東大王のハリポタ見ながら投稿です笑
今回、危険物取扱関係の話が出てきますが、ガソリンは静電気でも引火する危険な燃料です。
対バジリスク戦でエスペランサはガソリンを自身にかけていましたが、非常に危険な行為です。
なので、潤滑油に変更します。
今更ですが
あと亡者に関しては独自設定と解釈があります。
「インセンディオ!インセンディオ!」
海から無数に湧き出てくる亡者に対して炎の魔法を放つのはペネロピー・クリアウォーターという魔女だった。
ホグワーツを卒業して魔法省運輸部に就職したペネロピーは休暇を利用して地元へ帰省していた。
彼女の地元はロンドンから100キロ程離れたところにある港町だ。
この港町は近隣に工業地帯があるため、タンカーをはじめとする船舶の往来も多く、休暇中でも賑わっている。
そんな港町でのんびりお茶をしていたペネロピーはバースの方から聞こえてくる悲鳴とサイレンの音を聞きつけた。
来てみれば海から無数の亡者が湧き出てきて片っ端からマグルを襲っていたのだ。
漁船の船員は船ごと海に引き込まれてて絶命する。
曳船や油船に乗っていた船員は逃げようとするも複数の亡者に襲われて地面のシミになってしまう。
港湾職員も市場に来ていた一般市民も次々と襲われていった。
亡者は動きも素早い上に力も強い。
対抗手段は炎か強い光だが、港湾を警備していた沿岸警備隊の隊員や警察署の職員はそんな武装を持っていなかった。
こうなれば戦えるのは亡者に関する知識を持つペネロピーのみだ。
彼女はマグルの面前であるが、知り得る魔法を全て駆使して亡者を攻撃した。
彼女の活躍と沿岸警備隊員達の反撃もあり、非戦闘員と負傷者は後方の巨大な倉庫へ避難させる事が出来た。
普段は造修補給所として使用されているであろう倉庫はかなりの人数を収容出来る。
それでも100人近くのマグルが亡者に襲われて死亡し、港内を血で赤く染めていた。
穏やかな港町は今や地獄絵図と変わっていたのだ。
「何なんだ!何なんだよこいつら!」
ペネロピーの横で短機関銃を乱射していた沿岸警備隊の職員が悲鳴を上げる。
亡者の群れは修理した船舶を海に浮かべるための"すべり"と呼ばれるスロープのような場所から陸上へと這い上がって来ている。
その数は目算で数千。
まるでゾンビ映画のようだ。
腐乱臭を漂わせながら、亡者達は逃げ遅れたマグル達に襲いかかる。
「諦めないで下さい!インセンディオ!」
ペネロピーは杖から炎を出し、亡者を数体まとめて焼き払う。
亡者の弱点は炎だ。
しかしながら数が多過ぎて対処しきれない。
マグルの沿岸警備隊や地元警察の機動隊が拳銃や短機関銃で応戦しているが、そちらも数が足りていなかった。
警察のほとんどは生存者の救助と避難誘導にあたっていて、戦闘員は20名もいない。
それに拳銃や短機関銃では亡者の進行を阻止できなかったのだ。
亡者は死体であり、降霊術と呼ばれる闇の魔術によって動かされている。
痛みを感じず、通常兵器での殺傷は困難。
戦闘不能にするには神経系統を完全に破壊する必要があった。
つまり、ゾンビ映画と同様に首を切断したり頭部を破壊すれば良い。
しかし、それをするだけの銃弾や技量をこの場にいる戦闘員は持っていなかった。
ペネロピーはかつてエスペランサが彼らと同様の短機関銃を使うところを見たことがある。
故に、ここにいる隊員がエスペランサよりも低練度である事を見抜いていた。
「くそおおお!何で死なねえんだ!何なんだよこいつらは!」
「撃て撃て撃ちまくれ!」
押し寄せる亡者の群れに囲まれてしまった警官の一人が短機関銃を連射しながら絶叫する。
だが、拳銃弾では亡者の神経を完全には破壊できず、足止めすらできない。
短機関銃はすぐに弾切れを起こし、警官は亡者の群れに押し潰された。
「ぎゃあああ!」
断末魔の叫びが一瞬だけ聞こえる。
亡者の群れは更なる獲物を求めて陸上へ進行を続けた。
「おい!魔女さんよ!あいつらはゾンビなのか?」
港に放置されていたフェンダーなどの資材を防壁としながら沿岸警備隊の隊長がペネロピーに聞いた。
沿岸警備隊も警察も杖から火を吹かせるペネロピーが魔女だという事に驚きつつも、その事実を疑う暇は無かった。
ペネロピーは魔法で押し寄せる亡者を牽制しながら、それに答える。
「あれは亡者と呼ばれるものです。例のあの人……ええと、悪い魔法使いが魔法界にいるんですけど、彼が殺害した多数の人を亡者にして軍隊を作ったことが知られていました。恐らくはその一部と思われます」
「すると、なんだ?あいつらはやっぱりゾンビなのか!?」
「ゾンビっていうのが私には分からないんですが……。でも安心して下さい。先程、魔法省に連絡しました。もうじき援軍が来ます」
「本当か!俺たちも通信施設はあったんだが、あの亡者とやらに占領されてしまって……」
沿岸警備隊の施設や港湾関係の通信施設は既に亡者の群れが占拠していた。
無論、そこで逃げ遅れた職員達は容赦なく亡者の餌食となっている。
ヴォルデモートがかつて従えた亡者はほとんどが彼によって殺害されたホームレスのマグルだった。
しかし、それはせいぜい2〜300人。
ここに押し寄せている亡者はその数倍に及ぶ。
よく見れば亡者達の中には第一次大戦や第二次大戦時代の英国やドイツの戦闘服を身に纏っている個体がいた。
もしかしたら、大戦時の戦死者を使役しているのかもしれない。
そうこうしている内に亡者達は港湾の施設を次々と占拠していく。
「た、助けてくれー!」
「弾切れだ!弾が無い!」
灯台の上から亡者を狙撃していた機動隊員は残弾が無くなり、警棒で応戦するも瞬く間に亡者の群れに手足をもがれていた。
哨戒艇の上から軽機関銃を掃射していた沿岸警備隊は四方を亡者に囲まれ、一人、また一人と喰われていく。
生きながらにして喰われる隊員達はこの世のものと思えない悲鳴を上げていた。
「くそっ!あれじゃなぶり殺しだ……」
自分の部下達が次々と襲われていく光景を見て沿岸警備隊の隊長は地面を拳で叩いた。
港の左右で戦っていた戦闘員がやられた事で、守りが薄くなる。
「まずい!このままだと囲まれるぞ!」
正面だけでなく左右から押し寄せる亡者の群れにペネロピーも絶望し始めていた。
数が多過ぎる。
数分後には自分達も亡者の餌食になるだろう。
ここにきて彼女は初めて死の恐怖を覚えた。
正面から襲いかかってくる亡者の群れとペネロピー達の距離は既に30メートルを切っていた。
左右の亡者も着実に彼女らを囲み始めている。
もう駄目かもしれない……。
そんな弱音が出かけた時、何かがペネロピー達の頭の上を音速で通り過ぎていった。
ヒュルルという音と共に飛来した"それ"は死体を乗り越えて押し寄せる亡者の群れの中央に着弾する。
そして、爆発。
十数体の亡者が空中に四散し、地面は炎上した。
爆音、噴煙。
ペネロピーはかつてホグワーツ在学時にこの爆発を見た事があった。
「救世主登場!間髪入れるな!どんどん撃ち込め!」
ペネロピーや沿岸警備隊の隊員達の後方から次々と武装した男女が走ってくる。
センチュリオンの隊員が到着した瞬間であった。
「撃て撃て撃ちまくれ!」
センチュリオンの隊員達はペネロピーや沿岸警備隊員達の前に展開すると、各人の判断で銃撃を始めた。
センチュリオン正規隊員12名の機関銃による掃射と、闇祓いや魔法警察から転籍してきた隊員の魔法攻撃で亡者の足は一時的に止まる。
「ペネロピー・クリアウォーターだな?俺たちはセンチュリオンだ。救援に来た」
「あ、ありがとう……。あなたは…ルックウッドね?」
「ああ。避難した人達はどこにいる?」
「後ろのあの大きな倉庫の中……。ほとんどがマグルで怪我人も多いわ。それに周りをこれだけ亡者に囲まれているから逃げようにも逃げられないの」
エスペランサは背後にある巨大な倉庫を見た。
航空機の格納庫程の大きさがある。
「了解した。フローラ、何人か連れて倉庫の中に行って負傷者の治療にあたってくれ」
「了解しました」
フローラは救急医療キット片手に倉庫に走っていった。
エスペランサは周囲の状況を観察する。
正面の滑りからは海から這い出た亡者が無数に襲いかかってくる。
左右もほとんど囲まれていた。
亡者に襲われて倒れている人間もちらほらと見える。
エスペランサも正直なところ亡者の規模がここまでのものとは予想していなかった。
「君は……英国軍の人間なのか?」
既に弾が尽きた拳銃を片手にした警官がエスペランサに話しかけてくる。
他の警官や沿岸警備隊の隊員たちも集まってきた。
その数は既に若干。
しかも彼らの銃はほとんど弾が底をついている。
中には銃ではなく警棒を持った者も居たし、怪我人も多かった。
「英国軍ではありませんが……味方です。ここの指揮官は?」
「私だ。沿岸警備隊で隊長をしている。だが私の部下のほとんどはあの化け物にやられてしまった。駆けつけてくれた警官もだ。軍に応援を呼ぼうにも通信機器があった管制室は既に化け物に埋め尽くされてしまっているし、衛星電話を持っていた隊員は喰われてしまった」
英国の沿岸警備隊の主任務は人命救助である。
他国の沿岸警備隊が行うような治安維持活動は軍が担っているため、彼らはほとんど武装を持たない。
今、ここにいる沿岸警備隊の隊員が持っている短機関銃や拳銃は全て警察のものだ。
ちなみに英国の警察は公認拳銃所持警官以外、銃を携行しないからここにいる人間は銃の扱いに慣れていなかった。
「なるほど、ここは我々が引き継ぎます。あなた達は避難して下さい」
「しかし……あなた達も人数は少ない。あの化け物は銃が効かないし、逃げるわけには」
「あなた達は十分に使命を果たしました。非戦闘員を避難させるという使命を……。ここからは我々の仕事です。それにあなた達の銃弾はもうほとんど無いのでしょう?」
「それは……そうですが」
沿岸警備隊の隊長は生き残っていた自分の部下や警官を見る。
怪我人ばかりの上に数時間に及ぶ戦闘で皆、疲弊していた。
「わかりました。我々は倉庫で怪我人の治療にあたります。ご武運を!」
隊長や警官達は皆、エスペランサに敬礼をして倉庫に走っていく。
エスペランサも答礼をして、亡者との戦闘をする為に走り出した。
残されたペネロピーは悩んだ挙句にセンチュリオンの戦闘に加勢することに決めた。
「おらおらおらおら!くそ!こいつら一体何体いやがるんだ?」
「ざっと500ってところか?いや、もっといるかもな」
「キリがねえよ!しかも全然銃弾で倒れねえ」
5.56ミリ機関銃MINIMIで銃弾をばら撒きながらコーマックが叫ぶ。
その足元で同じくMINIMIを脚を立てて撃っているのはアンソニーだ。
彼らは岸壁の右翼の防衛を任されていた。
岸壁突端にある灯台を占拠した亡者達は次の獲物を狙う為に殺到してきている。
その最前列はアンソニー達の20メートル先にまで迫っていた。
数百の5.56ミリ弾を撃ち込むが、亡者の勢いは緩まない。
彼らは自動追尾の魔法によって全弾を亡者に命中させているが、元々威力がそこまで高くない5.56ミリ弾では上手く亡者の頭部や首を粉砕出来ない。
何より敵の数が多過ぎた。
空薬莢が花弁のように舞い、亡者の身体に弾丸が命中していくが亡者の動きは止まらない。
「頭だ!頭を狙うんだ!」
さらにその5メートルほど横にいるネビルがM14で亡者を狙撃しつつ言う。
彼は的確に亡者の頭を仕留めていた。
「狙ってるよ!だが、軽機関銃じゃ上手く頭を吹き飛ばせねえんだ!それに数が多い」
「この調子だと弾が尽きるのも時間の問題だぞ」
アンソニーが200発入りの箱型弾倉を交換しながら嘆く。
ダイアゴン横丁に展開していたセンチュリオンの隊員は急遽、隠れ穴に戻り戦闘の準備をした。
元々、隠れ穴には隊員が何名か駐屯していたから物資の準備事態はそこまで苦ではない。
問題は隠れ穴には大量の亡者に対抗出来る武器があまり無かったことである。
小銃や機関銃は面の制圧力に欠けるし、対戦車榴弾は数が少ない。
一番有効なのはナパーム弾だが、センチュリオンの持つナパーム弾は有線で点火するタイプであり、事前に設置が必要だ。
岸壁左翼の防衛を任されていたアーニーとダフネは本来なら迫撃砲を扱う筈だったが、咄嗟の機転で火炎放射器を持ち出していた。
火炎放射器は亡者に対してかなり有効な武器であり、左翼は亡者の進行を何とか押し留めている。
しかしながら火炎放射器も無限に使える武器では無い。
「燃料切れだ!次を持ってきてくれ」
アーニーが燃料切れとなった火炎放射器を放り捨てつつ叫ぶ。
数十もの亡者が火炎に焼かれて灰になっていたが、それらを乗り越えて次々に亡者が押し寄せてきた。
ダフネが間髪入れずにパンツァーファウストⅢを撃ち込み、亡者が四散する。
しかし、爆炎の間からさらに亡者が押し寄せてきていた。
補給員がアーニーとダフネのところに火炎放射器や対戦車榴弾を補給していく。
「火炎放射器は残数が少ない!次の補給が来るまで節約するんだ!」
「節約って言っても……この調子だとすぐに押し潰されるぞ!?」
隠れ穴前線基地にあった物資の8割を投入したが、無数に湧き出てくる亡者相手にはそれでも不足していた。
何よりも隊員の数が圧倒的に少ない。
今回の戦闘の勝利条件は「亡者の駆逐」であるから、人手と物資の不足は致命的だ。
右翼と左翼の亡者はそれでもアーニーやアンソニー達によって数を減らす事が出来ている。
しかし、最も亡者の数が多い正面の防衛線は現状維持で手一杯だった。
「弾幕を切らすな!何としても敵の進行を押し止めろ!」
遊撃班から回されてきたチョウとコーマックがキャリバー50重機関銃を乱射する。
その横では魔法警察や魔法省から転籍してきた隊員、それにペネロピーが魔法による攻撃をしていた。
「亡者の群れの一部が榴弾の最小射程距離に達した!」
「そいつらは機関銃で制圧しろ。弾倉の弾を使い切っても構わんから一時的に火力を集中させて敵の進行スピードを遅らせてくれ」
そう言いつつエスペランサは手榴弾のピンを抜いて投擲する。
爆発と共に亡者の一段が吹き飛んだ。
他の隊員も集中砲火を亡者に浴びせる。
そのおかげで一瞬ではあるが、亡者の進行は止まった。
「今だ!有刺鉄線を展開しろ!」
エスペランサの指示で隊員達が有刺鉄線を展開させる。
もちろん魔法を駆使してだ。
センチュリオンの隊員達と亡者との間に有刺鉄線がコの字を描いて展開されていく。
前に進むしか脳のない亡者達は次々と有刺鉄線に突撃していまい、身動きが取れなくなった。
「動きが止まった!撃て撃て撃て!」
銃と魔法による攻撃が有刺鉄線によって動きを止められた亡者の群れに襲いかかる。
亡者達は生ける屍からただの屍と化した。
しかし、折り重なるようにして倒れた元亡者達を乗り越えて次々とまだ動ける亡者が押し寄せてくる。
「死兵だ……。このままだと押し潰されるぞ。だが、撤退も出来ない」
「どうする隊長?」
射撃を続けながら隊員が指示を乞う。
エスペランサとてこのような戦局ははじめてだ。
有刺鉄線の展開で一時的に余裕は出来たものの、これ以上戦線を維持するのは困難である。
何か無いか…と港湾施設を見回したエスペランサは岸壁の一角に油船が係留されているのを見つけた。
彼は船舶に詳しくは無いが、油船がどのような船かどうかは知っている。
「あれを使えば……。アンソニー!俺は少し戦線を離れる。その間、ここの指揮を頼む」
「何っ!?何か思いついたのか?」
「ああ。戦局をひっくり返す策を思いついた」
「了解した!ここは何としても守り通す。頼んだぞ隊長!」
エスペランサは戦線を離れて避難先である倉庫へ向かった。
倉庫の中には数百人の避難者がいた。
漁師や港湾職員、それに生き残った警官や沿岸警備隊の隊員だ。
負傷者はフローラが指揮するセンチュリオンの衛生員に手当を受けていたが、その光景はさながら野戦病院のようだった。
あまりの恐怖から発狂したり、震えている民間人も多い。
それもその筈だ。
倉庫の外からは戦闘の音がずっと聞こえているのだから。
「外は、外はどうなってるんですか?救援は来るんですよね?私たちはどうなってしまうんですか」
エスペランサが倉庫に入った瞬間、避難民の一人が不安そうに聞いてくる。
ここの避難民達はエスペランサ達を英国軍と思っているようだった。
「大丈夫です。奴らは必ず我々が倒しますから」
彼はそう言うと、倉庫の奥に進む。
倉庫の奥ではフローラに手当てされている港湾職員達が居た。
その中でも最も年配な男にエスペランサは話しかけた。
「あなたが港長ですか?」
「あ、ああ。私がここの港長だ」
無精髭を生やした初老の男が手当てを受けながら言う。
彼もまた亡者の襲撃で怪我をしていた。
「自分は今戦闘を行なっている部隊の隊長です。敵は亡者という生ける屍です。弱点は熱と光……。奴らを倒すためには湾内で大規模な火災を起こす必要があるんです」
「大規模な火災……。つまりあなたはこの港内を炎上させる許可を貰いに来たということですか?」
「理解が早くて助かります。今から港湾を大炎上させて亡者を一網打尽にするつもりです」
「私の権限でどうにか出来る事ではない。港湾の長は私だが……。いや、あの化け物を倒してくれるのなら……構わない。全ての責任は私が負おう。しかし、この港湾も狭くはない。どうやって炎上させる気なんです?」
「港に油船が止まっていました。あれに積んである燃料を湾内に流して爆破するつもりです」
「それは、不可能だと思います」
「え?何故ですか?」
「あの油船に積んであるのは重油です。流したところで恐らく燃えないでしょう」
エスペランサは魔法使いの中では内燃機関や危険物についての知識が豊富だった。
しかし、彼は主計兵では無い。
彼の知る船は基本的に軍艦であったが、米海軍の艦艇は原子力か軽油で動く。
だが、一般商船の燃料は基本的に重油だ。
第3石油類である重油の引火点は60から150度であり、引火し難い。
逆にガソリンの引火点はマイナス40度であり、静電気でも簡単に燃えてしまうので危険なのだ。
「重油は燃えないということですか?」
「重油もディーゼル燃料も引火点は低い。あの化け物全部を燃やすならガソリンでないと駄目でしょう……」
「ならガソリンは?この港湾施設にガソリンタンクはないんですか?」
「船ではガソリンは使いません。……いや、あります。車輌用の燃料を格納した倉庫があるんです。しかし、あそこは化け物に埋め尽くされていて近付けるとは思えません」
港長曰くガソリンが格納された倉庫は既に亡者に覆われている岸壁を越えた先にあるらしい。
つまり、ガソリンを入手するためには亡者の群れの中を突破していく必要があるのだ。
「やるしかないだろ。だが、亡者の群れの中を突破する戦力が確保出来ない……」
アーニーやアンソニー達主力部隊は今も亡者と交戦中。
フローラをはじめとした衛生隊や後方支援部隊も治療と補給で手が離せない。
「俺が行く。ここじゃ俺が一番暇だからな」
困り果てていたエスペランサの元にフナサカがMINIMIを担いでやってきた。
彼は通信機器を担当しているが、確かに今は仕事が無い。
「フナサカか。だが、俺を含めても二人だけじゃ亡者を突破するのは不可能だ」
「私達も行こう。銃の取り扱いは分からないが、亡者の相手なら過去の戦争で経験がある」
フナサカの後ろから元闇祓いと元魔法省役員の隊員が4名現れた。
「これで6人か。隊長、6人なら何とかなるんじゃないか?」
「6人……ギリギリ分隊規模の戦闘団か」
「なら我々も戦う。亡者とか魔法とかは知らんが。この街を守るのは我々の役目だからな」
さらに6名の警官と沿岸警備隊員がやってきた。
これで決死隊の人数は12名。
「これなら何とかなるかもしれん。だが、あの亡者の中を突破するとなれば危険が伴う。センチュリオンの隊員はともかく、あなた達を巻き込む訳には」
「危険は承知の上だ。私達も射撃訓練くらいは経験がある。それに、我々ならガソリンの場所も知っている」
警官達の顔は真剣だった。
確かに彼らは貴重な戦力だ。
エスペランサは決心する。
「了解しました。では、我々の指揮下に入って下さい。ブリーフィングをしている暇は無い。補給をしたらすぐに突撃だ」
エスペランサは警官と沿岸警備隊員達にM733を渡していく。
そして、自身もMINIMIを手に取った。
今世紀初のマグルと魔法使いによる混成部隊が結成した瞬間である。
Q 亡者は日中に動けるの?銃や火炎放射器で倒せるの?
A 独自設定です。ヴォルデモートの操る亡者はマグルの浮浪者というのは公式設定です。今回はヴォルデモートが操っていないので他で用意してきています。
Q 箒で絨毯爆撃すれば?ナパームとか火炎瓶とか
A 亡者を操る敵を警戒して(魔法による狙撃を警戒)箒での攻撃をしなかったのと、亡者の規模が予想以上で準備不足。そもそもナパーム弾はホグワーツにあり、別働隊が輸送中。
Q 何故ペネロピー出したの?
A 後々活きてくる展開です。
Q マグルの警察と軍隊は来ないの?
A 要請する前に職員が亡者に襲われ、通信機器が使えない。この当時はまだ携帯電話は普及していないのでなかなか連絡も難しい。ギリギリ生き残っていた警官と沿岸警備隊の隊員が何とか一般人を避難させて小火器で抵抗していたが、センチュリオン到着時点で8割以上の警官と沿岸警備隊員が亡者に殺されてしまっていた。