ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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かなり投稿が遅れました。
本当に申し訳ありません汗

感想の返事も遅くなり申し訳ないです。

次はなるべく早めに投稿したいと思ったり・・・

今回で2巻の内容は終了となります。




case30 Returning to daily life 〜取り戻された日常〜

 

 

エスペランサたちはジニーを連れて校長室へ向かった。

 

 

校長室にはすでにダンブルドアが帰ってきており、また、マクゴナガルとロンの両親であるアーサーとモリー・ウィーズリーも駆けつけていた。

 

モリーは当初、自分の娘が無事であることを知って泣き崩れ、ハリーとロンに抱きついた(エスペランサは無論、これを回避した)。

暖炉の横で立つダンブルドアは微笑み、マクゴナガルはホッと息を吐く。

一晩のうちに4人ものグリフィンドール生が行方不明になって彼女も相当メンタルがやられていたのだろう。

 

エスペランサは壁に既に残弾の無い自動小銃を立てかけ、悪霊の炎でボロボロになった鉄帽と弾帯を床に置いた。

自動小銃はあちこちに傷がつき、個人携帯装備も殆どが使い物にならなくなっている。

過酷な戦場を生き抜いたエスペランサであったが、彼にはすでに戦う力が残されていなかった。

 

冷たく寒い秘密の部屋で丸1日もガソリンを頭から被って待機していた彼は暖炉の炎のそばで体を温めようとする。

 

ダンブルドアやマクゴナガルへの事件のあらすじの説明をハリーとロンに全て任せきり、エスペランサは水筒の水を飲み始めた。

エスペランサは怪物の正体を突き止めただけで、一連の事件に関する情報はハリーたちの方が持っているとの判断である。

アラゴクのこと、日記のこと、剣のこと、マートルのこと。

それらをハリーたちが説明し終えるころにはエスペランサの水筒の中身は空になっていた。

 

ハリーたちの説明を聞いた後、ダンブルドアが口を開く。

 

「わしが気になることは………。どうやってヴォルデモート卿がジニーに乗り移ったか、ということじゃな」

 

「れ…例のあの人がジニーに乗り移った!?」

 

 

ダンブルドアの一言にモリーが驚愕した。

 

無理もない。

世を騒がせた闇の魔法使いが自分の娘に乗り移ったのだから。

 

「そうじゃ。この日記は恐らくヴォルデモート卿の記憶が封印してあったものなのじゃろう。そして、その記憶であるヴォルデモートが彼女に乗り移って今回の事件を引き起こしたのじゃ」

 

「それじゃ………今回の犯人はジニーであると!?そんな………」

 

「いやいや。ジニーはただ操られていただけじゃよ」

 

「そ……そうなの!その日記はあの人の日記だったの………」

 

 

ハリーとジニーがリドルの日記がどのようなものであるかということをダンブルドアに話す。

 

リドルが17歳の時にその日記を作ったことや、剣を突き刺したことでリドルの記憶は消滅したこと等々。

ダンブルドアはグリフィンドールの剣によってリドルが退治されたことに非常に興味を持ったようであった。

 

 

ダンブルドアはジニーと、そして、記憶喪失となって一層ポンコツとなったロックハートを医務室に連れていくようマクゴナガルとモリーに言うと、ハリーを残してロンとエスペランサには寮へ戻るように言った。

 

無論、2人はこれに従った。

 

 

 

 

 

「いやー良かった良かった。ジニーはお咎めなしだし、ハーマイオニーたちは元に戻るらしいし、それに僕らはホグワーツ特別功労賞を貰えた!」

 

校長室を出て寮に向かう途中でロンは興奮したように言った。

 

今回の事件を解決したことでエスペランサたち3人はホグワーツ特別功労賞なる賞をもらえることとなった訳である。

エスペランサにとっては賞などどうでも良かったが、マンドレイク薬が完成して石になった犠牲者が元に戻ることに関しては喜ばしく思っていた。

 

「早ければ今週中にも石になった人たちは元に戻るんだろ?それにハグリッドも戻ってくる。あー。アラゴクの家族の件………。ハグリッドにどう説明しようか」

 

「その件に関しては僕は言いたいことが山ほどある!ハグリッドの奴!とっちめてやる」

 

 

ロンはアラゴク襲撃事件がいまだにトラウマになっているらしい。

 

 

 

ぺちゃくちゃと喋りながら歩いていた2人だが、廊下の反対側から歩いてくる人物が目に入り、足が止まる。

 

 

「ルシウス………マルフォイ」

 

 

息子のドラコ同様に青白い顔をして顎をとがらせたルシウス・マルフォイは焦ったかのように早歩きでこちらへ向かってくる。

 

彼の足元にはボロボロの枕カバーを着た屋敷僕妖精がお供をしていた。

ルシウス・マルフォイはエスペランサとロンが立っていることにも気づかず、校長室の方へと歩いていく。

 

 

「そういえばあいつがハグリッドとダンブルドアを追放したんだよな!許せない!」

 

ロンが顔を赤くして怒る。

 

 

「ロン。先に寮に帰っていてくれないか?」

 

「え?どうしたんだい急に………」

 

「いや、ちょっとやり残したことがあってな」

 

 

そう言い残してエスペランサはルシウス・マルフォイの後を追いにいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今日は厄日だ………。

 

 

ルシウス・マルフォイは思う。

 

 

 

 

ジニーウィーズリーにヴォルデモートの日記を押し付けたのがダンブルドアにばれた、というよりも事件の元凶が自分であるとばれてしまった。

そのせいでアーサー・ウィーズリーが家宅捜索をすることを決定した。

理事会の役員がルシウスに脅されたとダンブルドアにチクった。

ハグリッドもダンブルドアも戻ってきた。

極めつけはハリー・ポッターに嵌められて屋敷僕妖精を解放させられたことだ。

 

僕妖精のドビーを失った怒りでハリー・ポッターに呪いをかけようとしたが、ドビーに返り討ちにされ、無様にも地面を這いつくばったという事実はルシウスのプライドを傷つけた。

この屈辱は絶対に晴らしてやる。

 

彼はそう決心してホグワーツを去ろうとしていた。

 

 

ふと、顔をあげると城外へ向かう渡り廊下の入り口に一人の生徒が立っているのが見える。

 

 

胸につけられたワッペンからグリフィンドールの生徒だとわかり、ルシウスは舌打ちする。

グリフィンドールの生徒など目にするだけでも忌々しい、と。

 

 

「おい。そこの生徒。入口の真ん中に立っていては邪魔だろう。はやくそこを退け」

 

イライラしながらルシウスはその生徒に言う。

 

しかし、生徒は退かなかった。

 

 

「うん?聞こえていないのか?」

 

 

反応のない生徒を不気味に思い、ルシウスは生徒の方へ顔を向ける。

彼はそこではじめてしっかりと生徒の顔を見た。

 

 

「なっ………!?」

 

 

短く刈りあげた髪。

ガタイの良い身体。

何故かボロボロになって所々にどす黒い血痕がついたローブ。

 

そして、殺意を帯びた目。

 

 

 

(なんだあの目は!明らかに殺意を私に向けている………。まるで闇の帝王が睨んでいるような……そんな目だ!!)

 

 

 

ルシウスは恐怖を感じた。

 

彼の歩みを邪魔するような形で廊下の真ん中に立つ少年の目は‟ホグワーツの生徒の目”ではなく、まるで‟兵士の目”であった。

そして、その目は明らかに殺意を持っている。

この状況でその少年が殺意を向ける相手はルシウスひとりだけだろう。

長らく闇の魔法使いとして戦っていたルシウスは普通の人よりも殺意に敏感であった。

 

(なんだ!?この生徒は!!年齢は息子とそう変わらない。しかし、こんな子供、見たことが無い!それに、なぜ私に殺意を向ける???)

 

見れば生徒のローブにはグリフィンドールのワッペンが刺繍されている。

 

(成程………この生徒は今回の秘密の部屋の事件の黒幕が私だと思っている訳か。それなら殺意を向けるのも納得がいく。しかしこの少年はホグワーツの生徒。魔法の腕は私と比べれば遥かに劣る。いくら殺意を抱いたところで私に勝てる筈がない)

 

ルシウスはホグワーツ時代も卒業してからも優秀な魔法使いに分類されていた。

魔法による決闘も得意ではないが、ホグワーツの生徒レベルであれば圧倒できる自信もある。

少年がいくら殺意を持って襲い掛かって来ても負ける筈はない、とルシウスは考えた。

 

 

「ふん。大方、今回の事件を仕組んだ犯人が私だと思っているんだろう?残念だが、私は別に事件の糸を引いていたわけではない。ただ、アーサーの馬鹿な小娘の手に‟日記”を渡したに過ぎない。それで私のことを恨むのはお門違いだとは思わないか?」

 

「………………」

 

 

少年は無言だ。

 

 

「言い返せないか?まあ、‟不本意ながら”今回の事件を引き起こしてしまったのは謝罪した方が良いかもしれないな。だが、結局のところ死者は出ず、犠牲者も穢れた血ばかりだった。終わったことは水に流して………ん?何だそれは?」

 

 

ルシウスは話を止めて少年を見る。

 

彼が‟穢れた血”という単語を言葉にしたあたりで、少年は腰元から‟杖ではない金属製の道具”を取り出した。

魔法界に染まったルシウスはその道具の存在すら知らなかったが、黒光りするその道具からは禍禍しさが感じられる。

 

長さは杖よりも短い。

黒光りするボディには「M92」という刻印がある。

道具にはグリップが存在していることから、手で握るように設計されたのであろうか?

先端には小さな穴が一つ空いている。

 

魔法界では見たことも無い道具。

一体何に使うのだろうか???

 

 

少年は一言も喋らずにその道具の先端をルシウスに向けた。

 

 

「何のつもりだ?杖でも取り出すのかと思えば奇妙な道具を取り出して………。ああ、もしやそれはゾンコで売っている悪戯道具の類のものか」

 

ルシウスは少年の持つ道具を魔法界の子供が良く使う悪戯道具だろうと考えた。

悪戯道具という名前を聞けば可愛らしいが、その実、それらには高度な魔法がかけられていたりして、中には非常に危険なものも存在する。

ホグワーツでも悪戯道具によって重傷を負い、医務室に運ばれるという事案が年に数回起きる(だいたいは双子のウィーズリーがスリザリン生に対して行ったもの)。

 

魔法を使った決闘では勝ち目がないと見て、少年は悪戯道具でルシウスを懲らしめようと思ったのだろうと、彼は憶測した。

 

確かに近年の悪戯道具は高性能で危険だが、死喰い人の中でも上位層の位置にいた自分が後れを取ることは無い。

そう思い、ルシウスは懐からゆっくりと自分の杖を取り出した。

 

(後悔させてやるぞ。少年)

 

 

彼はゆっくりと杖を少年に向けた………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン

 

 

ズドン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、少年の持つ道具の先端にある穴から轟音と共に火が吹いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああああああああああ!!!!!」

 

 

 

痛い。

 

焼いた火鉢を突き刺されるような痛みがルシウスの脇腹を襲う。

 

 

 

何も考えられないほどの痛みだ。

痛みと衝撃で思わず床に倒れる。

轟音で耳がキーンとなるのが分かる。

 

痛みでのたうち回り、苦痛で顔を歪めるルシウスであるが、この痛みを作り出したのが少年の持つ道具であることは理解していた。

 

 

 

(痛い!!???何だこれは!!!あれは悪戯道具なんかではない!!!)

 

 

脇腹を見るとローブが赤く塗れている。

 

噴き出した血が大理石の床を赤く染めていく。

冷たい床の上を芋虫のように這うルシウスは痛みに堪えながら、自分の杖を探した。

どうも彼は痛みと衝撃で杖を落としてしまったらしい。

 

 

「く……屈辱だ!こんな餓鬼に私が……後れを………」

 

 

杖があれば反撃できる。

 

この痛みをあの少年にも与えてやる!!!

ルシウスはそう思って杖を探し、そして見つけた。

 

 

 

「そんな………馬鹿な」

 

 

 

ルシウスの倒れている位置からそう遠くはない場所に彼の杖は落ちていた。

 

しかし、その杖は真っ二つに折れている。

 

折れた杖からは白い煙が上がっている。

まるで焼いたナイフで切断したような………。

 

 

 

「杖を取り出すのが遅かったな。ルシウス・マルフォイ。元から杖を取り出して構えていれば勝ち目はあったかもしれないが………」

 

 

少年が話しながら近づいてくる。

まるで死神が迫ってきているようだ。

 

 

「く……クソ!お前は何者だ!!??」

 

 

少年はルシウスの問いかけに立ち止まって答えた。

 

 

「エスペランサ・ルックウッドだ」

 

「る……ルックウッドだと!?いや、そんなまさか……」

 

「??悪いけど。ここで死んでくれ。ルシウス・マルフォイ」

 

 

エスペランサと名乗る少年は例の黒い道具をルシウスに向ける。

 

 

「な…なんなんだ、その道具は!」

 

「これか?M92Fベレッタ。拳銃って言ってもお前らは分からないだろうな。マグルの使う武器だ」

 

「ま…マグルの武器だと………。私は汚らわしいマグルの武器に負けたと………ぐふっ!?うがあああ!」

 

 

エスペランサがルシウスの脇腹を半長靴のつま先で蹴り上げる。

 

とてつもない痛みがルシウスを襲った。

 

 

「汚らわしい?俺からしてみればお前のような人間がこの世で最も汚らわしい存在だと思うけどな………」

 

銃創を踏みつけながらエスペランサは淡々と話す。

ルシウスはうめき声をあげた。

 

 

「お前の息子には一回言ったことがあるんだがな、俺からしてみれば人間の流す血は全て同じなんだよ。あんたらはマグル生まれの血を穢れているとか言って差別し、彼らの命をゴミのように扱う。俺には理解できない。自分と血統が違うだけで、何でこんなにも命を粗末に出来るんだろうな?」

 

 

エスペランサはルシウスの銃創にさらに半長靴のつまさきを食い込ませた。

ルシウスの脇腹からはどす黒い血が噴き出す。

 

 

「流れる血の色は皆一緒だっていうのに………。あんたらは他人の立場に立って物を考えるってことをもう少し考えた方が良いと俺は思う。まあ、お前は‟ここで死ぬから”考える時間も無いか………」

 

「なっ……!?まさか、私を………!!??」

 

 

エスペランサの言葉にルシウスは元々青い顔を更に青くする。

冗談だと思ってエスペランサの顔を見たルシウスは、彼が冗談など言っていないことを悟った。

ルシウスのことをゴミとしか見ていない、そんな目でエスペランサは彼を見ていた。

 

 

「や、止めてくれ!!!ここで私を殺したら、お前も唯では済まされないぞ!!」

 

「止めてくれ、か。バジリスクに石にされた生徒たちは命乞いをすることすら許されなかったというのに」

 

「お、お前は今さっき他人の命を大切にしろ、と言ったではないか!私の命は粗末にしても良いというのか???」

 

「ああ言った。だがな、お前のように罪の無い人間を苦しませるような奴に情けをかけるほど俺は甘くない。そういう役割はダンブルドアにでもくれてやれ。敵に情けをかけることがどれほどまでに愚かなことか、俺は知っている」

 

「そ…そんな。私には家族もいる……どうか命だけは」

 

「どこまで愚かな奴なんだお前は。今回のお前が引き起こした事件。死者が出なかったのはただの偶然だ。たまたま被害者は全員、バジリスクの目を見なかったから死なずに済んだ。しかし、一歩間違えれば全員死んでいたんだ。お前のせいでな。お前は今回、罪の無い人間を6人も殺したことになるんだぞ!」

 

エスペランサは激高する。

 

「今回、死ぬかもしれなかった被害者たちにも家族は居る。彼らの家族は自分たちの子供がバジリスクに襲われたと知って何を感じたと思う?お前は家族を大切にしているようだが、被害者たちの家族だってそれは同じだ。何の罪もない人たちの幸せをお前は‟マグル生まれだから”という理由で奪おうとしたんだ」

 

「わ…私は………。日記がどういったものかも知らず………。別に殺そうと思ったわけじゃ………」

 

「詭弁だな。秘密の部屋が開かれ、被害者が出たことは報道されていた。お前はその時点で事件を引き起こした原因が自分にあると分かったはずだ。しかし、お前は何もしなかった。罪悪感も感じず、というかむしろ、事件を利用してダンブルドアやハグリッドを追放した。とんでもない屑野郎だ。そんな奴の命を奪うことに俺は何の躊躇もしない。お前のような奴がこの世にいれば、いずれまた罪の無い人間が苦しむ羽目になる。俺は罪の無い人間の命を救うためにもお前を殺す」

 

 

エスペランサは拳銃の銃口をルシウスに向けた。

 

秘密の部屋の戦いでほとんどの武器弾薬を失った彼であったが、唯一、この拳銃だけは無傷であった。

そして、もちろん拳銃にも‟銃弾を確実に敵に命中させる魔法”がかけられている。

 

引き金を引けば確実に銃弾はルシウスを絶命させるだろう。

 

 

「安心しろ。ルシウス・マルフォイ。お前の息子も直にそっち側に送ってやる。あいつもあいつでバジリスクに生徒がやられるのを楽しんでいたからな。将来的にドラコ・マルフォイは罪の無い人々を苦しませる存在になるだろう。今のうちに殺っておく必要はある」

 

 

エスペランサの言葉にルシウスは絶望した。

 

他者には厳しいルシウスであったが、彼は息子には並みならぬ愛情を注いでいる。

どうにかして息子の命だけでも助けてもらえないかルシウスは懇願しようとしたが、無駄だった。

 

エスペランサは確実にマルフォイ家を滅ぼそうとしている。

 

杖も破壊され、重傷を負ったルシウスには抗う術が何もない。

 

 

 

エスペランサは拳銃の引き金を引いた……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「‟エクスペリアームス 武器よされ”」

 

 

 

 

どこからともなく飛来した武装解除の魔法がエスペランサが手に持った拳銃を吹き飛ばす。

 

 

「何!!??」

 

 

一瞬にして武装解除をされたエスペランサは困惑した。

 

武装解除の呪文は対象者の持つ武器を強制的に解除する初歩的ではあるが利便性のある魔法だ。

決闘クラブでスネイプが使用したのを見て習得しようとした学生も多い。

 

強制解除され吹き飛ばされた拳銃はエスペランサの立つ位置から5メートルほど離れた地面に鈍い音を鳴らして落下した。

 

 

「動かないでください。この状況です。私の方が圧倒的に有利ですよ」

 

 

武装解除の呪文を放った人間は杖をエスペランサに向けながら冷たく言い放つ。

 

エスペランサはこの冷たい声に聞き覚えがあった。

 

 

「フローラ……カローか」

 

「そうです。あなたが秘密の部屋から帰還したと聞いて探していたのですが、まさかこんなバカげたことをしているとは思いませんでした」

 

「馬鹿げた……だと?」

 

「はい。そうです」

 

 

エスペランサは動くなと言われていたのにも関わらず、身体を反転させてフローラの方へ向く。

 

フローラはエスペランサから3メートルほど離れたところで杖を構えて静かに立っていた。

彼女の表情に感情は無い。

ただ冷たくエスペランサを見ているだけだ。

 

エスペランサはルシウスに怒りをぶつけることで興奮するあまりフローラが近づいてくることに気づかなかったようである。

 

 

「わかってんのか?この男のせいで今回の事件は起きた。下手すれば死人がわんさか出ていたかもしれないんだぞ。そんな奴をこれ以上生かしておいたらいずれまた犠牲者が出る。膿ははやめに取り除いてしまう方が良い」

 

「あなたにしては冷静さに欠いた行動ですね。ここでルシウス・マルフォイを殺害するのは得策ではありません」

 

「何故だ?ああ、そうか。やっぱり同じスリザリンの人間は殺したくないのか。フローラも所詮はスリザリンの考えに染まってたってわけか?」

 

 

エスペランサの言葉にフローラの表情に少しだけ変化が見られる。

 

いつも感情を表に出さず、表情を一切変えないフローラにしては珍しいことだ。

表情からはどうも彼女が怒っていることが読み取れた。

 

 

「私が大多数のスリザリン生の持つ純血主義を支持することはありえません。これは前にも言いました。私も今回の事件で被害者が出たことは遺憾に思っていますし、ルシウス・マルフォイに対して怒りも覚えます。ですが、だからといって考えも無く彼を殺すことに私は反対です」

 

「………………」

 

「あなたは今回、バジリスクを倒し、ジニー・ウィーズリーを救出しました。あなたが戦って勝ったからこそ、この学校で死者は出なかったんです。せっかく取り戻した平和なホグワーツを血で汚したいんですか?」

 

「いや、別に俺は………」

 

「それに、ここであなたがルシウス・マルフォイを殺せば、今度はあなたがアズカバン行きです。ホグワーツも退学となります。そうなれば、あなたの計画は全て実行できなくなりますよ?私はあなたの理想である‟罪の無い人々が苦しまない世界を作る”という計画に賛同して、あなたに付いていくことにしたんです。それなのにあなたはその計画を自分でダメにしようとしています。あなたの目的は別にルシウス・マルフォイの殺害ではないはずです。もっと崇高な目的があるはずです。一時の感情に任せて全てを台無しにしてしまう行動が、私は馬鹿げていると言ったんですよ」

 

 

エスペランサは押し黙る。

 

エスペランサにとってマルフォイ家はいずれ滅ぼすべき存在であった。

しかし、彼の計画ではそれはだいぶ先のことである。

何の力も持たない今の段階でマルフォイ家に攻撃を仕掛けることが愚策であることはエスペランサも知っていた。

 

だが、今回の事件で彼のルシウス・マルフォイへの怒りは収拾がつかないところまで高まった。

結果、考えなしにエスペランサはルシウスへ攻撃を仕掛けてしまったのである。

フローラの指摘通り、彼は冷静さを欠いていた。

 

 

「…………そうだな。何も考えずに……俺は、冷静さを失っていた。軍人としては失格だ」

 

「全くです。後片付けをするこちらの身にもなってください」

 

 

そう言ってフローラは物陰に隠れていたのであろう一人の屋敷僕妖精を手を振って呼ぶ。

 

枕カバーを服代わりにしたその屋敷僕妖精は何故か‟靴下を大事そうに手に持っていた”。

 

 

「ど……ドビー………だと?」

 

 

ルシウスがやってきた屋敷僕妖精を見て驚く。

 

 

「屋敷僕妖精の魔法は魔法使いや魔女が行使するそれよりも強力で尚且つ制約を受けません。この僕妖精は元々、マルフォイ家の妖精だったらしいですが先程ハリー・ポッターによって解放されたらしいです。たまたま見つけたので力を借りることにしました」

 

「ドビーめはハリー・ポッターの友達を助けるために来ました!何なりと申しつけ下さい!!」

 

 

キンキンとした声で喋るドビーという名の僕妖精にフローラは指示を与える。

 

 

「ルシウス・マルフォイのここ10分間の記憶を完全に奪ってください。それからあまり乗り気にはならないと思いますが、傷も全て治してあげてください。その後、付き添い姿くらましで彼を場外まで運んでいただけると助かります。僕妖精はホグワーツ内でも姿くらましが出来ると聞きましたので」

 

「畏まりました!!!!」

 

 

そう言うと、ドビーは指を鳴らす。

 

僕妖精が指を鳴らした瞬間、ルシウスの傷はあっという間に治り、記憶が改ざんされる。

 

 

「????私は何をしているんだ?何故、床に倒れて…………」

 

 

訳が分からない、という顔をしているルシウス。

 

ドビーはそんな混乱しているルシウスのローブを掴むと、もう一度指を鳴らした。

 

 

「ではまた会いましょう!ハリー・ポッターの友達!!」

 

 

ドビーとルシウスはパーンという音と共に姿をくらました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ドビーとルシウス・マルフォイが消えて、廊下にはエスペランサとフローラだけになる。

 

若干気まずい沈黙を破るかのようにエスペランサはフローラに話しかけた。

 

 

 

「何だ……また、助けられちまったな。フローラが止めてくれなければ俺は自分の計画をパーにするところだった」

 

バツの悪そうな顔をしてエスペランサは言う。

こういう時、彼は決まって頭を掻く癖があった。

 

「そうですね。次からはもう少し考えて行動してくれると助かります。ああ、それから………」

 

 

フローラはエスペランサの方を向き、少し睨みつけながら喋り始めた。

口調は依然として冷たいままであったが、少しだけ彼女の感情が見え隠れする。

 

 

「また今回も一人で戦おうとしましたね?私たちには何も言わず………。私もセオドール・ノットもあなたとは共闘関係にあります。少しくらい頼ってください」

 

「すまない。心配かけさせちまったな」

 

「別に………心配はしていませんでしたが…………」

 

 

フローラは少し顔を背けてそう言った。

その言葉が本心であるのかは分からない。

 

 

「ああ、そうだ。もう一つ謝らないといけないことがあった」

 

 

エスペランサは思い出したように懐から悪霊の炎に焼かれてボロボロになった検知不可能拡大呪文のかかった鞄を取り出した。

 

もはや原形をとどめないその鞄はかつてフローラがエスペランサに託したものであった。

 

 

「トム・リドルとの戦いでやられちまった。悪霊の炎とやらで焼かれたから復元は不可能らしい。これ、お前の爺さんから貰ったものだったんだよな。本当に申し訳ない。でも、この鞄のおかげで俺は戦闘に勝つことが出来た………」

 

「別に良いんですよ。その鞄があなたの命を救ったのならば、本望です」

 

 

フローラは言葉を続ける。

 

 

「私が持っていても大して役に立ちそうにありませんでしたから。あなたならその鞄を最大限活かしてくれると思い、私は差し上げたんです」

 

「そうか………。昨年の戦いも今回の戦いも、こいつが無ければ俺は戦えなかっただろう。あらためて礼を言うよ。でも、これはもう使い物にならなくなっちまった。今まではこの鞄のおかげで1人でも1個小隊に相当する火力を出して戦えていたんだが、今回でそれも無理になったな………」

 

 

今まで、エスペランサがバジリスクやアクロマンチュラ、そしてヴォルデモートと真っ向から戦う事ができた背景にはフローラから貰った鞄の存在があった。

検知不可能拡大呪文の影響下で大量の武器弾薬を携行出来たからこそ、個人で強大な敵と渡り合うことが出来たのだ。

しかし、その鞄という神通力が無くなった今現在、エスペランサの戦闘力は極端に下がってしまったといって良い。

無数の小銃や野戦砲の類を同時に操って圧倒的火力で敵を殲滅するという従来の戦い方は見直さなくてはならなかった。

 

 

「もう俺個人で戦闘を行うのは不可能だ。今後、バジリスクのような怪物や闇の魔法使いと戦うのならば、少なくとも小隊規模の部隊を編成して戦わないと勝てないだろう。だから、次からはフローラやノットに頼る事になる。そうしたらフローラたちにも危険が及ぶ可能性が出てくるが………」

 

「それはもとより覚悟の上です。私も、セオドール・ノットも、あなたの描いた理想の世界に夢を抱きました。今の世界よりもずっと平和な世界をあなたが作ってくれると思ったんです。だから、協力は惜しみません」

 

 

そう言ってフローラは1枚の羊皮紙をエスペランサに手渡した。

 

 

「これは?」

 

「私達で密かにホグワーツ全生徒の魔法力と思想、才能を調べました。その中から、あなたの計画に乗ってくれそうな生徒をピックアップして名簿にしたんです。全員、簡単には首を縦に振らないような癖の強い学生ばかりですが、主義思想はあなたの考えに合致していると思われます。どうでしょう?」

 

 

そう言われて、エスペランサは名簿に目を通す。

 

名簿には名前のほかに、学年、寮、出生、親族、学科成績、そして性格や主義主張までびっちりと書かれていた。

寮も性別もバラバラ。

一芸に特化した者から、才色兼備の者まで様々である。

ある者は寮の異端児。

ある者は一芸特化の劣等性。

ある者は才能を持ち腐れた問題児。

 

しかし………。

 

 

「面白い。ただ優秀ってだけじゃなく、しっかりとした適性判断が出来ている!これなら組織の基盤は作れるぞ!ありがとう!」

 

「お役に立てたのなら……頑張った甲斐があったというものですね」

 

 

フローラは淡々と言ったが、その表情は心なしか嬉しそうだった。

 

 

「では、そろそろ学年末の晩餐会がありますから、もどりましょうか?そういえば、寮対抗杯はまたグリフィンドールが獲得したんでしたね。それに特別功労賞に誰かさんが選ばれたという話も聞きました」

 

「俺は特別功労賞なんていらなかったんだけどな。こういう賞をもらって目立つのは柄じゃないし、苦手なんだ。ロンとかはそういうの好きそうだが」

 

「そうでしょうね………。まあ、また勝手に一人で突っ走った罰として、せいぜい目立ってチヤホヤされてください」

 

「………嫌味かよ」

 

 

はあ、と溜息をつくエスペランサを他所にフローラは大広間へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




石にされた学生の復帰とかいろいろ後日談を書く予定だったのですが、何か平和すぎる終わり方もアレだったので変更しました。
次からは3巻の内容です。
アズカバン編からがこのssの本編みたいな感じです。
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