ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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感想、誤字報告ありがとうございます!
case62を加筆修正しました。
少し描写が不足していたので。


case63 Resurrection 〜復活〜

戦いは最初からアエーシェマが有利だった。

 

彼の杖から吹き出した悪霊の炎は周囲の墓石ごとセドリックの身体を吹き飛ばす。

 

全身を火傷しながら地面に倒れ込んだセドリックは、それでも反撃をした。

 

 

ズダダダダ

 

 

しかし、弾丸は全て盾の呪文によって防がれる。

さらに、アエーシェマは通常の盾の呪文ではなく、エスペランサがスネイプと戦闘を行った時に使用した"向かってきた魔法や銃弾を跳ね返す"盾の呪文を"無言"で使っている。

 

銃と魔法の戦いにおいて、銃の優位点は発射速度と連射性能である。

だが、常軌を逸した素早さで無言呪文を行使するアエーシェマ相手に銃の優位性はほぼ無かった。

 

そもそも、センチュリオンは一対一の決闘方式での戦闘は行わない。

軍隊の戦いは組織戦闘が主である。

マグルの武器で魔法使いに勝つ為には組織戦闘を行うか、奇襲や狙撃をする他に無い。

エスペランサはそう考えたのでセンチュリオンを組織したのである。

 

「ぐあっ!」

 

跳ね返された銃弾がセドリックの太腿を貫通する。

動脈が傷ついて血が溢れ出した。

野戦病院で手当てしなければ大変なことになる。

 

セドリックは身近な墓石の陰に伏せて攻撃をやり過ごしながら、イスラエル軍製の救急医療キッドを戦闘服のポケットから引っ張り出した。

 

中には止血帯が入っている。

 

時間が無い為、雑に股関節の辺りを止血帯で縛り上げ、出血を抑える。

 

「逃げてばかりだな。これでは狩り甲斐が無い」

 

アエーシェマは退屈そうに杖を振った。

 

魔法により、セドリックが隠れていた墓石の周辺の大地がごっそりと吹き飛ばされる。

 

セドリックは咄嗟に盾の呪文を展開して身体が吹き飛ばされるのを防いだ。

 

 

(何てパワーだ。しかも、銃弾を防ぎながら強力な魔法を繰り出してくる。相当な手練れだ!)

 

アエーシェマ・カローは戦いに勝つことのみを追い求めた魔法使いだ。

サディストでありながら、決闘では決して相手をいたぶるような戦い方をしない。

最短で確実に相手を殺すことのみを考える。

 

ヴォルデモートやレストレンジのように、磔の呪いを多用して、拷問の様にネチネチと戦うやり方はスマートでは無いし、隙だらけだ。

アエーシェマはその様な戦いに美しさを感じなかった。

 

そのポリシーが彼を強くしてしまっている。

 

死喰い人最強と謳われた全盛期のドロホフを軽く捻り潰せる力がアエーシェマにはある。

 

闇払いを3人同時に殺すことなど容易く、若い頃には決闘チャンピオンと言われていたフリットウィックを5分で倒した事もあった。

 

アエーシェマが倒せない存命の魔法使いは、ダンブルドアとヴォルデモート、それにグリンデルバルトくらいなものだろう。

 

 

「盾の呪文か。お前は盾の呪文がどの程度の魔法や物理攻撃を防ぐことが出来るか理解しているか?」

 

「何!?」

 

「通常の盾の呪文は使用者の精神状況と技量が最も良い状況であっても、闇の魔術を防ぐ事が出来ん。防ぎたいのならプロテゴ・マキシマを使用するしか無い」

 

「ご丁寧に解説どうも!」

 

 

アエーシェマは彼にしては珍しく本気を出していない。

彼は前述のポリシーがあるために、どんな相手でも最初から本気で潰しにいく。

手加減は一切しない。

全力で相手を捻じ伏せる狩りをアエーシェマは好む。

 

だが、彼はエスペランサの息がかかっていると思われるセドリックの力量を測りたいと考えていた。

 

「闇の魔術と通常の魔法の違いは厳密には定義されていない。しかし、善人を気取る者達は威力が高かったり、残忍な効果をもたらす魔法を闇の魔術として嫌う。私には理解出来ん。強い魔法があれば使わない手は無いだろうに」

 

そして、また杖を振る。

 

杖から電撃が繰り出された。

10万ボルトを超える雷の塊がセドリックの展開した盾の呪文を破壊する。

 

「くそっ!なめやがって!ステータム・モータス・強制回避せよ!」

 

強制回避呪文を使用して電撃を避けるセドリック。

生い茂っていた雑草が電撃によって燃え盛った。

 

カチリ

 

小銃の引き金を引いても弾が出ない。

弾切れだ。

 

セドリックは空になった弾倉を捨てて、新たな弾倉を装填する。

弾倉を装填し、スライドを引いて銃を構えるまで10秒もかかっていない。

エスペランサに仕込まれたタクティカル・リロードという技術が活かされていた。

 

「並の魔法使い相手であれば、最初の銃撃で倒されていただろう。だが、この私をその程度の攻撃で倒せる筈がない。"この世界で私以上に修羅場を潜り抜けてきた手練れの魔法使い"はそうそう居ないのだからな」

 

「どういう事だ?言っている意味が分からん!」

 

「お前にどう説明しても理解する事はできないだろう。だが、私はお前の想像を越える力量を持つ魔法使いなのだ」

 

アエーシェマは淡々と語る。

 

この自信はどこから来るのだろう、とセドリックは疑問に思った。

アエーシェマは見た目通り危険な男に変わりないが、危険さだけでなく、何かとてつもない謎を秘めているようにも見えた。

 

「お前は、何が目的でヴォルデモートを復活させようとしているんだ?」

 

「目的?そうだな。私が求めるのは強さのみ。強い物を見たい一心だ。それともう一つ目的はあるが、こちらはどうにも説明がつかない」

 

アエーシェマは杖を軽く振り、墓石の一つを宙に持ち上げた。

 

さらに何回か杖を振ることで、墓石が巨大なアイスピックに変わる。

 

「エスペランサ・ルックウッドは久々に倒し甲斐のありそうな魔法使いだと思えたのだが、お前は取るに足らなかった。フリペンド・射て」

 

唱えられたのはホグワーツ1学年でも使える簡単な魔法だ。

しかし、アエーシェマはそのような簡単な魔法すら、強力な武器に変える。

 

墓石を変身させて作られたオートバイ程の大きさのあるアイスピックが信じられない速さでセドリックに飛んできた。

 

避けることは出来ない。

 

セドリックは軽量化の魔法により片手で持てるようになっていた銃を右手で持ち上げ、左手で杖を構える。

 

つい30分前に編み出した戦法だ。

 

ダダダダダダという音とともに銃口から7.62ミリ弾が発射される。

同時に「エンゴージオ・肥大せよ」と呪文を唱えた。

 

弾倉に入っていた20発の弾丸が全て巨大化され、アイスピックへと向かっていく。

巨大化された弾丸はいとも容易くアイスピックを粉々にし、残りの弾丸はアエーシェマに襲いかかった。

 

アエーシェマにしてみれば、19発の46センチ砲弾が高速で襲いかかってくるようなものだ。

 

だが、彼は冷静である。

 

杖を数センチ振るだけで砲弾を全て逸らした。

逸れた砲弾は数十個単位で墓石を粉々にし、リドルの館を半壊させた。

 

ズーン

 

ズーンズーン

 

爆音とともに土煙が上がる。

 

「簡単な魔法でここまでの威力を出すとは。なるほど。少しは戦えるみたいだな」

 

アエーシェマは半壊したリドルの館を見ながら、残忍な笑いを浮かべた。

彼の肩には爆発の余波で受けた火傷が出来ている。

 

久々に味わう痛みに彼は興奮していた。

 

 

「セドリック・ディゴリー。お前の力量は大体分かった。そして、お前の戦い方と力量からエスペランサ一派が闇陣営にとってどの程度脅威になるかも把握した」

 

「何!?」

 

「欲しい情報は揃った。故にお前の役割は終わったのだよ。さらばだ。セドリック・ディゴリー」

 

アエーシェマの目付きが変わる。

 

セドリックは直感した。

これが、彼の本気モードなのだと。

 

アエーシェマは杖を真っ直ぐに向ける。

 

「な、何だこれはっ!」

 

アエーシェマが何の魔法を使ったのかは分からないが、セドリックの足元に半径2メートル程の円形の影が出来ている。

 

影、というよりもブラックホールのような、光が一切存在しない空間が出来ているのだ。

 

そして、セドリックの足はその影に囚われて動かない。

 

「何だこれは!足が、動かない!くそっ」

 

アエーシェマはもう笑ってはいなかった。

彼は確実にセドリックを殺そうとしている。

 

セドリックは再び銃と杖を構えた。

しかし、先の攻撃で弾薬は使い果たしていることに気づく。

 

「無駄だ。こうなってはもう、お前に勝ち目は無い」

 

「僕は最後まで諦めない!」

 

セドリックは杖をアエーシェマに向けた。

 

「なら足掻け。闇の魔法使いは死の呪いで相手を殺そうとする。だが、死の呪いは単発でしか射てない。故に命中率は悪い。故に、最も確実に魔法使いを殺す方法は、相手の動きを封じることだ」

 

死の呪いに限った話では無いが、魔法は基本単発であり、攻撃魔法に関しては相手に命中させる為の技量が必要とされる。

 

故にアエーシェマは相手の動きを封じることに徹していた。

 

「ステューピファイ!インペディメンタ!」

 

「無駄だ。その程度の魔法で私は倒せん。失神光線も妨害の呪文も、盾の呪文で防ぐ事が出来るからだ。絶対に相手を倒したいのなら、盾の呪文を突破出来る闇の魔術か、反対呪文の存在しない死の呪いを使うしか無い」

 

話しながらアエーシェマはセドリックの呪文を全て回避した。

無言呪文を使える魔法使いは多いが、喋りながら無言呪文を完璧に行うのは難しい。

しかし、アエーシェマはそれを容易く行う能力があった。

 

 

 

 

 

 

「アバダ・ケダブラ」

 

 

 

 

 

 

彼は短く詠唱する。

 

杖先から緑色の閃光が走り、セドリックに命中した。

 

「ここまで、か」

 

視界に広がる眩い緑の光。

 

それがセドリックの最後の記憶となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アエーシェマは地面に転がるセドリックの亡骸を見下ろしていた。

目は見開かれ、毛は逆立ち、冷たく氷の様に横たわっている。

確実に彼は死んでいた。

 

アエーシェマは今までに数十人もの魔法使いを殺害している。

殺害した相手の亡骸を見る度に彼は、己の強さを実感し、自分の存在を確かなものにしてきた。

 

逆を言えば、彼は敵を倒す事でしか生き甲斐を見つけられないのである。

 

 

「呆気なかったな。セドリック・ディゴリー。お前は光の道を進む限り死ぬ運命にある。生き残るには"我々の側"に来るしか無かったのだ」

 

アエーシェマはそこでセドリックが銃を握りしめたまま、死んでいることを確認した。

 

最期まで武器を手放さずに死んだのは称賛に値することだ、と彼は思う。

 

「さて、我が君も待ちくたびれたことだろう。おい!ワームテール!」

 

「は、はひ」

 

「儀式の準備を始めるぞ」

 

 

アエーシェマは額を押さえてうずくまっていたハリーを魔法で、破壊を免れていた巨大な墓石に縛りつけた。

 

ハリーは呻き声を上げたが、アエーシェマはそれを無視する。

 

「ワームテール。大鍋の用意は出来ているか?」

 

「出来ております。はい」

 

いつ間にか人一人入れる大きさの石で出来た大鍋が用意されていた。

中では火花と液体がボコボコバチバチと暴れている。

 

「難儀ですな。この様な古の魔術を駆使しなくては復活出来ないとは」

 

ワームテールが大鍋の中にヴォルデモートを放り込むのを見ながらアエーシェマが呟く。

 

ヴォルデモートは胎児のような姿をしていた。

だが、その顔はおぞましい。

蛇の顔をした胎児の様だった。

 

その姿を見てハリーの傷は更に痛くなる。

 

ヴォルデモートを大鍋の中に入れる時、ワームテールは一瞬だけ表情を歪めた。

ワームテールがヴォルデモートの復活に際して何を考えているかは誰も分からない。

 

「父親の骨。知らぬ間に与えられん。父親は息子を蘇らせん」

 

ハリーの括り付けられた墓石の下の地面が割れ、人骨が飛び出す。

飛び出した人骨は大鍋の中に入り込んだ。

 

「僕の肉、よ、喜んで差し出されん。僕は、あ、主人を、よ、よ、蘇らせん!」

 

ワームテールは銃弾が貫通してボロボロになった手首をナイフで切断して鍋に入れた。

彼はあまりの痛みに悲鳴を上げる。

 

アエーシェマはその様子を無表情に見ていた。

 

手首を切断する痛みは測りし得ない。

恐らくエスペランサでも悲鳴を上げるだろうし、並の人間なら気絶する。

だが、ワームテールは気を保ち、ハリーに近づいて来た。

 

「敵の血、力づくで与えられん。汝は敵を蘇らせん」

 

ワームテールは震える手でハリーの腕にナイフを突き立てて、鮮血を回収した。

激痛にハリーは悲鳴を上げそうになるが、何とか耐える。

 

ハリーの血が加えられた大鍋は溢れんばかりの蒸気が立ち込め、視界を悪くする。

 

 

そして、その蒸気の中から一人の男が立ち上がった。

 

 

異様に長い指。

赤い目。

蛇の様な鼻。

 

人の形をしていて人では無いことが分かる。

 

魔法界をかつて恐怖のドン底に落とした闇の魔法使い。

 

 

 

 

 

ヴォルデモート卿が復活した。

 

 




セドリックを退場させるかさせまいかは非常に悩みました。
ですが、今後の展開的に退場させないといけなかったので原作準拠です。
エスペランサを介入させてもセドリックを救う事は出来なかった、ということです。
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