ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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久々に本編投稿です!
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case07 A smile 〜微笑み〜

クリスマス。

キリストの降誕祭である12月25日。

 

ホグワーツ魔法魔術学校もこの降誕祭を祝うこととなっていた。

 

英国魔法使いの殆どはキリスト教信者である。

宗教と言うものはマグル界の慣習であると思っていたエスペランサ・ルックウッドであったが、どうも違うようだった。

 

そもそも、魔女狩りの行われていた中世においてマグル界と魔法界に隔ては無かった。

故に古くからの宗教などの慣習はそのまま魔法界にも受け継がれている訳だ。

加えて、イエス・キリストの起こした奇跡といったものが魔法界ではごく当たり前に存在している。

科学の進歩によって奇跡やら神やらの存在を疑うようになったマグル界よりも魔法界の方が神を信じる人が多く、宗教が普及し易かったのではないかと彼は勝手に考えていた。

 

ちなみにエスペランサは無神論者である。

 

神に祈った兵士が祈った次の瞬間に爆撃で吹き飛ばされるのを見て神の存在を疑うようになったのがきっかけだ。

 

 

ただ、無神論者と言えどもクリスマスの楽しいパーティーに参加したいとエスペランサは思っていた。

 

 

かつて傭兵時代に同じ小隊に所属していた日本人が日本と言う国は国民の殆どが無宗教でありながら、ハロウィンやクリスマスを盛大に祝うというのだと言っていた。

日本と言う国がどういった国かは知らないが、話に聞くところかなり奇天烈な国であるらしい。

 

 

という訳でクリスマスは武器の量産も、野外訓練も無しにして子供らしくパーティーやらを楽しもうと彼は考えていた。

 

 

 

12月25日の早朝。

 

いつも通り0600に起床したエスペランサは談話室に降りる。

普段ならこの時間は誰も談話室に居ないはずだったが、今日は違かったようだ。

 

 

「わー!それって透明マントだよ」

 

「でも一体誰が僕にくれたんだろう?」

 

 

届けられたプレゼントを開封するハリーとロンが談話室ではしゃいでいた。

 

 

 

 

「へー。こんなかんじにプレゼントが届くのか。俺のもあるのかな?」

 

「おはようエスペランサ。君のはそこに積み上げられているよ」

 

「お。意外とあるな」

 

 

エスペランサ宛に届けられたプレゼントが談話室の端に積み上げられている。

 

数えてみれば10個程度あった。

今までプレゼントを貰ったことの無い(貸与された銃を除けば)彼は少し感動していた。

 

 

ハリーからはオイル無しで火がつくジッポ。

ロンからは長持ちする菓子の詰め合わせ。

ハーマイオニーからはジェーン年鑑である。

 

他にもロンの母親からセーターが届いていたり、ハグリッドのケーキなどが存在した。

フィルチから魔法界の煙草も届いていた。

 

少し大きめの箱からはかつて傭兵時代に教官をしていた“彼”からドックタグとM16が出てきた。

同封されていたメモ書きには「私は退役した。君にこの認識票と銃を渡す。どこで何をしているかはわからないが君は我々の国の平和に貢献した。誇りに思ってくれ」と書かれている。

 

教官がどうやってホグワーツに居るエスペランサにプレゼントを贈ることが出来たのかは不明であるが、おそらくダンブルドアあたりが粋な働きをしたのではないだろうか。

 

認識票(ドックタグ)にはエスペランサの名前のほかに「US Second Special Force」と記されている。

かつて彼が所属していた部隊の名前だ。

エスペランサは非正規の雇われ兵士であったことと、米国国籍でなかった為にこの認識票は貰えなかった。

しかし、今になってそれが貰えたということは、教官がエスペランサを部隊の正式な隊員として認めてくれたということに他ならない。

 

 

「ありがたく受け取ります。教官………」

 

 

そう呟いてエスペランサは認識票を首にかけた。

 

 

 

M16を脇に置き、残ったプレゼントを開封していく。

 

簡素な包装から出てきた古ぼけた鞄はスリザリンのフローラ・カローからのものであった。

 

「何じゃこりゃ。というかスリザリンの生徒からプレゼントが届くとは思わなかったな」

 

濃紺の至る所に傷がある手提げ鞄を観察するも、これといって価値のある物には見えない。

嫌がらせか?と思っていると、包装の中にこれまたメモ書きが入っていることに気づく。

 

‟私の祖父から譲り受けたものです。検知不可能拡大呪文がかかっています。あなたの方が有効に活用できそうなので渡します”

 

メモ書きにはこう書いてあった。

 

「検知不可能拡大呪文!?」

 

検知不可能拡大呪文。

鞄などの入れ物や建物の中に見た目からは想像できないほどの大きさの空間を作り出す魔法である。

小さな鞄であっても、その中に大型倉庫並みの空間を作り出すことによって莫大な量の物を収納したりすることのできる魔法だ。

4次元ポケットのようなものと言えば分かり易い。

 

便利であるこの魔法は複雑な理論の上に成り立っており、熟練の魔法使いでなければ成功することが出来ない。

エスペランサも所有する武器の保管にこの魔法を使おうとしたが、無論成功することは出来なかった。

 

検知不可能拡大呪文のかけられた鞄を手に入れたことでエスペランサの戦略に幅が広がった。

 

トロールに3頭犬といった生物と戦ってきた彼であるが、たった一人で戦闘を行うことに限界を感じていた。

本来、軽戦車級の強さを持つトロール相手に一人で戦うことはまずありえない。

少なくとも分隊規模の部隊を編成して戦うべきだ。

 

もし仮にたった一人で戦うのだとしたら分隊規模の火力を一人で所持する必要がある。

 

しかしながら個人で携帯のできる火器には限度があった。

 

そこでエスペランサが目を付けたのが検知不可能拡大呪文なのである。

検知不可能拡大呪文をかけた入れ物に小火器のみならず、対戦車榴弾や爆薬、弾薬などを詰め込めば、1人で分隊規模の戦力を有することが出来る。

 

 

「しかし、フローラはなぜ俺にこんな凄い物を送ってきたんだ?」

 

 

それだけが謎であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハーマイオニーは休暇でスキーに行っている。

彼女はホグワーツを出る前にエスペランサたちに宿題を課した。

 

‟ニコラス・フラメル”という人物が誰かを調べよ、というものだ。

 

ハグリッドがうっかり、3頭犬が守る物はニコラス・フラメルという人物が関わっていると口を滑らせてしまったのが原因である。

 

うっかり屋のハグリッドにそんな重要なことを教えておいて大丈夫なのかとエスペランサは思った。

 

 

何はともあれ、ホグワーツに隠された‟物”の手掛かりが手に入ったのは喜ばしいことだ。

‟物”の正体が分かれば敵の目的もはっきりとする。

敵の目的が分かれば、敵の正体もある程度予想することが出来る。

 

今、エスペランサに足りていないものは敵の情報であった。

 

 

「とは言え、クリスマスの日くらいはゆっくりしたいよな」

 

 

プレゼント開封が終了して、ハリーとロンと一緒に大広間に降りてみたエスペランサは用意された御馳走やら装飾やらに目を奪われた。

ハリーたちもニコラス・フラメルのことなんて忘れてケーキにかぶりついている。

 

「クリスマスは皆、実家に帰ると思っていたが意外と残っている学生が居るな」

 

大広間にはエスペランサたちのほかにも若干名の学生が居て、それぞれ御馳走にありついていた。

 

御馳走だけでなく魔法界のクラッカーも置いてあり、双子のフレッドとジョージが片っ端から引っ張って遊んでいた。

英国におけるクラッカーというのは100円ショップなどで売っている日本人が想像するパーティーグッズとは異なるものだ。

円柱上の筒を両端から2人で引っ張ると中から手紙やら紙吹雪やらプレゼントが出てくるというのがクラッカーである。

 

魔法界のクラッカーは引っ張ると、爆発とともに本物の鳥や様々な魔法仕掛けのおもちゃ、それに花火などが飛び出すようになっていた。

 

「へえ。面白いなこれ」

 

「じゃろう。わしも初めてこれを見た時は興奮したものじゃ」

 

「校長…………」

 

「久しいの。エスペランサ」

 

 

生徒がクラッカーで遊んでいる様子を眺めていたエスペランサの横にいつの間にかダンブルドアが立っていた。

エスペランサがダンブルドアと喋るのはあの戦場以来のことである。

 

 

「魔法界にはもう慣れたかの?」

 

「まあ。いまだに信じられないこと続きですけど」

 

「どうじゃ?友人は出来たかね?聞くところによればハリーたちと仲良くしてるみたいじゃが」

 

「例のトロールの件以来、戦友みたいな感じになりました」

 

「おお。トロールの件は謝らなくてはならんのう。君たちを危険な目に合わせてしまったのは校長として失格じゃ」

 

「いえ。あれは自分が勝手に戦おうとしただけです」

 

「ふむ。君は戦いに長けている。しかし、11歳の少年がトロールを爆殺するというのは簡単なことではない。君はマグルの武器を駆使して戦ったようじゃが、その武器はどうやって手に入れたのかね?」

 

「……………答えなくてはいけませんか?」

 

「ホグワーツに物騒なものが持ち込まれるのはあまり嬉しいことではないからの」

 

「そうでしょうか?ホグワーツ城には色々と物騒なものが既に持ち込まれていると思いますけど?」

 

「?そのような記憶はわしには無いのじゃが………」

 

「3頭犬に、3頭犬の守る‟物”。ハリーの命を狙う何者かを惹きつける程度には危ない物なんでしょうね」

 

 

エスペランサの言葉にダンブルドアは目を細めた。

 

ダンブルドアはエスペランサがどこまで秘密を知っているかを知らない。

それがアドバンテージとなる。

上手くいけば物の正体を聞き出せるかもしれないとエスペランサは思った。

 

 

「‟物”は3頭犬のような凶暴な生物に守らせている。つまるところ、‟物”を狙う敵は3頭犬のような生物でなくては対抗できないほどの強さを持つことになる。それほどの強者ならばトロールを城内に入れることもハリーの箒に細工するのも可能でしょう。実際、敵がハリーの命を狙うことも、一連の事件が関連していることも全て自分の憶測でしかありませんが。それでも、この城に敵の魔の手が及んでいるのは何となく分かります」

 

「君は賢い。そうじゃな。ホグワーツがある大切なものを隠していることは確かじゃ。そして、ハリーの箒に魔法をかけた人物がそれを狙っているということも、トロールを城内に入れたことも恐らく事実じゃろう」

 

「敵は何者なんですか?自分はハリーの学友として敵の正体を知り、そして、そいつからハリーを守る必要がある」

 

「エスペランサ。このわしが居る限り、この城でハリーをこれ以上危険な目には遭わせんよ。他の先生の監視もある。ホグワーツは安全じゃ。例の‟物”も何重にも守りが固めてあるから大丈夫じゃ」

 

「安全な割にはトロールが入り込んでいたりしますけど?」

 

「詳しくは言えんが、あれ以来、ある先生にハリーを守るように頑張ってもらっているからのう。君以上にハリーを守る力を持った先生じゃ。安心しなさい」

 

「しかし…………」

 

「エスペランサ。君はまだホグワーツの生徒になり切れていないのじゃよ」

 

「???」

 

「君の心はまだあの戦場に居るのじゃ。今の君はハリーを守るという目的を盾にして、‟戦いを求めている”ように思えて仕方がない」

 

「そう……なのかもしれませんね」

 

「エスペランサ・ルックウッドはホグワーツの生徒じゃ。つまりわしの生徒ということになる。君はハリーを敵から守ると言っておったが、わしにとっては君も守るべき生徒なのじゃよ。君には危険な目に遭って欲しくは無い」

 

 

自分が誰かに守ってもらうとは思っていなかった。

 

ダンブルドアが自分を守る対象だと思っていることに多少の嬉しさを感じるエスペランサだったが、同時に屈辱にも似た気持ちを持った。

ダンブルドアは、まるでエスペランサにハリーを守るだけの力が無いと言っているようだった。

確かにそうなのかもしれない。

小銃も爆薬もダンブルドアの魔力の前にはちっぽけな存在に過ぎない。

 

(結局、俺は人ひとり守る力すら持てていないのではないか?全世界の市民を理不尽な暴力から救うとか大層な目標を掲げておいて、この有様か…………)

 

「君が心配することは無い。今日は純粋にパーティーを楽しむと良い。わしもセブルスとクラッカーを引くとするかの」

 

 

いつの間にかダンブルドアの横にはセブルス・スネイプが立っていた。

 

ハリーたちがハリーの命を狙う敵と思い込んでいるのがスネイプである。

 

 

ダンブルドアとスネイプがクラッカーで遊ぶ様子は何ともシュールな光景であった。

 

 

 

「似合いませんね」

 

「吾輩もそう思っている」

 

クラッカーから飛び出した紙吹雪を頭から被ったスネイプにエスペランサは話しかけた。

 

「先生がクリスマスパーティーに来るとは意外でした」

 

「吾輩もルックウッドが来るとは思っていなかった。ルックウッドの魔法薬の成績を考えれば、クリスマス返上で勉学に励むべきだと思うが?」

 

「………………」

 

「3頭犬を知っているということは、3頭犬を倒したのはお前か」

 

「さあ。何のことでしょう」

 

「消灯後に出歩くだけで罰則ものだが、学校の備品扱いである3頭犬を傷つけたとすれば問題だ」

 

「学校の備品が生徒を食い殺そうとする方がよっぽど問題だと思いますが?」

 

「3頭犬の居る場所は生徒が立ち入り禁止の場所だ。食い殺されそうになっても自業自得ではないか?」

 

「一理あります」

 

「吾輩はお前がマグルの武器を密かに持ち込んでいるのを知っている。もしその武器が吾輩の前で使われたのなら、覚悟をしておくことだ」

 

スネイプはそう言って職員席へ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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大広間のパーティーに参加した学生は十数人程度だったが、その中でもスリザリン生はたった2人しか居なかった。

 

一人は男子生徒であったが、不本意で参加したのだろう。

終始、不貞腐れたようにしていた。

 

もう一人のスリザリン生はエスペランサに検知不可能拡大呪文のかかった鞄をプレゼントしたフローラ・カローである。

 

 

「何であんな貴重なものを俺にくれたんだ?」

 

「別に貴重ではありませんよ?検知不可能拡大呪文を使える魔法使いは案外多いですから」

 

フローラとはトロール事件の夜以来話していなかった。

そんな彼女がなぜエスペランサにプレゼントを贈ってきたのだろう?

エスペランサは疑問を解消するために、大広間の端で一人デザートを食べていたフローラに話しかけていた。

 

「いや、まあそうだとしても何故俺に?何か裏でもあるのか?」

 

「裏なんてありません。私も良く図書館に行くのですが、そこであなたが検知不可能拡大呪文の習得に四苦八苦しているのを見つけたもので。私は別にあの鞄を使う予定は無かったですし、それならあなたに使ってもらった方が鞄も喜ぶでしょう」

 

「そうか。じゃあありがたく受け取っておくことにするよ。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

フローラはニコリともせずに応えた。

 

エスペランサは教職員のテーブルからちょろまかしてきたウイスキーを口に運ぶ。

ファイアウイスキーという魔法界では有名なウイスキーらしいが、案外度数が高い。

喉が焼けるような感覚を彼は味わっていた。

 

ちなみに彼はハグリッドからウイスキーをちょろまかしてきたのだが、当のハグリッドは完全に酔っ払い、マクゴナガル先生にキスをするという暴挙に出ていた。

 

「そう言えば、フローラって姉が居たよな?ここには居ないみたいだがどうしたんだ?」

 

「姉は実家に帰っています。純血の家柄が集う高貴なパーティー(笑)とやらに参加するそうです」

 

「あんたは参加しなくても良かったのか?」

 

「前も言いましたが私は私の家柄が好きではないので。純血主義だとか古臭い慣習に拘るのは阿保らしいと思います」

 

「スリザリンの生徒らしくない発言だな」

 

「そうかもしれませんね。そもそも私もダフネもスリザリンの純血至上主義を嫌っていたので、レイブンクローへの入寮を希望していたんですけれど………」

 

 

フローラ・カローには姉が居た。

ヘスティア・カローという名前で学年は2学年だ。

 

容姿端麗なフローラと違い、トロールのような見た目(学力もトロール並みらしい)のヘスティア・カローは典型的なスリザリン生であった。

純血主義に傾倒し、マグル生まれを見下す姿を何度かエスペランサも見ている。

性格もお世辞にも良いとは言えなかった。

 

「俺もアンタはスリザリンっぽくないと思うぜ?姉の方は典型的なスリザリン生だけど」

 

「姉は昔から純血教育を受けていたので………。純血主義に否定的な私は家での居場所がありません。まあそれを苦に思ったことはありませんが。祖父は私と同じ考えを持っているので仲が良いんですけどね?」

 

「ふーん。色々苦労してるんだな」

 

 

家庭内の問題というのはエスペランサにとって無縁なものであった。

 

ふうっと息をつき彼はウイスキーをさらに口に入れる。

 

 

「ホグワーツに居ると家での嫌なことを思い出さずに済みます」

 

「俺もこの学校にいる間は嫌なことを忘れることが出来る。忘れちゃいけないって思っていても………な」

 

「忘れてはいけないこと?」

 

「……………。俺はこの学校に来る前に仲間を全て失った。故郷の人たちも全員死んだ。俺だけがたった一人生き残ったんだ。一人生き残った俺は彼らの死を忘れてはいけない。彼らの死を無駄にしないためにも、魔法を学んで………世界を変えようと思った。だが、この学校でハリーたちと過ごしていると、過去のことを忘れてしまう。いや、辛かったことを忘れて今を楽しもうとしてしまう自分が居るんだ」

 

「…………良くは分かりませんが、私が興味本位で聞いて良いような話ではなさそうですね……」

 

 

(俺はフローラ・カローを相手に何をぺらぺらと喋っているんだろう)

 

 

ハリーたちにもエスペランサは自分の生い立ちを話してはいなかった。

自分が魔法界入りを決意した理由もフィルチにしか話していない。

 

数か月前に自分を襲った悲劇を心の奥底に沈め、ひたすらに魔法を学んできた。

勉強をしたり武器を開発しているときは全てを忘れていられた。

ハリーたちと生活している間は失った仲間のことを思い出さずに済んだ。

 

決して忘れてはいけない過去。

しかし、いつの間にかその過去を忘れようとしている自分。

 

思った以上に自分は弱い。

そうエスペランサは思う。

 

ホグワーツの平和な生活を満喫しているうちに、かつてのあの地獄の日を思い出すのが怖くなっていた。

仲間の死を思い出したくなくなっていた。

 

 

「俺は弱いな………」

 

「はい?」

 

「いや、何でもない忘れてくれ。ちょっと柄にもなく話し過ぎた。酔ってるのかな?」

 

 

そう言いつつもエスペランサはまたウイスキーを口に運ぶ。

 

 

「あなたは弱くないと思います」

 

「え?」

 

「友人を救おうとしてトロールに単身挑みに行くことが出来る人間が弱いとは思いませんよ」

 

「あれはただの無謀ってやつだ。それにあの時は俺以外にもハリーたちが居た。あいつらが居なければ俺はトロールに潰されていた。結局、俺は武器を持っていても無力で人一人救うことが出来ないでいる」

 

「あなたはまだ11歳の子供です。確かにあなたは他の生徒とはどこか違い大人びてはいます。ですが、たった11年しか生きていない子供に人を救えるような力があると思いますか?」

 

「…………………」

 

「私は………ウジウジと後ろ向きなことを考えているあなたよりも、いつもの無鉄砲で無謀なあなたの方が好きです」

 

「無鉄砲……ね」

 

「あなたがグレンジャーを助けるためにトロールと戦ったということを聞いた時思いました。もし仮にダフネがトロールに襲われていた時に私は彼女を助けるためにトロールに立ち向かうことが出来るか?と。正直、無理かもしれないと思ってしまいました。怖かったからです。でも、あなたはトロールと戦うことを怖いとは一言も言いませんでしたね。あなたが恐れ、怖いと思っていることは自分の非力さゆえに他人を救えないという事実のみです。確かに非力かもしれませんが、あなたは弱く無いです」

 

「フローラ………」

 

「ダンブルドアに何を言われたのかは知りませんが、あなたはあなたのやりたいようにやるべきだと思います」

 

「そう……なのかもしれないな」

 

「少々偉そうなことを言ってしまいましたね。私自身弱い存在であるというのに………。少し酔ったみたいです」

 

「お前そもそも飲んでないだろうが!」

 

「未成年飲酒は違法ですからね」

 

 

そういってフローラはふふっと笑った。

フローラの笑い顔はいつもの冷たい表情からは想像できないほど温かく、そしてどこか年相応の子供っぽさがあった。

 

はじめて見る彼女の笑顔を見てエスペランサも笑みがこぼれる。

 

 

(ああ。故郷の人たちはみんなこうやって笑っていた。この笑顔を2度と奪われたくないから、俺は魔法界(ここ)に来たんだったな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なかなか話が進まないです………。
もうちょい戦闘シーン入れたい………。
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