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びっくりです!
APS水中銃。
1960年代にソビエト連邦が開発した特殊作戦用の水中銃である。
その名前の通り、水中で使用できる銃であり、水中であっても単発と連発を切り替えることが出来る。
見た目は普通の銃とあまり変わらないが、弾薬は通常弾とは大きく異なっていた。
長さ11.5センチの細長い針のような弾丸を用いることで、水中の中であっても運動性能を落とさずに十分な殺傷能力と射程を確保できる。
1989年のマルタ会談で会談を警備していた兵士が所持していたことで、その存在が公になった。
故に米軍が装備している筈も無く、エスペランサは扱ったことがない。
カタログスペックを知っているだけだ。
必要の部屋というのは万能なもので、エスペランサの望み通り、すぐに水中銃を出現させてくれた。
「湖の中で戦うとなると、俺らに出来ることは武器を提供するくらいなもんだな」
「そうだな。今回ばかりはセドリックの技量に全てかかっていると言っても過言ではない」
水中銃を手に取って観察しながらセオドールが言う。
エスペランサたちの持つ無線機や光学機器は水中では使えない。
必要の部屋は軍用の通信機器を出してくれるが、水中で使用可能なレーザーを利用した無線機は流石に出せないようだった。
仮に出せたとしても、世界最先端の技術を用いた機器をセンチュリオンの隊員はすぐに使いこなせないだろう。
エスペランサはセオドールと共に必要の部屋の能力を最大限に発揮してセンチュリオンの火力を上げようとしていた。
具体的には、25ミリを超える機関砲の開発、対空レーダーの設置、機動性に富んだ車両の開発などである。
マグルの電子機器に精通していたフナサカも対空レーダーなど扱ったことがないし、車輌に使う内燃機関に至ってはズブの素人だ。
エスペランサもそれらについての知識はあまりなかった。
「ところで、エスペランサ。今朝の日刊預言者新聞は読んだか?」
「え?ああ。読んだ。例のハグリッドの記事だろう?」
「そうだ。君はハグリッドが巨人とのハーフだって知っていたか?」
「いや。知らんな」
日刊預言者新聞の1面を飾ったのはリータ・スキータという女記者のゴシップ記事だった。
内容はムーディーや巨人の血が流れるハグリッドを教職員として雇ったダンブルドア批判と、ハグリッドの授業や思考に関する批判である。
非常に偏見が混ざっている記事ではあるものの、巨人という存在が魔法界でどのように扱われているかを考えれば至極当たり前の批判ではあった。
ついでに言えば、ハグリッドの異常性をエスペランサはアクロマンチュラに襲われた経験から認識している。
「英国では巨人は闇払いに倒されて絶滅危惧種になっているんだ。何種類かの部族が森の奥地に生息しているらしいが、魔法省は把握出来ていない」
「巨人って10メートルを超える個体だっているんだろ?流石にマグルに発見されるんじゃないのか?」
「そうだな。恐らく何人かのマグルは巨人を発見している。だが、その発見を報告する前に巨人に八つ裂きにされてしまうのがオチだ。山登りをしていて行方不明になったマグルってのは高確率で巨人やその他の魔法生物の餌食になっていたりするものさ」
「なるほど。それは危険な存在だな。だが、ハグリッドは知性もあるし、彼本人は危険じゃないぞ?本当に巨人の血が入っているのか?」
「それは間違いない。フリドウルファという英国最後の巨人と言われている巨人の息子であるという戸籍情報があるからな。ハグリッドは巨人の血が混じっている」
セオドールは水中銃を武器庫にしまいながら話す。
「巨人は危険。その事は分かった。なら、ハグリッドは自分に巨人の血が混じっていることを隠す筈だろ?なんで、ゴシップ記事の記者にそんなことを話すんだ?」
「僕が解せないのはそこだ。ハグリッドは過去に冤罪で捕まったり、ホグワーツを退校させられたり、まあ色々と世間から白い目で見られてきた。故に、ゴシップ記事ばかり書く記者に弱みを見せることなんて無いと思うんだがな」
言われてみればごもっともな指摘である。
エスペランサは武器庫の横に置かれていた空のジェリ缶の上に座った。
「じゃあどうやってあのリータ・スキータっていう記者はハグリッドの秘密を知ったんだ?」
「さあな。ゴシップ記者にしては情報収集能力が高過ぎる。リータ・スキータって記者には注意を払った方が良いかもしれないな」
セオドールは独り言のように呟いた。
数日後。
久々にホグズミート村への外出が許可された。
エスペランサはセオドールとフローラと一緒に村に遊びに来ている。
エスペランサたちは三本の箒という店に入り、それぞれ飲み物を注文した。
セオドールとフローラはバタービールを注文したが、エスペランサだけはモヒートを注文する。
バタービールは甘ったる過ぎて飲んでいる途中で飽きてしまうというのがエスペランサの持論だ。
「エスペランサ。あれ、見てみろ」
カウンター席に座った後、セオドールが店の中心を指差す。
見ればカメラマンを従えた女がホグワーツの生徒に絡んでいる。
黒縁のメガネをした高飛車なその女が絡んでいる生徒はハリーに違いなかった。
横にはハーマイオニーとロンも居るが、どうもハーマイオニーが憤っている。
「あれ、リータ・スキータだぜ?」
いつの間にかエスペランサたちの近くに寄ってきていたザビニが小声で言う。
ザビニの他にもアンソニーやマイケルが近くのカウンターに座っていた。
どうもセンチュリオンの仲の良いグループが遊びに来ていたらしい。
「あれがリータ・スキータですか。いかにもゴシップ記者ってかんじですね」
「どうするんだ?エスペランサ。お前の仲間が絡まれてるぞ」
フローラとセオドールが言う。
「どうせまたハリーにインタビューしようとしてるんだろ?助け舟を出す必要は無い」
「けど、何か喧騒になってないか?」
見たところ、ハリーではなくハーマイオニーが席から立ち上がってリータ・スキータに食ってかかっている。
「あなたって最低な女よ!一体、ハグリッドがあなたに何をしたっていうの!?」
「わかったようなことを言うじゃないのさ馬鹿な小娘のクセして。読者には真実を知る権利があるんだ。あたしゃあんたよりも色んなことを知ってるんだ」
「何が読者には知る権利がある、よ!あなたのせいでハグリッドがどれだけ傷ついたかわかる?」
「ねえ、あんた。舐めた口ばかり利いているけどね。あたしにかかればあんたを陥れることなんて簡単なんだ。少しはわきまえた方が良いと思うけどね」
「何ですって!?」
「抑えろハーマイオニー。認めたくはないが、ジャーナリストの発言力は強力だ。特に魔法界のような閉鎖された世界では」
エスペランサはリータに殴りかかるようにして身体を乗り出すハーマイオニーを急いで静止させた。
肩を掴まれたハーマイオニーはエスペランサのことも睨みつける。
いつもの冷静さはどこへやら。
「エスペランサ!いつの間に?」
「ついさっき店に入って来た。ハーマイオニー。とりあえず落ち着け」
エスペランサはリータの言っていた「あんたを陥れることなんて簡単」という言葉の意味を理解していた。
この記者は文屋としての力を利用して一市民であるハーマイオニーを陥れるつもりなのだ。
ジャーナリストの力は強い。
エスペランサはそれを知っていた。
そして、彼はジャーナリストが苦手である。
ジャーナリズムの力が戦争に及ぼす影響は大きい。
ベトナム戦争が良い例だ。
軍隊とジャーナリストは相性が悪い。
無論、時にはジャーナリストの力を軍隊が借りることもあるが。
「ふーん。そちらの子は随分と聞き分けが良いざんすね」
「言っておくが、俺もジャーナリストは大嫌いだ。戦場に無防備なままノコノコと現れては、ジャーナリストという肩書をチラつかせて任務を阻害しやがる。そのくせ、敵に捕まれば助けを求めて来る。死ぬ覚悟をして真実を世界に知らせようとしているジャーナリストなんて一握りしかいない」
エスペランサは捲し立てた。
彼が会ったことのあるジャーナリストたちはいつも自分たちの都合の良い正義を振りかざして軍隊を否定してきた。
彼等のテントを誰が護衛していたかも知らずに。
彼等が誰のおかげで温かい飯を食べていたのかも知らずに。
だが、ジャーナリストの何人かは本物だった。
時には軍人よりも勇気があるジャーナリストもいた。
銃ではなくカメラを持っている他に、軍人との違いは然程無い本物のジャーナリストたちだ。
だが、少なくとも今、目の前にいるこの女は違う。
「知ったような口を利くじゃないのさ。あんたみたいな小僧にジャーナリズムの何がわかるってのさ?ん?」
「そうだな。アホな読者を印象操作とプロパガンダでマインドコントロールして端金をもらっているってのがあんたらのジャーナリズムってところか?」
エスペランサの煽りに顔を赤くしたリータは自動速記羽ペンを手にして立ち上がる。
「偉そうな口を利いてられるのも今のうちだよ。あたしゃあんたの秘密も知ってるんだ」
「へえ。そりゃ俺も有名人になったもんだ」
彼は鼻で笑った。
エスペランサはマグルの軍隊出身で魔法界との縁は薄い。
バラされて困るような秘密は無い。
「あんたが組織している怪しげな集まり。何をしようとしているかはわからないけど、公に出来るようなものじゃないざんすよね?」
「あ?」
「名前はセンチュリオンとか………」
エスペランサはあからさまに動揺した。
何故だ。
何故この女はセンチュリオンの存在を知っている?
「どうしたの?エスペランサ?」
怪訝そうな顔をしてロンが訊ねる。
「いや、何でもない。ロン、他の二人を連れて先に店を出ていってくれないか?」
「え、でも?」
「頼む。俺はこの女と話がある」
「良いから。ハーマイオニーとハリーもだ。ここは俺に任せてくれ」
ハリーたちは釈然としないようであったが、エスペランサのただならぬ様子を見て渋々、店の外に出て行く。
「面白い話だな」
気がつけばリータの横にザビニとセオドールが立っていた。
その後ろにフローラやアンソニー、マイケルたちの姿もある。
「リータさん。すまないが、少しお時間を取らせて貰っても構わないだろうか?」
セオドールが丁寧な口調で言う。
「あんたは?」
「セオドール・ノットです。こっちはフローラ・カロー」
「ノットにカロー………。へえ。名家の子供達が連れ立って何をしようとしているのか興味がありますわ」
「ははは。そうですか。では僕たちはあなたに我々が何をしようとしているかを特別に教えます。無論、記事にしても良いです」
「おい!セオドール!お前、何を?」
「エスペランサ。ここは僕に任せてくれ」
セオドールはエスペランサを抑えて、リータとの話を進める。
「リータさん。どうせあなたは我々のことを記事にするつもりでしょう?ならば、我々の組織、つまり、センチュリオンについて洗いざらい話しましょう。その代わり、少しばかりギャラを貰いますが」
「ええ。良いざんす。では、さっそく………」
「ここでは人が多いです。場所を移させて下さい」
「わかりましたわ。では、ホッグスヘッドに場所を移動しましょう」
ドスッ
鈍い音がするとともに、リータの連れであったカメラマンが雪に覆われた地面に倒れ込む。
ザビニが隠し持っていた拳銃の握把でカメラマンの男の後頭部を思い切り殴ったためだ。
「へ?」
リータは何が起きたかを理解していない。
カメラマンの頭から流れる血が雪を赤く染めて行く。
三本の箒から出て、ホッグスヘッドに向かう途中にある人気の無い路地で、ザビニは急にカメラマンの男を襲ったのだ。
それと同時にセオドールはローブから杖を引き抜き、リータに向ける。
「ど、どういうことざんす!」
「悪いな。スリザリンのモットーは目的の為には手段を選ばない、だ。ステューピファイ・麻痺せよ」
セオドールの持つ杖から赤い閃光が飛び出し、リータに直撃する。
リータはカメラマンの男の上に被さるようにして倒れた。
「セオドール。どういうことだ?」
エスペランサは困惑していた。
「エスペランサ。この女は我々センチュリオンにとって脅威になり得る。日刊預言者新聞は英国魔法界の中でも最も購読者の多い新聞だ。その新聞の記者にセンチュリオンのことがバレている以上、対策を講じなくてはならない」
「ああ。そうだな。だが、どうやって口止めする?」
「エスペランサ。マグルの世界ではこういった場合、どう口封じをしているんだ?」
「賄賂を渡す、拷問する、あとは………殺害」
「うん。そこは魔法界と変わらないな」
「セオドール。確かにこのリータって記者は口封じする必要があるが、それでも、拷問や殺害の対象にはならない。善良とは言わないまでも、一般市民だ。彼女に対する暴力行為はセンチュリオンの信念に反する」
「ああ。それは分かっている。だから、スリザリン的な方法で口封じさせてもらう」
「スリザリン的方法?」
「うん。そうだ。とりあえずこの二人をそこの倉庫に入れてくれ」
セオドールは使われていない倉庫のような建物を指差す。
エスペランサをはじめとしたセンチュリオンの隊員たちは気絶したリータとカメラマンを倉庫の中へ運んだ。
「う………ううん?」
気絶していたリータが目を覚ます。
何年も使われていないような倉庫の中だろうか。
空の木箱が散乱し、使われなくなった古い椅子や机が乱雑に置かれている。
あちらこちらに蜘蛛の巣が張り巡らされ、照明が無いために薄暗い。
そんな倉庫の中心でリータは椅子に縛られ、座らされていた。
「この縄は何!?あんたたち一体、あたしに何を?」
縛られたリータの周りには6人のホグワーツの生徒が立っている。
「悪いな。少々手荒な方法だが、我々センチュリオンの存在はまだ公にすることはできない。あんたには我々の存在を記事にする等して、公表しないと誓ってもらわないといけないんだ」
セオドールが言う。
「はん。そんな脅しがあたしに通用するとでも?こんなことして、あんたらタダじゃすまないよ?」
「そうか。あんたがどこでセンチュリオンの話を聞いたのかは知らない。が、少なくとも我々の組織に属する隊員から情報が漏れることは無かった筈だ。隊長。隊長が決めてくれ。我々の秘密を知った人間をどうするか」
セオドールは笑っていない。
「ガキ6人に何が出来るのさ?しかも、ホグズミードで。あんたらが私に魔法を使えば、すぐにそのことを記事にしてやるよ」
エスペランサは腰から拳銃を取り出した。
センチュリオンの秘密が世間に出るのはよろしくない。
少なくとも現段階では。
「何だい?それは」
エスペランサは拳銃の安全装置を解除して、スライドを引いた。
初弾が薬室内に送り込まれる。
そして、銃口をリータの足元に向け、引き金を引いた。
ズドン
「ヒッ」
発射された9ミリの弾丸はリータの足元に命中し、木の床に穴を開ける。
「これはマグルの武器だ。見てわかる通り、この武器から発射された弾丸は簡単にあんたの身体を貫くことができる。死の呪文よりも簡単に人が殺せるってわけだ」
セオドールは淡々と説明した。
エスペランサはリータの額に銃口をつきつける。
「あ、あんたら………正気じゃないよ」
「今、ここで選べ。我々に殺されるか、それもと、金輪際、我々を詮索しないと誓うか」
リータはそこで、セオドールの足元にカメラマンの男が倒れているのを目にした。
死んでいるのかは分からないが、頭から血を流している。
もしかして、彼は既に撃ち抜かれたのではないか。
そう思った瞬間に恐怖が彼女を襲った。
「ち…誓う。誓うからそれを向けないで………」
リータはガタガタ震えながら言う。
「よし。それで良い。では、破れぬ誓いをしてもらおうか」
「や、破れぬ誓い!?」
「ああ。我々があんたを解放した後、あんたが魔法省に密告するかも知れないからな。保険さ」
そう言いながらセオドールはリータの手を無理矢理握った。
その間、エスペランサは銃口を彼女に向けたままである。
フローラが杖を取り出して、セオドールとリータの握られた手に杖を当てた。
破れぬ誓いは、互いに手を握り合い、そこに第三者が杖をあてることで、成立する魔法契約である。
契約を破れば死ぬ。
魔法界では最も強制力のある契約方法だ。
「リータ・スキータは本日、この場で起きた一切の事象に関して、口外しないと誓うか?」
「ち、誓います」
握られた手と手の間に無数の赤い線が繋がる。
まるで、二人の血管が浮き出て、繋がるようだ、とエスペランサは思った。
「リータ・スキータは我々、センチュリオンに関する全ての情報を紙面、口頭、筆談、その他全ての手段をもってして第三者に伝えないことを誓うか?」
「………」
「誓うか?」
「誓い………ます」
「よし。契約成功だ」
セオドールはリータから手を離した。
「これで破れぬ誓いは成立したのか?」
エスペランサがセオドールに質問する。
「ああ。そうだ。魔法界でこれ以上に拘束力のある契約は存在しない」
「破るとどうなる?」
「死ぬ」
「そう………か」
至極あっさりとした解答にエスペランサは少し戸惑っていた。
「だが、これで我々の情報は外に漏れない。あとは、そこに倒れているカメラマンにも同様の誓いをさせれば万事OKだ」
セオドールはそう言いつつ、フローラに目配せをした。
フローラは持っていた杖をリータに向ける。
「な、何を?」
「保険さ。フローラ。やってくれ」
「はい。オブリビエイト・忘れよ」
忘却の呪文が唱えられ、リータから本日起きた出来事に関する記憶が全て奪われる。
「本来なら忘却の呪文だけでも良かったんですが、私の忘却術は未熟なので、ふとした瞬間に彼女の記憶が戻ってしまう可能性もありました。なので」
「破れぬ誓いを行った訳か」
「そういうことです」
他の隊員が記憶を失い、ボーッとしているリータに再び、失神呪文をかけて眠らせている。
これでセンチュリオンの存在は公にされない。
エスペランサは安心するとともに、しかし、若干の罪悪感に駆られていた。
なかなか話が進まないです。
次回は第2の課題になります。
ハリーポッターの2次創作なのにハリーが全然出てこないという。