ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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賢者の石完結です!


3日間コミケ参加してきました。
例のサーキットも並びました。


case 15 The truth 〜真実〜

クィリナス・クィレルは目立たない学生だった。

 

レイブンクローに所属し、学業成績は学年内でもトップを収めるほどには優秀であったが、臆病で神経質な性格から過小評価がされがちだった。

常にオドオドしている彼をからかう学生も多かった。

 

クィレルは自分に自信が無かったのである。

 

いくら成績が良くても、皆は自分を評価してくれない。

そんな思いが先行し、いつしか自分だけでなく他人をも信用できなくなっていた。

 

 

そんな彼が最も成績が良かった教科がマグル学である。

 

自分が他人よりも劣った存在であると思い込んでいたクィレルは、自分よりも劣った存在を探していた。

その劣った存在こそがマグルなのである。

 

クィレルのホグワーツ在学時はまだ純血主義やマグル排斥運動が活発だった時期であり、マグルは魔法族よりも劣った存在であるという意見を持った人間が多く存在した。

 

クィレルもその一人であり、マグルが自分よりも劣っている存在であると思うことで、かろうじで自我を保つことが出来ていたのである。

 

彼はマグルがいかに魔法族よりも劣った存在であるかを明確にするためにマグル学を学んだ。

 

 

マグルは空を飛べない。

空を飛ぶためには巨大な鉄の塊を必要とする。

マグルは姿現しが出来ない。

マグルは手術をしなくては病気が治せない。

マグルはマグル同士で殺し合いをしている。

マグルは………

マグルはマグルはマグルは

 

 

マグルは…………。

 

 

やはりマグルは劣等種だ。

クィレルはそう確信し、行動を起こした。

 

 

マグルの戦争に参加したのである。

 

 

マグルの戦闘地域に足を運び、マグルの戦争に介入しようとした。

マグルの戦争の中で自分の魔法力がいかに強力であるかを知らしめようとしたのだ。

 

 

 

 

 

結果は悲惨だった。

 

 

 

 

クィレルはマグルの戦争というものに関して無知であった。

現代の魔法使いもそうだが、魔法族はマグルの戦争方法に関しては無知であり、いまだに第一次世界大戦前のような戦いを想像している節がある。

 

クィレルもそうであった。

 

剣や槍、ライフル銃を持って突撃をする戦闘を想像していたが、現実は違う。

 

 

 

音速で飛ぶ戦闘機や爆撃機から落とされる高性能爆弾にナパーム弾。

人も草も家も全てが一瞬で消滅した。

 

数十機のヘリコプターによるヘリボーン作戦。

火を噴く榴弾砲や迫撃砲。

自動追尾するミサイル。

 

 

人類の生み出した科学の結晶であるハイテク兵器をクィレルは目にした。

 

 

 

 

 

マグルは劣等種ではない。

 

彼らは魔法が使えないから科学を発展させた。

そして、高度な文明を作り上げた。

 

一方で魔法族は魔法に頼り切り、文明が停滞している。

 

 

クィレルは焦った。

このままでは魔法族はマグルにどんどん先を越される。

 

彼はマグルの文明が魔法族よりもいかに優れていて、魔法族もそれを見習って文明を発達させる必要があるということを広く知ってもらうためにホグワーツのマグル学の教授になったのである。

 

 

 

「皆さん!マグルの科学文明に学ぶものは多くあります!この授業では一人でも多くの人にそれを知ってもらいたいのです!」

 

 

 

クィリナス・クィレルはそう言って授業を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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宛てエスペランサ・ルックウッドへ。

 

 

 

私は授業をするのが好きだった。

私の考えを生徒に伝える。

生徒が私の考えに少しでも興味を持ってくれると嬉しかった。

 

いつの日か教え子がマグルのような高度な文明社会を魔法界にも作ってくれるのではないかと期待していた。

 

私は教師でいるときは自分に自信が持てた。

他人の目を気にせずに済んだ。

オドオドもしなかった。

 

いや、違う。

 

そんなことはどうでも良かったのだ。

私は生徒に授業をするだけで満足たったんだ。

 

 

 

しかし、そんな私の幸せな日々は終わってしまう。

 

 

 

ホグワーツ理事長のルシウス・マルフォイが私を解任させたのだ。

 

私が教えるマグル学の授業は反純血主義であり、マグルびいきであり、生徒に悪影響を与えると言って、解任させた。

 

理事たちを金で従わせ、気に入らない教師を解任する。

 

こんなことが起こる魔法界の今はやはり異常だった。

魔法界は古い慣習や考えがいまだに蔓延っている。

 

 

悔しかった。

憎かった。

 

この異常な魔法界を潰したいと思った。

私の考えこそが正しいと認めてほしかった。

 

そして、あの純血主義の奴らを見返したかった。

 

 

 

 

 

 

だから私はヴォルデモートの力を借りようとしたのである。

 

 

ヴォルデモートを利用しようとしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

私はもうじき死ぬだろう。

ここ1年間、私はヴォルデモートを利用しようとして、逆に利用されていた。

 

思えば馬鹿な話だ。

 

私はマグルを尊敬していた人間。

対してヴォルデモートはマグル排斥主義の人間。

 

息が合うわけがない。

 

こんな奴に力を借りようとしたことが間違いだったのだ。

 

しかし、当時の私は怒りのあまり手段を選んでいられなかった。

 

 

 

 

ヴォルデモートからクィディッチの試合中にハリーを殺せと言われた時は‟ヴォルデモートへの怒り”のあまり、私の顔はとんでもない憎悪の感情で満たされていただろう。

 

でも時すでに遅し。

 

私の身体にはヴォルデモートが寄生し、私は奴に従わざるを得なかった。

 

 

「誰か私の代わりにヴォルデモートを殺してくれ」

 

 

そうずっと思っていた。

 

そんな中で私の前に現れた希望がエスペランサ・ルックウッド。

君だった。

 

マグルの武器を使い、私が導きいれたトロールを倒したときに確信した。

ルックウッドならヴォルデモートを倒してくれる。

そして、この魔法界にマグルの科学文明を持ち込んでくれる。

私の願いを叶えてくれると……そう思った。

 

君の魔法で作り上げた短機関銃を手に入れた時は、思わずニヤリと笑ってしまったよ。

これは素晴らしい出来だ。

 

禁じられた森では申し訳ないことをした。

 

あの時は私の身体の主導権をほとんどヴォルデモートに譲ってしまっていたんだ。

ヴォルデモートは君に禁じられた呪文をかけたのだと後で知った。

本当に申し訳ない。

 

 

 

 

 

今現在、ヴォルデモートは私の身体の中で眠っていて、身体の主導権はほぼ私にある状態だ。

この手紙を書くタイミングはヴォルデモートの眠っている今しかないだろうと思って書いた。

 

 

私はこの後、ヴォルデモートの命令に従って賢者の石の奪取に行かなくてはならない。

 

不本意ながら。

 

 

でも私は、もしかしたらルックウッドが私とヴォルデモートを阻止しようと駆けつけてくれるのではないかと期待していたりする。

 

勘ではあるが。

 

もし、ルックウッド。

君が私たちを阻止するために来たのならば、私は何とかして‟隙をつくろう”。

 

この1年間、‟役者を演じてきた”から今回も‟役者を演じる”。

 

ヴォルデモートの忠実な僕として振る舞おう。

そして、タイミングを見計らい、君に隙を見せる。

 

もしかしたらその過程で君を傷つけてしまうかもしれないが、それは勘弁してくれ。

ヴォルデモートの前で役者を演じるのは容易いことではないんだ。

 

 

 

 

 

頼む。

 

私と、ヴォルデモートを………殺してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

追伸

 

君の短機関銃を少し私なりに改造してみた。

私が死んだら君にあげよう。

 

 

 

 

 

 

 

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おかしいとは思っていた。

 

エレクト・テーレムの呪文を終わらせた後、クィレルは明らかに油断した。

 

視覚が奪われた状態で射撃が収まったことを察したクィレルは即座に盾の呪文を終わらせていた。

クィレルほどの優秀な魔法使いが、‟視覚を奪われた状態で戦いの最中に盾の呪文を解除するだろうか?”

 

まるで攻撃してくださいと言わんばかりの行動だ。

 

 

 

「あの時……クィレルは俺に殺されようとしていたのか」

 

 

エスペランサは呟く。

 

全く気付かなかった。

 

クィレルは賢者の石を奪い、ヴォルデモートを復活させようとしていると思い込んでいた。

だが、実際はその逆だったようである。

クィディッチの試合で見せたクィレルの憎悪に満ちた顔は、ハリーに対する憎悪ではなく、ヴォルデモートに対する憎悪の感情によるものだったらしい。

 

クィレルの演技力は本物だった。

 

 

「それにしても………演技とは言え、手足に銃弾を撃ち込むのはやり過ぎだろうが………」

 

 

クィレルに撃ち抜かれて粉々になったエスペランサの関節は丸1日かけてマダム・ポンフリーが治した。

 

 

 

 

 

 

「で?これを自分に見せてどうするつもりなんですか?校長先生」

 

 

 

 

エスペランサは自分の前に座るダンブルドアに聞く。

 

 

 

医務室から退院したエスペランサはダンブルドアに呼ばれて校長室に来た。

何の用件か?と思って来てみれば、クィレルが死ぬ前にエスペランサ宛に手紙を書いていたらしく、それを渡したいのだという。

 

恨み辛みでも書いた手紙なのかと思いきや、まさかの内容であった。

 

 

「校長先生は、この手紙を読まれましたか?」

 

「ああ。君には悪いと思ったが読ませてもらった。もしかしたら呪いでもかけられているのではないかと思っていたしの」

 

 

ソファに座るダンブルドアは深くため息をつく。

 

 

「わしはずっとクィレル先生を疑っておった。彼がヴォルデモートの僕であると信じて疑わなかったのじゃ。じゃからセブルスに彼を見張らせた」

 

「自分もです。自分もクィレル先生を疑っていた。まあ、先生の演技力がオスカー俳優ものだったってことですね」

 

 

エスペランサはクィレル先生からの手紙を懐にしまう。

 

 

「エスペランサ。君は……後悔しておるか?」

 

「クィレル先生を……殺したことをでしょうか?」

 

「そうじゃ」

 

「いえ。後悔していません。クィレル先生は自分に殺されることを望んでいたみたいですし………。まあ、ヴォルデモートは殺せなかったみたいですけど」

 

 

 

ヴォルデモートは逃げたらしい。

 

クィレルを殺せば、クィレルの身体に寄生したヴォルデモートも殺せると思ったが、どうも違かったようだ。

 

 

ちなみに、エスペランサは身体を失ったヴォルデモートに襲われ、気絶したらしい。

だから、彼はヴォルデモートが逃げる瞬間を目撃していない。

 

 

そういえばダンブルドアはヴォルデモートをヴォルデモートと呼ぶんだな、とエスペランサは今更ながら思う。

 

 

 

「そうじゃな………。じゃが、やはりわしは君が手を汚すべきではなかったと今も思っておる」

 

「自分は殺人をしました。もしかして、自分は退学になりますか?」

 

「…………いや。今回は事情が事情じゃからな。学校側も魔法省も君を責めはせん」

 

「そうですか。少し安心しました。ハリーたちと離れるのは嫌ですからね」

 

 

エスペランサの言葉にダンブルドアは少し驚いたようだった。

 

 

「ところで、賢者の石は壊してしまったみたいですが………。先生の友人のニコラス・フラメルは亡くなられたのですか?」

 

「ああ。そうじゃ。じゃが、フラメル夫妻にとって死とは次の冒険の始まりに過ぎんのじゃよ。しっかりと整理された気持ちを持つ者にとって死は恐れるものではないのじゃ」

 

「…………そういうものでしょうか?先生は寂しくは無いのですか?」

 

「少し寂しい。じゃが、フラメル夫妻が幸せなら、彼らの死を止めるわけにはいかないじゃろう」

 

 

そう言ってダンブルドアは微笑んだ。

 

 

「用件はこの手紙だけですか?なら自分は戻ります。腹減ってるし、大広間で開かれる学年末パーティーもそろそろ行われる時間ですから」

 

「おお。もうそんな時間か。長居させて悪かったのう。あ、そうそう。ハリー達には内緒にしていたが、学年末パーティーでわしはちょっとドッキリを仕掛けようとしてるのじゃ」

 

「ドッキリ?」

 

「君たち4人に1人40点ずつ点数をあげようと思っておるのじゃ。それにロングボトム君にも10点を」

 

「何故です?」

 

「君たちは勇気をもって困難に立ち向かった。あとネビルは君たちを止めようとしたじゃろう。点数をあげるには十分であるとわしは思う」

 

「…………………」

 

「どうしたのじゃ?」

 

「先生。ひとつだけ頼みがあります」

 

「………特別にひとつ頼まれようかの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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学年末パーティーは大広間で行われた。

 

テーブルの上は御馳走が並べられ、そして、天井はスリザリンのカラーである緑で飾られている。

職員席の後ろはスリザリンの蛇を描いた大弾幕が覆っていた。

 

寮対抗杯はスリザリンの優勝だったようだ。

 

 

ダンブルドアが職員席の前に立つと、がやがや騒いでいた生徒たちはいっせいに黙った。

 

 

「また1年が過ぎた」

 

 

ダンブルドアが朗らかにいう。

 

 

「御馳走にありつく前に少し聞いてもらおうかの。まず寮対抗杯の表彰じゃ。グリフィンドール312点。ハッフルパフ352点。レイブンクロー426点。スリザリン472点」

 

スリザリンのテーブルが嵐のように沸く。

 

スリザリンの監督生と7年生は号泣し、下級生はゴブレットを叩いて喜んでいた。

クラッブとゴイルがゴリラのように喜んでいるのを見て「いやいや。お前らは何もしてないだろ」とエスペランサは心の中でつっこんだ。

 

マルフォイが喜んでいる姿をハリーとロンが歯ぎしりしながら睨んでいるが、まあこればかりは仕方がない。

実際、今年のスリザリン生は優秀だった。

 

テストや提出物で優秀な成績を収めるのはスリザリン生ばかりだったし、彼らは規則違反も少なかった。

 

 

ちなみに、期末試験の成績であるが、エスペランサは学年4位である。

1位がハーマイオニーで2位はスリザリンのセオドール・ノット、3位はフローラ・カローであった。

ついでに言うとマルフォイは10位で、ハリーとロンは14位あたりだったと記憶する。

 

 

「よしよし。スリザリンはよくやった。じゃが、最近の出来事も勘定に入れなくてはならんからの」

 

 

スリザリンの歓声が止む。

 

 

「駆け込みの点数として幾つか紹介しよう。まず、ロナルド・ウィーズリー。近年稀にみる最高のチェスを見せてくれた。40点!」

 

 

グリフィンドールが歓声に包まれる。

ロンは顔を真っ赤にして兄弟に抱き着かれている。

 

 

「次にハーマイオニー・グレンジャー。冷静な論理に40点をあげよう!」

 

 

ハーマイオニーは忽ち泣き出した。

 

 

「次にハリー・ポッター。完璧な精神力と勇気をたたえて40点!」

 

 

グリフィンドールの歓声は最高潮に達している。

 

 

「そして、エスペランサ・ルックウッド。並外れた戦闘力で強力な敵を倒した。40点!」

 

 

この時点でグリフィンドールはスリザリンと点数が並び、同率優勝になった。

スリザリン生の顔が真っ青になっているのが分かる。

 

 

「勇気にもいろいろある。仲間に立ち向かう勇気もまた勇気と言えるじゃろう。ネビルロングボトムに10点!」

 

 

グリフィンドールだけでなくハッフルパフとレイブンクローの生徒も立ち上がって歓声を上げた。

嫌われ者のスリザリンが優勝しなかったことが喜ばしいのだろう。

 

自分たちがビリになったのに喜ぶハッフルパフは根性を鍛えなおした方が良いとエスペランサは思った。

 

スリザリン生は全員、力が抜けたように座り込んでいた。

中には泣いている学生もいる。

 

 

 

「グリフィンドールよくやった。じゃが、まだじゃ。あー。非常に言いにくいのじゃが………。教師の命令に背いた学生には減点が必要じゃ。わしの指示を無視して引き金を引いたエスペランサ・ルックウッド。10点減点!」

 

 

 

またも歓声が鳴りやんだ。

 

 

飛び上がって喜んでいたグリフィンドール生は一気に静かになる。

スリザリン生も驚いているようで誰も喜ばない。

 

大広間が急に無音になった。

 

 

全生徒がエスペランサの方を向く。

 

全校生徒の視線を一気に受けたエスペランサはどうしたら良いのかが分からず、とりあえず一言謝った。

 

 

「あー。なんつーか………すんません」

 

 

 

 

 

 

結局、寮杯はグリフィンドールとスリザリンの2寮が取ることとなり、大広間の飾りつけは半分がスリザリン、半分がグリフィンドールの色に染められることになった。

 

グリフィンドールの生徒もスリザリンの生徒も素直に喜んでよいのかが分からないようで、お互いに苦笑いするばかりだった。

 

エスペランサはグリフィンドールの生徒にタコ殴りにされていた。

 

 

 

 

 

 

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休暇が始まり、生徒はホグワーツ特急でキングズ・クロス駅へ向かわなくてはならない。

 

バタバタと生徒が駅へ向かう中、エスペランサはフィルチの事務室に寄り道をしていた。

 

 

「あー。久しぶり………ですね?」

 

「小僧………まだ生きていたのか」

 

 

フィルチはミセス・ノリスに餌をやりながらぶっきらぼうに言う。

 

 

「まあ、何とか生きて帰ってこれたみたいで。ははは」

 

「全く………。だがまあ……お前は良くやったんじゃないか?例のあの人相手に戦って生きて帰るなんて11歳のすることじゃないだろ」

 

「お、珍しく褒められた」

 

「けっ。ま、新学期も気が向いたらここに来い。煙草を吸うためってのもあるが、どうもミセス・ノリスがお前のことを気に入ってしまってな」

 

 

ミャーと鳴きながらミセス・ノリスがエスペランサの足に頬ずりしていた。

 

 

「来ますよ。今度は酒でも持ってこようかな」

 

「程々にしておけ。また減点されてもわしは庇えん。ああ、そうだ………」

 

「何です?」

 

 

 

「エスペランサ。お前は少し明るくなった。わしはそう思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ホグワーツ特急に乗り込む直前、エスペランサはフローラ・カローに話しかけられた。

 

 

 

「良く生きて帰ってこれましたね。やはり無鉄砲と言うか……無謀と言うか……」

 

相変わらずの無表情でフローラは言う。

 

 

「まあ無謀だったかもな。ああ、そうそう。フローラに貰った鞄。あれ役に立ったぞ。あれがなければ俺は生きて帰ってこれなかった」

 

 

エスペランサの言葉にフローラは少し動揺したようで、目が泳ぐ。

感情を表にすることが無い彼女が動揺する様子はレアだった。

 

 

「役に立てたようで良かったです。そういえば期末試験の成績見ました。あなたは意外と点数が良かったみたいですね。まあ私の方が上でしたけど」

 

「嫌味かよ………。魔法史とかの点数が悪かったからな。点数が伸び悩んだらしい」

 

「そうですか。そういえば………あの10点の減点。あれってあなたがダンブルドアに頼んでわざと減点されたんじゃないでしょうか?」

 

「何言ってるんだ?俺がダンブルドアの命令に背いてクィレル先生にとどめを刺したのは確かだし、それに関して減点されるのはあたりまえだろ?」

 

「………………嘘が下手ですね」

 

「……………はあ。ああそうだよ。俺がダンブルドアに頼んで10点減点してもらったんだ」

 

「何故そんなことを?その減点が無ければグリフィンドールは単独優勝できたはずですが?」

 

「だってフェアじゃないだろ」

 

 

ダンブルドアにエスペランサたち5人が点数を貰えると言われた時、エスペランサは全員加点した上で、自分から10点引いてくれと頼んでいた。

 

エスペランサたち5人に170点が加算されることでグリフィンドールは一気にスリザリンを追い越して1位になる。

グリフィンドールの生徒にしてみたら喜ばしいことこの上ないが、スリザリン生の立場を考えるとエスペランサは胸が痛くなった。

 

スリザリン生は確かに嫌な奴が多いが、彼らは日々の授業で努力を重ねて点数を稼いでいる。

それに対して、グリフィンドールはたったの5人が少し勇気を出しただけで170点貰えたのだ。

 

スリザリンの全員で一致団結して点数をたった5人がちょっと活躍しただけで追い抜いてしまうのはよろしくないだろうとエスペランサは思ったのである。

 

というかそもそも、エスペランサたちは賢者の石にたどり着くまでに消灯後徘徊やら4階の部屋への侵入やら数々の規則違反をしている。

本来ならもっと減点されても良いだろう。

 

 

「スリザリン生は日頃の勉学で努力して点数を稼いできていたんだ。その努力を踏みにじるようなことはしたくなかったし………。それに俺が減点されるようなことをしたのも確かだったしな」

 

「変な人ですね。例のあの人と戦っただけでもホグワーツ特別功労賞ものなのに………」

 

「俺は寮杯も賞も興味ないし」

 

「そうでしょうね」

 

 

 

ポーーーーーッとホグワーツ特急が汽笛を鳴らす。

 

 

「やべ。そろそろ出発の時間だ。ハリーたちがコンパートメントで待ってるから俺は先に行くよ。じゃあな。また新学期」

 

 

そう言って列車に乗ろうとするエスペランサをフローラが呼び止めた。

 

 

「待ってください。最後にもう一言だけあなたに言っておこうと思いまして」

 

「??何だ?」

 

 

少し間を置いてフローラは言う。

 

 

「あなたが帰ってきて……少し安心しました。………おかえりなさい」




次からは秘密の部屋編になります。
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