6番目のアーウェルンクスちゃんは女子力が高い   作:肩がこっているん

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お、おや? 闇の福音の様子が……

 ーー桜通りにチュパカブラが現れた。

 

 このような噂が学園の生徒たちの間で流れ初めたその日の夜、件の桜通りでは昨晩激闘?を繰り広げた吸血種同士が再び顔を合わせていた。

 

「随分遅いご到着ですね、エヴァさん。ほとんどの生徒さんらは女子寮に帰られて、今や人っ子一人通る気配はありませんよ?」

 

 道の真ん中で対峙する二人。そのうちの片方である、猛々しいフォルムのチュパカブラがそう語りかける。

 

「わざわざ出迎えご苦労。そういうお前は、私が来るまでの間ずっとそこの木陰で生徒たちの帰りを見守っていたようだな……律儀なやつめ」

 

 フンッと鼻を鳴らし、吸血鬼は目の前のチュパカブラに対し怯むことなく仁王立ちの姿勢で言葉を返す。

 

「学園一律儀であると自覚しています。それより、昼間は学校をサボって何をしていたんです? クラスの皆さん、特に宮崎さんが心配してましたよ? 吸血対決で負けて凹むのも仕方ありませんが、せめて無事な姿は見せて頂かないと」

 

「目覚めたのはついさっき、夕方だ。どこかの馬鹿に魔力を空になるまで吸い尽くされたおかげでな。それに、私が無事だということは茶々丸の方からクラスに届出があったはずだ。……そもそも、私自身に学校をサボるという選択肢など無い事などお前も知っているだろうが!」

 

 忌々しい呪いのせいでなーー吸血鬼もといエヴァは投げやり気味にそう言うと、顔を背け何やらブツブツと言い始める。おそらく自身に呪いをかけた者への恨み言だろう。

 

(……言われてみればそうでしたね。今朝方エヴァさんの自宅に伺った際に茶々丸さんから『マスターは未だお目覚めではありません』と聞かされた時には、単に拗ねているのかと思ってましたが……。思いの外、昨夜のダメージは大きかったと) 

 

「いや、すいませんエヴァさん。呪いの効果をすっかり忘れてました。元々不登校の生徒を更生させるための呪いですものね、サボりたくてもサボれない、と……」

 

 そんな設定ありましたねーーチュパカブラもとい刹子は苦笑いを浮かべる。

 ーーまぁ、着ぐるみ故に表情など確認できないのだが。

 

 刹子が自身に掛けられている呪いの内容の細部を忘れていたことを知ったエヴァは、額に青筋を浮かべ、さらに不機嫌になる。

 「親子揃ってこの私をコケにしおって」と言い、小さな拳がギリギリと音を立てる。

 その様子を見て刹子はさっさと話を進めたほうが良いと判断した。

 

「エ、エヴァさんそんなことより『そんなことだと⁉︎』…………エヴァさんは、なんでまたここ(桜通り)に?」

 

「ああ?」

 

 不機嫌な態度は依然として変わらずだが、話を聞く気はあるようだ。

 

「まだ生徒を襲うつもりでいるのか聞いているんですよ。……こうしてここにやってきたということは、やはりそういう事だと判断してよろしいのでしょうか」

 

 チュパカブラの目が細まり、“ジト目”の形になる。

 中にいる刹子の表情とリンクしているようだ。

 ちなみに今夜のチュパカブラも昨夜と同じく“口”が無い仕様。まだ刹子のイメージが不足しているようだ。

 その様子を見てエヴァはなんとも言えない表情を浮かべつつ、質問に答える。

 

「……今夜は血が目当てでここに来たのではない。ーー性悪、私はお前に会いに来たんだよ」

 

「……ほほう?」

 

 チュパカブラは大きな目をぱちくりさせる。なんともコミカルな吸血生物だ。

 

「私のプランを聞き入れてくれる、と?」

 

「なんだそれは? お前の話を聞きに来たわけではないんだが……まぁ、聞くだけなら聞いてやろう。話してみろ、お前の言うプランとやらを」

 

 エヴァの態度を前にしてチュパカブラの目が一際大きく見開かれる。

 

(まぁーー! なんですかこの態度は! 昨夜私に負けといて何ジャイアニズム振りまいてんですかこのキティちゃんはーーーー!)

 

 ここで爆発させてはいけないーー怒りに耐えるかのように体を震わせて、刹子は本来ならば昨日エヴァに話すはずだった内容の説明に入る。

 プランなどと大げさに言っているが、ようはーー

 

 ーーネギに事情を話して、死なない程度に血を吸わせてもらう、というだけなのだが。

 

 それを受けてエヴァはーー。

 

「ーーえ? ああ、確かにそれはいい考えだと思うな、それで?」

 

 キョトンとした表情を浮かべそう言った。

 

「それでって……それだけですか⁉︎ いいと思うでしょう? このプランで行きましょうよ! というか何故初めにこういった考えが浮かばないんです⁉︎ RPGじゃないんだから倒して奪う的な発想から離れなさいよ‼︎ あぁ〜もうこれだからエヴァさんはまったくもうーー」

 

 地団駄を踏んで憤るチュパカブラ。

 なんで貴女はいつもそうなんだーーと大声を張り上げる。

 若干感情が外に漏れ出ている。

 対するエヴァは少し思案した後、目の前でじたばたと暴れるチュパカブラにこう答えた。

 

「……却下だ」

 

「ーーーーはい? 今なんと?」

 

 チュパカブラの動きが止まる。

 

「却下だと言ったのだ。お前のプランは飲めん」

 

「ーーなっ」

 

 何故ーー。

 チュパカブラはエヴァに詰め寄りその小さな肩を掴む。そしてグラグラと揺さぶりをかける。

 

「何を言ってるんですかエヴァさん⁉︎ 私の話をちゃんと理解してないでしょう⁉︎」

 

「のわぁ⁉︎ 揺さ振るんじゃない! というかその鉤爪をしまえ、刺さるだろうが! ーー、ええい、少し話を聞け! お前のプランが上手くいけば確かに何事もなく事は済むだろう、それはわかっている!」

 

「わかっているならどうして⁉︎」

 

「ーーそれは、私がーー、“闇の福音”だからーーだ‼︎」 

 

 自身の体を揺らすチュパカブラの両腕を掴みながらエヴァはそう答えた。

 

「また訳のわからない事ーーーー、⁉︎」

 

 刹子の挙動が静止する。

 掴まれている自分の腕に違和感を覚える。

 

(思いの外エヴァさんの力が強い……? いや、強いと言っても昨夜ほどじゃない。せいぜい10歳の少女の見かけにしては……といったところ。……筋トレでもした? いや、そんな程度でこの握力が身に付くはずが…………あーー)

 

「ーーエヴァさん、そういえばもう、満月……じゃないと思うんですけど……牙ってーーーー」

 

 魔力を封印されたエヴァの体は、満月の夜になると一部その力を取り戻す。

 具体的には、吸血鬼の身体的特徴とも言えるそのーー鋭利な八重歯。

 それと、微々たるものでしかないが、多少身体能力が向上する。

 

 思ってみれば、今月エヴァが桜通りに現れたのは今夜で()()()なのだ。

 初日に佐々木まき絵が被害を受け、昨夜に宮崎のどかがあわよくばその牙にかかるところだった。

 

「…………」

 

 刹子の問いを受けたエヴァは、見たけりゃ見せてやるーーと言わんばかりに大きく口を開く。

 

 ーー月の薄光を受けてギラリと光る鋭い牙がそこにあった。

 

「まだ牙がある……」

 

 刹子は何が言いたいのかというとーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を、エヴァはすでに三日も健在させているということ。

 ーー満月が三日も続くなどありはしないというのに。

 

 刹子は顔を上げ夜空を仰ぎ見る。

 漆黒の宙に佇むその月はーー丸い。

 丸くはあるのだが……。

 

「そりゃ満月の夜でなくとも牙を生やす事はできるさ。……この身に相応の魔力が宿ってさえいればなーー!」

 

「ーーーー‼︎」

 

 着ぐるみを通して刹子は何かを感じ取る、それはーー冷気。

 エヴァの肩から手を離し、慌ててその場から後退する。

 

 ーーギィィィイイン‼︎

 

 刹子が先ほどまで立っていた場所に人の体ほどの大きさの氷柱が落ち、二人の間を分かつ。

 

「遅延魔法ーー!」

 

「私の魔力を空にしたからと油断していたな? 確かに矮小な魔力量故にわかりにくいかもしれんが、お前が感知できないハズなかろう?」

 

 エヴァの体から魔力の流動を感じる。

 刹子は自身の失態よりも、何故未だエヴァの身に魔力が残っているのかという疑問の方が勝っていた。

 

「未だ私が魔力を保有していることを疑問に思っているのか? ハッ、魔力なんざそこそこの量の魔法薬を服用すれば時間を空けずともある程度は回復できるさ。……いっても、昨夜お前に奪われた分を取り返すとまではいかんがな」

 

「……だったら、わざわざ一般生徒からチビチビと吸血なんてしなくても、薬をガバ飲みすればよかったんじゃ……」

 

「……ガバ飲みできるほどの数など手元に無い。今回私が飲んだのも『魔力の自然回復』を早める薬であって、『魔力そのものを得られる』薬じゃないんだよ」

 

 刹子は黙っている。

 エヴァはそのまま話を続ける。

 

「それに、そのような薬の所有を学園側が認めるわけないだろう? 前にまほネットで似たようなものを買ったが、案の定私の手に渡る前に取り上げられ、厳重注意されたよ」

 

「それは……そうなるでしょう、ね……。ちなみに今回エヴァさんが飲んだという薬は、何も言われなかったので?」

 

「もともと風邪っぴきの私が万が一のための保存薬として打診したものだ。特に文句はなかったさ。いくら今の私の魔力が自然回復したところで、せいぜい満月の夜と同じレベルが関の山。……このように、吸血鬼の牙が生える程度で頭打ちだからな」

 

(エヴァさんの魔力を抑制しているのは『登校地獄』の呪いではなく学園の結界によるもの。ようは薬次第でそれを突破できるってことじゃないですか……それだけでも危険な薬だと思うんですが。……まぁ、でもエヴァさんの体はそれ以上にーー)

 

「エヴァさんってなんだかんだ体弱いですからね……インフルかかったら一発でいきそうですし。……そりゃ学園側、もとい学園長も認めるわけですね」

 

「くそ、なぜ私が風邪引くたびに死にかけにゃーー、って、もうこの話はいいだろう!」

 

 強引に話を打ち切ったエヴァは、それと同時に指を鳴らす。

 二人の間にあった氷柱が音を立てて割れ、そのまま魔力に還元ーーそのまま形を失い消えていく。

 刹子は腰を落とし依然警戒を緩めない。

 

 

「話を戻すぞ性悪。今夜私がお前に会いに来た理由、それはーーーーお前に勝負を持ちかけるためだ」

 

 

「ーーはい?」

 

 チュパカブラの眉(?)が八の字になる。

 困惑しているようだ。

 

「勝負って……何を?」

 

「簡単だよ。私はこれまで通り生徒たちから血を頂き、そしてネギ・スプリングフィールドを襲う。お前は、それを妨害なり止めるなりする。……何、いつもお前とやっている勝負事と何ら変わらんさ」

 

「なーー」

 

 エヴァは涼しい顔でそのような事を言い出した。

 当然、刹子は反論する。

 

「ーーいやいやいや‼︎ 頭でも打ったんですか⁉︎ 私の無血のプラン(ネギが血を吸われる時点で正確には無血ではない)を聞いた上で何故そんな提案を持ちかけるのか、意味がわかりません‼︎」

 

(何言ってんですかこのキティ‼︎ ジャスティスの方々と同じくラリっていらっしゃるとしか思えない思考回路……意味、不明‼︎)

 

 エヴァの表情を見るも、至って冷静だ。

 刹子の脳内ではクエスチョンマークの発生が止まらない。

 

「何が理由なんですか⁉︎ 私のプランのどこに不満があると⁉︎ ……闇の福音がどうたら言ってましたけど、そんな事ーー」

 

「ーーそれだよ。お前の言う()()()()が理由だ。私はな、性悪……これでも外では“悪い魔法使い”で通ってるんだよ」

 

「知ってますよ、だからそれがどうしたとーー」

 

「どうしたもこうしたもない‼︎ そんな“悪い魔法使い”である私が、目の前に投げされたエサ(ネギ)を前にして何もしないなどと……そのように思われている事が腹立たしくて仕方がないんだよ‼︎‼︎‼︎」

 

(え、やだ、なんでいきなり怒りだすの⁉︎ わけわかんない‼︎)

 

 激昂するエヴァ。

 刹子も負けじと言い返す。

 

「ーーですから! ネギ君の血が欲しいなら本人にそう言って……なんなら私からもーー」

 

「なぜ私の方からあのボーヤに頼むような物言いをしなければならない? ナギが私に犯した失態だぞ? 被害を受けたのは私だ。私が頭を下げる道理がどこにある?」

 

 エヴァの声のトーンが低くなる。

 

「お前が私に話したプランだが、本来ならばその話はボーヤが麻帆良に赴任すると決まった際……ジジイ(学園長)の方から私に対していの一番に持ちかけるべき内容、私に対して通すべき筋ではないか? 当然、私がボーヤに頭を下げる事など無いよう配慮を加えてな。 ……私はすでにナギが今現在どのような状況に置かれているのか知っている。ナギが私の呪いを解く事などすぐには叶わん事を。ジジイが私に内緒にしていた事を、お前が教えてくれたおかげでな」

 

「…………」

 

「充分に学園のために尽くしてやったではないか。日々雑用をこなし、最弱状態でありながらも懸命に侵入者たちを退けーー学園の人間を守ってやったではないか。……私が無害だと言うことは、お前との絡みを通じて、皆、わかってくれたはずじゃないかーー」

 

(ジャスティスの皆さんからは、もはや“私の相方”的な扱いでフランクに話しかけられてますからね……。プライドの高いエヴァさんからして見たらそりゃ、格下にナメられてる感じで面白くないのでしょうけど……でもーー)

 

 エヴァは夜空に浮かぶ月を睨みつける。

 さらに言葉を紡ぐ。

 

「ーー私は、もう解放されていいはずだ。違うか?」

 

 様子がおかしい。

 刹子はエヴァの問いには答えず、ただただその姿を注視する。

 

「……ジジイはよっぽど私をここから出したくないらしい。まだ私に学園のガードマンをやらせたいのか、それとも私の魔法の腕を見込んでボーヤを鍛えてやることを望んでいるのか……ホント、ここまで都合の良い存在はいないな。ククーー」

 

(そりゃ、学園長も手放したくないですよね。貴女ほど頼りになる人なんて他にいませんし……それに、麻帆良にもなんだかんだ馴染めていたように見えた。学園長も、エヴァさんがこの先も麻帆良で暮らしていけるように色々手回しをしていた。私も学園長から、エヴァさんが退屈しないように()()()()になってやって欲しいと頼まれた。……エヴァさんは満更でもないように見えた。でも、それでもエヴァさんはーー)

 

 エヴァは顔を上げたまま刹子の方へと歩み寄る。

 

「どのみちここ桜通りでこそこそ活動を始めた段階で……いや、ジジイから何の申し出もなかった時点で私の心は決まっていた。ーー私は勝手に動かせてもらう、ーー闇の福音として、悪の魔法使いとしてな」

 

 刹子の目の前までやってきたエヴァは手を伸ばし、チュパカブラの……着ぐるみの顔部分にそっと手を当てる。

 何のためにーーその意味はわからない。

 刹子はそのまま会話を続けることを選択した。

 

「……エヴァさんは、麻帆良での生活を楽しんでいると思ってました」

 

「うん? 楽しませてもらっているとも。まぁ、お前がここに来てからは特にーーな」 

 

「……学園の皆さんにご不満がありますか? 学園長に対しては、かなり怒っていらっしゃる様子ですが」

 

「腑抜けているーーそういった点では不満があると言えるな。わざわざ坊やを私が所属するクラスに当てるといった危機管理意識の低さが。……タカミチが私に言ったよ、『ネギ君に何かあったら相談に乗ってやって欲しい』と。ハッ、私が坊やを襲うという考えには至らんのか? 実に腑抜けている証拠ではないか」

 

「エヴァさんは信頼されてるんですよ」

 

「……いい迷惑だ。むしろ、そうやって勝手に私を縛りつけていることに気づいて欲しいものだな」

 

「そう、かもしれませんね。私含めて、エヴァさんの都合を軽視していると思います……。ーーエヴァさんは、そんな学園の皆さんは……お嫌いですか?」

 

「嫌いじゃないさ。賞金首時代に私を狙って来た奴らと比べればな。……比べることすらおこがましいか。ーーいい奴らだと思うぞ? この学園の連中は」

 

「……でも、やっぱりネギ君は襲うんですね。この学園の人達を困らせることになると知った上で。ーー闇の福音として」

 

「自分たちがどれだけ腑抜けているか思い知らせてやるのさ。……なぁに、何も坊やが死ぬわけじゃないんだ。むしろ、坊やにとっては裏の世界を知るいい機会、いわば課外授業だ。学園の連中にはそのための授業料を払ってもらう、それだけのことさ」

 

「…………」

 

「それに言ったろ? 私はお前に勝負を持ちかけた。お前に敬意を払って、わざわざ己の障害として立ちはだかる権利を与えたんだ。……お前と坊やはただならぬ関係だものなぁ? クク、止めてみればよかろう? この私を」

 

「……まだ理解しかねます。生き死にはないにしろ、関係のない生徒を巻き込んで……それを勝負だなんて。ーー本心で言っているとはとても思えません。闇の福音が云々も、とってつけたような言い訳のようにしか聞こえません」

 

「フフ……」

 

 エヴァは反論しない。

 着ぐるみに触れている手がなぞるように優しく動く。

 

「着ぐるみを脱げ。ここ最近まともにお前の顔を見ていない」

 

「エヴァさん、話を逸らさないでください。ーー貴女は本来ならネギ君を襲うことなく、正式に彼から血を貰って呪いから解放されるつもりではあった。先ほどの話からはそのように判断できます」

 

「この着ぐるみチャックは付いておらんのか? チッ、おい、早く脱いでお前の顔を見せてくれ」

 

「しかし、今こうして私に勝負を持ちかけるなど、わざわざ遠回りとしか思えない行動に出ている。……呪いから解放されたいんでしょう? なぜ?」

 

「ーー!……邪魔が入った、いや、逆に好都合か。ーーいいか性悪、よく聞けよ? 勝負というくらいだから、勝った方には当然其れ相応の報酬が必要だ」

 

「エヴァさん! 話を聞いてください! 私は別に受けるだなんてーー」

 

(ーーおかしい! このエヴァさんはおかしい! ここまで人の話を聞かないなんて……。昨夜からこんな感じだった? いや違う! 何かあった? だとしたらいつ? 今夜ここに来るまでの間に? わからない、エヴァさん、貴女はどうしてそんなにーー)

 

「ーー負けた方は勝った方の言うことを一つ聞く。これがシンプルで一番いいだろう?」

 

(ーーどうしてそんなに、()()()()()()()()を私に向けていらっしゃるのですかーーーー⁉︎)

 

 エヴァの顔がやたらと赤い。

 心なしか息遣いも荒い。

 刹子は、エヴァのこのような表情を今まで見たことがない。

 

 ーー闇の福音に異常アリ。

 ーー繰り返す、闇の福音に異常アリ。

 

「ーーエヴァさん、貴女はどうしてーーーー」

 

「ーーゲームスタートだ。先手は貰ったーー」

 

(勝手に始めないでください! ……え、そんなに息を吸い込んで何をーー)

 

 刹子はエヴァの挙動に目が離せない。

 故に気づかなかった。

 

 ーーいつのまにか、自身の手が再びエヴァの肩に置かれている。

 ーーエヴァが、わざわざそのような態勢を取らせたことを。

 

 

 

「ーーキャァアアアアアアアアア‼︎‼︎ 誰か、誰か助けてぇ‼︎ 怪物に襲われてるのぉ‼︎‼︎‼︎」

 

「ーーーーは? エ、エヴァ、さん?」

 

 

 エヴァが、悪の魔法使いが、闇の福音がーーーー壊れた。

 

 思考停止。

 

 刹子の頭は完全にフリーズした。

 

 脳内の電子精霊たちがガンガンと警告を鳴らしている。

 

 しかし、もはや遅いとしか言えなかった。

 

 

 

「ーータ、タカミチ⁉︎ 大変だよ! エヴァンジェリンさんが⁉︎」

 

「うっそ⁉︎ ホントにチュパカブラ⁉︎ なんでこんなとこにマジモンの吸血生物がいんのよーーーー⁉︎」

 

「…………これは、どういう状況、かな? ハハ……」

 

 

 刹子は条件反射で振り返る。

 そこにいたのは3人組。

 

 一人は高畑、もう一人は明日菜。

 

 そして、触れ合える機会をずっと待ち望んでいた人物。

 しかし、できれば今最もこの場にいて欲しくなかった少年。

 

 

 ネギ・スプリングフィールドが、恐怖の表情を浮かべそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーきせかえごっこ「吸血鬼のサテンケープ」(SR)

 

 接触している対象から魔力を吸収できる。

 仮契約時に着用することで、契約相手の魔力を媒介にSR以上のカードの排出率を底上げすることができる。 

 

 

 

 <EX(隠し)スキル>

 

 特殊技巧「魅惑のくちづけ」

 

 「女子力」スキルのパラメーター値を参照して、“くちづけ”を施した対象を一定確率で『()()』状態に陥らせる。

 

 

 

 

 




そろそろきせかえごっこの情報をまとめておきたい(自分用にw)

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