ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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case66 Crime and Punishment 〜罪と罰〜

センチュリオンによって倒されたクラウチJr.は、駆けつけたダンブルドアとマクゴナガル、それにスネイプによって身柄を取り押さえられた。

 

スネイプの調合した真実薬によって尋問が行われるが、この尋問にエスペランサとセオドールは加わることを許されなかった。

 

瓦礫の山と無数に転がる空薬莢、そして、倒れているクラウチJr.を発見したダンブルドア一行はエスペランサがクラウチJr.を倒したことを瞬時に察した。

ただし、エスペランサの横にセオドールが居ることに関しては解せなかったようである。

エスペランサとセオドールに友好関係があることはホグワーツの中でも知られている事ではあったが、エスペランサがセオドールを戦闘に巻き込むことは予想していなかった。

 

ダンブルドアにクラウチJr.との戦闘の経緯をフェイクを入れつつ説明し、セオドールは偶々この場に居合わせ、戦闘に協力したと嘘を吐く。

ダンブルドアはあっさりエスペランサの嘘を信用した。

 

クラウチJr.の言う通り、ダンブルドアはムーディが偽物だとは気付いていなかった様である。

ダンブルドアはクラウチJr.に真実薬を飲ませ、全てを証言させる為に、彼を彼の事務室の中に連れて行こうとした。

しかし、ハリーとスネイプ、マクゴナガルの同行は許可したものの、エスペランサとセオドールの同行は断ったのだ。

 

 

「くそっ。クラウチJr.を倒したのは俺らだぞ。なのに部外者扱いか」

 

「仕方ないさ。ダンブルドアにとって僕らは善良な一般生徒に過ぎない。ポッターはまあ特別として」

 

「釈然としないな」

 

エスペランサとセオドールは仕方無しに事務室の外で待機していた。

 

聞き耳を立てようにも、扉は魔法で防音されている。

センチュリオンの基地には盗聴器も装備の一つとして保管されていたが、取り出してくる暇は一切無かった。

故に、ダンブルドアによるクラウチJr.の尋問の内容を知ることは出来ない。

 

「僕なりに今回の事件を推理してみようか。犯人がクラウチJr.だとすれば、いくつかの謎は解ける」

 

「本当か?」

 

「ああ。まず、アズカバン送りになったクラウチJr.がどうやって脱獄していたか、についてだ。奴の父親であるバーティ・クラウチは魔法省の高官であるから、ある程度の工作は可能だろう。僕の憶測では、クラウチJr.収監後に急死した彼の母親をスケープゴートにしたのではないかと思う」

 

「そんなことが可能なのか?」

 

「さあね。だが、現に奴は脱獄を果たしている。父親の工作によってクラウチJr.はまんまとアズカバンから抜け出した訳だ」

 

「とすると、クラウチJr.は10年近く沙婆で暮らしていたことになる。何故、その10年間の期間でヴォルデモートに接触しなかったんだ?」

 

「恐らく、父親のクラウチが奴を家に閉じ込めていたんだろう。何せ実刑判決の下った死喰い人だ。自由にさせれば何をしでかすか分からないし、クラウチ父の信用問題にも関わる」

 

「そうか。服従の呪文か何かをかけて家に閉じ込めていた訳だな。だが、服従の呪文は強い意志があれば破る事も出来る。クラウチJr.は服従の呪文を破った訳だ」

 

「そして、奴はワールドカップの日に闇の印を打ち上げた。クラウチJr.はヴォルデモートを見つけ出し、父親に服従の呪文をかけ、そして、ムーディを襲った。ムーディをどうやって無力化したのかとか、ヴォルデモートとどうやって接触したのかは不明だが、兎に角、奴はホグワーツに潜入出来た訳だ」

 

「クラウチJr.はホグワーツに潜入して、3校対抗試合を利用してハリーをヴォルデモートの元に届けるのが任務だった訳だろ?何だかまどろっこしいことをしているような気がする。それに、奴は何故、3校対抗試合のことを知っていたんだ?」

 

「ヴォルデモートは賢者の石を欲しがり、クィレルに取り憑かないといけない程度には弱体化していた。つまり、肉体が未完全な状態だったんだろう。そこで、何らかの肉体を復活させる魔法を行使する必要があった。ポッターはその魔法に必要な素材だったと考えれば合点がいく」

 

「なるほど。あり得る話だ」

 

「3校対抗試合に関しては、バーサ・ジョーキンスから情報を得たのだろう。彼女は魔法省の役人だから3校対抗試合の情報は知っているだろうし、彼女が行方不明になったのはアルバニアの森だと新聞に書いてあった。これはヴォルデモートが潜んでいるとされる場所だ」

 

セオドールは見事に推理してみせた。

彼の脳内のデータベースは底が知れず、何が必要な情報であるかを整理し、収集するという技能に長けている。

つまり、インテリジェンスとして有能な訳だ。

 

「ハリーはヴォルデモートが復活したという証言をダンブルドアは信じるだろうか?」

 

「信じるさ。ダンブルドアがポッター贔屓だというのもあるが、状況証拠からしてヴォルデモートが復活したと考えるのが妥当だということは僕にでも分かる。問題は、他の連中が信じるかどうかだな」

 

「他の連中?」

 

「魔法省の連中やマスメディアさ。今の魔法省は自己保身の塊のような連中の集まりなんだ。魔法界を混乱させるようなポッターの証言は信じたくも無いと思うに違いない」

 

「そんな馬鹿な話があるか?ヴォルデモートが復活したとなれば英国魔法界の危機だぞ。いくら今の魔法省でも、国民に緊急事態宣言くらい出すだろ」

 

「残念ながら、そうはならない。コーネリウス・ファッジはガチガチの保守路線を走っている政治家だ。ダンブルドアに劣等感を感じている節もある。絶対にヴォルデモートの復活を信じようとはしないだろう。加えて、魔法省中枢に在籍する元死喰い人や新興純血主義の連中が裏工作もするだろうな」

 

セオドールは父親が元死喰い人で古典的純血主義者なだけあって政界にも詳しい。

 

1939年まで在任した魔法大臣のヘクター・フォーリーはグリンデルバルドの脅威から目を逸らして魔法界を危険に晒したし、ユージニア・ジェンキンスはヴォルデモートの勢力を過小評価して退陣に追い込まれている。

 

この国の魔法大臣が闇の魔法使いの脅威を対処出来た事は未だかつて無い。

 

その上、魔法省の権限はほとんど魔法大臣に委任されているから、現魔法大臣のファッジの意見はそのまま英国魔法界の総意になってしまう。

 

要はファッジがハリーの証言を信じて、ヴォルデモートの復活を公にするかしないかで魔法界の今後は大きく変わるということだ。

 

 

エスペランサとセオドールが議論しているうちに、ダンブルドアによるクラウチJr.の尋問は終わったらしく、事務室の中からダンブルドアとスネイプ、それにハリーが出てくる。

 

扉の向こうがチラリと見えたが、部屋の中にはマクゴナガルと、椅子に縛られたクラウチJr.、そして、本物と思われるムーディが気絶した状態で横たわっていた。

 

「待たせてすまぬ。真実薬の効果でクラウチJr.から必要な情報を得ることは出来たのじゃが、君たちには教えられぬ情報も多くてのう」

 

扉の前で待機する形になっていたエスペランサたちにダンブルドアは話しかける。

 

「そんなところだろうとは思っていました。ただ、ヴォルデモートが復活したかどうかだけでも教えて頂けませんか?」

 

セオドールが言う。

セオドールがヴォルデモートの名前を口にしたことにダンブルドアもスネイプも、そしてハリーも驚いた顔をした。

 

 

無理も無い。

 

ヴォルデモートの名前は魔法界ではタブーとされている。

そんな名前を元死喰い人の息子でスリザリンの生徒あるセオドールが口にするのだから驚くのも当たり前だろう。

 

「君の様な賢い生徒に嘘を吐くことは無理じゃろうな。後々、全生徒に公表する予定でもあるが、ヴォルデモート卿は復活した」

 

「やはり、そうでしたか」

 

「うむ。わしはハリーに聞きたいことがある故、自室に戻らねばならん。エスペランサは怪我をしているようじゃし、本物のムーディ先生と共に医務室に行きなさい」

 

「自分は平気です。それよりも、ハリーを医務室に連れて行く方が先でしょう?」

 

「残念ながら、まだ連れては行けん。彼には今日の出来事を全て教えてもらわねばならんからのう」

 

感情論を優先させるなら、エスペランサはハリーを一刻も早く休ませるべきだと思うだろう。

しかし、彼はダンブルドアの考えが理解出来た。

一晩休めばハリーは冷静になる。

その時、彼はセドリックの死とヴォルデモートの復活という現実に蝕まれ、精神的に不安定になるだろう。

それに記憶が鮮明な内に情報を引き出すべきではある。

 

「なるほど。分かりました。では、一つだけお願いしてもよろしいですか?」

 

「なんじゃろうか?」

 

「クラウチJr.と面会させて下さい。どうせ、奴はこの後、アズカバンに送られるのでしょう?その前に奴と話しておきたい」

 

ダンブルドアが目を細めてエスペランサを見据える。

 

もしかしたら、エスペランサがクラウチJr.を隙を見て殺そうとしていると考えているのかもしれない。

 

「心配しなくても、自分は奴を殺そうとはしていません。ただ、聞きたいことが色々とあるので」

 

「分かった。マクゴナガル先生も居ることじゃし、心配はいらんじゃろう」

 

そう言い残して、ダンブルドアは酷く疲れ切った様子のハリーを連れて行く。

 

エスペランサは去り際にハリーに何か声をかけようと思ったが、止めた。

ハリーにかける言葉が思いつかなかった為だ。

 

スネイプはファッジを探しに競技場に向かった。

 

それらを確認した後、エスペランサとセオドールは事務室の中に入った。

エスペランサはセオドールが持っていたM733を受け取り、一応、武装している。

 

彼らが入ってくるのを見て、マクゴナガルが驚いた顔をした。

 

「どうしたんですか?あなたたちは。校長は寮に戻るようにと言いませんでしたか?」

 

「クラウチJr.と話がしたいと申し出たところ、許可されました」

 

マクゴナガルは疑わしげな目を向けていたが、校長の許可が出ているなら無視は出来まい、と渋々部屋の中に二人を入れる。

 

クラウチJr.は生気が抜けたように椅子に縛られていたが、エスペランサが入ってくるのを見て、顔を歪ませた。

 

「ルックウッドか。それに、ノット。なるほど。そういうことか」

 

「そういうこととは、どういうことだろう?」

 

「俺としたことが、戦力を見誤っていた。ルックウッドが意気揚々と俺に立ち向かってきたのは、組織化された仲間の集団が居たからだということに気付かないとはな」

 

「あんたらは個々に戦うことが多いだろうが、現代の戦闘では複数の部隊を連携させて戦うのが常識だ」

 

現代の戦闘と言ってもそれはマグル界の話であって魔法界のでは無い。

だが、クラウチJr.は複数の戦闘単位で行動するメリットについて理解していた。

 

「今回は俺の完敗だ。闇の帝王に課された任務は果たしたものの、もはや、俺が闇の帝王の力になれることは無いだろう。どうせ、アズカバンで終身刑になるか、吸魂鬼に接吻される」

 

彼は遠い目をした。

元々、最終的には自分が捕らえられることを覚悟して任務を遂行しようとしていたのだろう。

未だにエスペランサはクラウチJr.に殺意や憎悪といった感情を持っていたが、心のどこかで、彼に対し親近感を感じてもいた。

 

クラウチJr.は戦闘員なのだ。

 

自分の主義思想を貫いて、上官であるヴォルデモートの命令を忠実に果たした。

その主義思想はエスペランサ的に大いに間違ったものではあったが、今更、彼に心を改めて罪の意識を持てとは言えなかった。

 

精々、己を貫いて、そして、アズカバンの牢獄の中で死んでいけば良い。

そう思ったのである。

 

「マクゴナガル先生。自分とセオドールは、この男と我々だけで話がしたいです。無理を承知の上で席を外してもらえませんか?」

 

「そんなことは出来ません!あなたたちを危険に晒しますし、校長が何というか・・・」

 

「頼みます・・・」

 

セオドールが頭を下げる。

 

スリザリン生がグリフィンドールの寮監に頭を下げることは普通なら考えられない。

無論、セオドールは普通のスリザリン生と違う。

長年、エスペランサたちと行動を共にしたことにより、人格が改変されているので、寮という概念は既に捨て去っていた。

 

これは他のセンチュリオンの隊員たちも同様であり、愛寮心はあれど、それ以上にセンチュリオンへの愛隊心が上回っている。

 

エスペランサと出会わず、センチュリオンに入隊しなければ、彼もザビニもフローラも違う道を辿っていたことだろう。

 

「・・・ええ。わかりました。ムーディ先生を医務室に運ばなくてはなりませんし、その間だけ許しましょう。ただし、何かあればすぐに知らせること。それと、クラウチJr.の杖は私が預かっておきます」

 

「ありがとうございます」

 

マクゴナガルもスネイプ程ではないが、寮同士のしがらみに囚われる人間である。

それは、彼女が在校中にクィディッチの試合においてスリザリンにアウトローなプレーをされたことに起因したり、そもそも、やはり闇の魔術の色が濃いスリザリンに少なからずの偏見を持っていたからに他ならない。

だからこそ、セオドールの態度と、エスペランサと手を組む彼に動揺したのである。

 

マクゴナガルが気絶したムーディを部屋から連れ出したのを確認した後、エスペランサは再びクラウチJr.に話しかけた。

 

「この1年間、俺はあんたを少なからず信用していた」

 

「それはお前だけでは無いだろう。ポッターも俺を信用しきっていた」

 

「俺はそれが理解出来ない。あんたはハリーを殺そうとしていた。殺そうと思っている相手に善意を向けることは非常に難しい」

 

「何が言いたい?」

 

「あんたがヴォルデモートを慕い、その障害となるハリーや俺を排除しようとしていたのは分かる。だが、それにしてはハリーに親切にし過ぎていたし、何より、教師としてのあんたはどこか楽しそうにしていた様にも見えた」

 

それが、エスペランサが最後までクラウチJr.が犯人であると考えるに至らなかった理由だ。

彼が闇陣営の人間であると信じたく無いとエスペランサは最後まで思っていた。

 

「気でも狂ったか?俺は心の底から闇の帝王に忠実だ。あのお方は俺と似ている。そして、強さを持っている。あのお方の為ならお前たちを欺く事など最も容易く出来るというものだ」

 

エスペランサはクラウチJr.の目を見る。

嘘をついているようでは無い。

真実薬の効果がまだ効いているから嘘をつけないというのもあるが。

 

「そうだな。そこは否定しない。それでも、俺は教師としてのあんたが素晴らしかった事を否定出来ない」

 

「・・・」

 

「あんたは、昔、教師を目指していたんじゃ無いのか?」

 

これはエスペランサの憶測である。

ムーディを演じていたクラウチJr.は、かつてエスペランサの教官をしていた合衆国の軍人である大尉を思わせた。

この人物はエスペランサが最も信頼する人であり、彼の人格を形成した張本人である。

1年生の時のクリスマスに、大尉から送られた小銃とドッグタグは今でも大切に保管されている。

 

「そうだ。そうだった。俺は確かに教職を希望していた時期もあった。だが、それは、俺が親父から受けた仕打ちに対する反発の様なものでもあったがな」

 

真実薬の効果が無ければ、彼はこんなことを話さなかっただろう。

 

「反発?」

 

「ああ。俺の親父は息子の事を何とも思っていなかった。俺がいくら優秀な成績を収めても、見向きもしない。政治と出世のことにしか興味を示さない。母親のことは愛していたらしいが、俺は母のおまけに過ぎなかった」

 

「・・・」

 

「俺と似た境遇の奴は沢山居る。だから、俺は教師となり、そんな奴らの救いになろうと考えていた。今思えば馬鹿な話だ。だが、そんな夢は潰えた。時代は闇の帝王が台頭していた時代。俺の様にスリザリンで闇の魔術にどっぷりと浸かるような人間をホグワーツが採用する訳がないだろう」

 

良くも悪くもクラウチJr.はスリザリン生だった。

力ある闇の魔術に嵌ってしまうのは仕方の無いことでもあった。

 

「俺は闇の帝王に親しみを感じた。あの方もまた、父親に失望し、世間を呪っていた。闇の帝王の言葉は美しかった。俺の救いだった。それは今も変わらない。あの方の為に命を捧げるのは本望だ」

 

「ヴォルデモートは他者の心につけ込む術に長けている。あんたは騙されたんだ」

 

「そうだとしても、俺は闇の帝王の作る世界を望む。俺と同じ考えの奴は他にも大勢居る。中にはマルフォイ達のような愚かな連中も居るが。この俺が倒れたとしても、他の奴らが、お前たちの前に立ちはだかるだろう。その時は今回の様に上手くはいかないぞ」

 

「相手が誰であろうと我々が勝つ。それが例えヴォルデモートであったとしてもな」

 

「ふん。お前のことだから、てっきりディゴリーの敵討ちにでも来たかと思ったが。俺とこんな話をしに戻ってきたのか?」

 

「そんなわけ無いだろ。セドリックの死を招いたあんたやヴォルデモートを、俺は激しく憎悪しているし、殺してやりたいさ」

 

「・・・」

 

「だが、残念ながらあんたをここで殺してしまっては真相が明るみにならん。だから仕方なく生かさないといけない。全てを吐いた後に、再びアズカバンに戻って終生を送りやがれ」

 

「はっ。アズカバンで悔い改めろってか?」

 

「そうは言わん。そんなことを言うのは頭がお花畑の連中だ。お前は自分の主義思想を変えず、アズカバンの中で孤独に死ねば良い」

 

「お前は変わった奴だ。で、話はそれだけか?」

 

「いや、今度は僕から質問させてもらおう」

 

それまで黙っていたセオドールが話に入る。

 

「ノットか。お前の父親も元死喰い人だ。沙婆に居ながら闇の帝王を探しもしなかった薄情者だ」

 

「父親の話は今関係無い。僕が聞きたいのはヴォルデモートの手勢が現在、どの程度の規模であるか、ということだ」

 

彼は真実薬が効いている間に、敵の勢力について聞き出そうとしていた。

情報が戦争において何よりも大切なのは過去の歴史が語っている。

 

 

「全盛期よりも弱体化はしている。何せ、ほとんどの死喰い人はアズカバンに送られるか、闇祓いに殺されているからだ。今、自由に活動出来るのは、裁判を免れた連中や、死喰いになれなかった無能ども、それに地下に潜っているアウトローたちだけだ。人数にしたら200人も居ないだろう」

 

「なるほど。その程度の規模であれば各個撃破で何とかなる。では、次の質問だ。ヴォルデモートは今どこにいる?次は何をしようとしている?」

 

「それは俺にも分からん事だ。だが、あのお方は魔法省を欺き、再び魔法界を手に入れようとしている。巨人や吸魂鬼も仲間になるだろう」

 

クラウチJr.の口からは次々に有益な情報が出てくる。

セオドールはその情報から、先手を撃てば事前にヴォルデモートの勢力の行動を抑える事が出来るだろうと考えた。

 

「エスペランサ。ヴォルデモートの勢力は人数も規模も全盛期より劣る。巨人や吸魂鬼に関しては我々の火力で殲滅する事も可能だ」

 

「だが、ヴォルデモートはどうする?我々の戦力ではヴォルデモートに太刀打ち出来るかどうか分からんぞ」

 

「問題無い。ヴォルデモートの勢力に所属する人間を全て排除すれば良いんだ。ヴォルデモートとて人間。孤軍奮闘なんて出来やしない」

 

確かに、いくら強大な力を持っていようとも一人で戦うのは無理がある。

 

「まだまだ聞きたい情報はたくさんある。真実薬が効いてるうちに全てを聞き出し・・・」

 

 

バーン

 

 

何かが炸裂する音がしたかと思って、エスペランサとセオドールは後ろを振り向いた。

 

何のことは無い。

 

扉が勢いよく開いた音であった。

 

 

「おやめなさい!コーネリウス!ダンブルドアが何と言うか!」

 

「ダンブルドア?私は魔法大臣だ。魔法界の権限は私にある。罪人を罰する権限もな」

 

部屋に入ってきたのはファッジとマクゴナガルである。

どうやらファッジが部屋に入ろうとするのをマクゴナガルが止めようとしていたようだ。

 

その理由は直後にはっきりと分かった。

 

 

「吸魂鬼!」

 

部屋の中が急に冷蔵庫のように冷え切ったかと思えば、ファッジの後ろに1体の吸魂鬼が付いてきていた。

 

幸い、エスペランサとセオドールは度重なる吸魂鬼との戦闘や持ち前の精神力で吸魂鬼の影響を受け難くなっている。

 

 

「む!何故、ここに生徒がいるのだ!罪人と一緒に!」

 

ふっくらした顔を赤くしながらファッジが怒鳴る。

 

エスペランサはファッジの来た理由がまだ理解出来ていなかったが、嫌な予感がしていた。

構えた銃の銃口を吸魂鬼に向ける。

 

 

「何だね?その道具は」

 

ファッジがエスペランサに聞くが、エスペランサは質問を無視した。

 

「大臣。何をするつもり何ですか?」

 

「決まっている。そこにいる罪人を処分しに来たのだよ」

 

「は?処分?」

 

「そうだ。そのために吸魂鬼を連れてきたんだから」

 

「そんな馬鹿な。裁判は?弁護人は?物的証拠は?」

 

「君は誰に口を効いているのかわかっているのかね?魔法大臣は魔法界においてあらゆる権限を持っている」

 

小柄な魔法大臣は戦闘服姿のエスペランサに近づいて、言い放つ。

しかし、エスペランサの服に血がこびりついている事に気付くと、ギョッとしたように後ろに下がった。

 

「越権行為です。大臣。かつて、ヴォルデモートが台頭していた直後は臨時的に形式上の裁判で次々に罪人をアズカバンに入れていましたが、今は平時です。魔法界の法律に従えば、物的証拠もしくは魔法的証拠を元にして裁判が開かれ、罪人は弁護人をつけることもできます!」

 

セオドールもファッジに食ってかかった。

ファッジはセオドールがヴォルデモートの名前を口にした事に慄いたし、ノット家の息子が居ることにも驚いていた。

 

「この子たちの言う通りですよ。大臣。クラウチは裁判で証言をすべきなのです」

 

「その必要は無い。クラウチJr.が何人も人を殺したことは分かりきっている!ここで刑を執行しても問題はないのだ!」

 

「大有りです!誰を殺したかも分からないのに刑を執行するなんて、言語道断ですよ?」

 

マグゴナガルとファッジが言い争う。

 

エスペランサはファッジが現実から目を逸らし、魔法界、いや、自分の政権を脅かす元凶となるクラウチJr.の抹殺を企んでいることを察した。

魔法界のことなど考えていない。

自分の保身だけ考えている人間だ。

 

「大臣。このクラウチJr.はヴォルデモートの指示を受けて、今回の事件を引き起こしました。真実薬を使用しているので信憑性はあります」

 

セオドールは冷静に説明するが、ファッジはもはや現実が見えていなかった。

 

「君達のような子供に何が分かるのかね?私は魔法大臣の権限によって罪人を処分しに来たのだ。その行動に非があるとでも言うのかね」

 

「それじゃ独裁国家の独裁者と変わりねえ!英国魔法界が法治国家だと言うのなら、法に則った行動を示すべきだろ!」

 

堪らず、エスペランサはファッジに怒鳴ってしまう。

彼も彼で内心焦っていた。

 

ここでクラウチJr.が処分されてしまえば、ヴォルデモートの復活を証明する事は出来ない。

魔法界はヴォルデモートの復活を公にすることが出来ず、その結果、闇の勢力は水面下で増長していくことになる。

 

だが、エスペランサの怒鳴りは逆効果だったようだ。

ホグワーツの学生に怒鳴られた事でファッジの怒りも頂点に達したようである。

 

「唯の生徒の分際でこの国の最高権力者に意見する気かね、君は!」

 

ファッジが叫ぶ。

 

この言葉から、エスペランサは英国魔法界が民主主義で無い事を理解した。

そもそも、英国魔法界では魔法大臣が多くの国民から慕われ、デモ等が起きない。

これは、魔法使い達が、マグル界に付け入れられない様に一応、魔法界の意思を統一し、一つの方向に歩みを揃えようと無意識に行なっているからだと言われている。

その結果が、ファッジの様な魔法大臣を生むことになったのだろう。

そもそも、純血や名家の人間に流され易く、ダンブルドアに劣等感を抱き、保身を第一に考えるファッジは民主国家の代表に向かない。

 

「やらせねえぞ!」

 

エスペランサはクラウチJr.を守る形で吸魂鬼とファッジに銃を向けようとした。

 

「止めろエスペランサ!相手は一応、魔法大臣だ!」

 

セオドールが急いで銃を下させる。

 

クラウチJr.をこの世で一番殺したいと願うエスペランサが、クラウチJr.を吸魂鬼から守ろうとするとは何という皮肉だろうか。

 

吸魂鬼はそんなエスペランサたちを脇目にして、クラウチJr.に向かっていく。

 

「フ、フフフ。吸魂鬼か。まあ、こんな展開になるだろうとは思っていた」

 

ボサボサの茶髪の間からギラギラした目を覗かせて、クラウチJr.が不適に笑う。

 

「だが、この俺に幸福な記憶は存在しない。吸魂鬼など恐るるに足らん存在だ」

 

彼は自分の運命を受け入れていた。

ここで吸魂鬼に接吻されれば、ヴォルデモートの復活という事実は公にならず、それは、ダンブルドア勢力にとって痛手となる。

秘匿したまま、ヴォルデモートの軍勢は力をつけることが出来るだろう。

ならば、ここは大人しく吸魂鬼に魂を吸われた方が、ヴォルデモートにとっての利益となる。

クラウチJr.にとって最後の奉公であった。

 

「おやめなさい!コーネリウス!」

 

「くそっ!」

 

マグゴナガルが必死でファッジを止めようとしたが、ファッジには何も聞こえていない。

 

エスペランサは吸魂鬼に銃口を向けたが、吸魂鬼に通常の弾薬は効果が無い。

センチュリオンには吸魂鬼に有効なバジリスクの毒から造り出したポイズンバレットが存在していたが、残念ながら、手元には無かった。

 

 

タン!タンタンタン!

 

 

エスペランサは吸魂鬼の頭上に威嚇射撃を行う。

壁に穴が開き、その威力にファッジは思わず尻込みをしたが、吸魂鬼は反応せず、クラウチJr.に覆いかぶさった。

 

 

クラウチJr.の口から魂が吸われ始める。

 

吸魂鬼の接吻が始まった。




ケータイで三点リーダを打つ術がわからない泣
PCのある環境に行けたら直します汗
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