ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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お待たせしました!
久々の投稿です。

遅くなりすみません泣



case44 The end of the war and the beginning 〜終戦 そして始まり〜

バックビークの処刑(仮)を見届けたハリーたち3人は、その後、間髪を居れずにシリウス・ブラックと接触した。

 

流れは箇条書きにすると以下の通りである。

 

1.死んだと思われていたスキャバースがハグリッドによって保護されていて、ロンの元に返された。

2.そんなスキャバースが突如逃げる。

3.追いかけてスキャバースを捕まえたロンがグリムに突如として攫われる。

4.グリムとロンを追いかけて行った先は叫びの屋敷で、そこにいたのはシリウスブラックであった。つまりグリム=シリウスでした。

5.なんやかんやあってルーピンも登場。スキャバースが死んだと思われていたピーター・ペティグリューだと判明する。

6.スネイプの乱入とか色々あったが、なんとかペティグリューを確保してホグワーツへ連行 ←今ココ!!

 

 

「ハリー。ピーターを魔法省に引き渡したら……私は晴れて自由の身になれる」

 

シリウスは叫びの屋敷からホグワーツへ向かう帰路、ハリーに話しかけた。

数ヶ月の逃亡生活から、彼は痩せこけて、まるで亡者のようになっている。

かつての凛々しい顔立ちの面影は残っていなかった。

 

「そうなれば……もし良かったら、私と一緒に住まないか?私は君の名付け親でもあるんだ」

 

「え??」

 

「いや、君が、マグルの親族と暮らしたいというのであれば無理にとは言わないのだが………」

 

「いえ!とんでもない!!僕、ダーズリーと暮らすのなんて嫌です!家はありますか?いつから住めますか?」

 

 

ダーズリー家から去ることが出来る。

それはハリーにとって何よりも望んだ事であった。

 

ハリーの返事を聞いて、シリウスは初めて笑顔を見せる。

 

やがて、暴れ柳から叫びの屋敷へ続く通路も終わり、一行は地上に出た。

 

 

「あ………」

 

地上に出た後、先頭の方を歩いていたハーマイオニーが何かを思い出したかのように、ハッと息を呑んだ。

彼女の視線の先には雲の切れ間からのぞく満月がある。

 

「大変!!今晩、ルーピン先生は脱狼薬を飲んでないわ!!!」

 

リーマス・ルーピンは人狼である。

現在の魔法界ではトリカブト系の脱狼薬によって人狼が満月の日であっても理性を保つ事が出来るようになっている。

しかし、今晩、ルーピンはその薬を服用していなかった。

 

「グオオオオオオ」

 

恐ろしい鳴き声と共に、ルーピンの身体が狼へと変化する。

 

身長が伸び、牙が生え、身体中に毛が覆われる。

如何にも人間を取って喰ってしまいそうな人狼へと変貌したルーピンは、満月を背景にして、ハリーたち一行を赤い目で睨みつけていた。

 

 

「まずい!!みんな逃げろ!!」

 

 

シリウスが巨大な黒犬に変化して人狼と化したルーピンに突撃していく。

気絶させられていたスネイプはこの段階で目を覚まし、“ハリーを守ろうと”立ち上がる。

 

この混乱をピーター・ペティグリューは見逃さなかった。

 

シリウス(犬)に襲われた怪我のせいで思うように歩けなかったロンを突如として襲った彼は、落ちていたルーピンの杖を拾い上げて呪いをかける。

錯乱の呪文の一種と思われるその呪文はロンの意識を朦朧とさせ、戦闘不能にした。

 

 

「あ!動くな!!!」

 

 

それに気付いたハリーがペティグリューに杖を向けたが、遅かった。

 

ペティグリューは不気味な笑い顔を残して、再びネズミの姿へと変化し、闇の中に逃げていったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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人狼と化したルーピンは、巨大な黒犬と化したシリウスとの戦いが長期戦になる事を恐れて森の中へと逃走した。

 

この森こそ、エスペランサたちセンチュリオンが吸魂鬼との戦闘を現在進行形で繰り広げている場所である。

 

 

人狼との戦闘で傷ついたシリウスは犬の姿のまま、同じく、森の中へと姿をくらます。

そんな彼をハリーは必死で追いかけた。

 

シリウスを死なすわけにはいかなかった。

両親の親友で自分の名付け親を失いたくは無い。

ダーズリーの家から抜け出してシリウスと暮らすという未来を手放すわけにはいかなかった。

 

 

森に入って少し走った先にある湖畔にシリウスは倒れていた。

動物もどきの姿を維持する力は既に無く、半死の状態で冷たい地面に倒れこんでいる。

 

しかし、そこでハリーは森の中の違和感に気付いた。

 

満月で月明かりがあるとはいえ、森の中が明るすぎるのだ。

まるで真昼のように湖畔が照らせれている。

 

花火を打ち上げて夜空が照らせれているこの状況………。

間違いなく照明弾である。

 

そして、極めつけは倒れこんだシリウスの横に立つ人物。

 

 

「何で……ここに!?」

 

 

フローラ・カローである。

 

彼女は手に持った拳銃の銃口を真っ直ぐにシリウスへと向けていた。

 

 

「そいつを下ろすんだ!フローラ・カロー。その人は悪い人じゃない。今は話している暇はなさそうだけど」

 

 

湖畔へ飛び出したハリーはフローラのもとへ駆け寄り、シリウスを守るようにして躍り出た。

 

ハリーの登場には彼女も驚いたらしい。

 

 

「なぜ、あなたがここへ???」

 

 

フローラとエスペランサたちが徒党を組んで何かをしていることはハリーも知っていた。

スリザリン生を快く思わないハリーはそんなエスペランサを心配していた節もある。

しかし、よく考えてみればフローラやセオドールはマルフォイ一味などと違ってグリフィンドールと目に見えた形で対立をしているわけでもない。

2学年のときは秘密の部屋事件の解決に協力をしてくれた事もあり、警戒はするも、敵視するには至らない、というのがハリーたちの最終的な判断であった。

 

なのでハリーもロンも、エスペランサが裏で何か組織を作っていたり、会合を開いていたりしても気にも留めていなかったわけだ。

スリザリンや他の寮との合同授業の時、やけに寮の垣根を越えて仲良くしているグループがあったり、ネビルの成績が急に上がったりしても気にする事はなかった。

それは、ハリーとロンが鈍感だったということもある。

 

しかし、ハーマイオニーは違った。

 

彼女はエスペランサが魔法界にとって異質な存在である事に早々に気付いていたし、2学年の中盤から裏で何かを始めた事も察していた。

ハーマイオニーがマグル生まれであるから、マグルの武器を携行したり、改良したりするエスペランサの異常性にすぐに気付いたということもある。

ホグワーツの教師陣や生徒が一部を除いて、エスペランサを特段、危険視したりしないのもマグルの武器に関する知識が無いからに他ならない。

 

ハーマイオニーと同様に賢く、察しの良い学生は片っ端からセンチュリオンの隊員に入隊していたため、エスペランサを警戒する人間が少なくなっていた。

フローラやセオドールはセンチュリオンの活動の阻害となりそうな生徒もセンチュリオンに入れてしまうことで、活動がしやすいようにしていたのである。

 

そういった理由で、エスペランサの周辺を探る動きは、少なくとも生徒間では起こらなかった。

 

ハーマイオニー自身もエスペランサの人格などを知っていたために深く追求はしなかったが、それでも、彼が裏で何か組織を募って行動をしている事に、一種の恐れを抱いていた事は間違いない。

何度かハリーとロンだけにそのことを打ち明けた事もあった。

 

 

 

 

ハリーは周囲を見渡す。

 

森にいたのはフローラだけではなかった。

 

茂みの中には銃で武装した生徒が何人もいる。

 

 

 

「エスペランサが関わっているの???」

 

「我々は武装しています。そして、吸魂鬼を倒すための作戦の遂行中です。あなたはここから立ち去ってください。正直言って邪魔ですから」

 

 

フローラはハリーの問いかけを無視して彼を追い払おうとした。

 

ハリーは少しムッとする。

 

賢者の石を守ったり、バジリスクを倒したりした自分を足手まとい扱いされた事に対してである。

ぽっと出の新人に立場を奪われたような気がした。

 

しかし、すぐにそんな考えは消え去る。

 

なぜなら、上空から飛来してくる無数の吸魂鬼の気配を感じたからだ。

 

 

「吸魂鬼!?あんなに!!!」

 

 

フローラは銃をしまい、杖を取り出す。

 

周囲の茂みから武装した生徒達が立ち上がり、銃を吸魂鬼に向けて構え始めた。

 

 

満月を黒い雲で覆い隠すように飛来した吸魂鬼たちは全速力でフローラとハリーに突っ込んでくる。

この二人とシリウスは彼らにとって大好物であったからだ。

 

 

「エクスペクト・パトローナム!!!!!!」

 

 

ハリーは守護霊の呪文を唱えて応戦しようとした。

杖の先からは銀色の光が噴射されるが、相手が多すぎて対処しきれない。

 

 

体の心から冷たくなるのを感じる。

最悪の記憶、両親の死の記憶が呼び起こされる。

 

直後、地響きと共に凄まじい爆発と眩い閃光が彼を襲った。

 

 

(守護霊の呪文???いや、この光と爆発は…………!?)

 

 

彼の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

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次に目が覚めたとき、ハリーは医務室に寝ていた。

 

見慣れたベッドに見慣れたカーテン。

馴染みのある医薬品のにおい。

 

恐らく、気絶した後、森から医務室まで運ばれたのだろう。

 

 

ベッドを覆うカーテンの外には複数人の大人が居て、話し声が聞こえた。

声から察するに、魔法大臣のファッジとスネイプ、それにダンブルドアも居るらしい。

 

 

ーブラックは連行

 

ーー吸魂鬼が行方不明

 

ーーーポッターたちは錯乱の呪文にーブラックに操られて

 

ーーーー言語道断

 

 

耳に入ってくる単語から、ハリーはシリウスが捕まったことと、吸魂鬼が行方不明になった事を悟った。

 

ならば、シリウスの無罪を晴らさなければならない。

ハリーはベッドから勢いよく立ち上がり、魔法大臣の下へ駆けて行った。

 

 

 

 

 

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数十分後。

 

 

結局、ハリーたちの訴えは無視され、シリウスの無実は証明されなかった。

無理も無い。

ピーター・ペティグリューは逃亡し、無実を晴らす証拠は何一つとして残らなかったのだから。

 

唯一の救いはダンブルドアがハリーたちの言う事を信じてくれた事であった。

 

ダンブルドアの助言により、ハーマイオニーの持つ逆転時計を使ってハリーとハーマイオニーは3時間ほど時を遡ることになった。

逆転時計というのは過去に遡る事のできる道具らしい。

見た目は携帯型の砂時計である。

簡単に言えばタイムマシンだが、そんなものが市販されているはずも無く、聞けば、特別な申請をして初めて使用が許可されるそうである。

 

ハーマイオニーがこの1年間、複数の授業に同時に参加する事ができていたのはこの逆転時計のおかげだそうだ。

 

 

「時間を遡れる時計なんて………。ハーマイオニーはこれで授業を受けてたの?」

 

「そう。マクゴナガル先生が許可してくれたの。もっとも、こんなことに使うとは思っていなかったけど」

 

2人は医務室から出て、校庭に向かった。

無論、透明マントを着用している。

時間を遡った2人は絶対に現地時間を生きている人間に見つかってはならなかったのだ。

 

 

「でも、ダンブルドア先生は3時間も時を遡れって言ったわよね?なぜかしら。3時間も前にシリウスを助ける手がかりが??」

 

「ダンブルドアは“一つならずとも罪無き命を救う事ができる”って言ってた。それはつまり……」

 

ハリーは校庭の端の方に見えるハグリッドの小屋を見てハっとした。

 

「バックビークだ。バックビークだよ。3時間前ならまだバックビークは処刑されてない」

 

「でもバックビークをどうやって??」

 

「シリウスが捕らえられているのはフリットウィック先生の事務所、つまり塔の上層だ。バックビークを使えば救出できる」

 

「でも、そんなことを誰にも見られずにやり遂げるなんて………奇跡だわ!?出来るわけない……」

 

「やってみなくちゃわからない。奇跡かどうかなんてやってみなきゃわからない」

 

 

ハリーはそう言いながら、つい先程、目の当たりにした光景を思い出していた。

 

恐らく、エスペランサが率いていた生徒達が無数の吸魂鬼を倒そうとしていた光景だ。

一見、無謀にも思えたが、エスペランサは勝算の無い戦いをするとは思えない。

きっと、吸魂鬼を倒す方法を確立して、戦いを挑んだに違いない。

 

事実、ファッジは吸魂鬼が全て消滅した旨のことを話していた。

 

エスペランサはやり遂げたのだ。

彼には守りたいもの、達成したい目標があったから。

 

ハリーにも守りたいものが出来た。

 

シリウスの命。

 

 

「僕もやり遂げる。チャンスがあるなら奇跡だって起こしてやる」

 

「ええ。わかったわ。じゃあ、何とかしてバックビークを助ける案を考えましょう」

 

 

ハーマイオニーもハリーに賛同した。

 

 

 

 

 

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何とかしてバックビークを開放した後、ハリーたちは森の中に来ていた。

 

狼に変身したルーピンに襲われないように身を隠すためであったし、エスペランサたちの様子を見に行くためでもあった。

 

 

照明弾で照らされた湖畔へ茂みを掻き分けながら進んだハリーはエスペランサの仲間が思ったよりも多い事に驚いていた。

 

銃を持ち、巧妙に茂みの中に潜む生徒の数は10を超える。

フローラやセオドールだけでなく、アンソニーやハンナ・アボット、グリーングラス姉妹やネビルもいる。

 

 

「こんなに仲間が居たなんて………」

 

「ええ。何か組織を作っていると思ってはいたけど。こんな規模だとは思ってなかったわ」

 

ハーマイオニーもハリーの隣の茂みに隠れるように屈みながら言う。

 

「でも凄いわ。寮もバラバラ。純血もマグル出身も関係なく、ここまでの生徒を束ねて組織をつくるなんて。魔法省でも無理でしょうね」

 

「でも、あんなたくさんの武器。どこから入手したんだろう??」

 

「さあ?あ、見てあそこ!!!!」

 

 

ハーマイオニーが指をさす。

 

その先では人狼になったルーピンがセンチュリオンの隊員の一人に襲い掛かかっていた。

 

 

「助けなきゃ!!!」

 

「無理よ!私たちに何が出来るの??それに姿を見られるわけには……」

 

 

裂傷を負った隊員は茂みから飛び出して銃を構えていたが、人狼の体当たりに吹き飛ばされていた。

そこへ他の隊員が駆けつけて援護射撃を行う。

 

タタタタという連続射撃音が木霊し、湖畔にいた隊員たちは明らかにパニックに陥っていた。

 

 

「助けるのはルーピン先生だよ。エスペランサたちはあの人狼が先生だって知らないはずだ。エスペランサのことだから多分、先生を爆弾とか機銃とかで殺そうとするに違いない!」

 

「あああ。そうだったわ。先生を助けないと………」

 

 

ハリーの指摘はごもっともで、エスペランサに指示されてネビルが12.7ミリ機関銃M2を取り出すのが見える。

小銃では倒せないと思ったエスペランサが、重機関銃で周囲の木立ごと人狼を粉砕しようと思い立ったのが容易に想像ついた。

 

ハリーは昨年、禁じられた森でアクロマンチュラの群れが同じ重機関銃によって粉砕された光景を思い出していた。

 

 

ハリーたちが潜む茂みから直線距離にして約100メートル。

シリウスが倒れている湖畔からちょうど反対側に存在する巧妙に偽装された天幕が恐らく司令部だろう。

その天幕横でネビルが重機関銃に給弾を終了させ、射撃を開始したのが見えた。

 

 

「うわっ!?伏せて!!」

 

 

咄嗟にハリーたちは地面に伏せる。

 

 

ズドドドドという古びた漁船のエンジンの音に似た射撃音と共に、12.7ミリの弾丸が木々を粉砕する。

 

近くに居ただけでも凄まじい衝撃波を感じる事ができた。

第2次世界大戦前から各国の軍隊を支えてきた機関銃は魔法界においても十分にその威力を発揮している。

 

発射された弾丸のうちの1発が人狼の太股を掠めた。

 

 

「グアアアアアアア」

 

 

掠めただけで12.7ミリ弾は人狼の太股を数センチ抉る。

恐らく大動脈あたりを傷つけたのだろう。

太股の傷からはどす黒い血液が噴出していた。

 

人狼は余りの激痛に倒れ込む。

 

 

「確実に息の根を止めろ」

 

 

ネビルの後ろに現れたエスペランサと思われる生徒がそう指示するのを聞いてハリーは我に帰った。

 

 

「駄目ええええええええええ!!!」

 

 

ハリーは人狼を守るように、銃機関銃の射線上に飛び出す。

 

急に飛び出してきたハリーを見てネビルはトリガーから指を離し、エスペランサは射撃指示を取りやめた。

二人とも困惑している。

 

 

「どういうことだ?何故、ハリーとハーマイオニーがここに居る?そして、人狼を守る理由は何だ?」

 

エスペランサが言う。

 

「詳しく話している時間は無いよ。兎に角、その銃を撃つのは止めてくれ」

 

「止めてくれって………。何故、人狼を守るんだ?そもそも、お前達は何のために?」

 

「それは私たちの台詞でもあるわ。エスペランサ。それにネビルも。これは一体何の集まりなの?あなたたちは何をしようとしていたの?」

 

 

ハリーに続いて現れたハーマイオニーが言う。

 

後方では出血多量で意識が薄れてきた人狼がかすかに唸っている。

 

 

「エスペランサ!無線に入電!吸魂鬼がキルポイントに達した。それと、予想外の出来事なんだが、シリウス・ブラックと共にハリー・ポッターも湖畔に現れた」

 

天幕からインカムを頭につけたフナサカが出てくる。

 

「何を言ってるんだ?ハリーならここに居るぞ」

 

「えええええええ!?」

 

エスペランサは反対側の湖畔を見る。

 

そこにはもう一人のハリーが居た。

 

「は!?」

 

「何が……どうなってるんだろ?ドッペルゲンガーでも見てるのかな?」

 

 

エスペランサもフナサカも目を丸くしてハリーを見ていたが、ふと我に返る。

 

 

「お互いに説明は後だ。我々はこれより吸魂鬼の群れを撃滅する。お前たちは巻き込まれないように避難してくれ」

 

 

エスペランサはハリーとハーマイオニーに指示をする。

 

 

「吸魂鬼を倒す?そうか……あの時の爆発………。あれは守護霊の呪文ではなく、君たちだったのか!!」

 

「何を言ってるんだ??」

 

「僕とハーマイオニーはルーピン先生を連れて帰る。ネビルの銃撃のおかげで動けないみたいだし、全身金縛りの呪文で何とかなるはずだ」

 

 

そう言ってハリーは杖を取り出して人狼であるルーピンが倒れている方向へ走り出した。

ハーマイオニーもそれに続く。

 

エスペランサは尚も何か言いたげだったが、彼は彼で切羽詰まっているのか、それ以上追及はしてこなかった。

 

 

 

 

 

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エスペランサたちと別れたハリーは呻きながら地面に横たわっている人狼姿のルーピンを見た。

 

 

「グオオ………」

 

「先生………」

 

 

人狼の足は銃創でズタズタになっているが、致命傷ではないようである。

 

 

「“ペトリフィカストタルス 石になれ”」

 

 

ハリーはそんなルーピンに全身金縛りの呪文をかけて、凍結させた。

 

 

「これでルーピン先生は無害だよ。でもどうやって城まで運べば………」

 

「私に良い考えがあるわ。“ロコモーター・ルーピン”」

 

 

ハーマイオニーが呪文を唱えると、人狼の体が宙に浮かぶ。

浮遊呪文の応用だろうか。

ハーマイオニーが杖を動かすと宙に浮かんだルーピンも同時に動いた。

 

そのまま二人は湖から森の外に向かって歩き出す。

 

 

「金縛りの呪文の効力は1時間も無いわ。だから私はこのまま先生をホグワーツ城の倉庫に閉じ込めに行く。ハリー。あなたはバックビークに乗ってシリウスを助けに行くのよ。それが終わったら医務室前で待ち合わせ。良い?」

 

「うん。そうしよう!」

 

 

バックビークは森の入り口で待機させていた。

バックビークで飛行すればシリウスが閉じ込められている部屋にたどり着くことができるだろうし、シリウスをバックビークに乗せて逃亡させることも可能だ。

 

 

「!!!??うわっ!」

 

 

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

 

突如として湖畔の方からとてつもない爆風と閃光が押し寄せてきた。

 

 

「何これ!!!普通の爆発じゃない!!」

 

「この爆発………ナパーム弾??」

 

 

咄嗟に伏せながらハーマイオニーが言う。

彼女はマグル出身であり、ナパーム弾のことも知っている。

 

 

「ナパーム弾??」

 

「マグルの軍隊が使う爆弾の一種よ。映画で見たわ。でも、あれで吸魂鬼が倒せるとは思えないけど………」

 

 

爆風はやがて収まり、森には再び静粛が訪れた。

しかし、ガソリンが燃えたような臭いが後に残る。

 

「とにかく急ごう!残された時間も少ない」

 

「ええ。って、見て!ハリー。あれ!」

 

「??あれは!!」

 

 

ハーマイオニーが指さす方向には吸魂鬼が5体ほど浮遊していた。

 

おそらく、エスペランサの仕掛けた攻撃から逃げることに成功した吸魂鬼だろう。

センチュリオンの作戦はほぼ成功していたが、さすがに200体すべてを同時に倒すことはできなかったらしい。

 

かろうじで生き残った吸魂鬼が若干ながらも存在したのだ。

 

 

「こっちに来るわ!」

 

「………きっと僕を狙ってるに違いない」

 

「え?」

 

「ルーピン先生が言ってた。僕は吸魂鬼を引き付けやすい体質なんだって」

 

 

ハリーは向かってくる吸魂鬼に向かって杖を向けた。

 

 

「ハリー。あなた、何を??」

 

「“エクスペクト・パトローナム 守護霊よ来れ”」

 

 

ハリーは呪文を唱えた。

 

シリウスと一緒に暮らすこと、つまり幸福なことを考えて。

 

 

杖からは霞ではなく、実体化された守護霊が飛び出した。

 

形は牡鹿。

 

 

牡鹿の守護霊はまっすぐ吸魂鬼たちに突っ込む。

吸魂鬼はたまらずに逃げ出した。

 

 

「僕……はじめて出せた。有体の守護霊を……」

 

「すごいわ!ハリー。守護霊の呪文ってとっても高度な呪文なのよ!?大人の魔法使いでもめったにできる人なんていないのよ!」

 

「うん。僕、やったんだ。急ごう!!シリウスを助けに行かないと!」

 

ハリーとハーマイオニーは森の外に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

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「ってわけよ。わかったかしら??」

 

 

時は流れて、終業式も終わった。

ハリー、ロン、ハーマイオニーはキングスクロス駅に向かうホグワーツ特急のコンパートメントの中でエスペランサにシリウスの無実と、彼の逃亡劇を語って聞かせた。

 

結局、あの後、ハリーはバックビークを使ってシリウスを逃亡させ、ハーマイオニーはルーピンをホグワーツまで輸送することに成功した。

その次の日にスネイプが朝食の最中についうっかりルーピンが人狼であることをばらし、ルーピンはホグワーツを辞任してしまった。

 

魔法大臣のファッジは僅かに生き残った吸魂鬼数体をホグワーツから撤退させた。

 

 

 

「なるほどな。それにしても逆転時計か……。そんな便利なものがあるんだったら世界大戦だって防ぐことができる。何とかして手に入れたい」

 

「駄目よ。魔法省は絶対にあなたに貸し出したりしないと思うけどね」

 

「それもそうか」

 

 

エスペランサは車窓から段々と小さくなっていくホグワーツを見ながら残念そうに言う。

 

 

「それはそうと、エスペランサは吸魂鬼を倒したんだろ!?すごいや。マーリン勲章がもらえるぜ?」

 

ロンが興奮して言う。

 

「まあな。でも内緒にしておいてくれよ?」

 

「なんでだい?ダンブルドアでもできなかった所業をやり遂げたんだ。もっと公表すべきじゃ?」

 

「あー。まあ、時期尚早ってかんじだな。兎に角、これは内緒なんだ」

 

「へー。まあ、君がそう言うなら、黙っておくけど」

 

 

そう言ってロンは車内販売で買ったカエルチョコを頬張る。

 

 

「そういえば、僕のパパがクィディッチのワールドカップのチケットを手に入れるかもしれないんだ」

 

「ロン。食べながら話したら行儀が悪いわ」

 

「モゴモゴ……ゴクン。君たちも来るだろ?」

 

「行く!行きたい!でも、ダーズリーが許すかな?」

 

「平気さ。絶対に君を連れ出すよ。エスペランサも来るだろ?」

 

「あー。行く。でも、他のやつに既にチケットをもらっててな………」

 

「え!?」

 

「セオドールのやつに招待されたんだ。断るつもりだったんだが、ちょっと理由があってオッケーしちまった。すまないな」

 

 

ロンは不服そうだ。

彼はスリザリン生のセオドールを快く思っていないからである。

 

 

「まあ、向こうで会えるよね。絶対だぞ」

 

「ああ。向こうで会おう。ちょっと席を外す」

 

 

そう言ってエスペランサは席を立ち、コンパートメントの外に行こうとした。

 

 

「どこへ行くの?」

 

「空いてるコンパートメントで一服してくる」

 

 

そう言って彼は煙草のケースを振りながら外へ出た。

 

 

 

 

 

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一服というのは嘘で、エスペランサはフローラとセオドールの居るコンパートメントに向かった。

 

ハリーとハーマイオニーにはセンチュリオンの活動がバレていたし、スネイプも勘付いている節があるので表立ってセンチュリオン関係の話し合いに行く素振りは見せられない。

ただでさえここ数日、ハーマイオニーからは質問攻めを受けていた。

 

フローラたちが居るコンパートメントにたどり着いたエスペランサは中に入る。

 

 

「待たせたな」

 

「ああ。待っていたよ」

 

セオドールが席に座って百味ビーンズを食べながら言う。

 

「で、結局、ワールドカップには来るのかい?」

 

「まあな。賭けにも負けたし………」

 

「賭け?」

 

「はい。私と彼で期末試験の点数が高かったほうが何でも一つ命令できる、という賭けをしていたんです。私が勝ったので、彼にはクィディッチワールドカップに来るように命じました」

 

 

セオドールの反対側に座るフローラがニコリともせずに言った。

 

 

「そうか。確か、学年トップがグレンジャーで次席が同率で僕とフローラ。君は7番目だったっけ?」

 

「ああ。実技はともかくとして筆記がな………。あと、占い学で水晶玉を割ったらトレローニーに0点にされた。結果、7番目だ」

 

「水晶玉は何で割ったんですか?」

 

「トレローニーが煩かったから早いところ試験を終わらせたくて、わざと水晶玉を机から落とした。後悔はしてない」

 

「相変わらずですね」

 

 

フローラとセオドールが次席で、その間に数名のセンチュリオンの隊員とマルフォイが来た後にエスペランサが7番目の成績であった。

マルフォイは意外と成績が良い。

 

ちなみに、ハリーとロンはロンの方が総合成績は良く、ネビルは昨年から比べると格段に良い点数を取っていた。

最下位は無論、クラッブとゴイルである。

セオドール曰く、あの二人は文字を理解しているかどうかも怪しく、マルフォイが頭を抱えるほどに馬鹿らしい。

 

 

「で、今年のセンチュリオンは何をするんだい?吸魂鬼は倒したし、新しい目標が必要だ」

 

「そうだな。とりあえず、隊員の戦闘能力を向上させないといけない。まだ、戦闘員としては2流以下だし。ただ、吸魂鬼のような敵の存在がないから、まだ目標は決められないな」

 

「そうか。いや、それにしても今学期は有意義だった。吸魂鬼を倒したことだけでなく、しっかりとした組織ができたんだからな。新学期も楽しみだ」

 

 

そう言ってセオドールは満足そうに何度もうなずいた。

 

 

 

 

 

 

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キングスクロス駅に着き、エスペランサはフローラたちと別れた。

 

次に会うのは1週間後である。

セオドールは大きく手を振って駅のホームを出て行った。

 

フローラは家が家なので戻りたくはないらしく、あまり顔色が優れなかったが、それでも、去り際にエスペランサに小さく手を振ってくれた。

その姿は存外、幼く、可愛らしいというのがエスペランサの感想である。

 

セオドールが彼女をワールドカップに誘ったのは、一刻も早く、フローラをカロー家から連れ出すためなのだそうだ。

エスペランサもフローラが家でどういった扱いを受けているかを知っていたため、彼女が心配でならなかった。

 

 

遠くを見ればハリーが叔父叔母と合流して駅の外に行くのも見える。

 

マグルでごった返す近代的なキングスクロス駅の中を一人、また一人と生徒たちが家族のもとへ帰っていく。

久々に家族と会って幸せそうな彼らを見て、エスペランサは少しうらやましく思った。

 

実に平和だ。

この平和を持続させるためにも、センチュリオンという組織を強化しなくてはならない。

 

そう思いながら彼は一人、マグルの世界へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが………

 

 

「待て」

 

 

短く、鋭い声。

 

腰に突き付けられた拳銃。

 

 

 

振り返ればスーツ姿の男が二人、エスペランサの背後に立っていた。

音も無く。

唐突に。

 

 

 

 

 

「話がある。エスペランサ・ルックッド。付いてこい。これは命令だ」

 

「なっ!?」

 

「逆らえば、貴官の腰を撃ち抜く」

 

 

腰に突き付けられた拳銃がさらに強く突き付けられた。




なかなか投稿ができなかったのですがやっと出来ました!

ハリー視点は結構ダイジェストで書きました。
詳しくは原作で・・・


最後のシーン。
拳銃は服で隠しながら突き付けられてますので周囲の人は気づいてません・・・

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