ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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久々に投稿です。

お気に入りや感想、誤字の報告ありがとうございます。



余談ですが、先日久々のサバゲーに参加してきました。
ゲーム中に愛銃が動かなくなりました。


case 11 Through the trapdoor 〜仕掛けられた罠〜

 

 

試験が終わったその日。

エスペランサ・ルックウッドはハリーたち三人とは別行動をしていた。

 

最後の試験が終わった瞬間に彼は地下にある武器の保管場所へ走っていき、必要な銃と弾薬を全て検知不可能拡大呪文のかけられた鞄に押し込んだ。

 

 

 

先手を打つためだ。

 

 

クィレルは試験の終わったこのタイミングで必ず賢者の石を奪いに例の部屋に入っていくだろう。

 

それよりも先に賢者の石が隠された部屋にたどり着き、待ち伏せる。

 

 

C4プラスチック爆弾。

クレイモア対人地雷。

フラッシュバンに破片手りゅう弾。

 

これらすべてを使い、部屋に罠を仕掛ける。

ヴォルデモートならともかくクィレル相手であればこれらの武器である程度のダメージが与えられるはずだ。

 

 

エスペランサはフィルチに頼み込み、禁じられた森からヴォルデモートと思われる不審人物が城内に入ってくる気配が無いかをミセスノリスに監視させるように頼んでいた。

フィルチはミセスノリスに危険が及ぶことを恐れて渋ったが、城内への侵入者が居るとすれば管理人として黙っているわけにはいかないということで了承した。

 

ミセスノリスの監視によればヴォルデモートはおろか、誰一人として城内に侵入してきた人物はいないそうだ。

 

とすれば賢者の石の奪取はクィレルが単独で行うことになる。

 

無論クィレルも手練れの魔法使いには違いなかったが、それでもヴォルデモートよりは戦い易い。

さらに、クィレルを倒すことでヴォルデモートの手に賢者の石が渡らなければ、ヴォルデモートは依然として死にぞこないのままということになる。

 

「勝機はある………」

 

保管しておいた最後の爆薬をカバンに詰めながらエスペランサは自分に言い聞かせるように呟いた。

 

 

これから始めるのは命を懸けた決戦である。

彼は手持ちの武器のほとんどを持ち出し、総力戦をかけるつもりだった。

勿論、ハリーたちには内緒にしてある。

 

ここのところ数日、ハリーは額の傷が痛むと言っていたが、それはヴォルデモートがユニコーンの血によって僅かながらも力を取り戻したためであろう。

ハリーもヴォルデモートが復活することを予期し、いざとなれば戦おうとしていたが銃も持たず、呪文も初級程度の物しか使えない状態で戦うのは無謀とも言えた。

 

 

「一人で戦う気なのか?」

 

 

いきなり声をかけられ、驚くエスペランサ。

振り返ればフィルチが立っていた。

 

思えばこの秘密の保管場所もフィルチが使わせてくれていたのだと気づく。

 

 

「まあな。ダンブルドアをはじめとした教師陣は賢者の石の守りが完璧だと思っているし、クィレルを疑おうともしてないだろう。なら、俺がクィレルの正体を暴いて、奴の息の根を止める」

 

「危険すぎるな。お前のような子供が大人の魔法使いに勝てる筈もないと思うが」

 

「俺はかつて何人もの大人の兵士を倒してきた。戦車だって戦闘ヘリだって倒したことがある。大人の魔法使いだからといって………」

 

「マグルの兵器と魔法は違う!お前が殺されに行くために儂はこの部屋を使わせたのではない!」

 

「殺されに行く?何言ってるんだ。俺は殺しに行くんだ」

 

 

エスペランサは敵を殺すことに何の躊躇もない。

 

それは、かつて傭兵時代に何人もの敵兵やテロリストを殺したから慣れている為である。

と、同時に彼は何の罪もない人々の平和な生活を脅かす人間というのは殺して当然という考えがあったからだ。

 

一般人を巻き込んでテロを行うテロリストも、大勢のマグルや魔法使いを殺したヴォルデモートもこの世に存在して良い人間ではない。

百害あって一利なし。

平和な世の中を作り出すためには排除しなくてはならない存在だと彼は思う。

 

だから彼は戦いに行く。

 

再びヴォルデモートをこの世界に解き放たないためにも………。

罪のない人間が傷つかないためにも………。

 

 

「止めないでくれフィルチさん。俺は二度とあんな地獄を見たくない。大勢の一般市民が死ぬのを見たくないんだ。その為にもクィレルを倒す」

 

「止めはせんよ。エスペランサ」

 

「え?」

 

「どうせ止めても無駄だ。お前は行く。ただ、儂はお前に死ぬなと言っているだけだ」

 

「……………」

 

「お前は馬鹿じゃない。きっと勝てる算段があるのだろう?ただ、お前は無鉄砲なところがあるからな。儂が死ぬなとでも言っておかないと自爆でもしそうだ」

 

「俺にはまだやることが沢山ある。ここで死ぬわけにはいかない」

 

「なら生きて帰ってこい。生きて帰ってきたら………今までお前がしてきた規則違反分の罰則をしてもらうとしようか」

 

「冗談だろ?」

 

「冗談だ。また消灯後、事務室で待ってる。絶対に帰ってこい」

 

 

かつてエスペランサの教官をしていた男も、任務前には必ず「生きて帰ってこい」という命令をしたものだ。

 

フィルチの言葉が教官の言葉と重なる。

だからエスペランサはフィルチの言葉に敬礼で答えた。

 

背筋を伸ばし、つま先を45度開く。

左腕は体側にしっかりとつけてこぶしを握り、伸ばした右手をこめかみまで持ってくる。

挙手の敬礼の動作だ。

本来なら被り物をしていないので10度の敬礼を行うはずだったが、あえて挙手の敬礼をした。

 

 

「エスペランサ・ルックウッド。了解しました!必ず生きて帰ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

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エスペランサはグリフィンドール寮の寝室に戻ると、トランクの中から戦闘服を取り出した。

米海兵隊の使用している戦闘服である。

防弾ベストは対魔法使い相手に無用の長物であるため今回は取り出さなかった。

 

戦闘服上下を身にまとい、鉄帽を被る。

半長靴を履き、弾帯とサスペンダー、満水になった水筒をつける。

 

戦闘服を着終えたエスペランサはベットの上に並べられた装備の点検を始めた。

教官からクリスマスに送られてきたM16A2にはM203グレネードランチャーが備え付けられている。

何度も整備をしたので作動には問題がなさそうだ。

グレネード弾と5.56ミリ弾のつまった弾倉にも不備はない。

スタングレネードと破片手りゅう弾も破損は見受けられない。

 

今回は対人戦ということもあってG3A3よりも装弾数が多く室内戦に向いたM16A2をメインウエポンとして採用した。

禁じられた森の戦闘では命中精度よりも、弾幕を多く張れる銃の方が対魔法使い戦では有効であると思われた為である。

 

検知不可能拡大呪文のかけられた鞄を肩からかけて全ての準備が完了した。

この鞄の中には今まで製造したG3A3やM3グリースガン、各種爆薬と弾薬にM249が全て詰められている。

 

M16の負い紐を肩にかけ、銃を背負った後、机の中にしまってあった何枚かの羊皮紙を取り出す。

その羊皮紙には対クィレル戦の作戦案が5パターン程書いてあった。

本来、エスペランサは対市街地ゲリラ戦の作戦立案を得意としており、拠点防衛の作戦は専門外である。

 

作戦を考える上で彼は戦史を参考にしようと思った。

 

ベルリンの市街地戦やブダペスト包囲戦、モスクワ防衛戦といった世界大戦時の戦いから古代ローマ帝国の戦いに至るまで参考に出来そうなものは全て調べた。

しかしながら、防衛戦を成功させるには潤沢な物資の確保や補給線の確立、人員の充実が必須である。

 

それに対して今回、エスペランサはたったの一人で防衛を行わなくてはならない。

もっとも、敵も一人ではあるが………。

 

ペルシア戦争のテルモピュライの戦いは少数の兵士で多数の兵士を相手に成果を出した戦いであるが、それでも300人の兵士が居たし、重装歩兵によるファランクスといった新戦法があった。

数や物資の量で戦力が劣る場合に戦争で勝つには新兵器を投入するか、新戦法で対抗する必要がある。

 

クィレルはホグワーツで教員をする程度には有能な魔法使いだ。

学生時代の所属寮はレイブンクローであり、学業成績も良かったという話は他教師から聞いていた。

となれば魔法を駆使した戦闘にも秀でている可能背が高い。

エスペランサは現代兵器を用いた戦いには詳しい自信があったが、魔法使いの戦闘に関する知識は乏しかった。

 

クィレルの持つカードは未知数である。

どのような魔法を使ってくるかが全く分からない。

敵の戦力、戦法に関する情報が欠如していた。

 

「クィレルの戦い方や使ってくる魔法に関する情報が無い以上、不利な戦いを強いられる。だが、相手も俺の戦力を全て知っているわけではない」

 

禁じられた森での戦いでエスペランサは敵側に彼の戦い方と戦力の一部を見せてしまっていた。

仮にクィレルと戦闘を行うとすれば、クィレルは銃や爆薬に対して何らかの対策をしてくるだろう。

 

それらの不利な状況を考慮にしたうえでエスペランサは作戦を考えた。

新戦法も考えた。

 

 

「気を引き締めていくぞエスペランサ・ルックウッド。敵は今まで相手にした連中よりも数段手強い」

 

 

自分自身にそう言い聞かせ、彼は4階の禁じられた部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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4階の禁じられた部屋の前には先客が居た。

 

ハリー、ロン、それにマクゴナガル教授である。

 

どうやらハリーとロンは賢者の石を狙うものが4階の禁じられた部屋に近づかないように部屋の前で見張りをしようとしていたみたいであった。

そして、見張りをしているところをマクゴナガル教授に見つかり、叱られているところである。

 

 

「何度言ったら分かるのです!?石の守りは何重にも施されていて完璧です!少なくともあなたたち2人よりは強力な守りが施されています!今度ここであなたたち2人がうろついているところを見つけたら50点ずつ減点します!」

 

 

そう言って彼女はハリーとロンを追い返した。

追い返した後で、今度はマクゴナガル教授が部屋の見張りに立った。

どうやらハリーたちが再び部屋に近づくのを阻止しようとする考えなのだろう。

 

廊下の物陰から一部始終を見ていたエスペランサは禁じられた部屋に突入する機会が失われたことに苛立ちを覚えていた。

 

 

(クソったれ。これでは部屋に近づけない。クィレルよりも先に部屋にたどり着かなくては計画がパーになっちまうっていうのに………)

 

 

渋々、エスペランサも4階から撤収した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハリーから聞いた話によれば、ダンブルドアは魔法省に呼ばれて現在ホグワーツに居ないらしい。

となると今晩のホグワーツはクィレルにとってまたとない石奪取のチャンスとなる。

 

 

「もう僕が行くしかない!ダンブルドアが居ない以上、スネイプは今夜にでも賢者の石を奪うつもりだ!」

 

 

興奮したハリーが談話室中に響き渡るような声で叫ぶ。

もっとも、消灯後である現在、談話室に居るのはハリー、ロン、ハーマイオニーとエスペランサの4人しかいないので話を他人に聞かれる心配は無かった。

 

「僕は今夜、寮を抜け出して賢者の石のところまで行く。先に石を手に入れるんだ!」

 

「正気かハリー!?」

 

「駄目よハリー!退校になってしまうわ!?」

 

「だから何だっていうんだ!もしスネイプが賢者の石を手に入れてヴォルデモートが復活したらどうするんだ!?」

 

 

ハリーがヴォルデモートに名前を言ったところでロンとハーマイオニーが悲鳴を上げる。

エスペランサは黙ってハリーの発言を聞いていた。

 

 

「ヴォルデモートが支配していた魔法界は酷い物だったって聞いた。ホグワーツは無くなるかもしれないし、罪のない人が殺されるんだ!僕の両親みたいに!なら僕が行かなきゃいけない。ヴォルデモートの復活が防げるなら退校なんて軽いものだ!」

 

 

罪のない人が殺される………。

 

ヴォルデモートの全盛期の魔法界の様子はエスペランサも文献で読んだ。

言論弾圧、市民の思考はマグルとマグル生まれの排斥に傾けられ、完全な管理社会と化していた英国魔法界。

不用意に闇の勢力を批判し、それを告げ口されれば命は無い。

法治国家は崩壊し、暴力が巣食う街に民主制は無い。

 

まるで独裁国家だ、とエスペランサは思った。

 

マグル界にも20世紀が終わろうとしている今になっても独裁国家は存在する。

 

しかし、ヴォルデモート支配下における魔法界は現存するマグル界の独裁国家とは比べ物にならない酷さがあった。

 

 

「ハリーの言う通りだ。ヴォルデモートは復活させてはならない。その為には敵よりもはやく賢者の石を確保する必要がある。マクゴナガル先生は石の防衛が完璧なものと言っていたが、それは教職員が全員味方であった場合の話だ。石の防衛の一角を担った教職員なら、容易く罠を突破して石を手に入れてしまうだろう。教師陣は平和ボケしすぎている」

 

「エスペランサ!あなたまでそんなことを………」

 

「だが、ハリー。お前ひとりで何ができる?使える呪文も限られている半人前の魔法使いが教師陣の作った防衛線を突破できると思っているのか?」

 

「それは…………」

 

 

ハリーの学業成績は並であった。

 

1学年なら申し分ない魔法力であったが、教師が作り上げた完璧な防御(自称)を突破できる能力は勿論持っていない。

返り討ちに遭うのが目に見えていた。

 

それに、諸悪の根源であるクィレル自身を潰しておかなければヴォルデモートの復活を妨げたことにはならないだろう。

 

 

「ハリー。お前ひとりで行ったところで返り討ちにされるにきまってる。3頭犬の餌がひとつ増えるだけだ」

 

「でもやらなきゃいけないんだ!」

 

「ああ。だから俺が行く」

 

「「「 え? 」」」

 

 

エスペランサの言葉に3人が驚く。

 

 

「俺は3頭犬を倒した実績がある。他の教師が作った防衛策が3頭犬程度のものなら突破できるはずだ。保証は出来ないが………」

 

「君一人で行くのか!?」

 

「勿論そうだ。俺は魔法に長けているわけではないが、マグルの戦い方なら心得ている。この中では一番、石までたどり着ける可能性が高い」

 

「馬鹿言うなよ!君が一人で行くなら僕も行くぞ」

 

 

ロンが言う。

 

 

「足手まといになるだけだ!半人前の魔法使いが罠を突破できるわけがないだろ」

 

「君だって半人前だ!それに僕が居なかったらトロールに殺されていたかもしれない!」

 

「あの時とは違う」

 

「何言ってるんだ2人とも!僕が行く!」

 

 

エスペランサもハリーもロンも譲らない。

 

エスペランサとしては単独で潜入したかった。

実戦経験がトロール戦しかないハリーたちを本当の戦闘に巻き込むわけにはいかない。

 

 

 

 

「君たち何をしているの?」

 

 

 

ギャイギャイと口論しているエスペランサたちは気づかなかったが、談話室にはいつのまにかネビルが下りてきていた。

 

 

「ネビル………」

 

「ちょっと試験のことで口論になってた。もう消灯後だぞ。寝たらどうだネビル?」

 

 

「嘘だ………。君たちまた抜け出そうとしてるんだろ?」

 

 

ネビルが疑わし気な目で4人を見てくる。

 

 

「なわけないだろ」

 

「ちょっとだけど話は聞いたよ。抜け出しちゃだめだ。これ以上規則を破って減点されたらグリフィンドールは大変なことになる」

 

「ネビル………。君にはわからないと思うけど、減点よりも大切なことがあるんだ」

 

 

ハリーがネビルに言う。

しかし、ネビルは一歩も引かなかった。

 

 

「行かせないよ!僕君たちと戦う!」

 

 

ネビル・ロングボトムをエスペランサは弱いと思ったことは無かった。

確かに臆病であるところはあったし、不器用で勉強もからっきしであったが、マルフォイに立ち向かうなどグリフィンドール生としての素質は十分にあると彼は思っていた。

 

しかし、まさか寮のことを考えてハリーたちに立ち向かうとは…………。

 

 

「僕戦うからな!かかってこい!」

 

 

ネビルがファイティングポーズを取る。

エスペランサは護身術を傭兵時代に覚えていた。

それを駆使すれば5秒以内にネビルを気絶させることが出来るだろう。

だが、彼は仲間に軍隊で習った技を行使することに若干の躊躇いがあった。

 

 

「‟ペトリフィカストタルス 石になれ”」

 

 

突然、ネビルの身体が石のように硬直し、床に倒れる。

 

全身金縛りの術だ。

エスペランサも図書館で見つけ、習得したその呪文は一定時間、相手を金縛りにすることの出来るものである。

 

 

「ハーマイオニー………」

 

「ネビル………。ごめんなさい。後できっと訳が分かるわ」

 

 

呪文を放ったのはハーマイオニーだった。

 

 

「これでわかったでしょう?この中で一番魔法が使えるのは私よ。エスペランサは怪物相手になら戦えるかもしれないけど、魔法に関する知識は浅いでしょ?」

 

「……………」

 

「例のあの人の復活を阻止したいのは私もロンも一緒。だから一緒に行くわ。それに私、フリットウィック先生にこっそり教えてもらったんだけど試験は100点満点中120点だったんですって。こんな生徒を規則違反で退校にするほど学校側も馬鹿じゃないと思うわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ピーブスの襲来とミセスノリスとのエンカウント(これに関してはフィルチに事情を話しているので大した脅威にはならないとエスペランサは思った)を乗り越え、エスペランサたち4人は4階の禁じられた部屋にたどり着いた。

 

透明マントを脱ぎ、4人は部屋に入る。

 

 

「フラッフィーは音楽を聞かせると眠るらしいわ。銃も有効かもしれないけど、あんまり傷つけるとハグリッドが泣くから………」

 

「任せてくれ。楽器の演奏は得意なんだ」

 

「そうなの?」

 

 

エスペランサは懐に入れた‟ある楽器”を手にする。

 

扉を開けて、暗い部屋に入り込む。

窓が一切ない部屋は暗闇に包まれているが、薄っすらと3頭犬のシルエットが見えた。

どうやら眠っているらしく、グウグウとイビキが聞こえる。

 

頭に巻かれた包帯のようなものはエスペランサの銃撃による怪我によるものだろう。

 

 

「寝てるぞ」

 

「あれよ。あそこ。ハープが呪文をかけられてひとりでに演奏を………」

 

「なんてこった…………」

 

 

おそらくクィレルが3頭犬を突破するために使用したハープなのだろう。

ということはクィレルは既に部屋に入り込み、賢者の石までたどり着いている可能性がある。

 

(最悪の事態だ。作戦1から作戦4は使い物にならなくなった。先にクィレルが賢者の石までたどり着いていた場合の作戦5を使うしかない)

 

賢者の石を防衛する作戦はクィレルに先を越された時点で使えなくなった。

もし仮に敵が先行していた場合の作戦は5つ目の作戦であるが、勝率は限りなく低い。

 

 

「スネイプが先に行ったんだ!急がなきゃ」

 

 

ロンがそう言った瞬間にハープにかけられていた魔法が解け、演奏が止まる。

 

時間経過とともに解除される魔法らしい。

魔法というのは時間経過とともに威力が弱まったり解除されることが多かった。

自動で楽器に演奏させる魔法も持続時間はそう長くない。

そうなるとクィレルが3頭犬を突破したのはそう過去のことではないのかもしれなかった。

 

 

「エスペランサ!楽器を演奏して!フラッフィーが目覚めちゃう」

 

「待ってました!」

 

 

張り切ってエスペランサが取り出した楽器はラッパであった。

 

 

「え?ちょっと……あなた何を演奏するの?」

 

 

 

パパラパ パパラパ パパラパパパパー

 

パパラパ パパラパ パパパパパパパー

 

 

エスペランサがラッパで演奏?したのは軍隊において兵士が最も嫌うメロディーだった。

 

心地よい夢の世界から一気に現実世界に意識を戻す魔法のメロディー。

その名を「起床ラッパ」と人は呼んだ。

 

 

 

 

 

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 

 

 

3頭犬も無理やりたたき起こされるのは好きではないようで、凄まじい怒りの鳴き声をあげる。

 

心なしか銃撃を食らった時よりも怒っているようだった。

 

 

「あ………。魔法生物も起床ラッパは嫌いだったのか」

 

「何やってるんだエスペランサ!!!!!!!」

 

 

ハリー達3人はエスペランサに怒鳴りながら急いで床にある隠し扉に走る。

エスペランサは逃げ遅れた。

 

 

「やべ………」

 

 

突進してくる3頭犬のフラッフィー。

 

身の危険を感じた彼は戦闘服につけられていたスタングレネードを取り外し、ピンを抜く。

 

 

「やっぱ最初からこれ使ってれば良かったな」

 

 

3頭犬にスタングレネードを投げつけ、目と耳を塞ぐ。

 

 

 

 

 

カッ

 

 

 

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

 

 

 

 

 

「ギャアアアアアアアアアアア」

 

 

 

部屋内を眩い光と爆音が襲い、怪物は堪らず倒れこんだ。

 

その隙にエスペランサは隠し扉内に滑り込む。

 

 

 

 

隠し扉の先にはおそらく次の罠が待ち受けているはずだ。

隠し扉の下は広大な空間であったようで彼は暗闇の中を自由落下していった。

 




原作と若干時系列が違くなっております。
ハリーが石を手に入れようと決意するのは消灯後ではありませんが、物語の都合上変更しました。

フラッフィーは数か月で回復しています。

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