そもそも、この話を書きたくてこの二次創作を始めたんですが、書いている内にだんだん扇がそれ程“鬼畜”でも無くなって来てしまっていました。
しかし、この話では完全に“冷徹な悪役”に変貌します。
フレイヤの爆発で、現場は敵味方共々混乱していた。ゼロも異常な程取り乱し、“ナナリーを捜せ!”を連呼するだけだ。
俺は、現場はそっちのけで、斑鳩内を滑走路に向かって走っていた。
いつの間にか、ディートハルトがブリッジから消えていた。逃げ出した千草を追って行ったに違い無い!下手をすれば、千草が殺されてしまう。
「逃亡者は、左滑走路なんだな?」
『待って下さい、それより軍の再編成を……』
インカムから、オペレータが俺に指示を仰いで来る。
「分かっている、直ぐ戻るから!」
「扇、」
急に呼ばれて振り返ると、
「千草?」
千草が、開けたドアにも垂れかかるようにして、こちらを見ている。
逃亡者って、千草の事じゃ無かったのか?なら、ディートハルトに見つかる前に船外に……
「話がある……ゼロの事だ。」
「何?」
他の者に聞かれるとまずいのと、何より彼女の姿を他の団員に見られるのもまずいので、俺達は一旦、千草が監禁されていた部屋の中に入りカギを掛ける。
相変わらず、インカムでオペレータが俺に指示を仰いで来る。しかし、今はこっちの方が重要なので、俺をインカムを外す。
「そ……それで?」
俺は、話の続きを聞く。
「あ……ああ、ゼロの正体は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、神聖ブリタニア帝国の第十一皇子だ。」
「な……何だって?」
ブリタニア人だとは思っていたが、まさか、皇族だったとは……
「彼は、幼い頃に妹であるナナリー総督と共に、外交の道具として日本に送られた。その後、第二次太平洋戦争が勃発したため、その戦争で亡くなったとされていた。」
早い話が、捨てられた訳か。彼がブリタニアに強い憎しみを抱いているのは、そのためか?
「それから、ルルーシュは“ギアス”という特殊な力を持っている。」
「ギアス?」
「私も、詳しい事は知らないが、コード保持者と契約する事により得られる、人知を超えた力だ。」
「コード保持者?」
「これも良く知らないのだが、ルルーシュのギアスはC.C.により与えられたものだ。」
「何?」
そうか、それで、C.C.は常にゼロの傍らに居たのか?
「ギアスの能力は、人によって異なる。ルルーシュのギアスは、“絶対遵守の力”。どのような者にも、絶対に逆らう事のできない命令を下す事ができる。」
「な……何だと?じゃあ、“死ね”と命令されたら、その者は自殺するのか?」
「そうだ!」
し……信じられん!そんな力が、この世に存在するのか?
「私も、一度ギアスに掛けられている。シンジュク事変の時、それでサザーランドを奪われた。」
そうか、あの時、ゼロは何処から手に入れたのか、大量のナイトメアを俺達に渡した。あれにはそういうカラクリがあったのか?
「ギアスに掛けられた時は、何故か記憶の喪失が起こる。操られている間の事は、何も覚えていない……」
まさか、俺達もギアスに掛けられて……いや、待て。それは無い。奴は、俺達を信じさせるために、何かと奇跡を起こして見せた。俺達を思うままに操りたいなら、そんな回りくどい事をする必要は無い。“私の命令に従え”とでもギアスを掛ければいい。だいたい、千草の言う“記憶の喪失”は俺は体験していない。元々俺はゼロの言いなりになっていたから、ギアスを使う必要も無かっただろう。
奴の戦略には、有効に活用しただろうがな。あの頭脳にそのような力が加わるのであれば、正に鬼に金棒だ。
「ジェレミアが仲間になったのも、ギアスで操られているのか?」
「いや、それは違う。」
「ん?何故、そう言い切れるんだ?」
「ジェレミア卿は、元々ギアス教団が、ルルーシュを始末するために派遣した刺客だった。教団でサイボーグにされ、ギアスを無効にする力を持っている。」
ギアス教団?サイボーグ?何か、どんどん化け物染みて来てるぞ。
「じゃあ、何でジェレミアはゼロに従う?元々、彼はゼロのせいで軍を追われたんだろ?」
「それは、私にも分からん。ただ、ルルーシュは反逆者とはいえブリタニアの元皇子だ。ジェレミア卿は、皇族への忠義に最も厚い方だったから……」
皇子としてのルルーシュに、忠義を尽くしているという事か?
ん?待てよ……
「そう言えば、さっき“妹のナナリー総督”と言ってなかったか?」
「ああ、ナナリー総督はルルーシュの実の妹だ。ブラックリベリオン以前は、ふたりはアッシュフォード学園内に一緒に住んでいた。その身の回りの世話をしていたのが、篠崎咲世子だ。」
「な……」
それで分かった。さっきのゼロの取り乱しよう、以前ナナリー総督を誘拐しようとした事、全ては、妹のため……奴の、ゼロの弱点は、妹のナナリーか?
ふっ……妹が弱点とは、どこまで似てるんだナオトに……千草といい、ナオトといい、俺の親しかった奴は、死んでも生まれ変わって関わって来るのか?
しかし、この事はまだ皆には秘密にしておいた方がいい。ゼロにそんな力があると分かると、皆、疑心暗鬼に駆られてゼロを信用出来なくなってしまう。
話が終わり、再びインカムを付けると南が俺に呼び掛けている。
「扇だ。」
『扇!何で全然出なかったんだ?今、何処に居る?』
「何だ?何をそんなに慌てている?」
『ブリタニアのシュナイゼル皇子が、和平交渉に来てんだよ!』
「何だって?」
俺は、急いで会議室に向かった。俺の代わりに玉城が出ているとの事だが、とんでもない!
あんな馬鹿に、交渉なんて出来る訳が無い!せっかくの交渉の場を、台無しにされるだけだ!
和平かどうかは定かでは無いが、交渉の役に立つかと思い、千草にも一緒に来てもらった。
会議室の前まで来ると、いきなり玉城の大声が聞こえて来る。
『何だと?』
『神聖ブリタニア帝国元第十一皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、私が最も愛し、恐れた男です。』
『ばかな?』
『ゼロが、ブリタニアの皇子様だって?』
何だ?ゼロの正体を暴露している?和平交渉じゃ無かったのか?
俺は、直ぐには中に入らず、しばらく扉の前で中の会話を聞いていた。
『……そのような戯言で、我らを混乱させようなど。我々はゼロを系譜では無く、起こした奇跡によって認めているのですから。』
『しかし、その奇跡が偽りだとしたらどうでしょう?』
『偽り?』
『ゼロには特別な力、ギアスがあります。人に命令を、強制する力です。強力な、催眠術と考えて貰えば……』
な……ギアスの事も……そうか、こうやって、俺達にゼロに不信感を持たせ、内部分裂を起こさせる気か?まずいな、やっとブリタニアと対等な戦力が整ったというのに、今組織がばらばらになるのは……
ギアスの事を知った以上、ディートハルト以外の幹部はゼロを信じられ無くなるだろう。俺が説得すれば、元のレジスタンスメンバーは何とかなるかもしれないが、それでも藤堂達は無理だ!どちらにしても、組織は分裂する……ならば、ゼロを切るか?
もう、黒の騎士団は、十分ブリタニア軍に対抗できる組織になった。ゼロが抜けても、軍師としては藤堂も星刻も居る。元々、利用価値が無くなれば切ると決めていた。今が、その時だ!
「扇?」
千草が、ずっと立ち止まっている俺を不審に思い、声を掛けて来る。
「あ……ああ、入るぞ。」
扉を開けると同時に、玉城の大声が飛び出して来る。
「皇子とか、ギアスとか、証拠はあんのかよ?証拠は?ああ~っ!」
「証拠ならある!」
その声に答えて、俺は会議室に入る。
「お……扇?」
「彼が言った通りだ。ゼロの正体は、ブリタニアの元皇子ルルーシュ。ギアスという力で人を操る、ペテン師だ!」
「ど……どこに、そんな証拠があるんだ?」
玉城が聞いて来る。
「証拠ではなくて、証人だ。彼女は、ゼロの正体を見ている。」
俺は、千草の方に顔を向けながら話す。
「そんな事言っても、そいつはブリタニアの女だろうが!」
「ブリタニア人では信じられないと言うなら、諜報部の篠崎咲世子も証人だ!彼女は、元々ルルーシュの家の使用人だ!」
「ま……マジかよ?」
「ゼロは、ずっと俺達を騙していたんだ。ずっと、俺達を駒として……」
ふん、今更俺が、自分の事を棚に上げて良くこんな事が言えたもんだ。つい、笑ってしまいそうだ。だが、ここは“いい人”の仮面は捨てないとな。今、この時だけは、本性を見せる時だ!
「何言ってんだよ、扇!」
「しかし、それが本当なら……」
「だからと言って、これまでのゼロの実績が否定されるものでは無い。それに、本当にギアスがあるのなら、頼もしいじゃありませんか?ブリタニアに対抗する強力な武器になる。」
ディートハルトは、千葉の言葉を遮って、立ち上がって力説する。
やはりこいつは、ギアスの事を知ってもゼロを支持する気だ。だが、こちらの意見が割れるのはまずい。ここは、あえて不信感を煽らせてもらう。
「その力が、敵に対してだけ使われるものならな?」
「何?」
「まさか?私達にも?」
「そうだ!奴は、実の妹のユーフェミアを操って、特区日本に集まったイレブンを虐殺させた!」
コーネリアが、口を挟む。
「どあほう!ゼロは正義の味方なんだよ!そんな事は……」
「証拠ならあります。」
玉城の叫びを遮って、シュナイゼルはボイスレコーダーを取り出し再生する。
『ルルーシュ、君がユフィにギアスを掛けたのか?』
『ああ。』
『日本人を、虐殺しろと、』
『俺が命じた!』
枢木と、ゼロの会話だ。
「では、あの虐殺は?」
「ゼロがやった事だ!我が妹では無い!」
こんな物まで用意していたのか?流石はシュナイゼル、抜かりが無い。
「ゼロが、日本人を殺せと?」
未だに、信じ難いという感じの藤堂。
「ニセものに決まってる!」
玉城は、まだゼロを信じている……いや、信じたいだけなのかも?
「こちらが、ギアスの掛けられた疑いのある、事件、人物です。」
シュナイゼルの側近の男が、藤堂の前にリストを差し出す。
「……あ?草壁……片瀬少将まで……」
ギアス被害者のリスト?草壁中佐はともかく、片瀬少将は無いだろ?ゼロは、片瀬少将とは面識は無いんだ。あれはギアスでは無く、船に爆弾を仕掛けただけだ。まあ、裏切り行為には違い無いがな。
「そんな?」
「クロビス、」
リストを見て、皆衝撃を受ける。
「私も掛けられている。」
千草も口を挟む。更に、シュナイゼルが、
「私だって、彼のギアスに操られていないという保証は無い。そう考えると、とても恐ろしい。」
よく言う……あんたがギアスに掛かっていたら、俺達はこんなに苦戦していない。もうとっくに、ブリタニアに勝っている。
「まさか?」
「俺達も?」
まあ、こいつらを疑心暗鬼にさせるには十分だがな。
「そしてもうひとつ、私達は事前に、フレイヤ弾頭の事をゼロに通告しました。無駄な争いを避けたかったからです。ランスロットに通信記録が残っています。しかし……」
「我らに伝えなかった……」
フレイヤの事前通告をした?それが何だ?
戦闘の真っ最中に、敵の攪乱戦術を真に受ける司令官が何処に居る?だいたい、その時点ではフレイヤがどんな物か、こっちは全く知らなかったんだぞ。それに、通告をして来たのは売国奴の枢木スザク。黒の騎士団の誰が、あんな裏切り者の戯言を信じると言うんだ?
だが、皆がゼロに強い疑念を持ってる段階で言えば、実に効果的だ。クソ真面目な藤堂は、これで余計にゼロが信用出来なくなってる。
もう一押しだな、悪いがゼロ、最後の芝居を打たせてもらう。
俺は、デスクに両手をついて、俯いて嘆く。
「俺は、彼を信じたかった。信じていたかった!でも俺達は、彼にとってただの……」
「駒だってのか?ちくしょう!ゼロの野郎よくも、ちくしょおおおおっ!」
俺の演技に乗って、とうとう玉城も折れる。
「皆さん、私の弟を、ゼロを引き渡して頂けますね?」
シュナイゼルが言って来る。その時、俺にある事が閃いた。
「条件があります!」
「取引できる状況だと思っているのか?」
反論仕掛けたコーネリアを、シュナイゼルが制する。
「聞きましょう。」
やはりこの男、ルルーシュに対しての執着が異常に強い。今なら、途方も無い交換条件でも呑んでくれそうだ。
利用し、利用されたのはお互い様だが、最後に、最大限に利用させてもらうぞ!ゼロ!
「日本を……返せ!」
室内が騒然とする。
「信じた仲間を裏切るんだ、せめて日本くらい取り返さなくては、俺は自分を許せない!」
少し考えて、シュナイゼルはゆっくりと答える。
「分かりました。即答はできませんが、前向きに検討しましょう。」
「お願いします。」
その後、黒の騎士団幹部だけで再度集まり。この後の事を話し合う。但し、カレンだけは呼ばなかった。カレンは、ゼロの秘密を知っている。その正体も、ギアスの事も知っている可能性があるからだ。
まずは、会議に出ていなかった者達に、ゼロの正体とギアスについて説明する。皆、酷く衝撃を受けていた。
「それで、どうやるんだ?扇?」
玉城が聞いて来る。
「4号倉庫に奴を呼び出して……射殺する。」
「何?」
「こ……殺すのか?仲間を?」
南と杉山が驚く。
「いや、奴は仲間では無い!私達を、利用していただけだ!」
千葉が、ゼロは仲間では無いと断言する。
「で……でも、シュナイゼルは引き渡せって……」
情けなさそうな声で、玉城が言って来る。
「“生きたままで”とは言っていない。」
「そ……そりゃあ、屁理屈じゃねえのか?」
「下手にギアスを使われると、こちらが抵抗出来なくなる。」
それもあるが、生かしておいて、万一報復されたら厄介だ。危険の芽は完全に摘み取ってしまう方がいい。
「……そうだな……」
「仕方ありません。」
藤堂も、ディートハルトも俺の提案に同意した。ディートハルトが素直に従ったのが、少し意外だった。
俺は、携帯を取り出してカレンに電話をする。
「カレン、済まないが、ゼロを4号倉庫まで連れて来てくれ。大至急だ。」
『は……はい、分かりました。』
俺達は、完全武装して4号倉庫に向かう。
シュナイゼルには、ゼロは射殺する事に決まったと告げる。彼は、あらかじめ予想していたのか、特に驚く様子も無く“分かりました”と答えるだけだった。
俺達は倉庫の2階のデッキに機関銃を持って並ぶ。1階には、ナイトメア隊も配備させた。
エレベータが到着して、扉が開く。カレンに続いて、ゼロが倉庫内に入って来る。
そこで、一斉にサーチライトをゼロに向けて照らす。
そして、藤堂が叫ぶ。
「観念しろ!ゼロ!」
「よくも我々をペテンに掛けてくれたな?」
「君のギアスの事は分かっているんだ!」
千葉と俺もそれに続く。
ゼロもカレンも、状況を理解するのに少し時間が掛かっているようで、立ち竦んでいる。そこに、1階のナイトメア隊の前でビデオカメラを回しながら、ディートハルトが語り出す。
「伝説の英雄ゼロは、志半ばにして戦死。しかし、その勇敢なる生き様は、永遠に語り継がれる事でしょう。」
「ディートハルト、それがお前の台本か?」
ようやく、ゼロが口を開く。
「本当なら、あなたがブリタニアに勝利するところまで撮りたかったのですが、残念ながら、番組は打ち切りです。」
2階からは、南と杉山もゼロに非難の声を浴びせる。
「皆お前を信じていたのに!」
「井上も、吉田も、お前の為に死んだんだ!」
そこに、カレンがゼロを庇って叫ぶ。
「待って!一方的過ぎるわ、こんなの!ゼロのお陰で、私達ここまで来られたんじゃない!彼の言い分も……」
「どけ!カレン!」
と、玉城。
「ゼロと一緒に死にたいのか?」
「まさか、ギアスに掛かっているんじゃ無いよな?」
杉山、南もこれに続く。
カレンは、何かゼロに話し掛けている。声が小さくて、こちらには聞こえない。しかし、ゼロは何も答えないので、カレンは叫びに近い声を出す。
「ねえ、お願い!答えて!」
「はははははは……馬鹿が、今頃気付いたのか?自分達が利用されている事に、貴様らは、駒に過ぎないという事に。」
そう言いながら、ゼロは仮面を外し、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの素顔を晒す。
初めてみる顔……いや、前に一度どこかで?そうか、アッシュフオード学園の学園祭の時に……
「ゼロ、君はやはり……」
「ゼロ~っ!」
また、玉城が情け無い声を上げる。
カレンは衝撃を受けている。ゼロ……いや、ルルーシュは、そのカレンに追い討ちを掛けるように言う。
「カレン、君はこの中でも特別優秀な駒だった。そう、全ては盤上の事、ゲームだったんだよ、これは。」
以外にも、ルルーシュは言い訳も何もせず、カレンをも突き放した。あまりにも、潔すぎないか?カレンを抱き込む事だってできただろうに……
カレンは項垂れ、ルルーシュに背中を向けて、ゆっくりと離れて行く。
もう、全て諦めたのか?それとも、こんな状況下でも、まだ逆転できる策があるのか?
「構え!」
藤堂が指示を出す。全員が、一斉にルルーシュに狙いを定める。
「撃てっ!」
一斉にルルーシュに銃撃を浴びせるが、一瞬早く、蜃気楼が現れてルルーシュを庇った。銃弾は、全て蜃気楼の装甲に防がれる。
『なっ?』
『大丈夫?兄さん?』
この声?中に乗っているのはロロか?
「構わん!蜃気楼ごと撃てっ!」
更なる藤堂の指令で、下に待機していたナイトメア隊が一斉に蜃気楼を狙う。
「待って~っ!」
叫ぶカレン。が、次の瞬間、俺達の目の前から蜃気楼は忽然と姿を消した。ルルーシュと共に……
「な?き……消えた?」
「蜃気楼が……」
いったいどういう事だ?これも、ギアスか?まさか、ロロの?
う……迂闊だった、ここでルルーシュを射殺する話をしていたのを、ロロに聞かれていたんだ!まずい、ここで彼を逃がしたら、どんな形で報復を受けるか……
ディートハルトが、直ぐに船外に居る部隊に指令を出す。
「各員に告げる、蜃気楼が奪取された!戦闘可能な部隊は、蜃気楼を破壊せよ!繰り返す、蜃気楼を破壊せよ!」
しかし、結局蜃気楼を破壊する事はできず、そのまま、姿を見失ってしまった……
『裏切り』の原作には、腑に落ちない点がいっぱいあります。
だいたいはこの話の中でツッコミを入れましたが、捕捉を少し。
まず、扇が入って来るタイミングが良すぎます。玉城の“証拠はあんのかよ?”の言葉に“証拠はある!”と後ろから部屋に入って来ますが、まるで今迄会議に参加してたかのように状況を理解しています。何で?
この会議は上層部だけで、内容は団員には伏せて行っている筈です。だから、居なかった扇は、何の話をしているか知っている訳がありません。傍から見れば、ブリタニアと和平交渉でもしてるのかと思うでしょう。そうでないと、扇がヴィレッタを連れて来た説明がつきません。わざわざ、自分が敵と内通している事を発表に来る馬鹿は居ません。
それで、あのタイミングで全てを理解して入って来たという事は、部屋の外でしばらく会話を聞いていたと思われます。それ以外にはあり得ません。
何で直ぐに入らなかったのか?それこそ、ゼロを見限るかどうかの判断をしていたんです。
しかし、扇は悪知恵は働いても、策を弄する事はできません。その能力が無いからです。ルルーシュを射殺する事だけに頭が行って、周りには目が届きません。倉庫にロロが居る事にも気付かずに、処刑準備を進めていたんでしょう。ロロがギアスを使える事は、ヴィレッタから聞いていたと思います。なのに何の対策も打たなかった……いや、打てなかった。所詮凡人ですから……
そもそも、カレンがゼロを庇って離れなかったらどうするつもりだったんでしょうか?
一緒に撃ち殺したんでしょうか?
次に、“駒”について。
皆、ゼロに駒扱いされていた事を怒っていますが、それって怒る事でしょうか?
普通、戦争において、兵士は指揮官の“駒”じゃないんですか?駒扱いを怒っていますが、じゃあ、どう扱えばいいんですか?VIP待遇ですか?指揮官が兵士に気を使ってたら、戦争には勝てませんよ。本編で誰かさんは“人間は駒じゃ無いんだ”って言ってましたが、戦場では人間だろうと“駒”です。辞書で“駒”を引いても“自分の勢力下にあって、意のままに操れる人や物”って書いてあります。
最後に、何でシュナイゼルは玉城の事を知ってるんでしょうか?
まさか、敵である組織の人間は一兵卒まで熟知してるって訳では無いでしょう。何の功績も残して無いので、ブリタニア軍の要注意人物リストに載っている筈は無いし、何の権力も無いので、利用できる要人とされている筈もありません。ゼロの正体を暴露して不審を抱かせるのには恰好の標的ですが、こんな突然思い付いた作戦のために、以前から玉城の情報を集めていた訳がありません。
“玉城真一郎、ゼロの最も古い同志であり歴戦の勇士と聞いています”
誰が言ったの?そんな事?黒の騎士団どころか、ブリタニア軍含めて、誰一人として口が裂けても言わないよ、そんな事。