ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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秘密の部屋に突入です!!!

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秘密の部屋
case 16 Hidden hole 〜隠れ穴〜


 

M18クレイモア地雷。

 

アメリカ軍の使用する指向性地雷のひとつで、湾曲した箱の中に700個の鉄球とプラスチック爆弾が内蔵されている。

 

加害範囲が60度で有効射程50メートル、仰角は18度。

起爆と共にこの有効範囲内に700個の鉄球を発射し、敵を殲滅することの出来る武器がクレイモアだ。

 

起爆はリモコンやワイヤートラップなどを使用するが、今回、エスペランサ・ルックウッドが持つ起爆装置はリモコン式である。

 

ホグワーツ内では複雑な回路を用いた電子機器は使用できなかったため、リモコン式の起爆装置は使えなかったが、今、彼の居る‟隠れ穴”は対マグル電子機器用の妨害魔法が施されていなかった。

 

 

前方の‟敵”が有効範囲内に入り込んだことを確認し、エスペランサは起爆用のリモコンを手にする。

 

 

「起爆装置良し。起爆用意………3…2…1……起爆!」

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオン

 

 

 

湾曲した箱の前方が爆発し、700もの鉄球が一斉に発射される。

 

 

 

小銃弾を遥かに凌ぐ威力で飛び出した鉄球は‟庭小人”たちを木っ端みじんに吹き飛ばした。

 

 

 

黒煙の中に庭小人‟だった”ものを視認し、無事に任務が完了したことをエスペランサはウィーズリー一家に伝える。

 

 

「庭小人は全滅。生き残りは確認できませんね」

 

 

 

 

「すげーぞエスペランサ!30匹は居た庭小人が一瞬で消えちまった!!!」

 

「ああ。こいつはたまげたぜ!僕ら庭小人の処理に夏休みを全部潰さなきゃいけなかったんだが、その必要もなくなったみたいだ!」

 

 

双子のフレッドとジョージが歓声を上げて喜ぶ。

 

 

「これはマグルの道具なのかい?これも電気で動いているのかな?」

 

 

ロンの父親であるアーサー・ウィーズリーはクレイモア地雷に興味津々といった具合で話しかけてきた。

 

 

「起爆装置は電気式です。このリモコンから電波を飛ばしているんですよ。本来は害獣駆除ではなく対人戦闘で使うんですけど」

 

 

エスペランサは軽く説明したがアーサー氏はいまいち理解していないようだった。

 

 

 

 

 

夏休みが始まり、エスペランサはダイアゴン横丁にある漏れ鍋に泊まろうとしていた。

 

彼には帰るべき故郷が無かったし、漏れ鍋の二階で寝泊まりするのが一番良いと考えていたのだ。

 

そんなエスペランサに声をかけてきたのがロンである。

 

ロンはエスペランサとハリーに夏休み中、自分の家に泊まらないか?と提案してきたのだ。

エスペランサは迷惑になると思い最初は断っていたのだが、ロンのしつこい誘いを断り切れずに結局、泊まることにした。

 

 

ロンの実家はイングランド西部地方にあるオッタリー・セント・キャッチポール村のはずれにあった。

 

家を複数くっつけたような見た目をするロンの家を見てエスペランサは強度不足を心配したが、どうも魔法で補強されているようである。

 

 

ウィーズリー家の人たちは良い人たちばかりで、突然の来客であるエスペランサを温かく歓迎してくれたものだ。

 

今まで家庭というものを知らなかったエスペランサにとって、温かい家と言うのは初めての物だったので、彼は少々感激した。

 

 

 

 

ロンの母親であるモリー・ウィーズリーはこれでもかという程、ご飯を勧めてきてエスペランサは逆に困る羽目になった。

アーサー・ウィーズリーはマグル出身のエスペランサに色々質問してきた。

 

双子のフレッドとジョージは1時間に3回の割合で何かを爆発させ、そのたびにパーシーがキレる。

ロンの妹のジニーは何故かハリーのことばかり質問してきた(エスペランサはジニーに「ハリーはダイナマイトボディの女性が好きなんだぞ」と嘘を教えてみた)。

 

兎にも角にも、エスペランサは隠れ穴での休暇を満喫していたのである。

 

そんなエスペランサであるが、ずっと世話になりっぱなしだと悪いと思い、何か手伝えることは無いか?とモリーに聞いてみた。

 

すると、彼女はロンたちと一緒に庭小人の駆除をしてくれないか、と言ってきたのである。

 

 

 

庭小人と言うのは白雪姫に出てくるようなアレではなく、ジャガイモが人間の形をしたような見た目の生物であった。

 

駆除方法は、クルクルと振り回して目を回させた後、庭の外に放り投げるというものだが、これが割と非効率だったのだ。

 

そこでエスペランサは持っていたクレイモア地雷による駆除を具申したのである。

 

 

 

「ところでハリーから返事はまだ届いてないのか?」

 

「うん。もう20通は手紙を書いたんだけど………」

 

「そうか………」

 

 

ロンはハリーも隠れ穴に泊まりに来るように誘っていた。

 

しかし、誘いの手紙をいくら書いて出しても、返事は来なかったのである。

 

 

「ハリーの叔父さん達は嫌な連中らしい。もしかしたらハリーが監禁されてたりするのかも………」

 

「まさか。でも便りが無いのは心配だな」

 

「うん。そこでなんだけど、僕とフレッドとジョージは今晩ハリーを迎えに行く予定なんだ」

 

「迎えに行くって行っても、ハリーはサレー州にいるんだろ?相当な時間と金が必要だぞ」

 

「そこは大丈夫。実はパパが中古で買ったマグルの自動車に魔法をかけて空を飛べるようにしたんだ。その自動車で迎えに行くんだよ」

 

「車に魔法って………。だけどお前ら運転の方法知ってるのか?それにガソリンはどうするんだ?」

 

「ガソリン?運転は……まあ何とかなるよ」

 

「何とかって………。AT車なら何とかなるかもしれないが、MT車だったらそう簡単に運転できないぞ。空の上でエンストしたらどうするんだ?」

 

「エンストってなんだい?もしかしてエスペランサって車の運転できるのかい?」

 

「まあ……出来ないこともないが…………」

 

「なら君が運転してよ!」

 

「いやでも、ロンの親父さんの車だろ?勝手に運転しちゃ悪いだろ………」

 

「構わないさ。それに君もハリーのことが心配なんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ロンの父親が手に入れた自動車はフォード・アングリアという車である。

 

おそろしく旧式の車である上に、整備がされていない状況であった。

タイヤの空気圧を調整し、ガソリンの残量を確認、磨り減ったブレーキパッドはどうしようも出来なかったため(魔法を使えば一発で直っただろうが、残念なことに休暇中の魔法の使用は禁止されていた)放置。

 

一通りの整備を終えたエスペランサはロンと双子を呼んだ。

 

時刻は深夜の1時を越えたところだ。

ロンの父親は夜勤に行っているし、母親はとっくに寝ている。

車を出すタイミングは今しかないだろう。

 

フォード・アングリアを格納している小屋にロンと双子が入ってきた。

 

 

「オンボロな車でまともな整備もされてないから正直言ってハリーの家とここを往復出来るか分からん。途中で壊れるかもしれない。ガソリンに関しては小屋にジェリ缶が幾つかあったから何とかなりそうだ」

 

 

普通に公道を走行する分には問題ない程度の燃料は小屋の中に保管されていた。

しかし、今回は空を飛んで行く必要がある。

空を飛ぶことが地上を走行する以上に燃料を消費するのだとしたら、途中でガス欠になるかもしれない。

 

 

「ナイスだエスペランサ!」

 

「お袋は寝室で寝てる。今のうちに出発しようぜ!」

 

 

双子はそう言いながら後部座席に乗り込んだ。

 

 

「出発するのは良いけど、マグルに見られたらやばいんじゃないのか?」

 

「大丈夫。パパが走行中に車を透明にしてくれる装置をつけたんだ」

 

「それなら安心だ」

 

 

エスペランサは運転席に乗り込み、エンジンをかける。

 

エスペランサは傭兵時代に何度か軍用車を運転したことがあった。

免許なんて持っていなかったし、教習も受けたことは無かったが、戦闘中にジープの運転手が敵弾に倒れ、代わりに運転したという経験が2度ほどある。

 

半クラッチの状態にして車が少しずつ前進するのを確認した彼は助手席に座るロンにコンパスと地図を渡した。

 

 

「空の上を飛ぶとなると目印が無い。迷子にならないようにしっかり道案内してくれ。んじゃ、出発するとしますか」

 

 

 

 

オンボロ車は燃費の悪そうなエンジンの音を響かせつつ、夜の空へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハリー奪還作戦は成功した。

 

ロンの予想通りハリーは叔父叔母に監禁されていた。

 

エスペランサはハリーの部屋の窓につけられた鉄格子を破壊してハリーを救出しようとしたのだが、その際の物音で彼の叔父が目を覚ましてしまう。

無論、叔父のバーノン・ダーズリー氏はハリーを逃がすまいと追ってきたのだが、そんなバーノン氏にエスペランサは「法治国家である英国で子供を監禁し虐待するという行為が表沙汰になれば、あなたたちは捕まりますよ?」と言ってやった。

 

その言葉で大人しくなったハリーの親戚達を尻目に、エスペランサたちはプリペット通りを後にしたのである。

 

 

 

隠れ穴に帰った後、車を無断で借用したことがばれて、エスペランサたちはモリーにひどく怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

ハリーが隠れ穴に来て数日が経った頃、エスペランサの元にホグワーツから郵便が届いた。

 

どうも新学期に必要な教科書のリストらしい。

 

 

「あー。あたらしい教科書が必要なのか」

 

 

ウィーズリー家の食卓にてトーストを食べながらエスペランサはリストを見た。

 

基本呪文集2学年用以外の教科書は全てギルデロイ・ロックハートという魔法使いが書いた本である。

 

 

「同じ作者の本ばかりだ。にしてもふざけた題名の本だ。“トロールとのとろい旅”に“雪男とゆっくり1年”って………。こんな本よりもクラウゼヴィッツの戦争論を読んだ方がよっぽどためになるぞ」

 

 

ふざけた題名の本を胡散臭そうに眺めながら彼は言う。

 

 

「あら。彼の本はとても優秀な本なのよ?」

 

 

モリーが言った。

 

 

「母さん。ロックハートに夢中なのは良いけど、この本を全て揃えるとなると相当な金額になるぜ?」

 

「高いのか?」

 

「そりゃもう。家計が傾くくらいにはな」

 

 

フレッドが心配そうに言った。

 

マグル界において本というのは高価なものではない。

中には日本円にして1万円を超えるような本もあるが、教科書にするような本はそこまで高価ではないだろう。

 

今回、ロックハート著の教科書は合計7冊。

1冊が仮に3000円であると仮定したら1人頭2万1千円である。

ウィーズリー家の在学している兄弟は5人。

合計で10万円を超える買い物となるわけだ。

もし、1冊が6000円だとしたらその2倍の20万を超える金額である。

 

確かにこれは高い。

 

 

 

「まあ……なんとかなるでしょ」

 

そう言うモリー婦人の表情は暗かった。

 

 

 

ちなみに、家庭のないエスペランサはホグワーツから支援金を貰っている。

 

これは孤児の魔法使いや魔女に対する救済措置であり、基本的に月5万円程度支給される制度だ。

しかし、エスペランサは特殊部隊に居た頃にある程度の稼ぎがあったので(稼いだ金はスイスの銀行に預けていたので戦火を免れた)、割と金持ちであった。

 

マグルの金は魔法界のガリオン金貨よりも実は価値が高くなっていて、1ガリオン=4ドル82セント程である。

だからマグル出身の生徒は魔法界でリッチな生活が出来てしまったりする。

 

 

 

「それにしても、このギルデロイ・ロックハートっていう奴………。胡散臭いな」

 

 

エスペランサは一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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煙突飛行ネットワークというものを使用してエスペランサはダイアゴン横丁へたどり着いた。

 

暖炉があればどこへでもワープ出来るという仕組みにも驚いたが、何よりも驚いたのは魔法族が「ネットワーク」という言葉を使用していることだった。

 

1969年にアメリカが国防用コンピュータネットワーク構築を目的にARPANETというものを開発したが、このARPANETは1991年までアメリカ軍と一部の大学しか使用することが出来なかったのである。

一般人がARPANETを使用することが出来るようになったのはここ1,2年の話だ。

 

だからマグル界ではネットワークという言葉がまだあまり認知されていない。

 

 

では何故、魔法界ではネットワークという言葉が普及しているのだろうか?

 

 

エスペランサは疑問に思った。

 

 

 

 

それはさておき。

 

エスペランサたちは途中、ハリーが行方不明になるというアクシデントを乗り越えて、無事、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店にたどり着いた。

ハーマイオニーも合流している。

 

いつもはそれほど混んでいない書店であったが、今日はかなり混みあっていた。

 

 

「何でこんなに混んでるんだ?」

 

「あれよ。ギルデロイ・ロックハートのサイン会ですって!」

 

 

ハーマイオニーが少し興奮して言う。

 

もしかしたら彼女もロックハートに惚れた口なのかもしれない。

 

 

書店には多くの中年の魔女が押しかけ、店内はロックハートのポスターやらで埋め尽くされていた。

時折フラッシュが焚かれるのは新聞の取材でも来ているからだろう。

 

 

気がつけばハーマイオニーもモリーもサインの列に並んでいる。

 

 

4人ほどの魔女に足を踏まれてからエスペランサはうんざりして店を出た。

 

サイン会が終われば店は空くだろう。

今、この人ごみの中で教科書を買おうとするのは得策ではない。

 

そう考えた彼は店の外に出てブラブラと横丁を散策しようとした。

 

 

 

「良い天気だ。英国は曇りばっかだから今日みたいに晴れた日は珍しいな。サイン会が終わるまでどこで過ごそうかな………っと?ん?」

 

 

書店から離れ、魔法道具屋の横を抜けようとした時にエスペランサは2人の奇妙な男を見かけた。

 

ダイアゴン横丁では魔法族の町なので基本的に皆、マントやローブを着て三角帽子を被っている。

中にはマグルの格好をしている人間も居るが(ハーマイオニーの両親など)、9割9分、魔法使いの服装をしている。

 

が、その2人の男達はマグルのスーツ姿をしていた。

 

 

「スーツ姿は場違いだが………。俺が気になるのはスーツじゃねえ。あいつら………軍人だ」

 

 

エスペランサは2人の男が軍人であると思った。

 

ずっと特殊部隊にいて傭兵だったこともあるエスペランサは軍人と一般人の違いが良く分かる。

 

歩き方。

体つき。

目。

表情。

雰囲気。

 

 

そして、腰に隠し持っていると思われる拳銃。

 

 

遠目からだが、スーツに隠れて銃のシルエットが浮かび上がっている。

 

 

「あれはベテランの軍人だ。おそらく陸軍か海兵隊だろう。しかし……マグルの軍人が魔法界に居るってのはどういうことだ?あいつらは何をしにここに来たんだ?」

 

 

エスペランサは疑問に思った。

 

 

 

 

「おーい。エスペランサー!」

 

 

ふと自分を呼ぶ声が人ごみの中から聞こえて、彼は振り返る。

 

見ればネビル・ロングボトムが手を振っていた。

彼もダイアゴン横丁で買い物をしにきたのだろう。

 

 

「ネビルか…………」

 

 

エスペランサは久々に見る級友に手を振る。

 

ネビルに気を取られた一瞬で、2人のスーツ姿の男達は人ごみの中に姿を消していた。

 

何故、マグルの軍人がダイアゴン横丁に居たのかは知らないが、エスペランサはあまり深く考えないようにした。

 

 




原作だとアーサーは庭小人を気に入ってるみたいですが、そんなことは気にせず地雷で吹き飛ばしました。

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