しかし、良くも悪くも組織のムードメーカーである玉城の機嫌をゼロが損ねた事から、思わぬ亀裂が……
組織存続の危機に、元々統率力が無いのでオロオロするだけの扇。
ところが、やはりここでも、持ち前の悪運がものをいいます。
成田での勝利は、やはり大きかった。京都が俺達の功績を認め、直接会いたいとの勅書を送って来た。更に、
「京都から、紅蓮弐式をうまく使ったって褒められたよ。感動だったな。」
ゼロと玉城の間に座っているカレンに、俺が伝える。
「でも、あの白兜に……」
「気にすんなって!引き分けだろ、引き分け!あははははははは……」
玉城がバカ笑いをしている横で、ゼロは何か考え込んでいる。そこに、俺は京都からの勅書を渡す。
「これ。」
「ん?何だこれは?」
「ラブレター。」
「はあ?お前……」
「けはははははは、こいつに冗談は通じねえって!」
「玉城、笑いすぎ!」
相変わらずバカ笑いをする玉城を、カレンが諌める。俺は無視して、話を続ける。
「京都からの勅書だよ。是非、直接俺達に会いたいって。」
「それ程騒ぐ事か?」
「それ程って、京都ですよ!」
ゼロの素っ気無い反応に、カレンが口を挟む。
「認められれば、資金援助もして貰える。俺達の苦しい財政だって……」
「財政?私の組んだ予算通りだったら、問題無かった筈だが?」
「そ……それが……」
ゼロの鋭い指摘に、俺は説明に困り玉城の方を見る。何故かナオトの時代から、金の管理は玉城の役目だった。
「お……俺のせいじゃねえぞ!もう、俺達は大組織なんだ、人間が増えりゃ予定外の……」
「大物ぶって、新入りに奢りまくるのが予定外?」
焦って言い訳をする玉城を、またカレンが諌める。
「お前なあ……」
「私知ってんだからね!どんなとこ行ってんのか!」
「え?そうなの?」
玉城は、更に焦って言葉に詰まる。そんなやり取りに、呆れたゼロは、
「ふん……とりあえず、会計は扇が仕切ってくれ。」
「待てよ!昔っからな、金は俺が預かって来たんだ!それを……」
ゼロの言葉に、玉城が食って掛かる。
「信用されたければ、相応の成果を示せ!」
「て、お前が言うか?仲間とか言って、顔も見せねえ奴が?」
玉城の言葉に、全員が反応してゼロの方を向く。
「どうなんだよ?ゼロ!ああっ?」
「待てよ、それは……」
ちょっと、まずい雰囲気になってしまった。その場を凌ごうにも、うまい言葉が出て来ない。
「ゼロの正体がどうかなんて、問題じゃ無いでしょ?ゼロは、あのコーネリアを出し抜く実力を持った、私達黒の騎士団のリーダーよ!他に、何が必要だって言うの?」
「ちっ……」
カレンの弁護で、何とかその場は玉城も引き下がった。
しかし、やはり皆それでは収まらないようだった。その後、ゼロとカレン抜きで、幹部(元々のレジスタンスのメンバー)だけでの話し合いになってしまった。
「なあ、どうすんだよ?」
玉城が、俺に詰め寄って来る。ゼロに、正体を明かすように説得しろというのだ。そうでないと、もうゼロには従えない、そんな雰囲気だ。
「そ……それは……」
別に、玉城が居なくなるのは全く困らない。逆に清々する。しかし、他のメンバーまで居なくなってしまうのは非常に困る。
「俺達は、元々ナオトのチームだ。」
「妹のカレンは構わないが……」
杉山と南も、不満を言う。
「二代目のお前が、リーダーを譲るから。」
と、玉城。
「成田の時は皆も……」
俺は、何とか説得しようとするが、
「でも、脅迫に近かったし。」
「俺達幹部にすら、秘密だなんて。」
井上と吉田もこうだ。
「んん……」
言葉に詰まる。どうする?このままでは、組織が崩壊する。
「と……とにかく、少し時間をくれ。もう一度、ゼロと話をしてみるから……」
その場は、何とかそれで収めた。ただ、いつまでもこの状態は続けられない。
しかし、ゼロに正体を明かす事を強要すれば、奴はこの組織を抜けてしまうかもしれない。それだけは、絶対に阻止しなければ。何か、いい方法は無いものか……
何も思いつかないまま、京都との顔合わせの日となった。京都からは、ゼロを含む4名の指定があったので、ゼロと俺、カレン、玉城の4人で京都の招待に応じた。
カレンを入れたのは、紅蓮弐式のパイロットであったため。4人目は幹部なら誰でも良かったのだが、玉城が“俺が行く”と言って聞かないので、周りは辞退した。能力は一番低い癖に、何故か発言力だけは一番有る。本当に邪魔な奴だ。
迎えの車に乗って、長い地下トンネルを延々進んだ後、止まったと思ったら今度はコンベアか何かで車ごと上に上がる。上がった先でまた車は少し動いて、ようやく止まる。
「不自由をお掛けしました。主が、皆様をお待ちです。」
車のドアが開かれ、降りた先は広いホールのような場所だった。その窓の外の景色を見て、俺達は驚く。
「こ……ここ、富士鉱山?」
「嘘だろ、おい!そんな所に、来られるわけ……」
「でも、間違い無いわよ!この山、この形!」
「ってことは、この下にサクラダイトが?戦争の元になったお宝だろ?侵入者は尋問無しで銃殺だってのに……」
「こんな所にまで力が及ぶなんて、やはり、京都は凄い。」
俺とカレンと玉城が驚嘆の声を上げていると、背後から声がする。
「醜かろう?かつて山紫水明、水清く緑豊かな霊峰として名を馳せた富士の山も、今は帝国に屈し、なすがままに寮玉され続ける我ら日本の姿そのもの。嘆かわしき事よ。」
振り向くと、奥に玉座があり、そこに籠が置かれている。籠の中には声の主(老人のようだ)が居るが、垂れ幕で顔が隠されている。その両脇には、黒いサングラスを掛けたSPが2名居る。
「顔を見せぬ非礼を詫びよう。が、ゼロ、それはお主も同じ事。わしは、見極めねばならん!お主が何者なのかを!その素顔、見せて貰うぞ!」
突然、ホールの奥から4機のナイトメアが現れ、俺達を包囲する。
すかさず、カレンがゼロの前に立って彼を庇う。
「お待ち下さい!ゼロは我々に、力と勝利を与えてくれました!それを……」
「黙るのだ!……扇という者は?」
「あ……はい、私です。」
俺が答える。
「お主がゼロの仮面を外せ!」
「なっ?」
声の主から、俺が指名される。俺は、その言葉に従い、ゼロの前に立つ。
「扇さん!」
カレンが止めようとするが、この状況ではこの声に従うしか無い。
「済まない、ゼロ。でも、俺も信じたいんだ、お前を。だから、信じさせてくれ。」
別に、俺はゼロを信用していないから、こいつの正体が何であっても関係は無い。ただ、利用するにあたっては、正体を知っている方が都合が良い。うまくすれば、弱みを握れる可能性も有る。これは、またと無いチャンスだ。
ゼロは、全く動じていない。無言で、ただ立っている……まてよ、そういえばこいつ、京都の迎えの車に乗って以降、一言も喋っていない。何故だ?
俺は、ゼロのマスクに手を掛け、ゆっくりと外す。
「?!」
そこにあったのは、緑色の長い髪をした女性の顔だった。
「お……女?!」
「そんな?」
「違うわ!この人はゼロじゃない!私は見た、ゼロが、この人と一緒に居たのを!」
カレンが叫ぶ。
その姿を見た、声の主が問い掛ける。
「そこな女、真か?」
その問いに、それまで無言だったゼロの影武者が、ようやく口を開く。
「ああ……」
「しかもお主、日本人では無いな?」
「イエスだ、京都の代表、桐原泰三。」
「な?……御前の素性を知る者は、生かしておかぬ!」
「それが日本人にあらざれば、尚更!」
SP達が銃を抜き、我々を包囲しているナイトメアも銃口をこちらに向ける。
「待ってくれ!俺は関係ねえからよお!」
玉城は、見っともなく命乞いをする。
情けない奴だ。ここまで来て、自分だけ無関係のような事を言うな!だったら最初から来るんじゃ無い!別に、お前が来る必要は全く無かったんだ!
しかし、その中の1機が突然反旗を翻す。他の3機のナイトメアを撃破し、銃口を桐原に向ける。
「ぬるいな、それに、やり方も考え方も古い。」
そのナイトメアの中から、ゼロが姿を現す。
「だから、あなた方は勝てないのだ!」
こいつ、京都の裏をかいて、先に潜入していたのか?
「い……いつの間に……」
SPのひとりがゼロを撃とうとするが、
「止めろ!遠隔射撃されるぞ!」
ゼロの左手には、遠隔操作のコントローラーが握られていた。
「いいな!誰も手を出すな!」
ゼロは、ナイトメアから降り、桐原に近付いて行く。
「桐原泰三、サクラダイト採掘業務を一手に担う桐原産業の創設者にして枢木政権の影の立役者。しかし、敗戦後は身を翻し、植民地支配の積極的協力者となる。通称“売国奴の桐原“。しかし、その実態は、全国のレジスタンスを束ねる、京都六家の重鎮。面従腹背か?安いな?」
「貴様、御前のお気持ちを……」
SPが怒りの声を上げるが、
「やめい!」
桐原はそれを諌める。
「ふっ……あなたがお察しの通りだ。私は、日本人では無い!」
『ええっ?』
俺達も、驚きの声を上げる。
「マジかよ……そりゃあ、顔見せられない筈だ……」
と、玉城。
「日本人ならざるお主が、何故闘う?何を望んでおる?」
「ブリタニアの崩壊を。」
「そのような事、できると言うのか?お主に?」
「できる!何故ならば、私にはそれを成さねばならぬ理由があるからだ!」
そう言いながら、ゼロは桐原の前でその仮面を外す。しかし、俺達には背を向けているため、その顔はこちらには見えない。
「ふっ……あなたが相手で良かった……」
「お……お主……」
「お久しぶりです。桐原公。」
「やはり、8年前にあの家で人身御供として預かった……」
「はい、当時は何かと世話になりまして……」
「相手がわしでなければ、人質にするつもりだったのかな?」
「まさか?私には、ただお願いする事しかできません。」
「8年前の種が、花を咲かすか……はっはっはっはっはっ……」
何だ?何の話をしている?ゼロと桐原公は、過去に面識があるのか?
ゼロは、日本人では無い。そして、ブリタニアと深く関わっている。という事は、ブリタニア人なのか?主義者という事か?
「くそっ、見えねえ!」
ゼロの顔を覗き込もうとする玉城を、カレンが制止する。
「扇よ!」
「は……はい!」
「この者は偽り無きブリタニアの敵、素顔を晒せぬ訳も得心がいった。わしが保証しよう。ゼロに付いて行け!情報の隠蔽や、拠点探し等は、わし等も協力する。」
「ありがとうございます!」
流石はゼロだ。京都の正体も掴んでいたし、相手の出方も全て予測して先手を打っていた。やっぱり、俺達のリーダー、俺の隠れ蓑はこの男しかいない。今回の件で、京都のお墨付きも得られた。素性は明かされないが、信用たる人物である事は桐原公が保証してくれる。これならば、黒の騎士団の幹部達も納得するだろう。
ただ、俺の身の安全のためには、やはりこいつの弱みが何か欲しい。ナオトにとって、カレンがそうであったように…………
黒の騎士団内の序列(ゼロを除いた)ですが、この話くらいまでの序列はこんな感じでしょうか?
扇>玉城>南>杉山・吉田・井上>カレン
南はちょっと上そうな気がするんですが、杉山・吉田・井上は同格かと。カレンは新入りなんで仕方無いですね。
問題は玉城なんですが、原作見てると扇の次くらいに見えるんですよね?何で?
どう見てもこの中で一番能力低いし、馬鹿だし、出撃してもいつも瞬殺だし……
京都の話も、何で代表メンバーに入ってるのか?終いには“俺は関係ねえ”って、本当に情けない……