ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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case64 Prior Incantertem 〜直前呪文〜

復活したヴォルデモートはローブを着ると、ワームテールに魔法で銀の手と闇の印を与えた。

 

ハリーは知る由も無かったが、闇の印は死喰い人の証であり、ヴォルデモートに実力を認められなければ貰えないものだ。

 

ヴォルデモートは縛られたままのハリーに自分の生い立ちを話して聞かせた。

そこで、ハリーはヴォルデモートが半純血であることを知るが、今はどうでも良かった。

 

セドリックの死。

 

最後まで戦って散ったセドリックの亡骸を見て、ハリーは絶望に打ちひしがれると共に、アエーシェマ・カローに怒りを感じる。

 

 

「ポッター。俺様の真の家族が帰ってきたぞ!」

 

見れば墓場のあちこちからフードを被った死喰い人が現れている。

ヴォルデモートが闇の印で呼集したためだ。

 

ただし、その数は圧倒的に少ない。

全盛期の死喰い人は百人単位で存在したし、死喰い人にはなれずとも、闇陣営の人間は千を超えていた。

ヴォルデモートがハリーに倒されてから徹底的な死喰い人狩りが行われた為である。

 

死喰い人たちはヴォルデモートの前で跪くが、ヴォルデモートは怒りを露わにしていた。

 

ここに集まる死喰い人は、13年間、ヴォルデモートを探しもせずに、のうのうと生きていたからである。

 

ルシウス・マルフォイもクラッブもゴイルもマクネアも、そして、ノットもだ。

 

ヴォルデモートはそれに怒っていた。

 

結局、彼らは保身に走りヴォルデモートを裏切ったのだ。

 

 

「部下がどいつもこいつも小物ですからな。裁判における彼らの哀れな姿を我が君にも見てもらいたかった」

 

アエーシェマがニヤニヤしながら跪く死喰い人たちを見る。

死喰い人たちはヴォルデモートにフードを取られて顔を出していた。

 

その中にはハリーが見たことのある人間も何人か居る。

 

その内の一人であるルシウスはアエーシェマを睨みつけた。

彼にしてみればアエーシェマものうのうと生きていた一人であるからだ。

 

だが、アエーシェマは魔法省による裁判や尋問で自己弁護はしていない。

何故なら彼は無差別殺戮等をせず、ひたすらに強さを求めて闇払いと戦いを繰り広げただけだからだ。

闇陣営の悪事に"表向きには"参加していないし、証拠も何も出なかったのである。

 

「アエーシェマ。お前も抜け目が無い。だが、俺様を復活させる事に尽力したのは褒めてやろう。ワームテールには新しい手を褒美として渡したが、お前は何が欲しい?」

 

「私が欲しいのは強さのみです。我が君の強さを間近で見ることが出来るだけで褒美となります」

 

ヴォルデモートはアエーシェマの言葉に高笑いをする。

 

「そうだな。お前はそういう奴だった。お前と始めて出会ったのは俺様がマグルの村を襲撃している時だったか?」

 

「ええそうです。スコットランドのハイランド地方でした」

 

「お前はマグルを殺す俺様に"その様な雑魚を殺しても面白く無いでしょう?"と言ってきた。お前は俺様の信念を理解していないし、俺様自身を慕ってはいない。しかし、ここに居る裏切り者達とは違うようだな」

 

ヴォルデモートは死喰い達の間をゆっくり歩きながら話を続けた。

 

「ここに居ない者たちも居る。レストレンジ、ルックウッド、ドロホフ達だ。あいつらは俺様に最後まで忠実だった。彼らはアズカバンに居るが、まもなく解放されるだろう。吸魂鬼は俺様の味方だからだ」

 

「巨人たちも呼び戻そう。闇の生物は俺様の味方だ。そして、ホグワーツ内にも忠実な部下が潜入している。奴はこの俺様の復活祭にゲストを寄越してくれた。見よ。ハリー・ポッターだ!」

 

ルシウスをはじめとする死喰い達が顔を上げて縛り付けられているハリーを見る。

彼らは何故、ハリーがこの場に居るのかを理解していなかった。

 

「俺様が弱体化した原因は、このポッターだ。あの晩、俺様はポッターを殺害しようと思い、ゴドリックの谷に向かった。しかし、此奴の母親は死ぬ間際に古い魔法を使ってポッターを守ったのだ。古いが強力な護りの魔法だ。そして、俺様は肉体を失った」

 

ヴォルデモートの言葉を聞いていたアエーシェマは溜息を吐く。

その古い魔法というのは、愛という曖昧な概念によって成立するものだ。

厄介な魔法であるが知名度の低さからヴォルデモートは油断したのだろう。

 

「死の呪いを跳ね返されても尚、俺様は生きていた。俺様は死の克服の為に幾つかの魔法を試していたからだ。しかし、俺様は肉体を失い、魂だけが彷徨っていた」

 

「4年前のことだ。ある愚かで若輩者の魔法使いが俺様のところへ足を運んだ。しかも幸運な事にホグワーツの教師でもあった。俺様はこの愚か者に取り憑いた。そして、賢者の石を手に入れて復活しようと試みたが、これは防がれた。ここに居るハリー・ポッターとエスペランサ・ルックウッドという小僧にな」

 

エスペランサの名前を聞いてアエーシェマは軽く反応する。

ハリー・ポッターが賢者の石をヴォルデモートから守る事に一役買ったことは義理の娘であるフローラ・カローから強引に聞き出していたが、エスペランサもその場に居たとは知らなかった。

 

「我が君。エスペランサ・ルックウッドがあの場に居たのですか?」

 

「そうだ。あの小僧は忌々しいマグルの兵器で俺様の計画を阻止した。そして、クィレルを殺した。ポッターの次はあの小僧を俺様は殺す」

 

ヴォルデモートと正面から戦って、勝ち、そして生存したエスペランサにアエーシェマはますます興味が湧いた。

 

「俺様は再び肉体を失った。だが、1年近く前に、ここに居るワームテールが俺様の所へ訪れた。しかし、その過程でワームテールはミスをした。魔法省の職員であるバーサ・ジョーキンズに見つかったのだ。そこで、此奴はバーサに忘却の呪文をかけて俺様の下へ連れて来た」

 

「バーサは色々な情報を持っていた。クィデッチワールドカップや3校対抗試合についてだが、俺様はこれを利用しようと思った。俺様の復活にはポッターが必要不可欠であるが、ポッターは予想以上に強い守護を受けている。容易く接触は出来ない。ならば、3校対抗試合を使ってポッターを俺様の下に送り込む様に仕組めば良い。ああ、そうだ。バーサ・ジョーキンズは殺した」

 

誰も知らないが、バーサ・ジョーキンズを殺す事でヴォルデモートは蛇のナギニを分霊箱にしている。

 

「俺様の工作は上手くいった。お陰でポッターはこの場に居る。俺様を苦しめたポッターが。クルーシオ!」

 

ヴォルデモートは突如としてハリーに磔の鈍いをかけた。

 

想像を絶する苦しみにハリーは悲鳴を上げる。

この世にこれ以上の苦しみは無いだろう。

クルーシオの魔法の恐ろしさは、どんなに痛くても気を失ったりすることが出来ないところだ。

 

ハリーは心身共にボロボロになっていた。

 

 

「見たか?このポッターが俺様に勝てる筈が無いのだ。此奴が俺様に勝てた理由は母親の守護魔法のお陰に過ぎん。ワームテールよ。ポッターの縄を解いてやれ」

 

ヴォルデモートの指示でワームテールがハリーを縛り付けていた魔法の縄を解く。

 

急に身体が自由となったハリーは勢いで地面に転げ落ちた。

ワームテールは落ちていたハリーの杖を拾い上げてハリーに渡す。

 

この間、ワームテールはハリーと一切目を合わせようとしなかった。

 

死喰い人たちはハリーとヴォルデモートを囲う様に集まって来ている。

 

「ポッター。決闘の仕方は知っているな?」

 

決闘。

魔法使いの1対1の戦いのことである。

 

2学年の時に一度、決闘クラブというものに参加したことがあるハリーだったが、その時に学んだのは武装解除の魔法のみ。

 

それがヴォルデモート相手に役立つとはとても思えなかった。

 

 

「まずはお辞儀だ。お辞儀するのだ!ポッター!」

 

ヴォルデモートは杖を振って強制的にハリーをお辞儀させる。

 

エスペランサがこの場に居たら、「お辞儀するのだ」という台詞を吐くヴォルデモートを指差して笑ったことだろう。

 

屈辱に耐えながらハリーはぼんやりとその様なことを考える。

 

 

「では決闘を始めよう!クルーシオ!」

 

 

情け容赦ない攻撃がハリーに襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いはヴォルデモートが一方的にハリーを蹂躙するものだった。

もはや、戦いとは呼べない。

 

三度の磔の呪いを受けた後、服従の呪文を何とか打ち破ったハリーであるが、自分の死がもうじきやってくるのを実感していた。

 

彼は今、隙をついて墓石の一つに身を隠している。

 

「ポッター。隠れんぼは終わりだ。正々堂々と出てきて戦え。そこに転がる生徒は正々堂々戦っていたぞ」

 

ヴォルデモートはセドリックの亡骸を指差して言う。

 

ハリーはセドリックの戦いを見ていた。

恐らく、エスペランサの指導を元にして編み出された戦い方だった。

 

エスペランサは決してヴォルデモートを恐れない。

彼が恐れるのは仲間が殺される事だ。

もし、彼がセドリックの死を知ったとしたらどうするだろうか。

 

きっと復讐するに違いない。

 

もし、自分がここで殺されたとしてもエスペランサがきっと仇を討ってくれる。

 

 

ならば、最後まで戦ってやろう。

ハリーは決意した。

 

 

「僕はここだ。僕も最後まで戦う」

 

ハリーは墓石から姿を現し、そして杖をヴォルデモートに向けた。

 

「実に勇敢だ。父親と似てな。俺様の部下もこう勇敢であって欲しいものだ」

 

「例え僕がここでお前に殺されても、残された他の人間が必ずお前を倒しに来るぞ」

 

「ほう。誰が来ようと俺様の敵では無い。さて、時間だ」

 

 

ハリーとヴォルデモートは対峙する。

 

互いに杖を構え、それを死喰い人たちが遠巻きに見ていた。

 

 

「アバダ・ケダブラ!」

 

「エクスペリアームス!」

 

 

二人は同時に呪文を詠唱する。

 

二人の杖から発射された赤と緑の閃光が激突する。

 

反対呪文の無い死の呪いと武装解除の魔法が激突すればどうなるか。

当たり前だが、死の呪いの方が強力なので武装解除の魔法は撃ち負ける。

 

しかし、今回はそうならなかった。

 

二つの閃光が空中で繋がり、金色の光を放つ。

ハリーとヴォルデモートの杖が一本の閃光で繋がれたようになったのだ。

 

「我が君!我々はどうしたら?」

 

「手を出すな!ポッターは俺様が殺す!」

 

ヴォルデモートは死喰い人に命じた。

しかし、彼もまた、目の前で起きている現象を理解していない。

 

バチバチと火花を散らしながら二人の杖は閃光によって繋がっているが、気を抜けばその衝撃に打ち負けてしまいそうになる。

 

 

「なるほど。直前呪文か」

 

「は、はひ?」

 

一人呟くアエーシェマをワームテールが見上げる。

 

「我が君の杖とポッターの杖は恐らく兄弟杖なのだろう。兄弟杖同士で決闘をすると、杖は本来の強さを発揮せず、別の効果をもたらすと言われている」

 

「へ、へえー」

 

ハリーにヴォルデモートと互角に渡り合えるような魔力は存在しない。

ならば、この現象はハリーの力ではなく杖の力なのだろう、とアエーシェマは分析した。

 

金色の光はますます強くなり、墓場を焼いてしまうのではないかという程に大きくなっていた。

 

信じられない現象はさらに続く。

 

金色の光の中からセドリックのゴーストが現れたのだ。

いや、ゴーストでは無い。

ゴーストよりもハッキリとした実体があるが、しかしやはり生きた人間では無い物が光と共に大地に降り立った。

 

「セドリック?」

 

『ハリー。頑張れ』

 

短く、しかし強く、セドリックがハリーを励ます。

 

ヴォルデモートは出現したセドリックに驚き、死喰い人たちは恐怖した。

 

光の中からは更に二人の人間が飛び出した。

 

一人はマグルの老人、もう一人は恐らくバーサ・ジョーキンズだ。

 

『あいつは本当に魔法使いだったのか!おい、小僧。負けるんじゃ無いぞ!』

 

『杖を離すんじゃ無いよ、ハリー!あいつを倒すんだ』

 

さらに、新たな光が飛び出す。

そして、大地に立った。

 

女性だ。

ハリーと同じ目をしている。

 

『お父さんが来ますよ。大丈夫。頑張って』

 

間違いない。

ハリーの母親だった。

 

リリー・ポッターが現れてすぐ、ジェームズ・ポッターも現れる。

 

『繋がりが切れたら、私たちはあまり長くは存在を保てない。だが、移動キーに辿り着くまでの時間は稼げるだろう。ハリー。わかったね?』

 

ジェームズの言葉にハリーは頷いた。

 

『ハリー。頼みがある。僕の身体をホグワーツまで連れて帰ってくれ。僕は皆の元へ帰ると約束したんだ。それから、エスペランサに伝えてくれ。僕は最後まで戦った。後は頼んだ。そして、君の下で戦えたことを誇りに思う、と』

 

ハリーにはセドリックがエスペランサに何を伝えようとしているのかは分からなかった。

しかし、彼はそれを了承する。

 

ハリーは思い切ってヴォルデモートの杖と繋がっている金色の閃光を切り離した。

 

バチンという音と共に光は消えたが、ジェームズやセドリックたちはそのまま残っている。

 

彼らはハリーを追撃しようとするヴォルデモートに襲いかかった。

 

 

「追え!ポッターを逃すな!殺せ!」

 

 

ヴォルデモートの命令により、死喰い人たちがハリーに襲いかかる。

 

ハリーはがむしゃらに妨害の呪文を連発した。

そのうちの何発かが死喰い人に命中する。

 

「アエーシェマ!何をしている!ポッターを止めろ」

 

「承知しました」

 

だが、アエーシェマは乗り気では無い。

彼はセドリックの亡骸をエスペランサの元まで届けたいと内心で思っていたからだ。

 

別に善意があったわけでは無い。

 

セドリックの亡骸を見たエスペランサがどの様な行動を起こすのかに興味があっただけだ。

 

その為にはハリーにセドリックを連れてホグワーツに逃げてもらう必要がある。

 

アエーシェマは追撃の手を敢えて緩めた。

 

 

 

「アクシオ・優勝杯!」

 

 

ハリーはセドリックの亡骸を触れ、魔法で優勝杯を呼び寄せた。

 

優勝杯を掴んだ瞬間に移動キーが作動する。

 

 

ハリーとセドリックはホグワーツへと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスペランサは観客席からハリーが迷路の入り口に帰ってきたのを双眼鏡越しに見た。

 

一瞬にして現れたハリーにも驚いたが、彼がセドリックと手を繋いで登場したのにも驚いた。

 

 

「ハリーとセドリックが戻ってきた!優勝杯も一緒だ!」

 

フナサカが言う。

 

他の本部待機の隊員たちも拍手をした。

 

「無事に終わったみたいだな。斥候部隊を戻そう」

 

「いや、セオドール。ちょっと待て。様子がおかしい」

 

「え?」

 

職員や生徒が我先にハリーとセドリックの元へ走り寄っていく。

ハリーはセドリックの手を握ったまま何か喚いていた。

 

だが、観客席の歓声が大きくて聞き取れない。

 

 

「確かに様子がおかしいです。セドリックは気絶しているんでしょうか?」

 

「ああ。動いていないな」

 

「俺が様子を見に行く!」

 

エスペランサは側の席に立てかけておいたM733コマンドを掴んで、観客席を降りていく。

 

密集した観客の中を強引に突破して、ハリーたちの元へ駆け寄る。

 

そこには既にダンブルドアやファッジが居た。

 

「何てことだ!ダンブルドア。セドリックは死んでいる」

 

ファッジが顔を青くして言った。

 

「死んでいる?」

 

「誰が?」

 

「どうなってるんだ?」

 

生徒たちが口々に騒ぎ始めた。

 

エスペランサは我を忘れて、セドリックの元に駆け寄った。

 

「おい!セドリック!返事をしろ!いつまで寝てんだ!」

 

彼はダンブルドアや他の教師が止めようとするのを無視して、セドリックの手首を握った。

 

脈がない。

冷たい。

死後硬直をしている。

 

 

エスペランサはかつて戦場で何百人という死体を見て来た。

故に、生死を確かめるのは慣れている。

 

そして、彼はセドリックが確実に死んでいることを即座に理解してしまった。

 

 

「何故だ。何故なんだ!ハリー!説明してくれ!」

 

エスペランサはハリーに掴みかかる。

しかし、そのハリーも血だらけである事に気付いて手を離した。

 

「エスペランサ………。あいつだ。あいつが帰ってきたんだ」

 

「あいつ?」

 

「セドリックは、セドリックはホグワーツまで連れてきてくれって、僕に言ったんだ、だから」

 

ハリーは言葉を詰まらせながら言う。

話が噛み合わないところからするに、思考がまとまっていないのだろう。

 

「ダンブルドア先生。あいつが、ヴォルデモートが帰ってきました。セドリックは殺されました」

 

「何と!ハリーよく帰ってきた」

 

ハリーの言葉はダンブルドアとエスペランサにしか届いていない。

他の人はパニックになって何も聞いていなかった。

 

「くそっ。何でこんなことに。もうこんな思いをしたくなんて無かったのに」

 

エスペランサも声を詰まらせた。

セドリックを3校対抗試合に出るよう後押ししたのはエスペランサだ。

彼の死はエスペランサの責任でもある。

 

そして、もう二度と仲間を失いたくない一心で過ごして来たのに、また失ってしまったという絶望感に打ちひしがれた。

 

握り締め過ぎた拳から血が出てくる。

エスペランサはその拳で地面を殴った。

 

だが、感傷に浸っている場合ではない。

 

悲しむのは後だ。

 

セドリックが殺されたということは、やはり、このホグワーツには敵が居る。

ならば、次の犠牲が出る前にその敵を仕留めなくてはならない。

 

その為には今は感情的にならず、冷静に頭を戦闘モードに切り替える必要があった。

 

エスペランサは開いたままのセドリックの目を閉じてやる。

見れば、セドリックは銃を握り締めたまま死んでいた。

 

彼は最後まで戦って死んだのだろう。

 

「エスペランサ。ハリーを頼むぞ。わしは他の者達に事実を伝えなくてはならぬ」

 

「はい。先生」

 

ダンブルドアの言葉にエスペランサは短く返事をした。

 

ダンブルドアは他の職員のところへ走っていく。

ファッジは未だ混乱状態にあり、生徒達は泣いている者から困惑している者まで多様だ。

 

この場で冷静な思考を保てているのは皮肉にもセドリックと最も近しい仲であるエスペランサだけだった。

 

「ポッター。大丈夫か?辛いだろう。すぐに医務室に行かなくてはならん」

 

人混みを掻き分けて現れたムーディがいつの間にかハリーとエスペランサの横に立っていた。

 

「ムーディー先生。ダンブルドアはハリーにこの場に留まれと命じています。自分はダンブルドアが戻ってくるまでの間、ハリーを護衛しなくてはならない」

 

エスペランサがムーディの前に立ち、反論する。

 

「ルックウッド。ポッターは心身ともにボロボロだ。今は医務室へ行って休養を取るべきだろう」

 

「しかし!」

 

「安心せい。既にマダム・ポンフリーには話を通してある。ポッターはわしが連れて行こう」

 

そう言うなりムーディは半ば強引にハリーの手を引っ張って人混みを掻き分け、城へと向かって行ってしまう。

 

生徒たちはハリーに何か言いたそうであったが、ムーディが横に居たのでは話しかけられない。

 

確かに、混乱している魔法省の役人たちよりもムーディがハリーを医務室に連れていく方が安全ではある。

だが、エスペランサはそんなムーディの行動を疑問にも思っていた。

 

(この状況下でハリーをダンブルドアから引き離すという行為をムーディがするだろうか?)

 

 

 

「エスペランサ!ここに居たのか!報告がある」

 

迷路の方から目眩しの呪文を解除し、武器をどこかに隠したのであろう斥候部隊の隊員たちが走ってくる。

 

ネビルやアーニー、アンソニーたちだ。

 

「隠れながらムーディ先生を尾行していたが、ムーディ先生は迷路の中に向かって杖を構えて、やっぱり何らかの工作をしていた!」

 

息を切らせながらネビルが報告した。

 

他の隊員たちは、セドリックの亡骸を見て絶句している。

中には泣き出し、崩れ落ちる隊員も居た。

 

しかし、隊員の何人かは気を確かに保ち、セドリックに近づいてくる一般生徒を遠ざけようとしたり、混乱を沈めようとしたりしている。

 

混乱していた魔法省の職員たちも我に帰り、生徒たちの混乱を収めようとし始めた。

 

「それは、本当か?ネビル!」

 

「間違い無い。何をしていたのかは分からないけど。でも、迷路の入り口の方が騒がしくなった途端、ムーディ先生は入り口に向かって行ったんだ」

 

そこでネビルはようやく、セドリックが死んでいることに気付いた。

 

「そんな!セドリック!!」

 

「ネビル。落ち着け。まだ、状況は終わっていない」

 

「でも!でも!」

 

「しっかりしろ!ムーディはハリーを連れて医務室に向かった。しかし、ネビルの話が本当なら………」

 

ハリーが危ない。

 

ムーディは黒だ。

 

「エスペランサ。僕たちはどうすれば?」

 

「兎に角、隊員達を全員集めろ。そして、完全武装させた後に"4階の廊下"に向かえ。指揮は副隊長のセオドールに一任する」

 

「エスペランサは?」

 

「俺は先行する。一刻も争う状況だ。隊員たちはすぐに動かすんだ。良いな?」

 

 

エスペランサはネビルに指示を出した後、持っていたM733のスライドをガチャリと引いた。

初弾が銃本体へと装填される。

 

「セドリック。すぐに戻って来る。お前が受けた苦しみを、敵にも味合わせてやるからな。それまで待っていてくれ」

 

返事をすることも出来ないセドリックにエスペランサは話しかけ、そして、城へと走り出した。

 

 

 

 

湧いてくる感情という感情を全て振り払い、ホグワーツ城の玄関へと真っ直ぐに走る。

 

大丈夫。

俺は戦える。

 

今は敵を"殺す"ことだけ考えろ!

 

 

復讐の鬼となったエスペランサは銃の握把を強く握り締めた。




炎のゴブレットもクライマックスです。
しかし、次回投稿は仕事の関係で遅れることが予想されます。

申し訳ありません。
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