6番目のアーウェルンクスちゃんは女子力が高い 作:肩がこっているん
「セツ子、それが人じゃ」
アリカは、自分の胸に顔を埋ませているセツ子の頭を抱き、そう口にした。
先ほどまで肩で息をしていた胸の中の少女は、今は呼吸も落ち着き、今はただその抱擁に身を委ねている。
「他者のために命を顧みず行動できる者などそうそうおらん。セツ子、主の考えは人として間違ったことではないのじゃ」
セクストゥムはあれから一言も喋らない。
アリカは言葉を続ける。
「セツ子。主は優しい子じゃ。大勢は、自分の無力に対して、そこまで本気で悩めはせぬ」
そう、セクストゥムは悩んでいた。
ネカネからナギ達の失踪の事実を伝えられたその時から、周囲の声が耳に入らなくなり、時間を忘れるほどに。
「戦いたくない、傷つきたくない、当たり前じゃ。皆が皆、死地へ向かうことを恐れぬ勇敢な心を持った者達ばかりなら、英雄という概念なぞ存在せん」
そうであろう、セツ子?ーーアリカは諭すように言う。
セクストゥムは答えない。
「主は、まだ生を受けて間もないのじゃったな。…………なら、主はまだ赤子ということになる」
「赤子……?」
ここにきて初めてセクストゥムが口を開く。
とは言っても、アリカの言葉を反復するだけではあるが。
「そうじゃ。主はネギと同じ赤子じゃ。自我を持っておろうが、そのようなことは関係ない」
赤子、ネギ君と、同じーーセクストゥムはまだ言葉の反復を続ける。
「普段の主は、あまりに人が良く出来ている。いや、出来過ぎている。人とはこうあるべきだ、それを体現するかのごとく振舞っている。妾も、それが主の姿なのだと、ずっと思っておった」
社会への適用能力、一般常識。
セクストゥムは生まれてから常にそれらを意識していた。
「だが、妾は勘違いをしていた。先ほどの主の訴えを聞くまでな。セツ子、あれが主の本来の心。生まれたばかりの赤子の心、気持ちそのものなのじゃ」
アリカはセクストゥムの頭を撫でる。
「ナギ達への罪悪感、自分の考え方に対する嫌悪感……赤子がそんなことを気にするものか。主はあまりにも普通とは異なる生まれ方をしてしまった。初めから与えられた、人が正しいと認識する行いを体現しようとする意識に、赤子の心がついていけるはずもなかろうて…………ッ」
ここにきて、アリカの声色に変化が生じる。
アリカは泣いていた。
「ナギの大馬鹿者め……!このような幼子に何を背負わせようというのじゃ……っ!セツ子は……セツ子は、ネギと同じ……妾らが守ってやらねばならぬ子供ではないか……!」
「ア、アリカ様……」
先ほどまでとは真逆、アリカは感情を滾らせて言葉を綴る。
セクストゥムは、アリカの語った話、今のアリカの様子を受けて困惑の表情を浮かべている。
「可哀想にのう……辛かったじゃろう。人の心を持って生まれてしまったばっかりに……主を取り巻く環境は、そんな主にとってただただ辛いだけだったのじゃな」
「アリカ様……私は……」
「様などつけぬでいい……!主は出会ってすぐに私のことを「アリカ様」などと……どこまで主は忠実なのじゃ」
アリカのセクストゥムに向ける感情は、不幸な境遇に生まれた少女に対するものから、親が子に対するものへと変わっていた。
子に試練を与えようとする父、それをかばう母。そのような構図が当てはまる。
「眠れセツ子、もうよい。子供はもう寝る時間じゃ。朝まで……っ、朝までこうして抱いててやるから……」
「…………」
セクストゥムは、その後アリカに何も言葉を発することもなく、静かに目を閉じた。
母の温もり、セクストゥムはその身に、確かにそれを感じていた。
「朝までしか……っ、こうしてお前といてやれない妾を…………どうか許してくれ……」
安心した顔を浮かべて眠るセクストゥムに、その言葉は届かなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ウェールズの早朝、スプリングフィールドの家の前には、何人かの村人が集まっていた。
扉が開き、アリカが少ない荷物を背負った姿で出てくる。その手には我が子であるネギを抱えている。
「すまぬ、待たせてしまったか」
集まった村人は皆神妙な面もちだ。
その中の数人が、アリカに歩み寄る。
「任せてしまう形になって本当にすまない……ネギを、よろしく頼む」
アリカに歩み寄った一人の女性に、赤子のネギが授けられる。
この女性は、ネカネの母である。
ネカネの母はアリカの言葉に頷き、手渡されたネギに優しい眼差しを送る。
その様子を見ていた村人は、瞳に涙を浮かべる者もいれば、自分の力足りなさに拳を握りしめる者もいた。
「あの子、セツ子の様子は、いかがなもので?」
この問いを発したのは、この村に住む老魔法使いのスタンである。
アリカがセクストゥムを呼ぶときの愛称は、村に住む者達の間にも広まっている。
「セツ子はまだ眠っている。色々頭を使って疲れたのであろう」
「このことは、話したので?」
「……いや、セツ子には何も」
アリカの言葉を聞いて、スタンは目を閉じて深く息を吐く。
「セツ子はナギ達のことで頭がいっぱいだったようでな……妾にはできんかった……すまぬ」
「ご自分を責めるのはよしてくだされ……あの子には儂らから言っておきますゆえ」
「すまない、セツ子のことも、ネギと同じくよろしく頼む……あの子は……」
ーー妾の娘だ
しかし、アリカはその後を言うことができなかった。
子供を置いて出て行く、理由はどうであれ、その行為自体は変わらない。
生まれたばかり、乳離れもしていないネギを。
生まれたばかり、幼い心に不安を抱えたセツ子を。
(妾には言えぬ……主らの親だとは……主らを置いていく妾に、どうしてそんなことが言えようか)
アリカの胸には、先ほどまで抱いていた二人の子供達の感触が残っていた。
アリカはただ唇を噛んで、自らの行いを悔いることしかできない。
その様子を見ていたスタンを含めた村人は、何も声をかけることができなかった。
スタンはふと空を見上げた。
空模様は、とても優れているとは言えなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜セクストゥム
ーーー…………んっ!…………ちゃん!………
ん〜〜、ママ、もう少し寝かせてください……
ーーー…………起きてっ!…………セッちゃん!………セッちゃん!!ってば!!!
うるさぃママですねぇ…………しょうがないですね……私が目覚めたら大変なことになるってことを教えて……て……?
「ネカネちゃん……?」
目を開けると、そこにいたのはネカネちゃんでした。
いつのまにか朝のようです。
誰かに起こされるなんて、初めての経験ですね。
って、あれ?
「ママは?」
とっさに口にしたその言葉。
その言葉は意図せず、自然に出たものでした。
「セッちゃん……」
ネカネちゃんは首を振りながらため息をついています。
あれ、私今変なこと言いました?
………………
なんでしょう、急激に自分の顔に熱を帯びていくのを感じます。
あっ…………///あぁ、あああ〜〜〜〜//////////
「あ、あの!その……ま、ま…」
なんかものすごい恥ずかしいこと言っちゃった気がしますっ///
いい、今のは、聞かなかったことにーーー
「ママに会いたい?」
聞かなかったことにできないでしょうかっ…………て、……はい?
「…………え〜と、その」
「……………………」
ネカネちゃんは、む〜っと口を噤んだまま私に顔を近づけてきます。
10歳そこらの少女の圧力じゃありません。
や、やっぱ昨日のこと怒って……
……近い、近い!近い!!
「あ、会いたいと、思います」
なんかよくわからない返答をしてしまったと、自分でも思いました。
ネカネちゃん……恐ろしい娘ッ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ネカネちゃん……そろそろなんなのか話してくださいよぉ……」
「…………シッ、黙ってて」
ネカネちゃんの謎の圧力に屈した私は、ネカネちゃんがいつの間にか用意していた特大リュックサック(子供の体型から見たら)を無理やり背負わされ、言われるがまま、村の家と家の間を這うように移動を行なっている最中です。
「…………」
ネカネちゃんはさっきからずっとこんな調子です。
というか、朝起きてからというものの、何がなんだかわからないことばかりです。
家には私とネカネちゃんしかいなく、アリカ様とネギくんは?と聞いたらーーー
ーーーネギ君はウチで預かってるよ。……アリカさんは、会いたかったら黙ってついてきて。
脅迫ですか!?
少し文章入れ替えればまんまそれです。
昨日の私があまりにダメダメだった故に、このままネギ君を任せてはいられない、そういう意味ですか!?そう聞いたのですがーーー
ーーー半分アタリで半分ハズレ。ていうかセッちゃん、ぐだぐだ言ってないでさっさと着替えて。3分後には出るよ。
そんなわけで、半分涙目になりながら普段着ている使用人服(なぜわざわざそれを選んだのか)に着替え、特大リュックサックを背中に換装。ネカネちゃんにひきづられるような形で家を出て、今に至ります。
ひょっとしてピクニックですか?アリカ様とネギ君は先に行ってるとかーーーーはい、めっちゃ睨まれました。
もう話しかけるのも怖いです。
ちなみに天気はめっさ悪いです。いつ雨降ってもおかしくありません。
最悪のピクニック日和ですね。
「……大体出払ってるみたいだね、よし、セッちゃん!走るよ!」
「ぅえ!?急にそんな「急いで!」……ま、待ってくださいって「静かにして!」…………ぅう」
ネカネちゃんを怒らせるようなことは今後やめよう。
そんな見当違いなことを思っていた私でした。
そんなこんなで、異様に重たいリュックを背負った状態で全力疾走を強いられた私は、村のはずれ、森の入り口までやってきました。
「森に入るよ」
「……ゼェ、ゼェ……ぇえ!今度は森の中ですか!?もぅ勘弁し……わかりましたお供させていただきます」
「…………」
もうやだこの子怖い。
というかこのリュック何が入ってるんですか!?
いくら魔力封印されてるとはいえ、私の体はそんじゃそこらの子供の体とは違う、ちょっとの負荷じゃ息も上がらないはずなのに!
息も絶え絶えな私に対して、ネカネちゃんは器用に木々の枝を跳ね除けずんずんと森の奥へ奥へ歩を進めていきます。
痛い、痛い!
ネカネちゃんに跳ね除けらた枝たちが、報復とばかりにしなりを上げ私に襲いかかります。
涙とか鼻水とか生傷とかで私の顔面は、それはもう酷いことになっています。
ネカネちゃんSです、ドSです!皆さん、ネカネちゃんはドSです!
ネカネちゃんと結婚を前提でお付き合いを考える方々は、ご自分の性癖趣向にご相談した上で覚悟を決めてください。
あぁ〜、私、このままじゃ変な扉を開いてしまーーー
「……ッ!伏せてセッちゃん!」
「へぶっ!?」
ネカネちゃんが急に振り返ったの思ったら、私の頭をぐわしと鷲掴み、そのまま地面へと叩きつけられました。
背中のリュックサックの重さが後押しして、とてつもない相乗効果を生みました。なんか地面にめり込んでません?
これが「引き裂く大地」……
一瞬だけ見えたネカネちゃんの表情がやばかった。
目がマジでした。
「……うっ……ぇうぅ…………」
「よかった……ただのオコジョかぁ……ってセッちゃん顔面酷いことになってるよ!?」
「……ヒク、う、ぅ〜〜……びぃえぇぇぇええええええん!!!!」
もうこんなピクニック嫌ぁあああああああ!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アリカ様が、遠くに行っちゃう?」
あれから森を抜け、芝生が生い茂る広場に出た私たちはその場に座り込み、つかの間の休憩を取ることにしました。
さすがのネカネちゃんも私の顔面の惨状を見て気を使ってくれたようです。
ネカネちゃんから渡されたハンカチで顔を拭いている時、ネカネちゃんはそんなことを言いだしました。
アリカさんが遠くへ行ってしまうーーーと。
「今朝ね、セッちゃんがまだ寝てる時だよ。アリカさんが村の人を何人か連れてこの村を出て行くのを見たの」
ネカネちゃん、夜更かしはしても朝は早いんですね……って今はそんなことじゃなくて!
「く、詳しく聞かせてください!」
ーーアリカ様は朝、スプリングフィールドの家の前で村の人と挨拶を交わしていた
ーーその時、ネカネちゃんのお母さんがネギ君を預かった
ーーその後、村の中でも凄腕の魔法使いの方々何人かを連れて、この村を出て行った……と
「先に言ってセッちゃんが昨日見たくダメダメになっちゃうと困るからね。あえて黙ってた」
う、やっぱり、ネカネちゃん根に持ってますね。
「えっと……単に遠くへお出かけに行った、とかではないんでしょうか?それこそ、街とかに……」
私がこの村に来てから、アリカさんが遠出をするなんて初めてのことです。
最近まで出産やらネギ君のお世話でそれどころじゃないのもありましたけど。
それにしても、そんな朝早くから、私に何も言わずになんてことがあるのでしょうか?
「こんな天気の悪い日に遠出なんてするわけないよ。それに……そんな雰囲気でもなかったしね」
です、よね……
正直今にも雨が降ってきそうです。
さっきまでピクニックとか思ってた私って……
「アリカさんがウェールズの村に滞在してるってことは、基本村の中での秘密。それはセッちゃんも知ってるでしょ?」
「はい、この村に来た時にナギさんから聞きました……なぜならーー」
ーーーナギさんは賞金首だから
私がこの世界で目覚めた時、電子精霊と一緒に脳内に保存されていたガイドマップ。
それは完全なる世界の日記帳のようなものでありながら、現在の社会情勢、そしてナギさんたち紅き翼に関する情報も載っていた。当然、アリカ様のことも。
ナギさんたち紅き翼は、今の魔法関係者なら誰もが憧れる存在。
大戦の英雄として、それから偉大なる魔法使いとして。
皆が皆彼らのようになりたい、そう思ってやまないのが紅き翼、そして、サウザンドマスターなのだ。
そんなナギさんが、いかなる経緯で賞金首になってしまったのか。
そのこともガイドマップに書いてあった。
わからないことがあれば随時、電子精霊にネットから情報提供、補足を頼んだ。
紅き翼のメンバーは今どこにいるのか?
そして、アリカ様は何者なのか?
ナギさんはとある組織から恨みを買っている。
それは、ナギさんがアリカ様を助けたから。
なぜそれで恨まれるのか?
ーーーそれは「はいセッちゃんストーップ」……っ!
「へぶぅ!?!?」
いきなりネカネちゃんに両頬を平手でサンドイッチされました!
今日こんなのばっかり……
「危なかった……もうちょっとでセッちゃんが昨日のダメダメモードに入るとこだったよ……」
「ダメダメモードって!?」
た、確かに……なんか今ちょっと入りかけてたような気がしますけど……!
ていうか変な名前つけないください!
「やっぱ最初に話さないで正解だった。万が一先に話して、セッちゃんが使い物にならなくなっちゃったら、こうして連れてくるのも一苦労だったよ」
もうネカネちゃん、私に対して遠慮という言葉がなくなりましたね。
昨日とはまるで別人ですよ。
こんな私で本当にすみません。
「一旦話戻そう?ナギさんたちがウェールズに滞在してることは村の中の秘密。言い方を変えれば、ナギさんたちはある意味お尋ね者ってところになるのかな」
「はい、ネカネちゃんの表現は間違っていません。ナギさんたちはお尋ね者、追われる身です」
「多分、ここら辺のことはセッちゃんの方が詳しいんじゃないかな。で、そのお尋ね者であるナギさんとアルさんが先日から行方不明、そしてアリカさんはネギ君を私のお母さんに預け、朝早くから村を出た。村での凄腕の魔法使いを護衛に引き連れて……このことが意味するのは……」
「アリカ様は……ナギさんたちを探しにいった?とか?」
「それもありそうだけど……私の考えたことはそれとは別。それはーー」
ーーーアリカさんが、ウェールズの村から離れなければいけない理由ができてしまった、から
ネカネちゃんがその言葉を言い終わるとほぼ同時、遠くから耳をつんざくばかりの轟音が聞こえた。
それは、私たちが先ほどまでいた場所、ウェールズの村の方からだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
セクストゥムとネカネの耳に謎の轟音が届いたと同時刻。
現在、ウェールズの村の外れの至るところで、魔法使いたちによる戦いが繰り広げられていた。
轟音の正体、それは攻撃魔法同士の衝突によるものであった。
「ーーー我が手に宿りて 敵を喰らえ ーーー白き雷!!!」
ーーーーバリバリバリバリッ…………ズドォォォォォ!!!
「がぁっ……!!?」
「メガロの下っ端が、俺たち村の魔法使いを舐めんなよ!!」
迎え撃つは村の魔法使い達。
対するは、メガロの下っ端と呼ばれる者達。
両方の戦いの様相は、村の魔法使い達が優勢と見える。
「くそっ!こんな英国の片田舎に、なぜこれほどの魔法を行使する奴らが「喋ってる場合かよ?」……!?ぐぁっ!?」
「ナギの馬鹿に頭下げて頼まれてんだ、テメェら下っ端を何人たりとも村の中に入れるわけにはいかねぇんだよ!!」
「誰一人逃すな!この場で終いにしてやるぞ!」
「「「おう!!!」」」
村の魔法使い達の奮闘により、幸い、村の中、民家までには被害が及んでいない。
非戦闘員である他の村人達は皆、村のほぼ中央一箇所に集まっている。
その中にいた村の老魔法使い、スタンは、村全体の状況を隈なく把握するべく、探知魔法による索敵を行なっていた。
(ナギがいなくなって早々仕掛けてきたか……さては張られていたか。メガロメセンブリアの奴らめ)
スタンは、ナギとアルビレオが行方を眩まして、真っ先にこのような事態になることを読んでいた。
(敵の術者の程度からして、恐らく末端の奴らの暴走じゃろう。不幸中の幸い、最も、ナギがいれば奴らも迂闊に手は出せなかった……アリカ殿も村を出て行かずにすんだもの……ったく、あやつはいつも儂の手を焼かせおって)
スタンはそう思いながら、周りの村人達に目を向ける。
「くそ、メガロの下っ端が……直接村に仕掛けてきやがるとは……!」
「こうなる可能性は踏んでたが……いや、泣き言も言ってられねぇ、ここを凌いじばえば、丸く収まるんだからよ!」
「そうだ、この間にアリカさんをできるだけ遠くへ逃してやるんだ!」
村人は互いに互いを励まし合う。
村人はこの状況に対して不安がないわけではない。
しかし、それ以上に村人達にはプライドがあった。
ーー俺たちはナギの馬鹿に頼まれた
大戦の英雄であるナギに対する憧れは、村人達の心の中にも存在した。
いや、近くにいたからこそ、その感情はなおさら強いものとなっていた。
幼い頃、ナギと共に魔法学校へ通っていた者達の中には、ナギの才能を妬む者も少なからず存在した。
なぜ、あいつだけが。
なぜ、あいつと俺たちはここまで違う。
しかし、時が経った今、そんな彼らは大人になった。
当初ナギに抱いていた感情は、あまりに馬鹿げた偉業を成し遂げた事により呆れへ、それを経て、尊敬へと変わっていった。
そんなナギが、自分たちのことを頼った。
自分たちの力を必要としている。
大戦の英雄が、自分たちの力を信じてくれている。
それが自分たちの誇りだ。
自分たちはそれを裏切るなんてことはできない。
「お、俺も加勢に行ってくる!」
「テメェ!抜け駆けはさせねぇぞ!」
「魔法の射手くらいしかまともに使えねぇ奴はおとなしくしてな!」
「ばっ!……俺の魔法の射手は天をつらぬーーー」
スタンは、その様子を見てこう思う。
ーー村の一大事じゃと言うに緊張感のない奴らめ……ったく、ナギ、お前が何人もいるようじゃよ
この村は大丈夫ーースタンはそう心に秘め、探知魔法に集中をしようと始めたその時だった。
「おい!そっちにセツ子ちゃんとネカネちゃんはきてるか!?」
「は!?お前探しに行ったんじゃ……おいおい冗談だろ……」
スタンはすかさず探知魔法の範囲を広げ、大声で叫んだ。
「ったく!一体どこで何をしとるんじゃあの二人は!!!」
その頃、セクストゥムとネカネはというとーーー
「大人しくっ……!唇を奪われなさい!……セッちゃんったら!!!」
「ダメダメダメダメ!!!お、女の子同士なんてそんなっ//////////」
今まさにナニをしようとしていた。