そんな中で、千草の事が気がかりで、任務に集中できない扇。
しかし、扇の知らない間に、ヴィレッタは記憶を取り戻していました。
そして、最終決戦の最中、全てを思い出した彼女が扇の前に……
特区日本でのユーフェミアの日本人大虐殺の映像は、ディートハルトらの手により日本全土に流された。これにより、エリア11各地で、ブリタニアに対する反乱が勃発した。
この機に乗じて、黒の騎士団は、特区でブリタニアから奪取した巨大陸戦艇を母艦として、東京租界に向けて進軍を開始した。これに、各地のレジスタンス達も合流し、勢力を拡大しつつ進撃して行った。
東京租界に向かう巨大陸戦艇の中で、自在戦闘装甲騎の整備を指示しながら、俺は千草に電話を掛けた。各地で日本人がブリタニアに対して暴動を起こしている。そんな中で、ゲットーにひとり残して来た彼女が心配になったからだ。
「ひとりで大丈夫か?とにかく、ドアはしっかりとロックして、外には出ないようにしろよ。」
『分かってます。要さんの方こそ大丈夫?確か、静岡で仕事だって。』
「ああ、こっちは何とか……なあ、千草、帰ったら大事な話しがあるんだが……」
『うふ……』
「ん?どうした?」
『初めて、その名前で呼んでくれましたね。』
「ああ、すまない。変だったかな?」
『いいえ!それじゃあ、待ってます!』
それで、電話を切った。本当なら側に居てやりたいが、これから東京租界に攻め込もうって時に、お飾りとはいえ副司令が抜ける訳にはいかない。
だが、この戦いに勝ったら、今度こそ俺は、黒の騎士団を辞める気でいた。辞めて、千草と何処かに姿を隠すつもりでいた。
これで東京租界を落とせば、事実上エリア11は“合衆国日本”の領土となる。そうなれば、今度はブリタニア本土との戦争だ。そして、現在エリア11にいるブリタニア人と、日本人の立場は完全に逆転する。
千草は、“イレブンになってもいい”と言ったが、それはブリタニアの支配の中での話だ。日本の支配下になれば、いくら日本人になりたいと本人が言っても、日本人が許さないだろう。今のエリア11でイレブンが受けている迫害を、今度は千草が日本人から受ける事になる。俺が公に庇おうとすれば、裏切りが発覚して、俺自身もどうなるか分からない。行政特区日本なら、前に彼女が言ったように、そんな縛りは無く一緒に居られたかもしれないが……
東京租界に到達して、ゼロはブリタニア本隊に降伏勧告をしたが、当然の事ながらそれは受け入れられなった。そして、遂に最終決戦の幕が開いた。
ゼロはあらかじめ工作員を忍び込ませていたようで、開戦と同時に租界外延部が崩れ、こちらを迎え撃とうとしていたブリタニアの前線部隊は大打撃を受けた。そこに、藤堂率いる自在戦闘装甲騎隊が突入する。コーネリアを含む生き延びたブリタニア残存部隊は、一時政庁まで退いて行く。
ゼロは、更に指示を送る。
『ゼロ番隊は特務隊と共に、学園地区を優先して抑えろ。その中のひとつに、司令部を置く。扇、お前もそこで配置に付け。』
俺は、千草が心配で電話を掛けていた。そのため、返事が遅れた。
『扇!』
ゼロの呼び掛けに、俺ははっとして返事をする。
「あ……ああ、分かった。」
いくら電話を掛けても、千草は出なかった。どういう事だ?何かあったのか?
ゼロはガウェインで先行し、ブリタニアの航空部隊をハドロン砲で一掃する。
『ディートハルト、航空戦力は片付いた。G-1は神楽耶に任せろ!お前は予定の位置に移動しろ!』
『分かりました。』
『吉田は雷光の準備!』
『おう!』
ゼロは、次々と指示を出す。そして、当然現れるであろう“奴”への対策も忘れない。
『玉城、ラクシャータは?』
『移動中だよ!』
『カレンはバックアップに回れ!』
『はい!』
『藤堂、対称が現れたら、』
『分かっている。』
『よし!扇、協力者の名は?』
「あ……ああ、篠崎咲世子と言って……」
『何?』
ん?何だ?この反応は……知っているのか?
ディートハルト達は全ての放送局を押さえ、ゼロと俺達は司令部を置くために、アッシュフォード学園を占拠した。
その時、俺に連絡が入った。俺は、急いでゼロに告げる。
「ゼロ!ランスロットが!」
「やはり来たか?」
ランスロットは、こちらの自在戦闘装甲騎を次々と撃破、雷光も撃破してアッシュフォード学園に迫る。カレンの紅蓮が立ちはだかるが、激戦の末、左腕を犠牲にして紅蓮の右腕を破壊したランスロットに、紅蓮は追い詰められてしまう。
しかし、そこにゼロのガウェインが介入。1対1の勝負を呼び掛け、罠を張ったエリアにランスロットを誘い込む。そして、式根島の時と同様に、ゲフィオンディスターバーでランスロットの動きを封じた。
俺は学園内に設置した司令部で、全軍の状況を確認しながらゼロの補佐をしていた。
「T4が政庁方向に?敵の航空部隊がもう着いたのか?」
「いや、1機だけらしい。」
「なら、大勢に影響は無いだろう。学園地区は我々が、メディア地区はディートハルト達が抑え、後詰めとして神楽耶様達も居る。あとは後方さえ抑えれば勝てる。死んでいった吉田達のためにも……」
「副司令、不審者を捕らえました。」
後ろからの団員の声に、俺は振り向かずに答える。
「学生か?なら、逃がしてやれ。監禁する理由など無いのだから。」
「いえ、裏門から校内に侵入しようとしたところを……」
「侵入?」
振り向いて、俺は驚く。そこには、団員に拘束された千草の姿があった。千草は、俺が港で発見した時の服装だった。連絡がつかなかった理由は、こちらに向かっていたから?
「か……彼女は、直属の協力員だ。別室に案内を、俺が、直接報告を聞こう。」
拘束を解いて、別室で千草とふたりだけで話をする。
「千草、どうしてこんな戦場に来たんだ?安全な所を捜すから、ひとまず俺と……」
肩を抱こうとすると、彼女はそれを避けるように後ずさりする。
まさか、俺が黒の騎士団の一員である事を、隠していたのを怒っているのか?
「その、隠していて悪かった。でもこれは、平和のためにやっている事なんだ。ゼロがブリタニアから日本を開放すれば、俺達は一緒になれる。
「気持ち悪い事を言うな!」
千草は、素早く俺の背後に回り込む。そして俺の上着の右ポケットから拳銃を奪い取り、俺に突き付ける。
「私と、お前みたいなイレブンが一緒になる?ふん、私の名は“ヴィレッタ・ヌウ”、ブリタニアの騎士候だ。」
「あ……あの……」
振り向いた俺に、彼女は引き金を引く。
「うっ!」
腹部を撃たれ、俺はその場に崩れ落ちる。
「そ……そうか、千草、記憶が戻っ……たのか……」
彼女は、俺の生死は確認せず、そのまま部屋を出て行ってしまう。
う……迂闊だった……良く考えれば、あの争い事を嫌う千草が、こんな戦場の真っ只中に来る筈が……あの服装だって、過去の自分を嫌って、全く着ようとしていなかった……
ふ……本当にあいつは、千草の生まれ変わりだったのかもな……千草の代わりに、俺に、引導を渡しに来た…………
そのまま、俺は意識を失った。
しかし、俺の悪運はまだ尽きてはいなかった。弾は急所を外れていて、南の呼び掛けで俺は意識を取り戻した。ただ、重症は重症で、動く事もできない。団員達に運ばれて行く中で、現在の状況を南から聞かされた。最初は優勢だった戦況も、ブリタニアに援軍が来たせいでかなり劣勢になっている。更には、ゼロが指揮を放棄して、戦場を離れてしまったとの事だ。何処へ行ったのかは、誰も聞かされていない。
その時俺の目に、上空を横切っていく白いナイトメア、ランスロットの姿が映った。
俺は、横にいる団員に話し掛ける。
「か……カレンに、れ……連絡を……」
「馬鹿を言わないで!そんな状態で!」
彼は止めるが、
「た……頼む……」
俺が必死に頼むので、団員は根負けしてカレンに連絡し、携帯を俺の顔に近づける。
「か……カレン……」
『扇さん?だ……大丈夫なんですか?』
「ああ……それより……カレン……ゼロを、追え……彼の、行動には……意味が、ある筈……助けるんだ……ゼロ……ナオトの、夢を、継ぐ者……」
『でも、どうやって捜せば?』
「そろそろ、見えるだろう……」
『え?……あれは?ランスロット?あいつがここを離れる理由なんて……』
「ラクシャータが、発信機を……な……」
『分かりました!』
これでいい。ナオトの名を出せば、カレンは必ずやり遂げる。この状況で、ゼロが逃げる事はあり得ない。きっと、ブリタニアとの戦争よりも優先すべき、何かがある。それこそ、ゼロの弱み…………
そこまで考えたところで、俺は、再び意識を失った。
原作のヴィレッタの行動ですが、どうにも腑に落ちません。
何で、扇の所に行ったのでしょうか?単にゼロの正体をばらして出世したかったら、ブリタニア軍に真っ先に戻るべきです。わざわざ黒の騎士団に捕まるような事をして、万一問答無用で撃たれたら、どうするつもりだったんでしょうか?それに、潜入するならブリタニア軍の服では無く、千草の時の服の方がいい筈です。もし最初に見つかった相手が玉城だったら、本当に撃たれてたかもしれません。
ところで、扇はここで重症なんですが、何でブリタニア軍は助けたんですかね?多分、治療を続けなければ死んでいます。これだけ大きな反乱を起こしたんですから、黒の騎士団の幹部なんて大罪人ですよね?下っ端の兵士はいいとしても、副司令なんて真っ先に公開処刑されそうなんですが……