ですが、『裏切り』での扇はキャラが違います。
いきなり皆の前で“ゼロはずっと俺達を騙していたんだ!”って、自分はずっと敵の士官のヴィレッタと繋がって皆を騙していたのに……“いい人”ならそんな発言できないでしょう。良心の呵責に苦しみます。優柔不断なら尚更です。
しかし、もっと酷いのはその後です。ゼロを引き渡す代わりに、日本を返せとシュナイゼルに要求。何故、この場で突然そんな要求ができるの?仲間を敵に売って、見返りに日本を返してもらう?“いい人”なら絶対こんな事はしません。できません!
“信じた仲間を裏切るんだ、せめて日本くらい取り返さなくては、俺は自分を許せない!”って、自分が許せなければ、普通は自分の身を削るような事しませんか?平気で他人を犠牲にして、何で自分が許せるんですか?自分さえ良ければ人はどうなってもいい、自己中心主義の考え方ですよ。完全な悪人ですよね?これ……
本当に信じてたんなら、普通は裏切りきれ無い。扇のようなキャラなら、尚更です。公然と裏切るって事は、最初から信じて無い、利用してたって事でしょ?
極め付けは、シュナイゼルは“引き渡せ”と言ったのに、4号倉庫では最初からゼロを射殺しようとしていました。何故?
これは、仮にシュナイゼルに引き渡しても、ギアスを使って逃げ出すかもしれない。そうなると、裏切った自分の身も危なくなる。ならば、ここで危険の芽を摘み取っておこうという策略では無いのでしょうか?
という訳で、『裏切り』での扇には“らしくない”言動が目立ちます。ただ、もしこの話での言動こそが彼の本性で、それまでの彼の言動が全て計算された偽装だったとしたら?
ディートハルトなんかより、ずっと腹黒い男になってしまいます。
公歴2010年、8月10日、神聖ブリタニア帝国は日本に宣戦布告した……日本は帝国の属領となり、自由と、権利と、そして、名前を奪われた……エリア11……その数字が、敗戦国日本の新しい名前だった……
その7年後、俺“扇要”は、親友の紅月ナオトと共に、ブリタニアの支配に抵抗するレジスタンスを率いていた。
ブリタニアの支配下では、イレブン(日本人)はまともな生活はできない。かと言って、立派な家柄も無ければ、特出した技能も無い俺には“名誉ブリタニア人”になってもおいしい事は何も無い。逆に、日本人から“裏切り者”のレッテルを貼られるだけだ。それならば、日本を取り戻そうという連中と行動を共にする方が良い。特に、親友のナオトは、心の底から日本を取り戻そうと行動していた。また、周りにそれを期待させる雰囲気を持っていた。俺は、ナオトに付いていった。ナオトがリーダーの組織で、彼の補佐役を勤めていた。
昔から、自分の事は良く理解していた。自分は、リーダーには向かない。リーダーを務める者には、絶対条件として必要な力が3つある。
ひとつは、洞察力・状況判断力。短時間で状況を把握し、適切な判断を下す。当然、決断力も含まれる。事態が深刻であればある程、即座に対応できなければその組織は生き残れない。
ふたつ目は、行動力。リーダー自らが動かなければ、部下は動かない。士気も上がらない。
そして3つ目は、統率力。カリスマ性と言っても良い。皆に魅了され、皆をまとめあげる力。これが無いと、人はついて来ない。
俺には、この全てが欠けていた。それに対し、ナオトは全てを持っていた。奴こそ、理想のリーダーだった。だから、俺は奴に付いていく事を決めた。常にナンバー2の位置に居て、自分の無能さを隠し、甘い汁を吸うために……そのための悪知恵にだけは、昔から長けていた。
常に温厚な態度で、優柔不断を装い、上にも、下にもいい顔をした。
ナオトがレジスタンスのメンバーと対立する時は、どちらにも付かずにその場は何とか誤魔化す。後で、ナオトにはしっかりと“俺だけは、お前を信じてる”とフォローを入れる。皆にはこっそり“ナオトには、俺から言っておくから”と言って、意見を聞く振りをする。そのお陰で、人望だけは人一倍あった。
しかし、悲劇は突然訪れた。ナオトが、作戦中に行方不明になってしまった。
生きているのか、死んでいるのかも分からない。その後、人望だけは高かったため、俺がナオトに代わるリーダーにされてしまった。
まずい、非常にまずい!このままでは、直ぐに俺の無能さが露見してしまう。一度失った信用は、取り戻すのが難しい。そもそも、リーダーの資質が無いのだから取り戻しようも無い。それ以前に、俺がリーダーでは直ぐにレジスタンスは壊滅してしまう。とにかく、急いで新しいリーダーを探さなければ!
しばらくは、既にナオトが立ててあった作戦を実行していた。その過程で、次のリーダーに適した人材を探していた。一番の候補は、ナオトの意思を継ぎ、レジスタンスに新加入したナオトの妹カレンだった。流石にナオトの妹だけの事はある。リーダーに必要な3つの力を、カレンは全て持っていた。
だが、彼女はまだ学生だ。それに、彼女は純粋な日本人では無い。
兄のナオトは日本人だが、カレンは父親が違う。彼女の実父は、ブリタニアの貴族シュタットフェルト家の当主であるため、ブリタニア人とのハーフだ。“カレン・シュタットフェルト”という、ブリタニア人としての国籍も持つ。
彼女自身は“自分は日本人だ”と言っているが、この点を不満に思う者も居るかもしれない。ならば、俺の補佐として傍に置き、実質リーダーとしての行動をさせればいい。
そんな彼女の実力を、皆に示す機会がやってきた。ブリタニア軍の基地で、化学兵器(毒ガス)の製造がされているという情報が入った。俺達は、この毒ガスを強奪する事を考えた。これには、ナオトが計画していた“軍の兵器強奪作戦”が適用できたからだ。
カレンに功績を上げさせるために、強奪の主担当を永田とカレンに任せた。カレンはナイトメアの操縦にも長けていたので、京都から提供されたグラスゴーも同乗させた。
ナオトの作戦は完璧だった。作戦通りに動けば、強奪作戦は問題無く完遂できる筈だった。そう、あの男さえ居なければ……
俺は、レジスタンスに入って、初めて自分よりも無能な人間に出会った。いや、もう有能とか無能とかという次元ですら無い。あいつは猿以下だ。計画性は全く無く、学習能力も無い。お調子者で、その場その場の気分で行動する。とにかく、作戦通りに動かない。その上、秀でた才能が何も無い。組織最凶の悪性腫瘍、玉城!
奴がナオトの作戦通りに動かなかったため、強奪作戦はブリタニア軍に嗅ぎ付けられ、永田とカレンは危機に陥った。だが、それだけでは済まなかった。この毒ガスがブリタニアにとってそこまで重要だったのかと驚くが、ブリタニアは新宿ゲットーごと全てを排除しようとして来た。玉城ひとりのために、俺がここまで築き上げてきた牙城が脆くも崩れ去ると思われた時……遂に現れた、彼が……
『西口だ!線路を利用して、西口に移動しろ!』
サザーランドに追い詰められたカレンに、謎の男からの指示が入る。
「誰だ?どうしてこのコードを知っている?」
『誰でもいい!勝ちたければ、私を信じろ!』
彼は、合わせて俺達にも指示を出して来た。
『お前達も、線路を伝って西口に向かえ!』
藁にもすがる気持ちで、俺達はこの指示に従った。そして、無事サザーランドを撃破する事ができたカレンと合流する。
「おーい、カレン!さっきの通信は何だ?」
「扇さん達にも?」
「ああ、吉田達ももう直ぐこっちに……」
そこで、また通信が入る。
『……お前がリーダーか?』
「あ……ああ……」
『そこに止まっている、列車の積荷をプレゼントしよう。勝つための道具だ。』
列車のコンテナを開けると、中には何台ものサザーランドが……
『これを使って勝ちたくば、私の指揮下に入れ!』
まるで、夢でも見ているようだ。どうやって、こんな物を手に入れた?何者なんだ、この男は?……いや、声は男だが、本当に男なのか?
10分後に、謎の男からまた指示が入った。
『P1、動かせるか?基本は、今迄のと変わらない筈だ。』
「君は何者だ?名前だけでも……」
『それはできない、通信が傍受されていたらどうする?それより、Q1が予定通りなら、23秒後に敵のサザーランドがそこに来る。おそらく2機。壁越しに撃ちまくれ!』
この男の言葉には、人を信じさせる魔力のようなものを感じた。常にリーダーの後ろに隠れていた俺には、特に良く分かる。場の空気すら読めない玉城は全く信じようとしなかったが、こんな馬鹿に付き合っていたら皆あの世行きだ!
俺は、全員にこの男の指示に従うように伝えた。はっきり言って、俺にはこの状況では大した指示も出来ない。ナオトの過去の行動を思い返しても、似たようなケースは思い浮かばない。今は他に方法が無いため、皆も従った。
「3・2・1・撃てっ!」
男の指示通り、サザーランドが現れ、俺達の銃撃で一蹴された。彼の言った通りだ。
「ようし、この声に従え!」
俺は確信した。この声に従っていれば、勝てる!
更に、次々と指示通りに敵が撃破されて行く。
この男は本当に何者なんだ?ブリタニア軍の動きを的確に読んで、常に先回りをしている。まるでナオト・・・いや、それ以上だ!
敵のサザーランド部隊はほぼ全滅し、もう勝利は目前……と思われた時、状況は一変した。
突如現れた白いナイトメアが、俺達のサザーランドを次々と撃破し始めた。敵は、たった1機なのに。
謎の男の指示に従っても、成す術無く俺達は撃破されてしまった。
「おい、ナイトメアは撃破されてしまった!この後は、どうすればいい?」
何とか脱出した俺は、慌てて次ぎの指示を求める。しかし、何の返答も無かった。まさか、あの男もやられてしまったのか?
一応リーダーは俺なので、皆は俺に指示を仰ぐ。頼られても、この俺に名案が出せる訳も無い。とりあえずは、逃げるように伝える。そうして、住民達が避難している倉庫に逃げ込んだ。そこで、カレンとも合流する。
「扇さん、あの声の人は?」
「分からん、呼びかけにも答えないし、死んじまったかも?」
本当に死んでしまったのか?やっと、見つけたと思ったのに……
その時、倉庫のシャッターが破壊され、戦車とブリタニア兵が雪崩れ込んで来た。
「ほら見ろ、訳の分かんない奴に従うくらいなら、毒ガスを使うべきだったんだよ!」
玉城が吼える。
町中で毒ガスを使って、市民を虐殺してどうするんだ?本当に何も考えて無いな、こいつ……
「永田のバカヤロー!」
元々お前のせいじゃないか?言ってて恥ずかしく無いのか?
しかし、本当にもう万事休すと思った、その時……
『全軍に告ぐ、直ちに停戦せよ!……』
クロヴィス総督からの、突然の停戦指示。俺達は、九死に一生を得た。
何故、最初は新宿ゲットーごと俺達を抹殺しようとしたクロヴィスが、停戦、並びに負傷した日本人の手当てまで指示をして来たのか……
狐につままれたような気分だったが、俺にはやはり確信があった。あの男だ、あの男が何かしたのだ。あの男は生きている。
ついに見つけたぞ!ナオトの代わりに、この組織を統べる男。俺のナンバー2の座を揺るぎ無いものにする人身御供!
何処の誰かは知らんが、必ず見つけ出す!必ず!
だが、捜そうにも何の手掛かりも無かった。その上、先日の事件のせいで軍の警戒が厳しくなっているため、今は思うように動けない。
当面はレジスタンスの活動もできないので、カレンには学校に戻るように伝えた。もうカレンを無理にリーダーに仕立てる必要は無い。あの男さえ見つけ出せれば……
元々、ナオトは、カレンをレジスタンスに入れる事には賛成していなかった。今となっては、止めろと言ってもカレンが聞かないだろうが。
そんな時、ブリタニアからクロヴィス総督が暗殺されたとの報道があった。そして、その犯人は、名誉ブリタニア人の枢木スザクと発表された。
俺達は、アジトのテレビでそのニュースを見て驚いていた。
「だから、さっさと声明を出せば良かったんだ!俺達の手柄になったのによお!」
玉城が、文句を言って部屋を出て行く。
何を言ってるんだあの馬鹿は?声明を出す?何の?今ニュースを見るまで、俺達はクロヴィスが死んだ事すら知らなかったんだぞ……
ナオト、やっぱり、俺には無理だ。あんな馬鹿の居る組織をまとめ上げるなんて……
そう考えていると、携帯の着信音が鳴った。カレンからだ。
『扇さん、例の声の主から連絡が入ったわ!』
「な……何だって?」
『明後日の16時に、旧東京タワーの展望室にひとりで来いって!』
「ほ……本当か?」
まさか、向こうから連絡して来るとは……このチャンス、絶対に逃しはしない!
何か、扇を扱き下ろすつもりが、玉城を扱き下ろす話になってしまいました。
でも、コードギアスって、扱き下ろしたくなるキャラが多すぎるんですよね?スザクとかニーナとか……
本編で、扇は何でゼロにリーダーを頼もうと思ったんでしょうか?親友の意思を継いでレジスタンスを引き受けたなら、そんなに簡単に得体の知れない男に協力するでしょうか?周りの反対を押し切ってまで。
カレン以外は、はっきり言ってゼロを信用していませんでしたよね?優柔不断で、周りにばかり気を使う人間が、このような冒険をするとは考え難い。
色々と胡散臭いです、扇は。