人当たりが良い事しか取り得の無い扇は、自分の存在価値が無い事に不安いっぱいです。そんな中、新たな黒の騎士団の人事の発表が……
果たして扇は、ナンバー2の地位を維持できるのか?
ここに来て、黒の騎士団は人員も装備も、以前とは比べ物にならない程強大になった。
諜報力に長けたディートハルト、技術顧問のラクシャータ、精鋭戦闘部隊の藤堂中佐以下四聖剣の参入。新型のナイトメア各機の配備。更には移動要塞として、新たに専用の大型潜水艦も配備された。
「それでは、黒の騎士団再編成による、新組織図を発表する。」
その専用潜水艦の作戦室で、ゼロは新たな組織内の人事を発表する。
「軍事の総責任者に藤堂鏡志朗!」
当然と言う顔で、四聖剣の面々が頷く。
「情報全般、広報、諜報、渉外の総責任者にディートハルト・リート!」
艦内が騒然とする。
「このブリタニア人が?」
玉城が、不平の声を上げる。更には、四聖剣の面々も、
「しかも、メディアの人間だぞ!」
「ゼロ、民族に拘るつもりは無いが、わざわざブリタニア人を起用する理由は?」
「理由?では、私はどうなる?」
ゼロのこの言葉に、皆、沈黙する。
「知っての通り、私は日本人では無い。必要なのは、結果を出せる能力だ。人種も、過去も、手段も関係無い!」
「わかった、わかったよ!」
玉城も、この人事を認める。
「副司令は、扇要!」
「俺が?」
「不服か?」
「い……いや……」
驚いた。てっきり降格されるものだとばかり思っていた。はっきり言って、ゼロにとって俺の利用価値はもう無いに等しいのに。
「ま、元々のリーダーは扇だし。」
「新参者じゃ、ちょっとな。」
元のレジスタンスの仲間が、俺に祝福の声を送る。
そうか、組織が大きくなったと言っても、元々のメンバーの割合は圧倒的に多い。藤堂やディートハルトが副司令では、反発も大きいだろう。だから、とりあえず俺を副司令の地位に置いておくという訳か?
ふっ、所詮はお飾りの副司令という事か?だが、それで十分だ。飾りだろうとなんだろうと、“副司令”という肩書は大きい。元々、俺もそれを望んでいたんだからな。今迄通り、誰にでも“いい顔”を貫くだけだ。ゼロも、俺に期待しているのはそれだけだろう。
「技術開発担当に、ラクシャータ!」
「当然。」
ラクシャータは、キセルを吹かしながら呟く。
「ゼロ番隊隊長、紅月カレン!」
「ゼロ番隊?」
「ゼロ番隊だけは、私の直轄となる。親衛隊と考えてもらえればいい。」
「親衛隊……ゼロの……」
カレンは、満足そうな笑みを浮かべてそう呟く。
その後、各隊の隊長が発表され、最後に、
「第二特務隊隊長、玉城真一郎!以上だ!」
「よっしゃあーっ!」
玉城が、待ってましたとばかりに奇声を上げる。
しかし、“第二特務隊”って何だ?四聖剣が率いる各本隊と、カレンの親衛隊が居るのだ。そんな例外的な部隊は、ひとつあればいい。何故“第二”が必要なのか?何か役に付けておかないとうるさいから、適当にでっち上げただけじゃないのか?ゼロも、あの男の扱いにだけは手を焼いているようだ……
「ゼロ、ひとつ宜しいでしょうか?」
ディートハルトがゼロに進言する。
「ん?」
「後程、協議すべき議題があります。」
会議終了後、上層部だけで集まり、ディートハルトの言う議題について話し合った。メンバーはゼロと俺、藤堂、ディートハルト、ラクシャータの5人だ。今後は、この5人が黒の騎士団の核になる。
「枢木スザク。彼は、イレブンの恭順派にとって、旗印に成り兼ねません。私は、暗殺を進言します。」
「暗殺?枢木をか?」
と、ゼロ。
エリア11の副総督、神聖ブリタニア帝国第三皇女のユーフェミアが、自分の騎士に、名誉ブリタニア人である枢木スザク、あの白兜のパイロットを選んだのだ。
「なるほどねえ、反対派にはゼロってスターが居るけど、恭順派には居なかったからねえ。」
ラクシャータが納得したような事を言う。
「人は、主義主張だけでは動きません。ブリタニア側に象徴足りうる人物が現れた今、最も現実的な手段として暗殺という手が……」
「反対だ。そのような卑怯なやり方では、日本人の支持は得られない。」
藤堂が、ディートハルトの提案を否定する。
「そうです!俺達黒の騎士団は、武器を持たない者は殺さない!暗殺って、彼が武器を持ってないプライベートを狙うって事でしょ!」
俺も、それに続く。
「私は、最も確実でリスクの低い方法を申し上げたまで。決断するのは、ゼロです。」
この場はこう言ったが、その後、ディートハルトは独自の判断でカレンに枢木スザクの暗殺を依頼した。それは未遂に終わり、ゼロの知るところとなった。ゼロは改めて、幹部を集めて最終指示を出す。
ユーフェミア副総督が、本国からの貴族の出迎えに式根島に来るとの情報が入った。騎士である枢木スザクも当然同伴する筈なので、そこを襲撃するというのだ。
「作戦目的は、枢木スザク及びランスロットの捕獲!戦場で勝って、堂々と捕虜にする!」
「うむ。」
藤堂は、そうでなくてはという顔で頷く。カレンも同様だ。
「捕虜にして、どうすんだ?」
玉城が突っ込んで来る。
「そこから先は、私に任せてもらおう。」
こうして、枢木スザク捕獲作戦は開始された。
まず藤堂達がブリタニア軍の基地を襲撃し、ランスロットをおびき出す。ランスロットが現れたところで、ゼロが姿を現す。当然の事ながら、ランスロットはゼロを仕留めようと追って来る。広い窪地で、ゼロの無頼を追い詰めるランスロット。だがそこには、あらかじめラクシャータにより、ゲフィオンディスターバーが仕掛けられていた。
ランスロットの動きを止められ、操縦席から降りるのを余儀無くされる枢木スザク。これで、枢木を捕える事に成功したかに思えた。
しかし、その時、ブリタニア軍からの非情な命令が、枢木に下される。地対地ミサイルを撃ち込むので、自らそこにゼロを足止めせよというのだ。部下に死を命じる事に衝撃を受けた一瞬の隙を突かれ、ゼロは逆に枢木に捕らえられ、ランスロットのコックピットの中に押し込まれる。慌ててカレンの紅蓮が窪地に飛び込んでしまい、同様に動きを封じられる。カレンはコックピットを降りて、何やら叫びながらゼロ達の所へ走る。
そこにミサイルが飛来して来る。藤堂達が必死に打ち落としたが、更に頭上には、巨大な浮遊航空艦が姿を現した。そしてブリタニア軍は、ランスロット諸共、加粒子砲でゼロを攻撃して来たのだ。
だが、命中の寸前に、何故かランスロットは突然脱出。俺達もそのどさくさで脱出したが、ゼロとカレンは消息不明となってしまった。
俺達は潜水艦に逃げ込み、海底に潜んでゼロからの連絡を待つしか無かった。時間ばかりが経過して行き、とうとう潜水艦内では、藤堂とディートハルトの対立が始まってしまった。
「やはり、これ以上この海域に留まるのは危険だ。引き返そう。」
藤堂が、俺に進言して来る。一応、俺が副司令なので。
「ああ。」
俺は、力無く答える。
「いえ、あくまでここに留まり、ゼロを捜すべきです。」
ディートハルトが、これに反論する。
「確かに。」
その意見にも同意してしまう。俺は、相変わらずどっちつかずだ。
「だが、捜索隊すら出せない状況……ラクシャータのおかげで隠れている事はできても、もはやゼロやカレンが生存している保障すら無い。一歩間違えば、組織の存亡に関わる。」
「何を言うのです!逆です!ゼロあっての私達、ゼロが居て、始めて組織があるのです!」
「人あってこその組織だ!貴様の物言いは、実にブリタニアらしいな。」
この言葉には、ディートハルトも顔を顰める。
「では、お聞きしたい。ここには様々な主義主張の人が集まっています。しかし、曲がりなりにもそれがまとまっているのは、何故ですか?結果が出ているからでは?そして、その結果を出しているのは、誰なんですか?」
「結果は認めよう!しかし、全員の命と比べられるのか?」
「時として、ひとりの命は億の民より重い。元軍人なら常識の筈です!」
「ここでそれを言うか?」
「あ……あの……」
やはり、俺では全くまとめられない。だがそこに、あの女が口を挟んで来る。
「仕方ない、教えてやろう。あいつは生きているぞ。」
「願望を聞いている暇は……」
「確定情報だ。私には分かる。」
藤堂の言葉を遮って、C.C.は断言する。
「預言者かお前は?そんな事より、ナイトメアの練習しとけって言ったろ!このどアホ!」
玉城が、また口を挟む。
「どアホう……久しぶりだぞ、私に向かってそんな口の利き方をした奴は。」
「何だ偉そうに、ゼロの愛人だからって!」
「違うと言っただろう。下衆な発想しかできん男だ。」
「俺が言いたいのは、幹部に向かってだなあ……」
玉城とC.C.の言い合いになってしまったので、俺が止めに入る。
「ちょっと待ってくれ!話しが反れてる!」
この馬鹿が、お前が入るとかえって話がややこしくなる。だいたい、何でお前がC.C.に命令するんだ?お前の部下は、第二特務隊だけだろう。
「ともかく、こうしよう!ブリタニアの警戒網の外、安全な海域ぎりぎりで、とりあえず明日いっぱい待つっていうのは?時間制限をつければ……」
C.C.の発言もあり、何とかその場はそれで収まった。
特に役職には付いていないが、この女はまるでゼロの代わりだ。常にゼロの傍らに居て、皆の知らないゼロを知っている。恐らく、その正体も……実質、この女が副司令と言っても過言では無い。
その後、C.C.の言う通り、ゼロはカレンと共に無事帰還した。“ガウェイン”というブリタニアの最新試作ナイトメアの手土産まで持って。枢木スザクの捕獲には失敗したが、流石はゼロ。転んでもただでは起きない男だ。
ガウェインには、ブリタニア軍が式根島でゼロを抹殺しようとした強力な加粒子砲“ハドロン砲”が装備されていた。まだ未完成だったが、ラクシャータにより完成に至り、この機体は総司令であるゼロの専用機とされた。フロートシステムにより単体での飛行も可能という、とんでもない機体だ。但し、機能が高すぎるため、全機能を活用するには乗員を2人必要とする。ゼロと一緒にこれに乗るのは、当然C.C.だ。
そして、早速、そのガウェインの活躍の場がやって来た……
原作でも、扇はこの段階で“自分が副司令でいいのか?”という感じでした。
ゼロの「不服か?」というセリフが、凄く皮肉っぽく聞こえました。
ゼロも扇については“お飾りの副司令”というつもりだったんじゃないでしょうか?
そして、C.C.を実務上の副司令としていたのでは?
式根島でのスザクの行動ですが、自分が死ぬ事に対して“ルールを破るよりいい”と言っていましたが、逆ならどうしたんですかね?“お前の部下を、ゼロ共々砲撃しろ”って命令出されたら?軍人だから従うんですか?絶対従わないでしょ。
本当に、藤堂中佐の銃殺をスザクにやらせて見たかった。私は実行できない方に千点懸けます。