投稿が遅れて申し訳ありません。
感想誤字報告ありがとうございます!
先日、無事に第一子が生まれました。
母子共に健康で嬉しい限りです。
ウィーズリー家のように温かく、マルフォイ家のように裕福な家庭を目指せたら良いな…と思います
出産前の妻のマイブームはホグレガでした。トロールと戦う時に「銃があればな」と思ってしまい、私自身、エスペランサに毒されてきたようです笑
平和なホグワーツとはうってかわってマルフォイ家の屋敷は殺伐としていた。
部下の大半を犠牲にした上に特にこれといって戦果を上げず、のこのこと帰ってきたドロホフとベラトリックスに対してヴォルデモートは怒り狂っていた。
そして、その怒りの矛先が自分に向かないように、死喰い人の幹部たちは俯いて一言も言葉を発しない。
ドロホフと満身創痍のベラトリックスは怒れる君主に対して跪いている。
「わ、我が君。私は最善を尽くしました。しかしながら……」
「最善……。最善というのは、ポッターも殺せず、センチュリオンを壊滅出来ずに逃げ帰ってきたことを言うのか?ベラトリックスよ」
「い、いえ……。ですが、私は最後まで戦い、そして……」
「クルーシオ」
表情ひとつ変えずにヴォルデモートはベラトリックスに磔の呪文をかけた。
マルフォイ家中にベラトリックスの悲鳴が響く。
周囲の死喰い人達は恐怖に顔を引き攣らせた。
「戦うだけならトロールでも出来る。猛省しろ。さて、お前だ。アントニン」
「はい。我が君」
「俺様がお前を今回投入した理由が分かったか?」
「理由……ですか?」
「センチュリオンの連中の罠に気付かないほど俺様は愚かではない。それでもお前とベラトリックス以外全滅したのは予想外で心底失望したのには変わらないがな」
ドロホフは顔を上げた。
やはり、ヴォルデモートもこれがセンチュリオンによる罠だと見抜いていた。
「でしたら何故、私を?」
「今年に入ってから俺様の陣営は損失が多い。正直言えば敵の方が上手だった」
ヴォルデモートは残忍な顔で笑う。
味方の損耗率が激しい割には余裕がある。
彼にとっては死喰い人も駒でしかないのだろう。
故に損失したところで動揺することはない。
「俺様は考えた。どうしたら奴らを皆殺しに出来るかを。しかしながら、俺様は奴らの情報をあまり持っていない。情報が不足している」
「つまり、情報収集のために私を突撃のメンバーに入れたと言うことですね」
「そうだ。理解が早くて助かる。お前ならセンチュリオン相手に遅れを取らず生きて帰ってくるだろうと踏んでいた」
「我が君。センチュリオンは侮ってはならない組織でした。奴等はマグルの武器を使いますが、マグルでは無く魔法使いです。魔法とマグルの武器を巧みに使い分けて攻撃してきます。構成員も生徒だけではなく、闇祓いや魔法警察も混ざっています。あれはもう軍隊です」
「軍隊……か。アントニン。お前の記憶を俺様に差し出すのだ」
「記憶?もちろん差し出します」
「よろしい。"開心・レジリメンス"」
ヴォルデモートは杖をドロホフに向け、開心術を行使した。
他の死喰い人達が固唾を飲んで見守る中、ヴォルデモートは数分の間、開心術を行使してドロホフの記憶を見る。
「アントニン。お前は今回の戦いで一人でも敵を殺す事ができたか?」
「いえ。出来ていません。我が君」
「そうだろう。お前の記憶を見るに死の呪いは全て防がれている。では、敵を傷つけることは出来たか?」
「何人かは少なくとも負傷させたと思います」
「そのようだ。俺様の数える限り、20……いや25人が戦闘不能というところだろうな。戦闘不能にはならないまでも、負傷者はかなりの数になっている筈だ」
ヴォルデモートはドロホフの記憶を探る。
「憂の篩を使っている訳ではないから断片的な記憶しか見れなかったが……。死の呪いでは敵に被害を与えることは出来ていない。一方で悪霊の炎は有効だ」
「広範囲に及ぶ魔法が敵の弱点である……と?」
「それはセンチュリオンだけに言えた事では無い。だが、組織で戦う敵を相手に死の呪いだけで戦うのは非効率的だとは思わないか?」
「死の呪いは一撃必殺ではありますが、必中ではありません。敵はその事を熟知していました。地面に穴を掘り、その中から攻撃するという至って原始的な戦い方ですが、効果的です」
「つまり奴らは外からの攻撃に対しては強いということだ。なら内部から攻撃を仕掛ける以外に手はあるまい」
「内部から攻撃を仕掛ける……。敵の本拠地はホグワーツです。侵入することはかなり難しいかと」
「そうだ。しかし、今ホグワーツの中には俺様の息がかかった人間が少なくとも2人居る。そして、その1人はダンブルドアの抹殺を実行するために動いているのだ。ダンブルドアが殺されればあの城の防御は無くなったも同然。そこに勝機がある」
「それはセブルスの事を指しているのですか?それともルシウスの倅の事でしょうか。どちらも信用に足る人物とはとても思えません」
「今の所は信用できる。今の所は……な。近いうちにドラコが行動を起こす予定だ。俺様はこう見えてドラコに期待しているのだ」
その言葉に部屋の隅にいたナルシッサが反応した。
ヴォルデモートはドラコ・マルフォイを手駒にしか思っていない。
それどころか使い潰しの道具にしようとしている。
そう思っていた。
だからこそスネイプに協力を仰いだわけだ。
しかし、どういう心境の変化かは分からないが、ヴォルデモートはドラコに期待をしているらしい。
その事が余計にナルシッサの不安を掻き立てた。
エスペランサはホグワーツの中庭で本を読んでいた。
授業が無い空き時間で、英国にしては珍しく良い天気だったので外で読書をすることにしたのだ。
センチュリオンの隊員は基本ツーマンセルで行動させていたが、エスペランサは単独で動いている。
普段ならセオドールやネビルと行動していたが、生憎、手空きの人間がいなかったためだ。
戦時でなければホグワーツの敷地外で過ごしていたところだが、今はそうもいかない。
ホグワーツ周辺の村々にもヴォルデモートの魔の手は伸びている。
ため息混じりに本を閉じたエスペランサのところにフローラがやってきた。
「何を読んでいるんですか?」
「なんだフローラか」
「なんだ、は余計です。単独行動は隊長でも禁止されている筈ですよ」
「それはお互い様だろう?他の連中は?」
「授業に出るか、先の戦闘により負傷したため、医務室送りです」
先の戦闘で重軽傷を負ったセンチュリオンの隊員はまだ医務室から復帰していない。
悪霊の炎によってできた傷はなかなか完治しないためだ。
事実上、センチュリオンは戦闘不能になっている。
「戦死者は出なかったが、ドロホフ1人にここまでやられるとは思わなかった」
「敵の戦力の中でも最上位ですからね。戦死者が出なかっただけでも奇跡に等しいです。それはともかく、スラグホーンのパーティーには出席するんですか?」
「出るメリットが無い。だいたいスラグホーンと俺にはあまり接点がない」
エスペランサも魔法薬学は履修していた。
しかし、スラグホーンはハリーに夢中でエスペランサと話す機会はあまりなかったのである。
「そうとも限りませんよ?少なくとも私にはメリットが2つあります」
「ほう。どんなメリットがあるんだ?」
エスペランサは読みかけの地政学についての本を地面に置き、上体を起こした。
「センチュリオンで使用している魔法薬……例えばウィゲンヴェルト薬等ですが、その材料についてはホグワーツ敷地外の店と契約していました」
「ピピンの店とかか?」
「そこも契約していますが……。フェルドクロフト周辺の個人業者がかなり協力的でした。ですが、ヴォルデモート勢力がホグワーツ周辺地域に展開し始めたことで、貿易路が絶たれてしまったんです。それで材料費も高騰し、センチュリオンの財政は苦しくなるばかり」
フローラは衛生関係の医薬品や魔法薬の材料を契約、調達する業務も行なっている。
故にセンチュリオンの経済状況が悪化しているのも理解していた。
「その話は聞いてる。フェルドクロフト以外の地域も麻痺してるらしいな。現状で息しているのはホグズミードくらいなものだろう。あそこはほぼホグワーツの警備地区内だし。だが、それとスラグホーンに何の関係が?」
「スラグホーンの使う魔法薬の材料もホグワーツ周辺地域から輸入しているものです。しかし、現状、ホグズミード以外からの輸送路が絶たれているため、彼の懐事情はすこぶる悪いみたいです。そこで、我々の火力を使いフェルドクロフト周辺の敵勢力を一掃すれば財政を回復させることができる。スラグホーンにも恩を売れますね」
「センチュリオンの財政のためというのは理解できるが、スラグホーンに恩を売って得られるものはあるのか?」
「あります。幸運薬…フェリックス・フェリシスの増産です」
「幸運薬を作戦に使用する…ということか」
その手はエスペランサも考えた事があった。
だが、フェリックス・フェリシス薬の調合は極めて困難であるし、副作用の事を考えれば作戦で使用するのはリスクが高い。
この薬は一時的に人間を幸運にするが、世界の因果率に干渉するため、多様すれば己に災をもたらすという副作用があった。
「死喰い人達ですら幸運薬を多用しようとはしていません。しかし、万が一の時の保険で所持しておくのであれば特に問題はないというのが私の意見です。それに、幸運薬以外の魔法薬の提供をしてもらえれば、それはそれで戦力になります」
「保険……か。しかし、うちにはフローラやセオドールといった魔法薬学に秀でている隊員も居る。魔法薬の増産に困ることはないだろう」
「お褒めに預かり光栄ですが、教師と生徒ではその能力に雲泥の差があります。それに私もセオドールも魔法薬学の成績は2番手3番手です」
「1番手はハーマイオニーか」
「最近ではハリーポッターがトップを独走中ですけどね。ええと、あなたは何位でしたっけ」
「そんな順位は忘れた」
「そうですか。私の記憶が正しければ8位です。それはさて置いてスラグホーンから強力な魔法薬を入手するのは作戦を遂行する上でもプラスになります」
「確かに価値はありそうだ。だが、フェルドクロフト周辺への遠征作戦もかなり難しいぞ。地の利が無い上に補給路も確保されていない」
「そこに関しては副隊長を交えて考える必要がありますね」
「副隊長が素直に首を縦に振るとは思えん。まあ、次のブリーフィングの時に首脳陣で考えるとしよう」
そう言い残し、彼は木に立てかけていたM733を担ぐ。
間も無く昼食の時間だった。
「で、結局のところスラグ・クラブのクリスマスパーティには行くんですか?」
「あまり乗り気では無い。フローラは行きたいのか?」
「ええ。まだ二つ目のメリットを言っていなかったですね。パーティーに参加する二つ目のメリットは、あなたとクリスマスを過ごす口実が出来るからですよ。そろそろ察して欲しいと思っていたのですが……」
フローラの言葉にエスペランサは目を丸くする。
やや時間を空けて彼は彼女の誘いを承諾した。
戦闘では百戦錬磨でも、意中の女性には太刀打ちできない。
いつの世でも男はそういう生き物だった。
スラグホーンのクリスマスパーティは豪勢なものだった。
金色の装飾が壁にも天井にも施され、巨大な蓄音機からは優雅な音楽が流れている。
何人もの著名人が招待されているのだろう。
明らかに生徒ではない人が談笑しながら葉巻を咥えているのが見える。
屋敷しもべ妖精が忙しなく食べ物を持って行き来するのを視界の端に置きながら、エスペランサはフローラと共にスラグホーンを探した。
エスペランサもフローラも4学年時にダンスパーティで使ったドレスローブを着ている。
相変わらずフローラの美貌はパーティー会場の男達の目を奪っていたが、銃を携行するエスペランサが横に居たのでは話しかけることも出来ない。
「お、隊長じゃないか。フローラ嬢と素敵なクリスマスをお過ごしのようで」
スラグ・クラブのメンバーでもあるコーマックが冷やかしに来た。
彼は先の戦闘で重傷を負ったが、クリスマスを目前に脅威の回復を見せた。
とは言え、松葉杖をつかなければ会場まで辿り着かなかったし、腕は包帯でぐるぐる巻きだ。
「そんな怪我で良くもまあパーティーに来ようとしたものだ」
「そらそうさ。クリスマスは年に一度。それに、今回は嬉しい誘いがあったからな」
「誘い?」
「ハーマイオニー・グレンジャーがパーティーに一緒に行こうと誘ってくれたんだ。ようやく俺にも春が来たって訳だな」
「そう言えばそんな話もあった気がする」
ハーマイオニーはロンに対する嫌がらせとしてコーマックをパーティーに誘ったらしい。
何に対する嫌がらせなのかは敢えて聞かなかったが。
また、嫌がらせ目的での誘いだということをコーマックに言わないのはエスペランサなりの優しさでもあった。
「しかしそのグレンジャーの姿が見えないようですが?」
「さっきまでここに居たんだけどな……。まあ良いさ。今夜彼女を俺の虜にさせてやる」
「そうですか……。頑張って下さい。早めの春が来ると良いですね。今年は大寒波みたいですけど」
フローラは呆れながらコーマックを見送った。
「浮かれてやがる。戦時だというのに呆れた奴だ」
「戦時だからこそ……じゃないんですか?折角のクリスマスですから、浮かれ気分になるのも頷けます」
「フローラも浮かれているのか?」
「さあ、どうでしょうね。でも、それを聞くのは野暮ではありませんか?」
「そう……なのかもしれない。だが、俺は目的を達成する時まで浮かれた気分にはなれないだろうな」
「目的達成ですか。何年…いえ、何十年とかかりそうですね。では、その目的達成までの間、私はあなたと一緒になることは出来ないんでしょうか?」
「?今だって一緒に居るじゃないか」
「そういう意味ではありません。本当に察しが悪い人ですね」
「生憎と俺は遠回しな表現を理解するのが苦手でな」
「ではストレートに好意を伝えれば……少しは私の事を見てくれるのでしょうか?」
フローラはいたずらっぽく笑う。
エスペランサはわざと視線を逸らした。
「浮ついた話は後だ。ほら、スラグホーンがあそこにいるぞ。話しかけるなら今がチャンスだ」
スラグホーンはワイングラス片手に初老の魔法使い数名と話し込んでいた。
話の内容からするに魔法省のOB達らしい。
「メリークリスマス。スラグホーン先生」
「おお、これはこれはエスペランサにフローラ。ええと、こっちは私の教え子達だ。今は引退しているが、かつては魔法省で勤めていた」
初老の男達はエスペランサを白い目で見る。
あからさまに悪意のある視線だった。
それもその筈。
センチュリオンは魔法省の半数から良い顔をされていない。
魔法省管轄外の武装勢力を認める役人はスクリムジョールらを含めても少数派である。
OB達はそそくさと席を外した。
「気を悪くしないでくれ。彼らは君達が魔法省よりも民衆に支持されていることを妬んでいるのだよ。まあ、そんな事はどうでも良い。君とはゆっくり話したいと思っていたんだ。君の組織は粒揃いだからな。ホグワーツの有望な人材を集めるカリスマ性は素晴らしい」
「センチュリオンの隊員は精鋭無比ですから。まあ、彼等の気持ちも理解できます。政府非公認の武装した組織なんてものを認める政府はマグル界を含めて皆無でしょうから」
「もし良ければ私の知り合いを紹介しよう。魔法界ではそれなりに功績を残した連中を大勢知っている。きっと君達の力になる筈だ」
「ほう。その見返りに何を求めるのですか?」
「見返りなんてものは無い。私の教え子の中に君達のような、あー、精鋭無比達が加わることが望みなのだ」
要するにエスペランサ達を自身のコレクションの一つにしようとしているらしい。
スラグホーンらしいと言えばらしいが、センチュリオンはあくまでも戦闘部隊である。
決してコレクションではない。
「前向きに考えておきましょう。それよりも先生。我々から提案があります」
「提案?」
スラグホーンが首を傾げる。
フローラがエスペランサの代わりに話をし始めた。
「先生の懐事情はあまり宜しくないとお聞きしました。魔法薬の材料を揃えるのも一苦労だと……。その原因はフェルドクロフト地域からの輸入が停止しているから、違いますか?」
「良く知っている……。その通りだとも。ホグワーツ周辺地域だけでなく英国全体の物流が麻痺しているんだよ。私は各方面に伝手があって通常よりも安く材料が手に入るのだが、ここ数ヶ月はホグズミード村からしか輸入出来ていない。あそこはホグワーツと契約しているところが多いからあまり安くしてくれないし……。正直困り果てていたところだ」
「つまり、物流を麻痺させている敵を殲滅すれば問題は解決しますね?」
フローラの発言にスラグホーンは目を細めた。
「殲滅……つまり、死喰い人を倒すということか?無茶だ。魔法省でも苦戦しているというのに」
「可能です。私達にはそれを可能にする戦力と練度があります」
センチュリオンの戦力は英国魔法界でも知れ渡っている。
ヴォルデモートに怯える市民にとってセンチュリオンの存在は希望に等しい。
最高指揮官がダンブルドアであることもあり、英国魔法界はセンチュリオンを支持する声が多くなってきていた。
「しかしだな……。君達の実力は確かに耳にしている。だが、私はこれでも教師なのだ。生徒を戦地に赴かせる訳にはいかん」
スラグホーンはスリザリンには珍しいまでに人格者である。
自分の教え子の命を危険に晒す真似は避けたいようだ。
「先生に頼まれなくても我々は敵を殲滅します。無論、最高指揮官であるダンブルドアの許可は必要でしょう。ですが、これはつまり、先生の命令ではなくダンブルドアの命令で我々は動くということの裏付けです。スラグホーン先生が気に病むことはありません」
「いやいや……やはり、危険が伴う。だが、ダンブルドアの命令なら仕方ないのか……いや、しかしだな……。おや、ハリーこんばんは」
いつの間にかやってきたハリーにスラグホーンが気付く。
ハリーの横にはあまりヘンテコな格好ではないルーナが立っていた。
交渉の邪魔をされたことと魔法薬学の件もあり、フローラがあからさまに不機嫌になる。
「こんばんは先生。エスペランサも来てたんだね」
「ああ、まあな」
ハリーが挨拶する。
「いやはや君にはいつも驚かされる。天性の才能と言うべきか……魔法薬学の才能は母親譲りだね。それとも、教えてきた先生が良かったのかな?なあセブルス」
スラグホーン以外の全員が後ろを向いた。
エスペランサもフローラもスネイプが背後に居たことに気付かなかったのだ。
「影が薄くて気付かなかった……」
「何か言ったか?ルックウッド」
「いえ。何も……」
「我輩の聞き間違いでなければ、ポッターに魔法薬学の才能があるとか?」
「おおそうとも。ハリーには優れた才能がある。まるでリリーを見ているかのようだ」
スネイプの目が一瞬、細くなるのをエスペランサは見逃さなかった。
「おかしいですな。我輩の記憶ではポッターの成績は最下層だったはずですが」
「ではそれこそ才能が開花したんだ。ハリーは他に何の教科を履修しているんだい?」
「闇の魔術に対する防衛術、変身術、呪文学、それから薬草学です」
「闇祓いとして必要な科目というわけか…」
スネイプがせせら笑う。
ちなみにエスペランサとフローラも全く同じ科目を履修していた。
「ほっほう。では素晴らしい闇祓いになるだろう」
ハリーが闇祓いを目指していると言うのは初耳だったが、その志望動機は何となく理解できる。
そんな時入り口の方で騒ぎが起きた。
「スラグホーン先生。こいつが、会場の外で何かをしていました!」
見れば会場の入り口にフィルチと彼に拘束されたマルフォイが居る。
マルフォイは恨めしそうな顔をしていた。
「何かって何を?」
「おお、エスペランサか。わからんが、会場の外で彷徨いていたから怪しいと思い問い詰めたんだ。そうしたらパーティに参加するために来たと嘘を吐きやがった。この小僧はパーティに呼ばれていないから何か企んでいたに違いない」
フィルチが鼻息荒く捲し立てる。
マルフォイはと言えば開き直った顔をしていた。
「ああ、そうさ。僕はパーティに呼ばれちゃいない。これで満足か出来損ないのスクイブ」
「貴様……!」
「まあまあアーガス。せっかくのパーティなんだ。ドラコだって参加したかったのだろう。私が許可する。君はここにいてよろし……」
スラグホーンが言い終える前にエスペランサは懐から拳銃を取り出してマルフォイに向けた。
マルフォイはギョッとした顔をする。
ホグワーツの6年生でエスペランサ達の持つ武器の威力を知らない者は居なかった。
「おいおい、エスペランサ。ドラコはただパーティに出たくて彷徨いていただけだろう」
「さあ、それはどうでしょうか。彼の父親は死喰い人です。我々を暗殺しようとする動機は十分にある」
エスペランサは銃口を真っ直ぐにマルフォイに向ける。
フローラも彼に倣って拳銃を取り出した。
ハリーや他の参加者は固唾を飲んで事の成り行きを見守っている。
セオドール、ザビニ、コーマックといったパーティに参加している隊員達も駆けつけ(コーマックのみ足を引き摺りながら)、全員が忍ばせていた銃を構え始めた。
「マルフォイ。何を企んでいる?吐かなければ俺は引き金を引かざるを得ない」
エスペランサの台詞はもちろんブラフである。
銃も安全装置を外していない。
だが、センチュリオンの隊員が複数人居る部屋の外で何かしらの工作をしていたことが発覚した場合、銃口が向けられるということを周囲に知らしめておくことが重要だった。
簡単に言えば「舐められないようにする」ということだ。
「僕は何もしていない。何なら君たちお得意の持ち物検査をしてもらっても構わない。どうせ何も出てきやしないんだ」
「随分と余裕だな。なら、お前の父親のお友達と同様に血祭りにあげてやる」
「やめろ隊長。これ以上の挑発は効果がない」
「その通りだルックウッド。これ以上校内を血で染めるようなら罰則だけでは済まさんぞ?」
スネイプがマルフォイを庇うようにエスペランサの前に躍り出る。
エスペランサはやむを得ず銃を下ろした。
他の隊員もそれに倣う。
「ミスター・マルフォイの処遇は寮監である我輩が決める。付いてこいドラコ」
「僕は……」
「我輩は付いてこいと言っているのだ。ドラコ」
スネイプは珍しくマルフォイに強い口調で命令した。
マルフォイは不機嫌そうにスネイプに連れられてパーティ会場を出て行った。
「驚きだな。スネイプはマルフォイ贔屓だと思っていたが……」
エスペランサは拳銃を収めつつ、驚きを口にした。
「そうだな。スネイプ先生はドラコには甘かった。それを抜きにしても今年度のドラコの振る舞いは怪しい。とは言え、所詮はドラコだ。彼一人で戦況をひっくり返すような事は出来ないだろう」
「セオドールは随分とマルフォイに対する評価が低いんだな」
「彼は家柄だけが取り柄の一生徒に過ぎない。学業成績は良いが非凡な才能を持っている訳でもカリスマ性がある訳でもない。故にヴォルデモート陣営からしても戦力として数えられてはいない、というのが俺の推測だ」
「窮鼠猫を噛む……という可能性は?」
「その場合は鼠を狩るまでだ」
セオドールは顔色一つ変えずに言うが、それが本心なのかは分からない。
マルフォイとセオドールの関係性についてエスペランサは深く考えた事もなかった。
「で、スラグホーン先生は我々の力は欲しくないのですか?」
事の流れに置いていかれ、硬直していたスラグホーンにセオドールは話しかけた。
スラグホーンは我に返る。
「え、いや……その。うーむ。まあ、ダンブルドアが許すのなら私からは特に言うことはないのだが」
「なら交渉成立ですね。早速、作戦立案に移ります」
セオドールは不敵な笑みを浮かべた。
「本作戦の目標はホグワーツ周辺地域の治安を確保すること。そのためには敵の拠点を見つけないといけない」
12月26日。
必要の部屋にはエスペランサの他、セオドール、フローラ、ネビル、ザビニ、フナサカ、アンソニー、それにオブザーバーとしてリータ・スキータとスクリムジョールが集まっていた。
フェルドクロフト地域から敵勢力を一掃して補給線を確保する。
その方針に異論を唱える隊員は居なかった。
補給が如何に戦略上重要であるかをこの場に居る全員が知っていたからだ。
「死喰い人はホグワーツ周辺地域を手中に収めるつもりざんす。つもりというか…もう8割は勢力下だけど。安全なのはホグワーツに近いホグズミード村や、その周辺の集落くらいざんすよ」
「リータの情報はほぼ正確だろう。ホグワーツの周辺には複数の村が点在しているが、それらからホグワーツに対して物資の輸出が記録されているのは2ヶ月前が最後だ」
リータとザビニの諜報部隊コンビが集めた資料によれば、ホグワーツ周辺地域は既に敵の勢力下にあるらしい。
「魔法省としても何とかしたいところだが、闇祓い等の主力はロンドンやホグズミード村の警備に割いていてホグワーツ周辺地域を含め、英国全土にある魔法族の集落の治安を確保出来ていない」
スクリムジョールが嘆く。
魔法族の集落は英国全土に存在するが、それら全てを守り切る程の員数は揃っていない。
優先的にダイアゴン横丁や魔法省に人を割いた結果、ホグワーツ周辺地域は敵の勢力下になってしまった訳だ。
「まずは整理した情報を共有する。これを見てくれ」
ザビニが何枚かの写真とホグワーツ周辺地域の地図を取り出した。
「リータに撮影してきてもらったものだ。フェルドクロフト地域にある城跡に死喰い人と思われる者が野営しているのが確認された。主目的は不明だが、長期間に渡って滞在しているようだ」
エスペランサは写真の何枚かを手に取る。
元々は立派であっただろう城にテントを貼り、野営している死喰い人たちが写っていた。
「この写真を見ると人数はそこまで多くない。ホグワーツ襲撃のための斥候部隊と見た方が良いな。合わせてフェルドクロフト地域の商人を脅して物流をストップさせているんだろう」
「敵の数は多く見積もっても15人程度。それに彼らの使役する闇の生物が数匹ってところざんすね。駐屯しながら、武力をちらつかせて村人の財産や食料、それに輸出する品を強奪してるざんす」
「その人数なら俺たちの火力を使えば何とかなる。1個小隊を投入して制圧してしまおうぜ」
「いや、そう簡単にはいかない」
意気込むフナサカをザビニが止めた。
「この写真を見ろ。敵は15人程度と少ないが、中には厄介な奴が紛れている」
隊員たちはザビニが指差す写真を見た。
そこには黒いローブを着た中年の魔女が写っている。
「このおばさんが厄介なのか?」
「………アデレード・カロー」
フローラが写真を見ながら呟く。
「知り合いか?」
「遠い親戚です。闇の魔法生物に精通していて、巨人族とのコネクションも持っています。ついでに言えば嫌な女ですよ」
「ということは最悪の場合、巨人を相手にしないといけないわけか?」
「流石にここの地域まで巨人を連れてきてはいないと思いますが……。かなり手強い相手です。闇の生物を使役する戦法を得意としています」
「魔法生物を使役して戦うならこちらも魔法生物を熟知した隊員を派出すべきだな。後方職種で誰か居ただろ」
「ロルフなら適任じゃないのか。奴の祖父はニュート・スキャマンダーだ。魔法生物に関する知識であいつの右に出るのはハグリッドとケトルバーンくらいだろう。あとは、最近入隊した奴で一人心当たりがある。そいつも魔法生物に詳しい家系だったはずだ」
「ロルフか。一応、戦闘訓練は受けているが、実戦経験は少ないだろ。まあ、敵も手薄だから制圧は困難ではないと思うがな……」
「困難か困難でないかはまだ判断できん。俺たちは前回の戦いでドロホフ1人に戦況を覆されかけた。人数が少ないからといって簡単に攻略出来るほど死喰い人連中は甘くない。それに、最悪の場合を考えるのであればヴォルデモートが登場する可能性だってあるんだ」
セオドールが言う。
ドロホフとの戦闘でセンチュリオンは少なくない負傷者を出した。
そのせいで現在戦闘可能な人数は大幅に減り、1個小隊の派出がギリギリだった。
遊撃班はいまだに戦闘不能である。
故に今回の作戦は各職種の隊員を集め、混成部隊を編成しなくてはならなかった。
「だからといって怖気付く訳にもいかない。敵の拠点を急襲し、短時間で戦闘を終わらせ、移動キーで帰還する。これで任務は終わりだ」
エスペランサが腕を組みながら決断した。
「それは良いが、敵を倒しても根本的な問題の解決にはならないだろ?一時的に村を解放しても、また新しい死喰い人が補充されたら振り出しに戻っちまう」
「問題ない。ホグワーツ周辺地域で活動すればセンチュリオンに潰されるという事実を知らしめることが大切なんだ。敵は『センチュリオンに潰されない戦力を配備する』か『撤退する』のどちらかの選択肢を選ばざるを得なくなる。
そして、敵も人数不足は深刻だ。たかが一つの地域、しかもダンブルドアのお膝元の地域に戦力を固めるような馬鹿なことはしないだろう」
「住民を人質にとられないか?」
「センチュリオンは住民の要請を受けて出動した訳じゃない。それに住民たちは敵側からしても重要な生産者達だ。無闇に襲いはしないだろう」
「副隊長はどう思う?」
「俺も隊長の意見に賛成だ。だが、本作戦は奇襲を前提とするから当該地域までの前進には細心の注意が必要となる。箒を使って移動は目立ち過ぎるし、姿現しも発見される可能性が高い。やはり、陸路で行くしかないな」
セオドールの言葉にアンソニーが反応した。
「フェルドクロフトまでは遠いぞ。徒歩行軍するとなるとかなり時間がかかる」
「この時のために車輌を整備したんだ。ハンヴィー1台と偵察用のバイクを付ける。そして、どちらも移動キーになるように魔法をかけた」
「車輌を移動キーにしたのか?移動キーにしてはハンヴィーは大き過ぎるような気もするが」
「大きい方が良いんだ。最悪の場合を想定した脱出手段としては移動キーが最適であり、その移動キーは大きく、そして、機動力を持ったものの方が良い。セドリックが死をもってそれを教えてくれた」
セドリックの亡骸を抱えた上でハリーを生存させたのは移動キーだった。
追跡不可能な上に移動ポイントを事前に設定しているため、緊急時にホグワーツに転移する事も可能。
また、ハンヴィーのように大きな移動キーなら死の呪いから身を守りつつ、帰還する事も不可能ではない。
エスペランサもセオドールもセドリックの死を決して無駄にしようとしなかった。
あのような死を招かないために考案したのが車両を移動キーにして緊急脱出する方法である。
「で、今回は誰が指揮官を務める?」
「それは……」
「俺が行く」
エスペランサが当たり前のように言った。
「指揮官を前線には出したくない……が、隊長は止めても聞く耳を持たないだろうな。城の保守は副隊長の俺が指揮を執る。隊長のサポートにはアンソニーとネビルがついてくれ」
セオドールは溜息を吐きながら、二人の隊員を指定した。
どちらも最古参の隊員であり、練度も十分にある。
「あとは隊長に指名してもらおうか」
「ああ。そうだな。城の外に出るから通信士は必須だ。通信と車輌整備にも精通したフナサカは来てもらう。対魔法生物に特化した隊員二人に、重火器の取り扱いに長けたダフネが必要だ。それに現地の情報を知り尽くしているザビニ。衛生班としてフローラ。あとは小銃小隊から実戦経験のある者を2、3名連れて行く」
「古参兵が多いな。皆、首を縦に振るだろう。では、補給と需品に連絡し、装備を用意する。細部の調整が終わり次第、また招集をかけよう。それまでは皆、ゆっくり休んでおいてくれ」
隊員達は皆、深く頷いた。
遅れてやってきた我が家のホグレガブームにより、少しだけホグレガ要素を足しています。本編にも絡めていく予定ですが、レガ主は出ません。
強過ぎて戦力のバランスが崩れかねないので汗