってきたのは、大きな書棚が複数そびえ立つ書斎のような場所。

 

 

(確かーーアルさんの仕事部屋……でしたかね)

 

 

 書棚の間を通り、さらに奥、そこには大量の「モニター」が立ち並んでいた。

 

 さながら、監視部屋といったところか。

 

 アルがそのモニターの中から一つを指差す。

 

 刹子は、つられてそのモニターを見る。そこにはーー。

 

 

「……こんな時間に、図書館島内部に侵入者ですか?ーーおや?あれは夕映さんに明日菜さん……木乃香さんまで?まだいらっしゃいますね、というか2-Aの皆さんではないですか」

 

 モニターに映っている侵入者達の正体は、刹子のクラスメイトの面々だった。

 

「ーーバカレンジャーの皆さんぷらす木乃香さんといったところですか。…………それにーー」

 

 

 

ーーなんで図書館に湖が!?皆さ〜ん、待ってください〜〜〜!

 

 

 

 赤毛が特徴的な小さな男の子ーー。

 

 背中には、背丈に不釣り合っていない、大きな杖ーー。

 

 その顔立ちからは、忘れもしないあの人の面影がーー。

 

 

 

 

「ーーネギ君?」

 

「ええ。彼がーーネギ・スプリングフィールド君です」

 

 

 あそこに、ネギ君がいる。

 

 

「先ほど近右衛門の方から連絡がありましてね。ここ(図書館島)で保管している「メルキセデクの書」を求めて、彼らはこんな夜中にこの場所を訪れたようなのです」

 

「いきなりどうして……」

 

「なんでも、三日後に行われる学期末試験の結果云々で、ネギ君の進退を決めるとのことでーーここで正式に教師として採用するか否かをね。それを受けておそらくーー」

 

「読めば頭が良くなると噂の「魔法の本」。それを探しにきた、そんなところですか……」

 

 図書館探検部の間では有名な話ですからね。

 あそこにいる夕映さん辺りが話したのでしょう。

 

 それよりもーー。

 

「あれが、ネギ君……」

 

 刹子はモニターに映る少年から目が離せない。

 

 ネギの姿を確認したことで、なんとも言えない感情に支配されていた。

 

 学園長がネギに与えた課題の内容に突っ込み所もあるが、そんなものは些細なことでしかなかった。

 

 

(大きくなりましたね、ネギ君。ーー顔立ちも、なんだかナギさんが良い子になっちゃったみたい……ふふ)

 

 

 刹子は黙って、ただただネギの姿をその目に焼き付ける。

 

 アルはその間、何も言葉を発さない。

 

 

(ネカネちゃんの教育が良かったんですね。……でも、なんだか見ててほんと危なっかしいですね。ーーさてはネカネちゃん、存分に過保護に育てましたね。……私に対しては割とスパルタだったのに)

 

 モニターに手を触れる。

 

 刹子はネギのこれまでの暮らしぶりに思いを馳せる。

 

 

 しばらくそうして、画面の中で慌てふためくネギを見ながら微笑んでいた刹子だったが、ふと他のモニターに目をやるとーー。

 

 

「…………あれ?あのゴーレムって……」

 

 何やら他のモニターの映像が大変なことになっているーーネギだけを見ることに集中していた刹子はようやくそのことに気づく。

 

 

ーーどれどれ次の問題じゃ〜!フォフォフォ♪

 

ーー痛たた!こっちに体重あんまかけないで〜〜!

 

ーーうう、早く、次の出題を……。

 

ーーあわわわ、み、皆さん!耐えてください!

 

 

 女子達が体を寄せて姦しくツイスターゲームに興じているーーモニターにはそのような光景が映っている。

 

 そしてノリノリで問題を出題しているゴーレム。刹子とアルはそのゴーレムの中にいると思しき人物に心当たりがありすぎた。

 

 

「ええ、おそらく近右衛門でしょう。フフ、なんとも愉快な光景ではありませんか」

 

「ハァ……もう何やってんですか学園長」

 

 

 ここ麻帆良学園の学園長、近衛近右衛門。

 

 刹子は先ほど麻帆良に帰還した際に、一度顔を合わせたばかりである。

 

 そしてネギに課題を与えた張本人であった。

 

 

ーーフォ!?フォフォフォ♪パンツが丸見えじゃぞ?良いのかのう?

 

ーーコラ〜〜!!あんたがそうさせてんでしょ〜〜!!!

 

ーーや〜ん、ネギ君見ちゃダメ〜〜!

 

 

「学園長ったら、完全に遊んでるじゃないですか。……というかただのセクハラじじいですね。ーーアルさん、あんまり彼女達の痴態を見ないであげてください。哀れでなりません」

 

「安心してください。私はーー今や貴女一筋ですよ、セッちゃん」

 

「はいはい、そうですか。……ハァ、あの様子じゃネギ君の進退とやらも大丈夫そうですね。単に学園長が遊びたかっただけのようですし」

 

 

 刹子は犠牲となったバカレンジャーに手を合わせる。

 

 完全に空気が弛緩してしまった。

 

 それを感じたアルは、ここで刹子に話を切り出す。

 

 

「セッちゃんは、この先ネギ君とどう接するおつもりで?」

 

 

 その言葉を受けて、刹子は今一度モニターのネギを見つめ、少し考え込んだ後、言葉を発する。

 

 

「どう、接したらいいんですかね……私は」

 

「おや」

 

 

 ネギ君の身に危険が及んだ場合、当然私は彼の身を守るつもりだ。

 

 それは、アリカ様と共にあの村から逃げ出した私の、本心。

 

 私が力を振るうことを拒んだことから起きた責任。それ故のーー誓い。

 

 しかしーー。 

 

 

「流れのままにこうして麻帆良にやってきたわけですが、正直な話、私はわからないんです。日常において、私はネギ君とどういった関係であるべきなのか。……そもそも、私はネギ君に近づくべきなのか」 

 

 

 先ほどからのネギと2-Aの生徒達のふれあいを見て、刹子は思った。

 

 なんとも和気あいあいとしている。関係は良好、いや、出来上がっているといっていい。

 

 あの中に私は入っていけるのか。

 

 

「私の()()()は、あの中にあるのでしょうか……」

 

 

 

 守るだけなら、何も側にいなくてもーー。

 

 

 

「年頃の女の子そのものですね、貴女はーー」

 

「……あっ」

 

 

 アルが、刹子の肩をそっと抱く。

 

 体が強張るのを感じる刹子。

 

 刹子が顔をそちらに見やると、アルが優しい眼差しを送っている。

 

 

「麻帆良では貴女はただの女子中学生です。ネギ君と貴女の関係は教師と生徒、アーウェルンクス云々はここでは関係ありません。ーー貴女はただの一生徒として、六戸刹子として、彼と接すればいいのですよ。……何も気負う必要などないのです」

 

「気負う必要は……ない、ですか」

 

 不安げな表情を見せる刹子。

 

 アルを見つめるその瞳は、かすかに揺れていた。

 

「時と場合によっては、貴女は彼のためにその力を振るう場面が出てくるかもしれない。……だからといって、何も彼を護衛するかのような心持ちでいる必要などないのです。ーーそれは、私にとっても好むような関係ではありません」

 

 ネギ君と関わらずに、ただ彼の姿だけを追うーーアルさんはそのような関係のこと言っているのだろう。

 

「……アルさんは、そんな私の姿を見るのは嫌だと」

 

「嫌ですね。ええ、実にセッちゃんらしくない」

 

「私らしくないって……ふふ、アルさんはどういった風に私を見てるんですかね。ーーふぅ」

 

 

 刹子は体の力を抜き、肩に当てられていたアルの手を軽く叩く。

 

 アルは少し名残惜しそうに、刹子の肩から手を外す。

 

 

「ーー私は六戸刹子として、ありのままにネギ君と接します……これでいいでしょ?アルさん?」

 

「おやおや、なんだか私が決めたみたいになってませんか?セッちゃん、何もそういうつもりでは……」

 

「私の中ではそういうことになってるんです〜。ふふ、何か問題が起きたらアルさんも同罪ですよ?」

 

 

 いやいや別に罪とかいうものではーーそう言いながら、アルは何気なく刹子に手を伸ばす。

 

 それをするりと躱し、くるくると回りながらアルから離れる刹子。実に楽しそうな笑みを浮かべている。

 

 

「お風呂借りますね。共犯者のアルさんは引き続きネギ君達の監視を務めるように!ーーふふ」

 

 

 ビシッ!とアルを指差し、上機嫌に小走りでその場を離れていく刹子。

 

 対するアルは、困った表情を浮かべながらそれを見送ることしかできない。

 

 

「やれやれ……とんだ小悪魔に育ってしまったものです。まぁ、それもまた悪い気はしませんね。……ふむ」

 

 

 まんざらでもないーーそう思うことにしたアルは、おもむろに懐を弄りだす。

 

 そこから取り出した、先ほど彼女から譲り受けたばかりの「花嫁修業(ハナヨメシュギョウ)(中学生モード)」のカードを見つめる。

 

 

「私も楽しみが増えましたし、良しとしますか。ふふ、セッちゃん。ーー貴女がネギ君に負い目を感じているように、また私も貴女に対して負い目を感じているのですよ」

 

 

 しかしこればかりはどうしても止めることなどできないのですーー。

 

 切ないながらも、何やら期待に胸膨らませるような表情のアル。

 

 息遣いも荒い。

 

 

(セッちゃん……どうかこの卑しい私の目に、貴女の無垢な姿を晒して……嗚呼、セッちゃん……セッちゃーー)

 

 

 

「ーーア〜ルさん?」

 

「えーー」

 

 

 ハッと顔を上げるアル。

 

 するとすぐ目の前には風呂へ行ったはずの刹子ーーの、顔が迫ってーー。

 

 

 

ーーチュッ!…………ペロ

 

 

 

「………………」 

 

 

 アルはしばらく何が起きたのか理解できなかった。

 

 いや、この行為自体は2人の間では今まで幾度ともなく交わされているもの。

 

 それでも、このように突然の接触は今までなかった。

 

 完全に意識外から奇襲を受けたアルの思考は完全に固まってしまった。

 

 

「今日の夜のお礼ですーーぷっ、アルさんどうしたんです?固まっちゃって?アハハハ!!!ーーそれじゃ、今度こそお風呂行ってきますね♪」

 

 それと、最後のはサービスですーーそういって今一度走り去っていく刹子。

 

 刹子が去った後も、動く気配を見せないアル。

 

 

 やがてアルが手にしている「花嫁修業(ハナヨメシュギョウ)(中学生モード)」の絵柄に変化が生じる。

 

 

 カードに写るものを目にしたアルは、なんとも言えない背徳感と、これまで感じたことのない興奮に身を委ねたのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 ネギは、背中に大荷物を背負い、すっかり慣れ親しんだ麻帆良女子校エリアの道を歩く。 

 

「こうなっちゃったんだもの、仕方ないよね」

 

 

 今日は、期末試験結果発表日。

 

 先ほどクラス成績が発表され、ネギが担任を務める2-Aは最下位となった。

 

 ネギは、絶望に打ちひしがれる2-Aの輪の中からこっそりと抜け出し、人知れず校舎から立ち去った。

 

 

「この景色ともお別れか……人がいないと、この広い通学路は寂しいだけだね……」

 

 

 きょろきょろと辺りを見渡し、今や通い慣れた麻帆良女子校エリアの景色を目に焼き付けるネギ。

 

 

「終わっちゃったなぁ……」

 

 

 2-Aを万年最下位から脱出させることができなかったーー僕は、ここで教師を続けることができない。

 

 麻帆良での修行はこれでおしまい。

 

 「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」の夢は叶えられなかった。

 

 

「ネカネお姉ちゃん、残念に思うだろうなぁ……」

 

 

 あれだけ、僕が麻帆良学園で教師をやることを喜んでくれてたのに。

 

 このことを知ったネカネお姉ちゃんの顔を思い浮かべると、申し訳ない気持ちしか浮かんでこない。

 

 修行を成し遂げられなかった悔しさより、今はそちらの思いの方が強い。

 

 多分、辛いのはこれからなんだろうな……。 

 

 

「子供1枚、新宿までお願いします」

 

 

 そうこうしている内に駅に着いていた。

 

 切符を買い、改札口を通ろうとして、一度立ち止まる。

 

 

(もう少し、クラスの皆さんと一緒に居たかったな……) 

 

 

 あれだけ勉強嫌いだったバカレンジャーの皆さんが、一生懸命良い成績を取ろうと頑張ってくれた。

 

 2-Aの皆さんだってそう、誰かを責めるなんて僕にはできない。

 

 

「アスナさんに、お礼くらい言っておくべきだったかな」

 

 

 麻帆良に来てから、いつも自分を励ましてくれた明日菜のことを思い浮かべる。

 

 

(なんだかんだいいつつ、アスナさんが僕のこと構ってくれたから……だから、今日まで頑張ってこれたんだよね。ーー僕、黙って来ちゃった……悪いことしたな)

 

 

 今からでも戻って挨拶してくるべきか?しかしーーそのように悩んでいたネギの耳に、遠くから誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

ーーネギ〜〜〜!!!待って、待ちなさ〜〜〜い!!!

 

 

「ーーっ、アスナさん!?」 

 

 

 遠くからこちらに向かって走ってくる明日菜の姿。

 

 それを見たネギはーー。

 

 

「〜〜っ!!」

 

 

 ネギは、何を思ったか慌てて切符を改札に通し、今来たばかりの電車へと逃げるように駆け込もうとする。

 

 

ーーちょっとネギ!?聞いて、間違ってたの!!私たちの本当の成績はーー

 

 

「ごめんなさいアスナさん!!!僕もうみんなに合わせる顔なんてーー」

 

 

 明日菜の静止を振り切り、大声をあげながらネギは電車のすぐ目の前までやってくる。

 

 明日菜はまだ遠くにいる、今ならまだ捕まらない。

 

 まるで追われているかのような心境で、ネギは未だ開かないドアの前で足踏みをする。

 

 

「はやくはやく!アスナさんに追いつかれちゃうよ!!」

 

 

 ようやく、電車のドアが開く。

 

 ネギは人が出てくるかどうかも確認せず、中へと飛び込んだーー。

 

 

「ーーわぷ!?」

 

「おっと……」

 

 

 案の定ネギは、電車から降りようとドアの前に立っていた人物とぶつかってしまった。

 

 顔面に柔らかい感触が伝わる。

 

 慌てて、ネギは目の前の人物の顔を見ようともせず謝罪をする。

 

 

「す、すいません!僕急いでて、あ、あの、ごめんなさい!それじゃーーーって!?」

 

 

 謝罪もほどほどに、すぐさまネギはその人物の横を抜けようとしたーーが、突然肩を掴まれ、その反動で仰け反ってしまう。

 

 

「こらこら、まだ学校の時間は終わってないでしょう?どこへ行くというんです?」

 

「ぅえ?あのちょっとーー」

 

 

 ネギの肩を掴んだ人物は、そのままネギを引きずるようにして前へと歩き出す。

 

 それは思いの外強い力で、ネギはされるがままに電車から遠ざけられる。

 

 

「あぅ〜〜〜!?で、電車が!?は、離してーーあぁ〜〜〜〜」

 

 

 無情にも閉まる電車のドア。

 

 ネギの叫びも虚しく、動き出す電車。

 

 

「〜〜〜〜〜〜!!ひ、ひどいですよぉ!ぼくあの電車に乗らないといけなかったのに!」

 

 

 なんてことしてくれたんですか!

 

 ネギは抗議をしようと、ここにきてようやく自分の肩を掴んでいる人物に顔を向けた。

 

 

「ーーあれ?」

 

 

 声の感じから、女の人だとは思っていたけどーーどこかで見たことある顔だ。

 

 

 思わず目を引く白い髪に、透き通るような白い肌。

 

 こちらの心を見透かしているかのような蒼い瞳。

 

 ほんのり桜色に赤みがかった口元。

 

 綺麗な人だ。

 

 改めて見たら麻帆良女子中等部の制服を着ている。

 

 校舎の中であったのかな?

 

 

「今言ったでしょう?まだ学校は終わってませんよ?ーーネギ先生?……まぁ、こんな時間に登校してる私が言うのもなんですが」

 

「え……と、あの、あな「コラー、ネギー!!!」ーー!?あ、アスナさん!?」

 

 

 そうこうしている内に、ネギの姿を確認した明日菜が、改札口を飛び越え駆け寄って来る。

 

 なぜか恐怖に染まった表情を浮かべたネギが、傍にいる白い髪の少女の背に隠れる。 

 

 

「〜〜〜!ひぃ!?ご、ごめんなさい〜〜〜!!」

 

「なんで怯えてんのよ!私はあんたに嬉しいお知らせをーーーって」

 

 

 明日菜の言葉が途切れる。

 

 不審に思ったネギが、明日菜の様子を確認しようと、恐る恐る白い髪の少女の背から顔を出す。

 

 明日菜の視線はネギではなく、今自分の前にいる少女を向いていた。

 

 

「ーー刹子。あんた帰ってたの?」

 

「お久しぶりです、明日菜さん。ついこの間戻りました」

 

 

 明日菜は普通に白い髪の少女と会話をしている。

 

 2人は知り合いのようだ。

 

 

(ーー刹子?その名前どこかで…………ああ!!!)

 

 

「ーーーああ!思い出した!せ、刹子って……!」

 

 

 思わず声をあげるネギ。

 

 白い髪の少女はそんなネギの方に体を向け、挨拶をした。

 

 

 

 

「初めまして。出席番号32番、六戸刹子です。セッちゃんって呼んでくれてもいいですよ?ーーネギ先生♪」

 

 

 

 

 少女と少年は、ここでようやく出会ったのであった。

 

 

 

 

 


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