幹部の殆どが捕えられ、扇も牢の中で処刑を待つしかない状況でした。
しかし、1年の沈黙を経て、ゼロが、再び動き始めます。
ブラックリベリオンから約1年が過ぎた。
土壇場でゼロを失った黒の騎士団は、指揮系統が混乱し、一気に劣勢を強いられた。お飾りとはいえ、副司令の肩書きを持つ俺の離脱も影響した。特に、元からの黒の騎士団メンバーの動揺は大きかった。多くの団員が命を落とし、生き残った者もブリタニア軍に捕らえられた。逃げ延びたのは、ゼロを追って行ったカレン、ディートハル達諜報部とやラクシャータ達技術開発部、神楽耶様と卜部の率いる極少数の部隊だけだった。
俺としては、逆に捕虜になった事で生き延びられたのかもしれない。あのまま戦闘が長引けば、まともな治療も受けられず命を落としていた可能性もある。直ぐに捕らえられた事で、軍の医療施設でしっかりとした治療が受けられた。これも、俺の悪運の強さなのだろうか?
また、本来なら黒の騎士団の副司令となれば、大罪人として公開処刑されてもおかしくないところだ。しかし、あまりにもリーダーのゼロのインパクトが大きすぎて、副司令と言ってもお飾りの俺では“公開処刑してもレジスタンスに対して殆ど効果は無い”と思われたのか、他の団員と共に1年間牢に繋がれていた。
「ぐわっ!」
拘束着で拘束された玉城が、衛兵に突き飛ばされて通路に倒れ込む。
「ぜ……ゼロさえ居れば、お前らなんかに……」
「もう言うな!裏切り者の事は。」
牢の中で、同じように拘束着で拘束された千葉が言う。
「裏切ってなんかいねえよ!ゼロは!」
「静かにしろっ!」
「ぐわっ!」
千葉の言葉に反論する玉城を、衛兵が銃で殴り飛ばす。
「わ……わかった、ご……御免なさい……」
見っとも無く謝る玉城だが、衛兵はここぞとばかりに殴りまくっている。
俺も、同じように拘束着で拘束されて、牢の中だ。流石にこんな状況ではいい気味とも思えず、顔を背けて言葉を返す。
「何か、事情があったんだろう。」
「事情?最終決戦で、指揮官が居なくなる理由なんて……」
「やめろ!」
更に反論する千葉を、藤堂が制する。
「いずれにせよ、ゼロは死んだのだ。」
藤堂の言葉に、俺は衝撃を受ける。
「し……死んだ……」
治療を受けていたため、俺が牢に入れられたのは皆よりかなり後だ。皆は、ブリタニア軍からゼロの死亡を聞かされたようだが、俺は直接聞いてはいない。
そこで、ふと疑問が湧いてきた。ゼロは本当に死んだのか?なら、何故俺達をいつまでも生かしておく?新しいエリア11の総督カラレスは、“しつけ”と銘打ってやたらとレジスタンスを処刑している。なら、真っ先にブラックリベリオンの主犯の俺達を処刑する筈じゃ無いのか?
もし、俺達を生かしておく理由があるとすれば、ゼロだ。ゼロが死んだ確証が無いから、再び彼が現れた時のために、人質として俺達が必要なんじゃないのか?
その俺の考えは正しかった。数日後、元エリ11総督でブラックリベリオン以降消息不明となっているコーネリアの騎士、ギルフォードが俺達の前に現れた。
「ここまで、お前達を生かしておいた価値があったな?」
「何?どういう意味だ?」
「ゼロが現れた。」
『何っ?!』
牢の中の全員が、一斉に驚きの声を上げる。
やはり、ブリタニアはゼロの生死を確認できていなかった。黒の騎士団の残党や、レジスタンスの士気を下げるため、ゼロが死んだというデマを流していたんだ。
「ほら見ろ!俺のゼロが、簡単に死ぬもんかよ!」
玉城は、呑気に奇声を上げる。
馬鹿め、手放しに喜んでる場合か!わざわざ、親切に俺達に教えに来る訳が無いだろう。そう言って来たという事は、俺達を利用するために決まってるだろう。
「明日、お前達の公開処刑を行う!」
「な……何だと?」
ほらな、当然そうなる。
ゼロは中華連邦総領事館内に、再度“合衆国日本”を立ち上げ立て籠もった。総領事館内は中華連邦の領土となるため、ブリタニアも手出しが出来ない。ギルフォードは、ゼロを総領事館の外に引きずり出すため、俺達を囮に使う。
総領事館の前に、俺達を収容した3台の大型護送車が並ぶ。車の中には捕らえられた全ての団員達が、拘束着で拘束され収容されている。俺達幹部は、その護送車の屋根に磔にされて並んでいる。
「聞こえるか?ゼロよ!私はコーネリア・リ・ブリタニア皇女が騎士、ギルバート・G・P・ギルフォードである!明日15時より、国家反逆罪を犯した特一級犯罪者、256名の処刑を行う!ゼロよ、貴様が部下の命を惜しむなら、この私と、正々堂々と勝負をせよ!」
ギルフォードが、ゼロに対して声明を述べる。
夜になって、玉城は不安そうに俺に聞いて来る。
「なあ、復活したゼロって、あのゼロかな?」
何だ?昼間はあんなに浮かれてた癖に、今頃心配になったのか?
「さあな?」
俺は、そっけない返事を返す。
「どちらにしろ、また見捨てるつもりだろう。私達を……」
相変わらず、千葉はゼロを全く信用していない。
俺にとっては、復活したゼロが本物であろうと偽者であろうと構わない。俺達は、元々ゼロの正体を知らないんだ。例え中身が昔のゼロで無かったとしても、同じ能力を持っていれば、それは以前のゼロと何ら違いは無いのだから……
そして、処刑当日。
刻一刻と処刑の時間は迫る。しかし、一向にゼロが現れる気配は無い。
総領事館の前には、グラストンナイツを含め何機ものナイトメアが配置されている。その後ろに俺達が収容されている護送車。その後ろにまた何機ものナイトメアが配置され、単独での奇襲はまず不可能だ。
その更に後ろには硬質ガラスのゲートが有り、その外に大勢の日本人が集まっている。
「ゼロは我々を裏切ったのだ。助けに来る筈が無い。」
「絶対来る!あいつが本物なら!生きていたなら!奇跡を起こしにやって来るんだ!」
否定的な発言を続ける千葉を、今度は玉城が否定する。
「奇跡……か……」
藤堂が、吐き捨てるように呟く。
流石に、分かっているな藤堂は……8年前の戦争で“厳島の奇跡”を起こして、唯一ブリタニアに土を付けた男。だが、それは奇跡でも何でも無い。多少の運はあるだろうが、綿密に練られた計画と、現場での状況を的確に読んだ対応、それがあって初めて勝利の女神は微笑む。何時、何処ででも起こせるものでは無い。例え、復活したゼロが本物であったとしても、策が行使できなければどうにもならない。
とうとう処刑の時刻となったが、ゼロは、姿を現さなかった。
「ゼロ様!」
「お願いです!」
「どうか、奇跡を!」
集まった日本人達が、ゼロにすがる様に声を上げる。そこに、ギルフォードの声が、
「イレブン達よ、お前達が信じたゼロは現れなかった!全てはまやかし、奴は私の求める正々堂々の勝負から逃げたのだ!……構え!」
目の前に並ぶナイトメア各機の機銃が、俺達に狙いを定める。
俺は、覚悟を決め目を閉じる。
「いやだ~っ!」
玉城は、相変わらず見っとも無く悲鳴を上げる。
「もういい、良くやったよ、俺達……」
昨日の今日では仕込みは出来なかったか?更に、総領事館は四六時中ブリタニアに監視されている。流石のゼロでも、これでは手の打ちようが無かったということだ。
「違うな!」
「ん?」
突然、聞き覚えのあるあの言葉が、辺りに響き渡る。
「間違っているぞ!ギルフォード!」
背後の、集まった日本人達の後ろに、無頼に乗ったゼロが現れた。
「ギルフォードよ、貴行が処刑しようとしているのはテロリストでは無い!我が合衆国軍、黒の騎士団の兵士だ!」
「ゼロが?」
「どうして?」
朝比奈と千葉は、未だに信じられないという様子だ。
「本物なのか?」
あっさりと姿を現した事に、俺も疑問を感じてしまう。
「決まってんだろ、ゼロ~っ!」
玉城は、何の考えも無く叫んでいる。
そのままゲートを通り、ゼロはギルフォードの前まで来る。そして、ギルフォードの誘いに乗って、ナイトメアでの1対1の決闘を申し込む。しかし、武器をひとつずつと条件を出しておきながら、ギルフォードのランスに対して、ゼロが選んだのは暴徒鎮圧用の盾だった。
辺りは騒然とする。藤堂までもが、ゼロは自決するのかと疑った。
だが俺は、心の中で笑っていた。
あいつは本物のゼロだ。あの男が、正面から馬鹿正直に闘う筈が無い。盾を選んだ時点で、もう決闘の意志が無い事が分かった。既に、仕込みは終わっている。だからこそ、奴は姿を現した。
「質問しよう、ギルフォード卿。正義で倒せない悪が居る時、君はどうする?悪に手を染めてでも悪を倒すか?それとも、おのが正義を貫き、悪に屈するを良しとするか?」
「我が正義は、姫様のもとに!」
ギルフォードは、真っ直ぐゼロの無頼に突進して来る。
「成程、私なら、悪を成して、巨悪を討つ!」
ゼロがこう話した瞬間、その場を凄まじい振動が襲う。
「じ……地震?」
「いや、この作戦は?」
突然、俺達が居た階層が崩れ、総領事館側に倒れていく。ブラックリベリオンで、租界外苑を崩壊させたのと同じ作戦だ。俺達が乗る護送車も、ブリタニア軍も、まとめて総領事館内に滑り落ちていく。ゼロの無頼は、盾をスケートボード代わりにして、悠々と総領事館内に滑り込む。
「黒の騎士団よ!敵は我が領内に落ちた。ブリタニア軍を壊滅し、同胞を救い出せ!」
紅蓮弐式を先頭に、自在戦闘装甲騎隊がブリタニア軍に攻め込み、俺達は無事救出される。
ギルフォード達は、何とか総領事館内に滑り落ちるのは免れたが、中華連邦からの警告も有り、この場は退却せざるをえなかった。
晴れて俺達は自由になり、カレンと卜部達が用意してくれてあった団員服に着替える。1年振りの団員服に、皆一気に気分が高まり、もう日が暮れたというのに、総領事館の中庭で大騒ぎとなる。
だが、俺達が助かった影で、尊い犠牲も出ていた。詳細は語られなかったが、ゼロを復活させるために、卜部を含む何人かの団員が命を落としていた。
『ゼロだ!』
そこに、ゼロが姿を現した。皆、一斉にそちらを向き、中庭は騒然とする。
「待て、待てっ!」
歓声に近い声が上がる中、千葉と朝比奈が皆を制して前に出て行く。
「助けてもらった事には感謝する。だが、お前の裏切りが無ければ、私達は捕まっていない。」
「ひと言あってもいいんじゃない?」
このままでは収まりがつかないと思い、俺もひと言口を出す。
「ゼロ、何があったんだ?」
だが、ゼロの答えは、
「全ては、ブリタニアに勝つためだ。」
「ああ、それで?」
「それだけだ。」
『はあ?』
流石に、千葉や朝比奈はこれでは収まらない。
「他に無いの?いい訳とか、謝罪とか……」
「やめろ!」
朝比奈の言葉を遮って、藤堂が前に出て行く。
「ゼロ、勝つための手を討とうとしたんだな?」
藤堂は、ゼロの所まで歩み寄って行く。
「私は常に結果を目指す。」
「分かった。」
そう言って、藤堂はゼロの横に立つ。
「作戦内容は、伏せねばならない時もある!今は、彼の力が必要だ!私は、彼以上の才覚を他に知らない!」
その言葉に同意し、俺もゼロの横に立つ。
「俺もそうだ!皆、ゼロを信じよう!」
「でも、ゼロはお前を駒扱いして……」
南の呟きが耳に入るが、俺はあえてそれを無視した。ゼロが俺達を駒扱いしている事なんか、俺は最初から気付いている。
「彼以外の誰にこんな事ができる?ブリタニアと戦争するなんて、中華連邦だって無理だ!EUもシュナイゼル皇子の前に負け続けているらしいじゃないか!俺達は、全ての植民エリアにとって希望なんだ!独立戦争に勝つためにも、俺達のリーダーはゼロしかいない!」
「そうだあ~っ!ゼロ!ゼロ!ゼロ……」
玉城の掛け声を号令に、“ゼロ”コールが沸き起こる。
黒の騎士団は、再びゼロをリーダーと認め、ひとつに結束した。
ゼロ、俺にとっても、お前はまだまだ利用させてもらわなければならない。だから、しばらくはお飾りの副司令を続けさせてもらう。だが、もし利用価値が無くなった時は、容赦無く切らせてもらう。そう、お前が1年前に、俺達にそうしたように……
原作では、この時点で扇は全然ゼロを疑っていません。ブラックリベリオンの職場放棄も“何か事情があったんだろう”だし、南の“駒扱い”の言葉にも耳を貸しません。更に、カレンにゼロを追わせておいて、ゼロが職場放棄した理由をカレンに問い質そうとすらしません。
そこまで信じ、信頼していた相手を、ただ“ギアスで人を操れる”と知っただけであそこまで公に否定するのは、それまでの扇の性格ではあり得ません。それに、自分達にもギアスを使われていたかもみたいに言っていますが、扇は実体験者のヴィレッタから話を聞いているので“記憶の喪失”の事も、当然聞いている筈です。自分にそれが無い事には直ぐ気付くだろうし、その事を仲間には一切言っていません。
“独立戦争に勝つために”ゼロの力が必要なんです。逆に言えば、その障害になるのならもう不要という事です。
一方のゼロですが、扇など殆どあてにしていないのが原作のこの話でも良く分かります。
黒の騎士団員の救出を画策している時に、“明日には藤堂達が処刑されてしまうのだから”と言っています。必要としているのは藤堂です。
話は違いますがR2の1話で、カルタゴ隊がC2を発見したんで、もう用無しのルルーシュを殺そうとしましたが、こいつら皇帝直属ですよね?ルルーシュの素性は隠していたとしても、“餌は殺しても構わない”という話になってたんでしょうか?だとすると、シャルルはもうルルーシュの生死に拘っていない。完全に捨てていますよね?
「お前ら親は、俺とナナリーを捨てたんだよ!」
その通りですね。