ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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賢者の石
case 00 The Boy who Lived 〜生き残った男の子〜


ヴォルデモートによる支配の終わったその年。

ホグワーツ魔法魔術学校の一室で予言者はひとつの予言をしていた。

 

 

『闇の帝王の復活と共に更なる闇がこの世を覆う。災いを引き起こす源は我々とは相違する英知とそれをもたらす者にある。しかし、引き起こすのは災いのみならず。闇を払う力も同時に教示する存在と彼はなるであろう』

 

 

 

 

「ハァ………ハァ………」

 

 

暗闇を一人の男が走る。

 

その男を追うようにしてもう一人の男が後を追っていた。

 

追っている方の男は“義眼”である。

 

 

「“インカーセラス 縛れ”」

 

「うあっ」

 

 

義眼の男が呪文を唱えると、どこからともなく現れた縄が逃げていた男を縛り上げる。

 

縛り上げられた男はどうっと地面に倒れこんだ。

 

 

「観念しろ。お前らが崇めていた闇の帝王はたった1歳の赤子に倒された。お前の戦う理由はもうない」

 

「そのことは………すでに知っている。いや、そうなる運命にあることも知っていた」

 

「何?」

 

「闇の帝王はこの世から消えたわけではない。まだかろうじて生きている。まあ、あの状態で生きていると表現するのはどうかとも思うが………」

 

「生きている……だと?戯言を」

 

「近い将来、あの方は復活する。これは規定事項だ。故にその時まで私は死ぬことが出来ない。その点、アズカバンの中は安全……とも言える」

 

「お前は………」

 

「そうだ。私はアズカバンに行くことを望んでいた。あそこまで私の命を狙いに来る人間は存在しないからな」

 

「血迷ったか貴様」

 

「私は至って正常だよアラスター。お前も時が来れば分かるようになるさ。魔法界全体に及ぶ災いが何なのかを………」

 

 

 

 

Case00 ・The Boy who Lived

 

1991年8月

 

クウェート

 

 

 

周囲に生きている人間はもう存在していなかった。

 

立ち上る煙の合間に見え隠れするのは良く知る人間たちの亡骸だ。

 

 

ーすべてを破壊された

 

街も

 

生活も………

 

 

 

がれきの山に一人生き残った俺自身の命も風前の灯火。

 

 

迫ってくるイラク軍の足音がまるで死へのカウントダウンだった。

 

 

手に持つ小銃の握把を握る手に力が入る。

 

 

ー俺たちの生活に土足で入り込んで全てを踏みにじった連中に一矢報いてやる。

 

 

既に何百の人間をこの手で葬り、そして多くの仲間を失った。

 

この世に未練は無い。

 

望みはただ一つ。

 

 

 

この理不尽に抗って死ぬこと!!!!

 

 

 

身を潜めていた瓦礫から飛び出し、ここへ向かってきていた敵兵士へ銃口を向ける。

 

 

 

突然飛び出してきた少年兵に驚いた様子の十数名の敵兵士は急いで持っていた銃を構え、迎撃しようとした。

 

「うらあああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

感情に任せて引き金を引く。

 

同時に敵兵士たちも一斉に引き金を引いた。

 

 

 

交差する無数の銃弾。

 

自分に向かってくるそれらの銃弾が最後の記憶になる。

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

死を覚悟して目をつむったが、いつまでたっても痛みが訪れないことに疑問を感じて目を開ける。

 

 

「死んだ…………のか?いや、これは!!」

 

 

 

 

 

目を開けた瞬間に飛び込んできた光景に彼は驚愕する。

 

 

「銃弾が…………」

 

 

 

発射された銃弾が空中で静止していたのだ。

 

 

まるで魔法によって時間が止められてしまったように……

 

 

それだけではない。

 

敵兵士が例外なく倒されていた。

 

 

「し……死んだのか?」

 

「死んではおらんよ。意識を失っているだけじゃ」

 

 

声のした方を振り返るとそこにはこの場に似合わない服装の老人が立っていた。

 

 

 

 

銀色の長い髭。

 

半月眼鏡。

 

ゆったりと長いローブ。

 

 

こんな格好の戦闘員が存在するはずがない。

 

 

「ああ………。夢か」

 

「残念ながら夢でもないのう」

 

「そんな恰好で戦う奴は敵にも味方にもいない。それよりも、コレだ。この宙に静止する7.62ミリ弾は何なんだよ!!!」

 

 

宙に浮かぶ無数の7.62×39ミリ弾を指さして少年は叫ぶ。

 

 

「こんな魔法みたいなこと………夢じゃなきゃ起こらないだろ」

 

「ああ、そうじゃな。魔法みたいではなく、魔法はな」

 

ほっほっと愉快そうに笑う老人。

 

(目を見ればわかる。この老人は戦闘においては熟練だ。しかし、その眼からは戦闘に酔った狂気が伺えない。伺えるのは優しさと……哀しさ?)

 

「ふむ。どうやら君は開心術の才能があるようじゃの」

 

「かいしん……???」

 

「自己紹介が遅れたようじゃ。わしはアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。ホグワーツ魔法魔術学校というところで校長をしておる」

 

「は? 魔法?」

 

 

 

(こいつ……いかれているのか?いや、しかし、ほぐわーつという単語には聞き覚えがある)

 

「エスペランサ・ルックウッドよ」

 

「俺の名前を知って!?」

 

「端的に言おう。君は魔法使いじゃ」

 

 

 

何が何だかわからない。

 

魔法?

 

俺が魔法使い?

 

寝言は寝て言え………

 

しかし、空中で静止する銃弾。

 

一瞬で無力化された敵の一個小隊。

 

 

 

これがすべて魔法によるものなのだとすれば辻褄は合う。

 

 

 

「いや、そんな馬鹿な事があるはずない。だいたい、俺が魔法使いだったら……。俺はこんなことになる前に敵を殲滅出来ているはずだ」

 

「魔法使いも訓練をしなければ魔法を自由自在には使えん。しかし君は、身に覚えがあるはずじゃよ? 自分が魔法を使ったことを………。君が何かを望んだ時に不思議なことが起こったはずじゃ」

 

 「………………」

 

 

確かにそうだ

 

突然の空爆、機銃掃射、小銃のクロスファイアに晒されながら傷一つなく唯一生き残ったことは奇跡に他ならない。

 

戦闘が始まってから数十日間、撃ち合いを何度もしたが自分の方へ銃弾が飛んでくることはなかった。

 

そして、自分の撃った弾は不自然なほどに敵に命中した。

 

 

 

「あれが、魔法………。魔法で俺は敵を殺していたのか?」

 

「考え方は人それぞれじゃ。君は魔法で自分や周りの人を守っていたともいえる」

 

「人殺しを自分の学校に勧誘しに来るとはあんたも変わり者だろ」

 

「よく言われるのう。ボーリングを趣味とする魔法使いは変わり者と思われるようでの」

 

「???」

 

「それはともかくとして、じゃ。君は身を置いていた環境が特殊過ぎる。確かにホグワーツの理事の中には君を入学させるべきではないとする意見も存在はしていたが、魔法使いをマグル……ああ、非魔法族のことを我々はマグルと呼んでいるのじゃ。マグルの戦場の中に魔法使いを放置しておくというのは我々魔法界にとって危険極まりないことでの。やはり入学させるべきだと思ったんじゃ」

 

「危険?」

 

「そう。危険なのじゃ。魔法界はマグルに存在をばらさないように日々努力しているからのう」

 

「なぜ隠す必要があるんだ? クロスファイアを一瞬で止めて、一個小隊を無力化出来る魔法を持ったあんたたちが、非魔法族から身を隠す必要がどこにあるんだ? やりようによっては魔法で世界征服だって出来るだろうに………」

 

「11歳にしては良く頭が切れるようじゃの。ふむ。確かに魔法は極めれば君たちの世界を従えることも出来るかもしれん。現にそうしようとした魔法使いが少なくとも3人はおる」

 

 

複雑な表情をしながらダンブルドアは語る。

 

 

その眼からは様々な感情が読み取れた。

 

「しかしじゃ。君がそうしたように。君たちは突然やってきた征服者に抗うじゃろう。そして、その結果、双方に血が流れる」

 

 

「確かにそうだ」

 

「互いに知らない方が幸せ……ということもあるのじゃよ」

 

「理解はした。それと入学についても受け入れる。その……ほぐわーつとやらに」

 

「うむ。我々は君の入学を歓迎しよう。入学に必要なものや、移動方法は魔法省から移動キーが…………」

 

「ただ一つだけ頼みがある」

 

「聞こうかの」

 

「あんたは、魔法が使える。それならば…………」

 

「君の親しい者たちを生き返らせてほしい……という頼みじゃったら、答えはノーじゃ」

 

「なっ!?」

 

「万能な魔法も人の死を克服することは出来ぬ。そのような魔法はおとぎ話のなかにしか存在しないのじゃ」

 

「………………」

 

「しかし、人を死の淵から救うことは可能じゃ。君がそれを望むのなら。ホグワーツでは救いを求めたものにそれが与えられる。君は魔法の素質を持っておる。その素質を活かして、人の命を奪うためではなく、救うために魔法を使いたいと思うのなら………これに触れるとよい」

 

「これは?」

 

 

ダンブルドアが持っていた木の棒を振り、どこからともなく取り出したのはただの空き缶であった

 

 

 

「これは移動キーと呼ばれるものじゃ。これに触れれば英国のロンドンに移動することができる。中東に魔法学校が無いわけではないが、君の国籍は一応英国になっておるからの。入校は英国にある魔法学校となったのじゃ。この移動キーに触れて我々の世界へ来るかは、君次第ということじゃよ………」

 

 

戻るべき故郷も、守るべき仲間も失った今。

 

自分に残された選択肢は

 

 

 

前に進むことだけだった。

 

 

 

そっと空き缶に手を添える。

 

 

「ようこそ。魔法界へ」

 

 

そう言ったダンブルドアの瞳からは優しさしか感じ取れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでとなります。

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