それは、扇の心にも大きな迷いを起こさせます。
特区に参加するか?黒の騎士団に残るか?苦渋の選択を迫られる扇。
しかし、事態は彼の思わぬ方向に流れて行きます。
エリア11副総督にして、神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは、エリア11内の富士山周辺に“行政特区日本”を設立する事を宣言した。
この特区内ではイレブンは“日本人”の名を取り戻し、イレブンへの規制、ブリタニア人の特権は存在しない。正に、ブリタニアの中の独立国だ。
これは、日本人にとっては、衝撃的な大ニュースであった。日本人の枢木スザクを騎士に任命したユーフェミアの発言である事もあり、行政特区日本は瞬く間に日本人に受け入れられた。恭順派だけで無く、反抗派からも特区への参加者が現れた。
「支持者だけでは無い。第七区からも特区に参加する人間が出て来ている。」
藤堂が事態の深刻さを説く。俺達は、アジトトレアーラーの中で、この件について協議していた。
「黒の騎士団と違って、特区日本にはリスクがありませんしね。」
「それに、由緒正しいお姫様と、正体不明の仮面の男じゃ、どう見てもあっちの方が良さげだし。」
ディートハルトもラクシャータも、冷静に一般的な見解を述べる。
「京都も、向こうに協力するって話だ。」
「何だよ、そりゃ!」
南の言葉に、玉城が不満を漏らす。
「平等って言われちゃな。」
「平等なんて、口だけで信用できないって!」
「賛成……でも今は、早急に対応決めないと。」
杉山の言葉を否定するカレンに、朝比奈も同意する。
俺は、昨日の千草の言葉を思い出す。
「特区に参加したいって?」
「あそこなら、ブリタニアとかイレブンという縛りは関係無いし。」
もし、本当にブリタニアに支配されずに、日本人として暮らせるのなら、行政特区日本に住んでもいいんじゃないか?そうすれば、千草と一緒に……
「なあ、ユーフェミアの提案通り、黒の騎士団ごと参加する訳には行かないかな?」
「だからブリタニアの約束は……」
俺の言葉に、玉城は異を唱えるが、
「ゼロが言っている事と、特区に参加する事は矛盾しないだろう。」
「でも、それは……」
「まず、平和という名目で、武装を解除させられるな。」
カレンが何か言い掛けたが、それを遮って千葉が言う。
「そりゃ困ったわあ。」
ラクシャータは、自分のやりたい事が出来なくなる事を心配している。
「我々は大勢に取り込まれ、独立は失われる。」
と、藤堂。
「しかし、参加しなければ自由と平等の敵となる。」
ディートハルトは、参加しない場合の懸念点を述べるが、
「だったら、まず参加して……」
と俺が言うと、
「何の保証も無くですか?」
と、返して来る。
「でも、無視はできない!」
黒の騎士団を辞めて、行政特区に行くか?しかし、それじゃ皆を裏切る事になる。いや、もう既に千草を匿っている時点で、俺は皆を裏切っている……
どの道、裏切り者なんだ。実務上、黒の騎士団にもう俺は必要無い。だったら、黒の騎士団を抜けて、千草とふたりで特区で暮らせば……
もしそうなるんなら、もう一度千草とやり直せるのなら、もう嘘は止めて、真面目にあいつとふたりで……
この件に関しては、中々ゼロからの指示が来なかった。それだけに、黒の騎士団内部では対応について揉めに揉めた。
それでも、やはり皆ブリタニアを信用できないという気持ちが強く、特区には参加しないと考えている者が殆どだった。そんな中で、俺だけは、黒の騎士団を辞めても特区に参加したいと、本気で考えていた。
ゼロからの指示が出たのは、日が暮れた後だった。
しかし、幹部どころか、俺や藤堂ら首脳部にも、作戦の詳細は語られなかった。
まず、ゼロが単独でユーフェミアと話をする。黒の騎士団各位は、万一に備えて式典会場の近くで、いつでも戦闘に入れる状態で待機せよとの事だった。
式典開始時間、ゼロは、ガウェインで単独で会場に向かう。そして、ユーフェミアとふたりだけで別室に入って行く。その間、俺達は指示通り式典会場周辺で、自在戦闘装甲騎に乗って待機していた。
待ち時間が長く、玉城からは不満の声が上がる。
『なあ、俺達いつまでここに居りゃあいいんだよ?』
『ゼロがここで待てって言ったのに、信じられないの?』
『だってよお……』
「全てはブリタニアの真意を確かめてからだ。」
もし、本当にブリタニアが特区を認めるのなら、俺は……
『副司令。』
藤堂が、話し掛けて来る。
「は……はい。」
『その真意が分かっているからこそ、全軍を四方に伏せてあるのでは?』
「断定は危険です。」
そうだ、ブリタニアが本気で特区を認めるなら、いくらゼロでもそれを覆して攻撃は出来ないだろう。“正義の味方”の口実が無くなる。それでもブリタニアと戦い続けたかったら、もう日本を出て行くしか無い。
式典開始時刻をかなり過ぎても、始まる様子も無く不安に思っていたところ、突然、会場内から銃撃のような音と大勢の悲鳴が聞こえて来た。
『何?会場で何が起こったの?』
『今確かめてるよっ!』
困惑するカレン。玉城も混乱して答えられない。
いったい何が起こってる?放送を見ていないこちらには、状況が分からない。
すると、会場の壁を突き破って、ブリタニア軍のナイトメアが外に飛び出して来た。更に、ゼロのガウェインが会場の上に現れ、ブリタニア軍と戦闘を始める。
そこで、ゼロからの指令が全員に入る。
『黒の騎士団総員に告げる。ユーフェミアは敵となった!行政特区日本は、我々を誘き出す卑劣な罠だったのだ!自在戦闘装甲騎部隊は、式典会場に突入せよ!ブリタニア軍を壊滅し、日本人を救い出すのだ!急げ!そして……ユーフェミアを……見つけ出して殺せ!』
皆、衝撃に言葉を失う。
何だと?罠だった?ぜ……全部嘘だったのか?俺は、そんなものに振り回されていただけなのか……
黒の騎士団の自在戦闘装甲騎部隊は、全機発進し式典会場を目指す。
藤堂、カレンらが正面から突入して大半のブリタニアのナイトメアを引き付ける。その隙に、俺は裏から式典会場に飛び込み、真っ先に桐原公を救出する。
「ふん……やはり、こうなるのか……そうだよな、俺が、お前の生まれ変わりのような女と、ありきたりな幸せを掴むなんて……お前が……千草が、許す筈無いよな……」
余計な夢を見なければ、こんな気持ちにはならなかった。ぬか喜びだけさせて、一気に突き落すなんて……
残存のナイトメアが数機いたが、とにかく撃ちまくって撃破する。全ての怒りをぶつけるが如く。
「許せない!俺の気持ちを踏み躙りやがって……ユーフェミア!」
黒の騎士団により、行政特区に配備されたブリタニア軍は一掃された。
そしてユーフェミアは、ゼロが射殺した。
戦闘終了後、俺は救助した桐原公と途中合流した京都六家の代表達と共に、ゼロと合流した。
「やっとお会いできましたね!」
京都六家の代表のひとり、紅一点の皇神楽耶様が、笑顔でゼロに語り掛ける。
「ゼロよ、これからの事だが、わし等の元で……」
「逆だ!」
桐原公の言葉を、ゼロが遮る。
「こうなった以上、京都六家の方々は私の指揮下に入って頂く。反論は許さない!他にお前達が生き残れる道は、無くなった!」
この言葉に、京都六家の代表は、反論は出来なかった。
その後、俺達は、生き残った日本人達を再び式典会場に集めた。
会場の周りは、黒の騎士団が守りを固めている。ステージの上には、ゼロを中心に、俺と京都六家の代表達が立つ。ディートハルトは民衆側に居て、中継を流すための撮影隊を指揮している。
そして、ゼロが演説を始める。
「日本人よ!ブリタニアに虐げられた、全ての民よ!私は待っていた。ブリタニアの不正を影から正しつつ、彼らが自らを省みる時が来るのを……しかし、私達の期待は裏切られた、虐殺という蛮行で!そうだ、ユーフェミアこそ、ブリタニア偽善の象徴、国家という体裁を取り繕った人殺しだ!私は今ここに、ブリタニアからの独立を宣言する。だがそれは、かつての日本の復活を意味しない。歴史の針を戻す愚を、私は犯さない!我らがこれから造る日本は、あらゆる人種、歴史、主義を受け入れる広さと、強者が弱者を虐げ無い、矜持を持つ国家だ。その名は、合衆国日本!」
会場に集まった日本人達から、大歓声が上がる。続いて、“ゼロ”コールが沸き起こる。
皮肉な事に、行政特区日本が悲惨な結末を迎えたその式典会場で、ゼロによる新たな独立国、“合衆国日本”が誕生した…………
原作の23話での、扇の表情は異常です。これも、キャラが違う。
ディートハルトは、ユーフェミアの日本人虐殺に嬉々としていました。これで自分の思惑通りに進むというのもありますが、ゼロが何か仕組んだ事を見抜いています。
それに対して扇は、そこまで見抜く事はできないにしても、何の違和感も感じなかったのでしょうか?それまで日本人に対して理解が有り、日本人であるスザクを自分の騎士にまでするユーフェミアが、理不尽に日本人を虐殺する事に。もし最初からそんな女なら、河口湖で日本解放戦線を皆殺しにしています。
あまりの怒りに周りが見えないという考えもありますが、扇にとって、そこまで怒る事でしょうか?馬鹿の玉城や、ブリタニアに強い憎しみを持つカレンなら分かります。でも扇は、そこまでブリタニアを憎んでません。ブリタニアの女に惚れてるくらいですから。
じゃあ、何で扇はここまで怒っているのか?と考えて、この話の展開になりました。
ようやく改心仕掛けて、真面目に暮らそうかと考えていた扇の未来は、皮肉にも、ゼロにより台無しにされたのです……
原作の23話では、ニーナが酷く衝撃を受けて壊れてしまいます。ですが、彼女が衝撃を受けたのは“ユーフェミアがゼロに殺された”事だけで、あの優しかったユーフェミアが、“日本人を大虐殺するという狂気に及んだ”事には、全く何も感じていません。
所詮イレブンなど、虫けら以下としか見ていないのでしょう。もしR2でフレイアが爆発したのが租界上空じゃなくて、ゲットー上空だったら、何のショックも受けずにその威力に満足していたでしょう。
“残虐皇女”など目じゃありません!本当に最凶最悪の女です。