ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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よく考えたら呼び寄せ呪文で卵を呼び寄せれば課題はクリアできるのでは?と思った小学生の時の自分。


case54 Hand arrow 〜91式携帯型地対空誘導弾〜

発煙弾の効果により、完全に視界を失ったセドリックはフィールドに杖を向ける。

 

「エレクト・テーレム 武器よ機動せよ」

 

エスペランサが1学年の時に開発した呪文。

エレクト・テーレム。

指定した武器を自動で機動させるものである。

 

かつて、エスペランサはこの魔法を使用してバジリスクやクィレルを倒した。

ただし、当時存在した検知不可能拡大呪文のかかった鞄はトム・リドルに破壊されて既に失われているため、この魔法が本領を発揮することは無い。

また、センチュリオンという戦闘組織があるため、エレクト・テーレムを使う機会はほとんど無くなっていた。

 

だが、今回、久々にこの魔法が日の目を見ることになる。

 

地面の中に埋められていた91式携帯地対空誘導弾、通称ハンドアローが呪文の影響で飛び出す。

この誘導弾は付属のバッテリーに接続する必要があったが、エレクト・テーレムはその工程も自動で行えるようにしていた。

 

自動でバッテリーに接続されたハンドアローはその発射口を白煙の中に向けた。

 

その数は5発。

 

「食らえっ!発射!」

 

セドリックが杖を振った瞬間、5つの宙に浮かんだ発射機から5発の対空ミサイルが飛び出す。

 

ドラゴンの姿は白煙に包まれて視認できない。

しかし、5発のミサイルはドラゴンの体内にある熱源をしっかりと探知していた。

 

91式地対空誘導弾は陸上自衛隊が誇る最新鋭の対空装備である。

そのメリットは180度どの方向に撃っても確実に熱源に向かって飛んでいくということだ。

ミサイルは赤外線パッシブ誘導方式。

目標が発する赤外線、つまり、熱源をセンサーが捉え、そこに向かって飛翔する方式である。

 

だから、当てずっぽうに撃っても確実にドラゴンに命中する。

 

 

灰色の煙を吹き、白煙の中に突入したミサイルは混乱状態にあるドラゴンの腹部に全て命中した。

 

 

ドドドドドーン

 

 

ギャァアアアアアア!

 

 

ドラゴンの腹部でミサイルが爆発する。

 

対戦車ミサイルとは違い威力は低い。

しかし、9キロもある本体がマッハ1.9の速度でぶつかるという痛さは計り知れない。

ドラゴンは腹部にそれを5発も食らったのである。

 

白煙の中でドラゴンが悶え苦しむのがわかる。

 

セドリックはその光景を見なくて済んだことに感謝した。

ドラゴンは破れかぶれの炎を吐く。

その何発かはセドリックの方向に飛んできたが、彼は冷静にそれを盾の呪文で防いだ。

 

『何が起きたのかは分からないが、ドラゴンの苦しむ声が聞こえます!そして、爆発音!』

 

バグマンの声が響く。

セドリックは腕時計を見た。

 

発煙弾の着弾から5分以上が経過している。

そろそろケリをつけなくてはならない。

 

「エバネスコ 消えよ」

 

消失呪文でハンドアローの発射機をこの世から完全に消し去る。

証拠隠滅だ。

 

あとはドラゴンが苦しんでいるうちに、卵を奪取すれば任務完了である。

 

だが、その時。

 

グオオオオオオオオ

 

 

咆哮共にドラゴンが再び動き出した。

痛みで我を忘れているのだろう。

 

「マズい!」

 

セドリックはとっさに地面に伏せた。

その彼の頭上数メートルのところをドラゴンの吐いた炎が通り過ぎた。

 

ドラゴンは暴れ回る。

 

翼をはためかせて白煙を宙に巻き上げた。

白煙が巻き上げたせいで、視界が少しだけ晴れてしまう。

 

セドリックはドラゴンを白煙の隙間から目撃した。

 

腹部は血だらけであるが、致命傷にはなっていない。

怒りに身を任せて手当たり次第に岩を破壊する姿はまさにバーサーカー。

 

そして、ドラゴンはギロリとセドリックを見据えてしまう。

 

一瞬、セドリックは時が止まったかと思えた。

全身が自身の危険を知らせるかとように震えはじめる。

 

「冷静になれ。何か打開策は・・・」

 

ドラゴンが炎を吐く。

 

「プロテゴ・マキシマ!」

 

最大級の盾の呪文を展開して炎から身体を守るセドリック。

炎は見えないシールドに弾かれて周囲の地面を焼いた。

 

打開策はひとつだけ存在する。

 

エレクト・テーレムで機動させた5発の他に、地面には予備のハンドアローが1発埋めてある。

だが、この予備はエレクト・テーレムの魔法で機動してしまわないように魔法を無効化する魔法がかけられている。

 

この魔法を無効化する魔法はエスペランサが2学年の時にパーシー・ウィーズリーの助言によって使い始めたものである。

ホグワーツで電子機器や近代兵器を使えるようにするためには必須の魔法で、元々はアーサー・ウィーズリーが空飛ぶ車を作る時に使用した魔法だ。

 

「ステータム・モータス 強制回避」

 

セドリックは盾の呪文を解除し、速やかに自身に強制回避の呪文をかける。

これも、エスペランサがかつてバジリスクやスネイプと戦闘を行った時に使用した魔法だ。

 

呪文をかけた対象は強制的に5から6メートル移動させられるものである。

 

強制回避の呪文で炎を危うくかわしたセドリックは予備のハンドアローが埋めてある地面に掘削の呪文を再びかける。

 

地面からはハンドアローが飛び出した。

 

ドラゴンは6メートル移動したセドリックの方へ顔を向ける。

そして、巨大な口を開口した。

 

国の中には発射直前の状態にある炎が見える。

 

セドリックはバッテリーに端子を繋ぎ、照準器をドラゴンの口に合わせた。

トリガーを引く。

 

「うおおおおおおおお!」

 

発射口から飛び出したミサイルは真っ直ぐにドラゴンの体で最も高温な箇所、つまり口の中の炎に向かっていった。

 

ズドオオオン

 

正に間一髪。

ドラゴンの口の中に侵入したミサイルは炎に誘爆されて爆発を起こす。

ドラゴンの皮膚は硬い。

しかし、口内はその限りではなかった。

 

ミサイルによる爆発はドラゴンの口内にを木っ端微塵に吹き飛ばす。

 

断末魔の叫びを上げるドラゴン。

 

セドリックはこんな生物の悲鳴を聞いたことがなかった。

黒焦げになった頭部が首から外れて地面に地響きを立てながら落下する。

 

全ての機能を失ったドラゴンの身体は金の卵の幾つかを巻き込みながら倒れ込む。

 

「はぁはぁ。やった・・・のか?」

 

セドリックは素早く手に持っていた発射機を魔法で消し去り、倒れたドラゴンに近づいた。

まだ燻っているドラゴンだった物からは肉の焦げるような臭いが漂う。

 

彼が完全に動かなくなったことを確認し、まだ潰れていない金の卵を拾い上げるのと、発煙弾による白煙が消えるのはほぼ同時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席にいたエスペランサをはじめとするセンチュリオンの隊員たちは消え行く白煙の間からボロボロになったドラゴンと金の卵を手に取るセドリックの姿を認めた。

 

「やりやがった!セドリックがやりやがったぞ!」

 

「ああ。ああ!見事な勝利だ!」

 

隊員たちは次々に歓声をあげる。

 

他の観客たちも口笛を吹いたり、手を叩いたりして興奮していた。

中には立ち上がって魔法の花火を上空に上げる者もいる。

 

「やったなセオドール」

 

「ああ。セドリックの勝利だ」

 

緊張から解放されたセオドールが額の汗を拭いながら言う。

 

「セドリックだけじゃない。お前の作戦がなければこれは達せなかった」

 

「買いかぶるな。僕は自分の仕事を果たしただけさ」

 

 

 

 

 

競技場から離れた場所にある迫撃砲陣地でもセドリックの勝利は伝わって来た。

上空で観測をしていたコーマックの報告を受けたこともあるが、競技場から聞こえてくる歓声は陣地でも聞こえたのである。

 

「やった!やったね!アーニー」

 

迫撃砲の次弾を準備していたダフネがピョンピョン跳ねながら嬉しそうに言う。

 

アーニーは地面に座り込んで呆然としていた。

緊張から解放されてどっと疲れが襲って来たのだろう。

 

「やっと終わったか。でも、僕以上にセドリックの方が疲れてるだろうな」

 

「課題開始からまだ10分も経ってないよ!こりゃ優勝間違いなしだね!」

 

「まだわからないさ。でも、やれるだけのことはやった。あとは審査員の評価を待つだけだ」

 

そう言ってアーニーは迫撃砲の撤収準備をはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言えば、セドリックの点数はハリーに負けていた。

セドリックの課題クリアまでのタイムは最短。

それだけなら間違いなく1位であった。

しかし、金の卵を何個か破壊してしまったため、それで減点される。

加えて、セドリックがどのような方法でドラゴンを倒したのかが不明だったので審査のしようが無かった。

さらに、カルカロフがクラムを贔屓してセドリックを3点と評価したためだ。

 

だが、生徒やバグマン、一部の魔法省の役人はセドリックを高評価したみたいだ。

 

専門のドラゴン捕獲チームが10人束になってもドラゴンを倒すことはできない。

それなのに、セドリックは単独でドラゴンを無力化してしまった。

それ故に彼を評価する声があったのである。

 

無論、魔法省の外交部は輸入したドラゴンを木っ端微塵に吹き飛ばしてしまったことに対する謝罪を輸入元の国にする羽目になったし、ドラゴン専門家たちは黒焦げのドラゴンを莫大な労力を使って処理する羽目になり、ハグリッドは大好きなドラゴンの亡骸を見て号泣した。

 

 

他の選手はどうだったか。

 

まず、フラーはドラゴンを魔法で眠らせるという方法をとった。

しかし、眠っていたドラゴンが寝息と共に炎を吐いてしまい、それに触れたフラーは軽症を負う。

 

クラムは結膜炎の呪いでドラゴンの弱点である目をついたが、痛みで暴れたドラゴンは卵を割ってしまい減点された。

 

ハリーは呼び寄せ呪文でファイアボルトを呼び寄せ、飛行能力を活かして卵を奪取した。

 

最終的にハリーとクラムが同率でトップを取る。

しかし、生徒たちの大半はドラゴンを完膚無きまでに打ち破ったセドリックを支持することになった。

 

ドラゴンを未成年の学生が倒すなど魔法史にも類を見ない快挙であったからだ。

セドリックの両親は観客席でここぞとばかりに息子の自慢をし、寮監であるスプラウトも鼻を高くしていた。

 

余談だが、この課題を通じてハリーとロンは仲直りしたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスペランサたちセンチュリオンがセドリックを讃えるために彼のもとに走り出している頃。

まだ会場に熱気が溢れている頃。

 

その男は観客席の最上階にいた。

 

男は発煙弾の白煙を見透かす道具を眼球に入れている。

魔法の目。

どんなものでも、例えば透明マントでも見透かすことのできる魔法の目は発煙弾の白煙ももちろん見透かすことができる。

 

故に、男は一部始終を目撃した。

 

91式携帯対空誘導弾。

迫撃砲の砲弾。

 

魔法界には場違いなそれらの道具。

 

計算されつくした作戦。

 

明らかに"ある生徒"が関与しているに違いなかった。

あの、クィデッチワールドカップで目撃した奇妙な戦い方をする少年が。

 

 

「エスペランサ・ルックウッド。貴様は"我々"の脅威になり得るのか・・・?」

 

 

男は一人、呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハリーとロンの仲直りとか、他の選手の試合も書こうと思っていましたが、原作の焼き増しになるのでカットしました。
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