ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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感想などありがとうございます!

呪いの子の要素があります。


case61 Raid of the Cursed Child 〜未来からの使者〜

クィデッチ競技場は巨大な迷路と化していた。

 

6メートル程の高さの生垣が周りをぐるりと囲んでいる。

通路は幅が3メートルほどあるが非常に薄暗い。

 

競技中は教師が迷路の周りを巡回し、もし、選手が危険を感じたならば杖を使って上空に信号を上げる手筈となっていた。

つまり、審査員やスタッフは選手たちをリアルタイムで監視しないということである。

お粗末な安全対策だ。

 

とは言え、ドラゴンと対峙するよりは迷路を突破する方が遥かに楽ではある。

狭い迷路の中に潜ませることの出来る魔法生物はたかが知れている。

魔法生物を投入したのはハグリッドであるため、ある程度、予想することも可能だった。

 

エスペランサはアクロマンチュラやトロールとの戦闘で、5.56ミリ弾があまり効果が無かったという経験を参考にして、セドリックに武器を渡した。

 

まず、7.62ミリの弾丸を使用するG3A3。

エスペランサが1学年の時に使用していたバトルライフルだ。

次にショットガン。

こちらはレミントンM870である。

サブウエポンとしての使用のため、負い紐を利用して背中に吊るしていた。

 

セドリックは他の選手と違って、ローブではなく、米軍のレンジャーが使用する戦闘服を着ている。

鉄帽には暗視ゴーグルとヘッドライトがつけられ、通信用ヘッドセットもついている。

通信機はエスペランサの持つ携帯無線機と繋がっていた。

 

サスペンダーには手榴弾とスタングレネード、発煙筒や信号拳銃が取り付けられ、ショットガンの弾薬も12発つけられていた。

腰の弾帯には弾納が合計で4つつけられていて、小銃用の弾倉が入っている。

この他にサバイバルナイフを彼は所持していた。

 

 

両親との面会を終えたセドリックは選手の待機用テントの前にいた。

テントの前にチョウが待っていたので少し話をしていたのである。

 

セドリックとチョウの関係が恋愛関係であるかと言われれば、実のところ否であった。

確かに、互いに好意を持っていたし、それ故にダンスパーティーもパートナーになっている。

同じセンチュリオンの遊撃隊員として死線を潜り抜けてくる間にお互いに惹かれあっていたのだ。

しかし、正式に交際はしていなかった。

 

それは、単純にセドリックが交際を申し込んでいなかったためである。

彼は3校対抗試合で優勝した暁に交際を申し出ようとしていた。

3校対抗試合で優勝することが出来る程の強さを得ていなければ、センチュリオンの任務遂行とチョウとの交際を両立することが出来ないだろうと踏んでいた為である。

 

 

「いよいよ最終課題だね」

 

「ああ。だけど、今回の課題が一番、自信があるんだ」

 

観客席には既にほとんどの生徒が着席し、待機用テントまで熱狂が伝わってくる。

もうじき、最後の戦いが始まる。

そして、戦いの前にチョウと話すこの時間がセドリックにとって何よりも緊張を解す機会となっていた。

 

「自信満々なのは良いけど、足元掬われないようにね。ほら、油断大敵って。誰かさんも言ってたから」

 

「ムーディ先生か。もしくはセオドールだな」

 

「あー。あの二人って結構似てるよね。常に最悪の状況を想定しているところとか」

 

「そうだな。セオドールもそうだが、スリザリンの生徒とここまで距離を縮められたのに僕自身驚いている」

 

センチュリオンに入らなければセオドールと共に過ごすことは無かっただろう。

彼だけでは無い。

スリザリンの生徒は他寮の生徒から避けられがちだ。

だが、セオドールもフローラもグリーングラス姉妹もザビニも、同じ釜の飯を食う仲間となっていた。

 

「私も。フローラとか怖くて近寄れなかったし。でも、一緒に話すようになって印象が変わったかな」

 

「それは僕もさ。そろそろ時間だ。行かないと」

 

 

セドリックは名残惜しそうにチョウを見る。

それは彼女も同じだろう。

 

 

「なあ。この試合で僕が優勝したら・・・」

 

「優勝したら?」

 

「正式に交際してくれないか?」

 

 

セドリックは思い切って言った。

 

「ええ。そうね。じゃあ絶対に優勝してくれないと」

 

チョウは顔を赤くする。

 

「ああ。約束する。優勝杯を持って帰ってくるよ」

 

エスペランサはセンチュリオンの旗のために優勝せよ、と言っていた。

彼が今のセドリックの台詞を聞いたら渋い顔をするに違いない。

 

だが、彼は思う。

 

(偶にはこういうロマンチックなイベントがあっても良いじゃないか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱狂の渦の中にエスペランサたちセンチュリオンの隊員は居た。

双眼鏡を覗くセオドールや、無線機の調整を行うフナサカをはじめとして17名の隊員がスタンドの南側中央に陣取っている。

チョウはセドリックに激励に行っていた。

 

「暫定1位のクラムが最初にスタートし、2位のポッターとセドリックが10分後にスタートか。なるほど。第一と第二の課題の成績が良い程有利になるってわけか」

 

セオドールが双眼鏡で迷路を覗きながら言う。

迷路の生垣は6メートルを越えているので、中の様子はわからない。

 

「クラムが有利とは言え、セドリックなら10分程度のハンデをすぐに覆すだろう。その為の装備は渡してある」

 

エスペランサが言う。

 

「だと良いんだが。何だろう。何か嫌な予感がするんだ」

 

「嫌な予感?根拠は?」

 

「無いさ。勘だよ」

 

「セオドールにしては曖昧な物言いだな」

 

「そうだな。強いて言うなら、ポッターが4人目の選手として選ばれたことに関係する。ポッターの名前をゴブレットに入れた犯人は、ポッターを3校対抗試合に出さなくてはならない何らかの理由があったから、行動をした」

 

「そうだな。違いない」

 

「だが、今のところ第一の課題でも第二の課題でも変な事は起きていない。課題は平和とは言えないものの、まあ、普通に終わっている」

 

「と言うことは、第三の課題で犯人は何かしらの行動を起こす、と?」

 

「あくまでも、その可能性があるってだけだ。だが、生垣に囲まれているとは言え、全校生徒と職員の目の前の迷路で犯人が堂々と行動を起こすとは思えん。そもそも、犯人が何を動機にポッターを代表選手にしたかすら分からないんだ」

 

セオドールはそう言いながら、生垣の周りを警戒する職員たちを観察した。

 

マクゴナガル、スネイプ、フリットウィック、スプラウト、ムーディ。

他にもトレローニーやシニストラといった教師たちも総出で警戒をしている。

特にムーディは魔法の目によって迷路内を透視出来るため、異変があれば直ちに対応出来るだろう。

 

「何事も無く終わってくれれば良いんだけどな」

 

エスペランサは迷路の入り口に出てきたセドリックたち選手を見ながら呟く。

毎年毎年、ホグワーツでは事件が起きてきた。

 

賢者の石の防衛に秘密の部屋の解放、そしてアズガバンから来た囚人。

今年度はこのまま誰も傷つかずに終わってくれれば良い。

 

セドリックが優勝杯を手にして戻って来て。

そして、センチュリオンの隊員たちが歓声を上げながら祝福する。

そんな未来を想像して、エスペランサはフッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セドリックはクラムが迷路に入ってから10分後にハリーと共に迷路の中に足を踏み入れた。

 

入り口に入ると、観客席の声は一切聞こえなくなる。

ハリーとは入り口で別れ、セドリックは一人で進むことにした。

 

優勝杯の置かれる場所は、単純に考えれば迷路の最深部、つまり、入り口から北上し続ければ辿り着ける場所ということになる。

ならば、話は簡単だ。

入り口から入ってずっと北上すれば良いのだから。

 

セドリックは方位磁石を取り出し北を確認する。

 

北上して行くと、行き止まりの生垣に当たってしまった。

だが、彼は動じない。

 

「コンフリンゴ・爆破せよ」

 

 

まずは爆破の呪文を試す。

しかし、生垣は吹き飛ぶどころか傷一つつかなかった。

 

そこで、セドリックは手榴弾を投擲する。

 

速やかにその場を離れて近くの生垣の影に隠れる。

ズドンという音と共に生垣が少しだけ吹き飛んだ。

 

「駄目か。流石に対策はされてるよな」

 

勿論、想定済みのことである。

セドリックはこれまでの課題で魔法界には存在しない小火器、重火器、野戦砲の類を使用してきた。

審査員側が対策をしない筈がない。

 

仕方無しにセドリックは別のルートを模索し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まりましたね」

 

迷路の中から爆発音が聞こえ、それに反応したフローラがエスペランサに話しかけてきた。

 

「ああ。今の音は破片手榴弾だろう」

 

見れば迷路の入り口付近で黒煙が上がっている。

セドリックが生垣を破壊しようとしたか、あるいは迷路内に存在する魔法生物に攻撃したかどちらかだろう。

 

「迷路内の魔法生物ってどんな奴がいるんだろう?」

 

エスペランサの真後ろに座っていたネビルが不安そうに言う。

 

「そうだな。魔法生物はハグリッドが指揮を執って用意したらしい。となると、尻尾爆発スクリュートとかかな?」

 

「ヒッポグリフかもしれないぜ?」

 

魔法生物飼育学を履修していた隊員たちが口々に魔法生物の名前を出す。

 

「ハグリッドかぁ。ハグリッドは嫌いじゃないけど、私は前任のケトルバーン先生の方が好きだったな」

 

センチュリオンの中では唯一、ハグリッドが就任する前の魔法生物飼育学を経験しているチョウが言う。

セドリックを激励した後、彼女はすぐにスタンドに戻ってきた。

 

「ケトルバーン先生?」

 

「ええ。ホグワーツ在任中に62回も停職を受けた伝説の先生よ」

 

「62回?ハグリッドよりもクレイジーな教師じゃないか」

 

「有名な出来事で言うと、ホグワーツで『豊かな幸運の湖』っていうお芝居をした時に、アッシュワインダーっていう生き物を肥大化させて、劇中で爆発させてしまったことがあったそうよ」

 

エスペランサにはアッシュワインダーという生物も豊かな幸運の湖という御伽話もピンと来ない。

だが、他の隊員がケラケラ笑っていることから有名な話なのだろうと思った。

 

「で?ケトルバーン先生は退職してからどうしたんだ?」

 

「先生ならホグズミードに住んでるわよ。腕一本と足の4分の3が失われちゃってるから遠くには行けなかったみたい」

 

「ああ。それなら聞いたことがあるぞ。ダンブルドアが退職祝いに義手と義足をプレゼントしたけど、ドラゴンを観に行ったらドラゴンに炎を吐かれて両方とも灰になったらしいじゃないか」

 

コーマックが思い出したように言った。

 

「危険さで言えばハグリッドよりも酷かったのに妙に人望があったのよね」

 

「へえ。そういや昔、フレッドがケトルバーン先生はイカしてるって言ってた気がする」

 

 

センチュリオンの面々は特にする事もなく、セドリックから無線で何か報告が来るわけでもないため、この様に駄弁っていた。

 

時折、迷路の方から射撃音が聞こえてきたが、その音が次第に迷路の奥から聞こえてくるようになっていることに皆、安堵もしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だこいつ!尻尾爆発スクリュートか?」

 

セドリックがはじめて対峙した魔法生物は尻尾爆発スクリュートというハグリッドの作り出した生物である。

 

その名の通り尻尾が爆発するのだが、それはサラマンダーとの交配種であるからだ。

クトゥルフ神話に出てきそうな見た目であるが、その体長は3メートルを越えている。

 

セドリックはG3A3による攻撃を諦め、レミントン製のショットガンを構えた。

 

「魔法生物飼育学を履修してて良かったと思う日が来るとは」

 

尻尾爆発スクリュートの弱点は装甲の無い腹である。

迷わず引き金を引き、散弾をスクリュートの腹部に命中させる。

 

ズドン

 

 

ギャァア

 

 

腹からドス黒い血が吹き出しながらスクリュートは悶え苦しむ。

 

そして、次の瞬間。

 

 

 

ボオオオン

 

 

スクリュートは爆発した。

 

爆風に吹き飛ばされたセドリックは生垣に背骨を打ちつける。

 

 

「ぐあっ」

 

咄嗟に立ち上がり、身体の異常を確認する。

背骨はまだ痛むが、折れている気配は無い。

 

爆発しても尚、ヨロヨロと動き続けるスクリュートに彼は再び銃口を向けた。

そして、引き金を引く。

 

2回目の散弾の直撃でスクリュートは遂に絶命した。

生物の焼ける不快な臭いに顔をしかめつつ、セドリックは投げ捨てていたG3A3を拾い上げ、北に前進を開始する。

 

迷路に入ってから10分近くが経過していた。

スクリュートとの戦闘は大したロスにはなっていない。

 

 

「きゃあああ!」

 

 

セドリックが北に向けて前進を開始した始めた時、近くから悲鳴が聞こえた。

女性の悲鳴だ。

だとすれば、フラーだろうか?

 

彼は北に前進することを一時中断して、悲鳴の聞こえた方向へ走る。

第二の課題の時もそうだったが、魔法省の安全対策は不完全だ。

フラーの命が危なくなる可能性もある。

 

銃を構えながら生垣の曲がり角を曲がったセドリックは、フラーでは無く奇妙な光景を目にした。

 

二人の見知らぬ男子生徒が、これまた見知らぬ女子生徒に襲われている。

男子生徒達は縄で縛られていて、女子生徒がその二人に杖を向けていた。

 

何故ここに一般の生徒が居るのか謎だったが、女子生徒から危険な雰囲気を察知する。

彼女は悪だ。

確信したセドリックは銃口を女子生徒に向けた。

 

「こんなことをしている暇は無い。クルーシ・・・」

 

女子生徒は男子生徒たちに磔の呪文を行使しようとしている。

 

「杖を下ろせ!」

 

セドリックが叫ぶ。

女子生徒は彼の声によって動きを止めた。

 

突然現れた救世主に男子生徒たちは安堵した様でもあるし、また、何か驚いている様でもあった。

 

「貴様は、セドリック・ディゴリーか」

 

「そうだ。君は誰だ?見たことのない生徒だが」

 

セドリックは女子生徒の冷たい声に多少ゾッとする。

 

「ふん。なるほど。その武器と言い、"あのルックウッド"はこの時代から組織を作っていたのか」

 

「何を言っているんだ?お前はエスペランサを知っているのか?」

 

「知っているとも!」

 

刹那、女子生徒は男子生徒たちに向けていた杖をセドリックの方へ向け直す。

無言で放たれた何らかの呪いが彼を襲うが、ギリギリのところで回避。

回避した弾みで地面に倒れるセドリックであったが、すかさず反撃の為の射撃を行った。

 

 

タタタタン

 

 

4発の弾丸は全て女子生徒に向かっていく。

 

女子生徒は盾の呪文を展開して、7.62ミリNATO弾の命中を防いだ。

見事な杖捌きであるが、そこに隙が生まれる。

 

セドリックは女子生徒の真横まで駆け寄り、銃本体を高く掲げた。

そして、思い切り床尾で彼女の後頭部を殴りつける。

 

ガゴッ

 

鈍い音と共に女子生徒は倒れて気絶した。

 

勝因は彼女がセドリックを侮っていた事に加えて、銃がどの様な武器であるかということと、それ自体の重さが4キロを超えることを知らなかった為だ。

加えて、接近戦を仕掛ける魔法使いが居るとは思わなかったのだろう。

恐らくセドリックより遥かに手練れの女子生徒はこうして倒された。

 

「接近戦を想定して、銃に軽量化の魔法をかけないでいて良かった」

 

女子生徒が死んでいないことを確かめながらセドリックは言う。

 

「で、君たちは誰なんだ?これも課題の一部なのか?」

 

縛られたままの二人の男子生徒に彼は問いかけた。

セドリックは男子生徒たちに見覚えが無かったが、しかし、どうも何処かで見た覚えのある顔だと思った。

 

一人はドラコ・マルフォイを優しくした様な少年であり、もう一人はハリー・ポッターに似ている。

 

「そ、そうです。僕たちを助けるのが課題なんです」

 

「そうか。わかった。エマンシパレ・解け」

 

セドリックの魔法によって縄から解放された生徒が地面に転がる。

変な課題だ、と彼は思った。

 

「課題はこれで終わりかい?」

 

「ええ。そうです。迷路を進んで下さい」

 

男子生徒たちをその場に残してセドリックは先に進もうとする。

 

「セドリック!」

 

「???」

 

「あー。あなたの父親は、あなたのことを愛しています。とっても」

 

「えーと?あー。そうか。ありがとう?」

 

男子生徒の一人がセドリックに言う。

が、その言葉の意味を彼は理解出来なかった。

本当に奇妙な課題だ。

 

セドリックは再び、北に向かって歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マネ妖怪のボガートやグリンデローといった魔法生物を排除しつつ、セドリックは迷路の奥へと進んで行った。

 

結局、フラーの姿は見つけていない。

しかし、緊急用の赤い閃光が上空に上がったのを視認したので、心配する必要は無さそうだった。

 

途中、1回だけハリーと遭遇したが、それ以降は誰とも遭遇していない。

 

「案外、楽な課題だ」

 

セドリックは残弾数を数えながら、軽く休憩をする。

スクリュートやグリンデローに対してショットガンを使用したので、散弾の残りは6発。

G3A3は予備弾倉を含めて60発。

手榴弾とスタングレネード等はほぼ無傷で残っている。

 

とは言え、迷路の最深部にはより手強い生物が配置されているに違いない。

弾薬の消耗は避けるべきであろう。

 

ふと顔を上げると、迷路の奥から何者かが近づいてくるのが見えた。

 

慌てて小銃を構え直したセドリックは、近づいて来たのがクラムであることを確認すると、安堵して銃を下げる。

 

「誰かと思ったか。クラムか。危うく攻撃するところだったよ」

 

笑顔で話しかけながら、彼は疑問に思う。

何故、クラムはゴールに近い迷路の最深部の方角からわざわざ入り口方面のセドリックへ近づいてきたのだろう、と。

 

「………………」

 

「クラム?」

 

クラムの目の焦点が合っていない。

正気を失っている。

 

セドリックは身の危険を感じて、銃を構え直した。

 

「うおおおおおお!」

 

雄叫びを上げ、まるで野生生物のようにクラムが襲いかかってくる。

間違いない。

これは錯乱の呪文をかけられている。

 

セドリックは襲いかかってきたクラムの腕を小銃で叩く。

堪らずよろめいたクラムの顔面に頭突きを喰らわして怯ませた。

 

鼻から血を吹き出すクラムにセドリックは杖を向ける。

 

「ステューピファイ・麻痺せよ」

 

赤い閃光がクラムに直撃し、彼は気絶した。

 

低身長であるが体格の良いクラム。

しかし、徒手格闘訓練を積んだセドリックの敵では無かった。

元来のフィジカルの良さ故に、徒手格闘ではエスペランサに匹敵する強さを持つセドリックに分があったのである。

 

「どうなってるんだ?これも課題の一部なのか?でも、この症状は明らかに錯乱の呪文にかかっているとしか思えない………」

 

やはり何かおかしい。

この課題の裏では何者かが工作をしているとしか思えない。

 

 

「セドリック!大丈夫?」

 

異変に気づいてハリーが駆けつけて来る。

セドリックとハリーが迷路内で会うのはこれが3回目である。

相当な頻度だろう。

 

「ああ。問題ない。クラムが突然襲いかかって来たんだ」

 

「そんな。クラムはそんなことをする人じゃないよ」

 

「僕もそう思う。恐らくは錯乱の呪文をかけられていたんだろう」

 

「誰がそんなことを………。そう言えば、さっき、倒れていたフラーを見つけたんだ。もしかしたら、錯乱の呪文をかけられたクラムが彼女を襲ったのかもしれない」

 

「フラーが襲われたのか!」

 

クラムもフラーもリタイアした。

残されたのはセドリックとハリーだけ。

普通ならライバルが減り喜ぶところだが、セドリックは素直に喜べない。

 

明らかに異常事態だ。

 

彼は携帯無線機と繋がっているヘッドセットのインカムを口に当てる。

観客席で待機するエスペランサに異常を知らせるためだ。

 

「HQ。こちら01セド。感度どうか?」

 

『感度良好』

 

「こちらも良好。エスペランサ、聞いてくれ」

 

『どうした?』

 

ヘッドセット越しにエスペランサの声が伝わってくる。

 

「異常事態だ。フラーがリタイアしたのは知っているか?」

 

『ああ。確認済みだ。10分前に搬送されたのを観客席から視認した』

 

「今度はクラムがリタイアする。クラムは恐らく錯乱の呪文にかけられていて、フラーを襲った模様。現在は僕が無力化しているけど、この課題は不自然なことが多過ぎる」

 

『状況は把握した。センチュリオンの隊員から何名か迷路の外枠に人員を出して調査にあたらせる。セドリックに関しては周囲の警戒を厳となして引き続き任務の続行を行え』

 

「了解した」

 

送話を終えたセドリックは上空に杖を使い、赤い閃光を打ち上げる。

 

「ハリー。この課題は危険だ。君も十分に注意するんだ」

 

「うん。君もね」

 

そう言って二人はまた別の道を進んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セドリックからの報告を受けたエスペランサは速やかに斥候部隊を編成した。

センチュリオンには2つの分隊が存在しているが、それをさらに細かく分けて4つの班を作る。

 

本部要員にフナサカやフローラ、そしてセオドールを残し、4つの班に分かれた14名の隊員に武装させたエスペランサは任務を命じた。

 

「セドリックからの報告によれば、迷路内で選手が外部から妨害を受けていると思われる。従って、4つの斥候班は迷路外縁に前進して迷路外から妨害を行う工作員の有無を調べよ。もし仮に敵勢力を確認した場合、先制攻撃を許可する。ただし、ホグワーツ生徒並びに職員等に我々の存在を明かすのは控えること」

 

迷路の外縁は複数人の教職員が歩きながら監視を行なっているが、迷路自体が巨大なために全域をカバー出来てはいない。

監視役の教師の目を欺いて行動するのは難しく無いし、加えて、センチュリオンの隊員たちは苦労の末に目眩しの魔法が使えるようになっていた。

 

目眩しの呪文は透明マントに使われる魔法でもあり、一定時間、使用者の姿を他の人間に見られないようにする言わば透明化の魔法である。

 

これを使用すれば一般生徒や職員に見つからずに行動が出来る。

例外は魔法の目を持つムーディくらいなものだろう。

 

「班長はコーマック、ザビニ、チョウ、ネビルが担当しろ。以上」

 

エスペランサの号令で隊員たちは自らの身体に目眩しの呪文をかけ、迷路外縁へと走っていく。

 

命令に即応して瞬時に体勢を整える隊員たちを見て、センチュリオンも戦闘組織としての力が備わったことを実感する。

彼らの統率の取れた動きは軍隊そのものだ。

クラウゼヴィッツの時代から軍隊の形は変わらない。

文明が発達しても軍隊だけは、変わらない。

時代に取り残されている軍隊だけが、集団を個として考えることの出来る唯一の組織だろう、というのがエスペランサの持論だ。

 

 

 

残っているのはエスペランサ、セオドール、フローラ、フナサカの4名だ。

 

フナサカに通信全般を任せ、フローラには負傷者が出た時の準備をさせる。

いっぺんに14名の隊員が不在となり、閑散としたスタンドでエスペランサは考え込んだ。

 

錯乱の呪文。

 

セドリックが言うのだから確かなのだろう。

クラムは何者かによって錯乱の呪文をかけられた。

魔法界で魔法使いに錯乱の呪文をかけられる存在は限られている。

 

魔法使い、魔女、そして、屋敷しもべ妖精。

魔法を行使できる魔法生物は他にもゴブリンが居たが、魔法使いの開発した魔法を行使することが出来る訳では無い。

 

屋敷しもべ妖精が魔法使いに対して魔法を行使することは考え難い。

ならば、犯人は魔法使いか魔女になる。

 

早々にリタイアしたフラーを除けばハリーが犯人となるが、ハリーに限ってクラムに錯乱の呪文をかける真似はしないだろう。

 

となれば、外部から…………。

 

 

「クラムに錯乱の呪文をかけた犯人は恐らくクラムを使ってハリーを殺そうとした。普通ならそう考えるよな」

 

「いや、エスペランサ。それなら第二の課題の時にも同じ事が出来た筈だ。犯人の狙いは"ハリー以外の選手を脱落させる"ことだと思う」

 

セオドールが言う。

 

「そんなことをして何の得になるんだ?」

 

「仮に犯人の目的がハリーを優勝させるためだとすれば合点がいく」

 

「ハリーを優勝させるため?犯人はハリーの味方なのか?」

 

「僕が分からないのはそこなんだ。いいかい?まず、第一の課題も第二の課題も特に問題は起きなかった。ハリーを殺そうとするなら第一、第二の課題の最中でも可能だった筈だ。にも関わらず、犯人は特に動きを見せなかった」

 

「そうだな。そこまでは理解できる」

 

「しかし、第三の課題が始まった瞬間に犯人は行動を起こした。クラムに錯乱の呪文をかけ、フラーとセドリックを襲わせる。おかしいだろ。ハリーを殺そうとするなら、真っ先にクラムはハリーを襲う筈なんだ」

 

「だが、ハリーは無傷。クラムに襲われていない」

 

「だから、犯人は外部からハリーを支援していると考えられる。まあ、その動機は考えても分からないけど」

 

犯人は第三の課題で外部からハリーを助けている。

ハリーを助けるという意味であれば、第一の課題でも第二の課題でもハリーは助けを借りていた。

 

第一の課題ではハグリッドにドラゴンを見せてもらい、ハーマイオニーに呼び寄せ呪文を教えてもらっている。

第二の課題ではドビーという屋敷しもべ妖精らエラ昆布を入手した。

 

「いや、待てよ?」

 

何かが引っかかる。

 

そもそもハリーがハーマイオニーに呼び寄せ呪文を習った経緯は、あの男がハリーに「箒で飛ぶこと」を提案したからだ。

 

第二の課題の前。

ネビルは水生植物の本をあの男に貰っていた。

その本にエラ昆布の記述があったとしたら。

 

「いや、流石にそれは無い。あの男は歴戦の元闇払いだ。俺の考え過ぎだ」

 

エスペランサは首を振る。

 

しかし、魔法の目があれば迷路内も見透かせる。

クラムに錯乱の呪文をかけることも出来る。

 

「フナサカ。ネビルに無線を繋いでくれ」

 

「了解。ネビル、こちらHQ。隊長が呼んでいる。送れ」

 

『こちらネビル。どうぞ』

 

「ネビル。こちらエスペランサ。今から自分の班を連れてある男の監視に向かってくれ」

 

『了解。誰だい?』

 

「マッドアイ・ムーディだ」

 

『え?ムーディ先生?』

 

「そうだ。ムーディは魔法の目を持つから目眩しの呪文は効果が無い。従って行動を悟られないように距離を離して監視にあたれ」

 

『り、了解』

 

 

マッドアイ・ムーディ。

 

かつてエスペランサは賢者の石を狙う犯人がクィレルであると推理して、それを的中させた。

あの時はクィレルが犯人であるとの確証を得ていたが、今度は何の確証も無い。

ただ、現時点で迷路内の選手に魔法をかけることの出来る職員がムーディただ一人というのも事実。

 

「思い過ごしであってくれ。俺は、ムーディ先生を敵にしたくない」

 

エスペランサはそう願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「食らえっ」

 

ズドン

 

ズドンズドン

 

セドリックは立て続けにショットガンを発射する。

 

銃口から放たれた散弾は巨大な蜘蛛の胴体に命中するが、致命傷は与えられない。

かなりの硬さである。

 

優勝杯を目前にして、セドリックは4メートルはある巨大な蜘蛛と鉢合わせてしまった。

 

この蜘蛛が何という種類の蜘蛛なのかは不明だが、ショットガンの銃弾を弾き返す程の装甲を持つ為、アクロマンチュラよりも危険な生物であることは間違い無い。

 

長く鋭い爪を持つ足の一つが、ロングレンジから攻撃していたセドリックの身体を掠める。

 

「ぐっ」

 

戦闘服ごと皮膚を切り裂かれた彼は、すかさず後退した。

 

「レダクト!ステューピファイ!」

 

セドリックの反対側からはハリーがひたすらに呪文を唱えている。

ハリーとセドリックは優勝杯に繋がる最後の通路でばったりと出会した。

そして、その直後に巨大蜘蛛に襲われたのである。

 

蜘蛛の足がハリーを襲う。

その足に目掛けてセドリックは再び散弾を撃ち込んだ。

 

ズドンという音とともに蜘蛛の足が四散する。

蜘蛛の足は装甲が薄い様で、攻撃が通用した。

 

「くそっ。今のが最後の弾丸か!」

 

遂にショットガンの残弾が無くなる。

セドリックはショットガンを地面に投げ捨て、G3A3を構えた。

しかし、ショットガンよりも火力の乏しいバトルライフルでは巨大蜘蛛を相手に太刀打ちが出来ないだろう。

 

「セドリック!大丈夫!?」

 

「ああ。こっちは何とか。だが、この蜘蛛は銃弾も魔法も効かないみたいだ!」

 

三度目の蜘蛛の攻撃を地面に伏せる事で避けたセドリックであるが、彼の機動力よりも蜘蛛の機動力の方が勝る。

迷路の幅が狭い故に、蜘蛛は上手く動けないでいたが、それでも追い付かれるのは時間の問題だろう。

 

通路の先に優勝杯となっているトロフィーが見えるが、そこまでの距離は50メートル近くある。

優勝杯に辿り着く前に蜘蛛に追い付かれて終わりだ。

やはり、ここで倒さなくてはならない。

 

「しかし、どうやって倒すんだ」

 

立ち上がり、走り出しながらセドリックは考えを巡らせた。

 

きっとエスペランサなら類稀なる戦闘センスで蜘蛛を倒してしまうに違いない。

セオドールなら奇抜な戦略を考えて戦うだろう。

ネビルなら狙撃能力をフルに発揮させて戦うだろうし、他の隊員なら・・・。

 

 

ーー軍隊では一人が強いだけじゃ駄目なんだ

 

ーー個を重んじるんじゃ無い。我々は組織だ。我々の戦闘能力は集団の力なんだ

 

ーー古今東西。どこの軍隊も同じだ。優秀な兵士を作り上げるんじゃ無い。クズの居ない組織を作り上げようとしているんだ

 

 

ふと、エスペランサの言葉を思い出す。

 

自分の能力はマグルの軍隊の中でも並でしかない。

だが、軍隊の強さは個人の強さじゃない。

 

これは彼の口癖だ。

 

 

セドリックはエスペランサやセオドールたちの才能に嫉妬することも多かったが、エスペランサはそれを見透かした様にそう言ったものだ。

 

一人が抜きん出て強くても意味が無い。

 

「そうか。今になってようやく分かったよ。君が言いたいことが。僕は僕だけの強さを見つけようとしたが、君はそれを否定した。君は自分が強くなるのでは無く、センチュリオン自体を強くしたかったんだね」

 

エスペランサは自分だけの強さというものを持たない。

彼はマグルの武器も魔法も、他の魔法使いの戦い方も吸収して強くなった。

そして、その強さをセンチュリオンの隊員に平等に全て分け与えた。

自分だけの物にせずに。

 

ヴォルデモートもダンブルドアも、自分の戦闘センスを他者に与える事は無かった。

他の魔法戦士たちも、決闘の技術を大多数の人間に教える事は無かった。

それ故に魔法界は戦闘組織が育たない。

死喰い人という集団は統率力を持たない。

 

そんな世界にエスペランサは軍隊を組織したのだ。

 

 

セドリックは杖を取り出す。

 

エスペランサは魔法とマグルの武器をハイブリッドで使う戦闘方法を作り出した。

セオドールはその戦闘方法を活用した戦略を作り出した。

 

そして、彼らの作り上げた組織であるセンチュリオンに所属するセドリックは・・・。

 

 

「僕はセンチュリオンの遊撃隊長だ!センチュリオンの持ち得る技術、エスペランサたちの才能を取り入れ、そして活かすことが許された人間だ!」

 

 

まずはG3A3に素早く軽量化の呪文をかける。

これでG3A3を片手で軽々と持つことが可能になった。

 

軽くなった銃を右手で持ち、左手で杖を掲げる。

 

「ハリー!今から蜘蛛を倒す!危ないから僕の後ろに待避してくれ」

 

「でも蜘蛛に銃は効かないんじゃ?」

 

引き続き蜘蛛に失神光線を撃っていたハリーは驚いてセドリックの方を向く。

 

「任せろ!」

 

ハリーはダッシュしてセドリックの背後に滑り込む。

そのハリーを追って蜘蛛はセドリックたちの方向へ全力で突進してきた。

 

「エレクト・テーレム・リミットボム」

 

かつてエスペランサがスネイプと戦った際に使用した魔法をセドリックは唱える。

所持していた全ての手榴弾が彼の戦闘服から解き放たれて巨大蜘蛛に飛んで行った。

 

 

ボン  ボンボン

 

蜘蛛の周りで手榴弾が破裂する。

 

セドリックは盾の呪文を展開して手榴弾による破片を防いだ。

手榴弾の爆発は蜘蛛に致命傷を与えなかったが、それでも蜘蛛の足は止まる。

 

 

「これで止めだ!」

 

セドリックはG3A3の引き金を引いた。

そして、引き金を引くと同時に彼は「エンゴージオ・肥大せよ!」と肥大化の魔法を唱える。

 

連続発射音と共に放たれた無数の7.62ミリ弾の幾つかが肥大化の魔法によって巨大な弾丸になる。

 

戦艦大和の46センチ砲弾とほぼ同じ大きさになった7.62ミリ弾は、その初速を保ったまま巨大蜘蛛に命中した。

 

蜘蛛とセドリックの距離は10メートルも無かった。

その距離で46センチ砲弾が命中すれば、巨大蜘蛛はひとたまりも無い。

 

どす黒い液体を撒き散らして、巨大蜘蛛は木っ端微塵に吹き飛んでしまった。

 

 

「は、はは。やった。やってやったぜ」

 

セドリックは銃と杖を構えたまま乾いた笑い声を出す。

 

「まるでエスペランサみたいな戦い方だ」

 

ハリーはそう評価した。

 

「うん。僕はエスペランサの戦い方をずっと学んでいたからね。彼とは違う強さを模索するんじゃ無くて、彼の強さを飲み込めば良かったんだ。プライドなんて下らないものに縛られないで」

 

「えーと?どういうこと?」

 

「気にしないでくれ。それよりも優勝杯だ」

 

蜘蛛を倒した今、障害となる魔法生物は存在しない。

となれば、セドリックかハリーかどちらかが優勝杯を手にすることになる。

 

「ハリー。君が優勝杯を取るべきだ」

 

セドリックは思い切って言った。

 

「え?何故?君だって優勝杯は欲しいんだろう?」

 

「そりゃ欲しいさ。しかし、僕は第一の課題から今回まで様々な人に支援されて勝ち残った。第一の課題の時はハリーにドラゴンの事を教えてもらったし、エスペランサたちに支援射撃までしてもらっている。第二の課題にしたってそうだ」

 

未練が無いと言えば嘘になる。

隊員たちは残念がるだろうし、チョウとの約束も破綻する。

 

だが、セドリックはセンチュリオンの支援を受けて勝ち進んだ。

一方のハリーは迫撃砲の支援も無く、誘導弾も使わず、杖一本で勝ち進んだのだ。

 

彼を差し置いて優勝杯を手にするのは気が引けてしまう。

セドリックはどこまで行ってもフェアな精神を求めてしまうのだ。

 

「それを言ったら僕だって助けられた。ドラゴンはハグリッドに見せてもらったし、第二の課題のヒントは君に教えてもらった。エラ昆布だって他人から貰ったものだ。お互い様だよ。君が優勝杯を取るべきだ。蜘蛛を倒したのは君なんだから」

 

「駄目だ。やはり、ハリーを差し置いて優勝杯は取れない。ここで優勝杯を取っても、胸を張って皆の元に帰れない」

 

「それは僕もさ。じゃあこうしない?二人で同時に優勝杯を取るんだ」

 

「え?」

 

「それが一番フェアだろう?」

 

「そうだけども。ハリーはそれで良いのか?」

 

「勿論。二人揃って優勝するんだ。そうすればホグワーツの完璧な勝利だろ。誰も文句は言わない」

 

「ああ。それが一番平和的解決だろうね」

 

フッと笑いセドリックはハリーと共に優勝杯に近づいた。

 

「良いかい?3カウントで同時に優勝杯を手にするんだ」

 

「了解した」

 

「1、2、3!」

 

 

二人は同時に優勝杯に手を添える。

 

次の瞬間、移動キーとなっていた優勝杯が起動し、二人の身体は宙に浮かぶ感覚を味わった。

 

優勝杯が移動キーになっていることに驚いたセドリックだったが、恐らく入口まで飛ばされるのだろうと思い、納得する。

 

優勝杯をハリーと手に持って帰れば、センチュリオンの隊員たちはお祭り騒ぎで迎えてくれるだろう。

エスペランサは自分の事のように喜ぶだろう。

 

(今晩は必要の部屋で打ち上げだろうな)

 

セドリックは一人微笑みながら移動キーで飛ばされるがままになっていた。

 

ハリーも一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「歩兵の本領」という本を参考にさせてもらった部分があります。

また、ケトルバーン先生の設定などはポッターモアから引っ張ってきています。
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