金ローで賢者の石がやっていたので実況スレ見ながら観てました。
クラウチJr.は優秀な学生だった。
OWLをはじめとした公式試験では全てを最優秀でクリアし、スリザリンの監督生も勤め上げた。
しかし、決して彼は天才型の人間ではない。
優秀さは彼の血の滲むような努力の結晶だったのだ。
何がクラウチJr.を努力の道へと進ませたのか。
それは、父親の存在である。
父親は職業人間であり、Jr.にあまり多くを語らず、寡黙な人間であった。
だが、クラウチJr.はそれを気にした事はあまり無かった。
次期魔法大臣とも言われる父の様に、自分も優秀になりたい。
もし、自分が優秀になれば、父は自分を認めてくれる。
その時こそ、父親らしい言葉をかけてくれるに違い無い。
クラウチJr.はそう信じていた。
だが、現実はそう甘く無い。
時代はヴォルデモートの支配する暗黒期を迎えようとしていた。
スリザリンの中でもヴォルデモート支持派は力を増し、スリザリンという寮自体が死喰い人育成施設と化していた。
クラウチJr.は父親がヴォルデモートという急激に力をつけてきた魔法使いに悩まされている事を知っていた。
故に、彼は反ヴォルデモート派に所属した。
だが、だからといってクラウチJr.が真っ当な魔法使いという事にはならない。
彼も彼で、闇の魔術に魅了されつつあったのだ。
それを、生徒も教職員も見抜いていた。
ホグワーツ7年生の時。
魔法省入省試験において、親ダンブルドア派の試験官に当たってしまった事が何よりの不運であろう。
この試験官は良くも悪くも正義感の塊であり、クラウチJr.が高官のクラウチの息子であることに忖度などしなかった。
試験官はクラウチJr.が生粋のスリザリン生であり、ヴォルデモート派に寝返る可能性を考慮したのだ。
そして、クラウチJr.はたった一人の試験官により試験を落とされてしまったのだ。
入省試験に落ちた事を知ったクラウチは、息子であるクラウチJr.に「お前など息子では無い」と言い放ってしまう。
これは、彼が度重なるヴォルデモート被害に心身共に疲労していた為に、心にも無いことを言ってしまったのであるが、クラウチJr.の心に深い傷を残してしまった。
クラウチJr.はそれでも尚、ヴォルデモートの軍勢(この時期には既に死喰い人という名がついていた)には加わらなかった。
彼は優秀な頭脳を持つ故に、ヴォルデモートの理想とする世界が魔法界を破滅に導くことを理解していたのだ。
故にクラウチJr.は教師を目指し始めた。
親の愛に飢えた子供を、立派な魔法使いに導く事を考えたのである。
しかし、この志も打ち砕かれる。
ホグワーツは魔法省入省試験で、死喰い人側に寝返りそうだからという理由で落とされた青年を教師にしようとはしなかったのである。
クラウチJr.は失望した。
高い志を持っても、それは打ち砕かれる。
そんな時に出会ったのがヴォルデモートである。
クラウチJr.はヴォルデモートの理想を否定しようとした。
が、人心掌握の術に長けたヴォルデモートの甘い言葉に簡単に騙されてしまう。
いや、騙されたのでは無い。
クラウチJr.は父親や世間に復讐する為にヴォルデモート側についたのだ。
今の世界を壊し、自分の価値を見出す。
「父親に認められることも、教育に携わることも叶わぬ世界など壊してしまえば良い。俺様もお前と同じ絶望を味わった。俺様と共に世界を造らないか?」
ヴォルデモートの言葉は美しかった。
クラウチJr.は即座に死喰い人となった。
死喰い人は一定の能力が無ければなることが出来ない。
つまるところ死喰い人は、ヴォルデモート軍における幹部なのだ。
クラウチJr.程優秀な人材であれば、死喰い人入りは難しくは無かった。
彼はヴォルデモートの意のままに、魔法使いやマグルを狩っていった。
やがてヴォルデモートがハリー・ポッターに敗れると、クラウチJr.は空っぽになってしまった。
主君を亡くした彼は半ば自暴自棄になり、片っ端から魔法使いを殺して回った。
そして、彼は捕らえられ、ロングボトム夫婦を拷問した罪でベラトリックス夫婦と共にアズカバンに収監された。
その裁判は弁護人をつけることすら出来ない不当なものであった上に、父親のクラウチが取り仕切っていた。
クラウチJr.は久々に見た父親に命乞いをする。
希望が何も無い世界、ヴォルデモートも失った世界で、もし、父親が自分を見逃してくれるのなら。
この世界にも希望はあったのだと思える。
それだけで少しは救われる。
だが、やはり、現実は厳しかった。
彼の父親は再び、「お前など息子では無い」と、今度は本心から言い放ったのである。
故にクラウチJr.はこの世界に絶望した。
父親に失望し、殺意を持った。
父親を殺す際には、何の感情も湧いて来なかった。
(この俺に幸せな記憶など存在しない。吸魂鬼の影響を受けずに、廃人にされる訳だ)
クラウチJr.は接吻をしてこようとする吸魂鬼の口をぼんやりと見ながらそう思った。
吸魂鬼のフードの下を見た者は存命している魔法使いの中には居ない。
クラウチJr.はフードの下がどうなっているのかに少し興味が湧いた。
恐らく、彼が人生で最後に抱いた好奇心だろう。
カラン
カランカラン
何かが聞こえる。
懐かしい音。
クラウチJr.は耳を澄ました。
彼の脳裏に、古い記憶が映し出される。
とうに忘れ去っていた記憶。
クラウチJr.はホグワーツに入る前の子供の姿に戻っていた。
周りを見渡すと、懐かしい近所の森の中であることが分かった。
青々とした森林に囲まれて、彼は一人寂しく、空き缶を蹴って遊んでいたのだ。
カラン
カランカラン
少年の日のクラウチJr.はひたすら一人で缶を蹴り続ける。
「こんなところで何をしているんだ?」
ふと見上げれば、そこには若さの残る父親が立っていた。
そうか。
これは忘れ去っていた遠い日の思い出だ。
「一人で森の中であそんでたのか?」
「うん...」
父親は困ったような顔をして、クラウチJr.を肩車した。
「こんなところで一人で遊んでいてもつまらないだろう?」
「うん・・・」
「ホグワーツに行けば、たくさんの友人が出来る。そうしたら、もっと毎日楽しくなるはずだ」
父親はぶっきらぼうに言うが、彼が家族らしい会話に慣れていない事をクラウチJr.は知っている。
「ホグワーツに行ったら友達を作るより、勉強するよ。父さんみたいな人になるんだ」
「私のようになっても良い事は無い。勉強するよりも良い友達をたくさん作るんだ」
「えー。そうなの?」
「ああ。私は学生時代、もっと友人をたくさん作るべきだった。そっちの方がきっと楽しかったに違いない」
「ふーん」
父親はクラウチJr.を肩に担ぎながら、我が家へと足を進める。
晩飯の良い匂いが漂ってくる。
「早く帰ろうか。母さんが晩飯を作って待ってくれてる」
「うん!」
景色が白く濁り始め、記憶の場面が変わる。
書類と本が大量に積まれ、大きな机が真ん中にあり、赤い絨毯が敷かれた部屋。
どうやら魔法省の執務室らしい。
やたらと豪勢な机の上に書類を並べながら、クラウチが部下に、普段は見せない満面の笑みで話しかけている。
「いやあ、自慢の息子だよ。OWLの全ての科目で秀を取るなんて!」
「珍しいですね。あなたが息子の自慢をするなんて」
「私は不器用だから、息子を上手く褒めたりすることが出来ないんだ。だが、いつか歩み寄れる日が来ると良い」
場面は変わる。
クラウチはだいぶ老けていた。
時期的にはクラウチJr.がアズカバンに投獄された後だろう。
クラウチは生真面目そうな職員を自室に呼び出して怒鳴りつけていた。
「何故!何故、私の息子が死喰い人になったのか知っているか!」
「い、いえ」
「私の息子はな!Jr.はな!お前に職員試験と教員試験をスリザリンに染まっているからという理由で落とされたから闇堕ちしたんだ!」
生真面目そうな職員はJr.を採用試験で落とした試験官であった。
ガクガクと震えながらも職員は反論する。
「し、しかし。彼が闇の魔術を学ぼうとしていたのは事実で」
「ではルシウスやマクネアはどうなるんだ!」
クラウチは机に置いてあったクリスタルの置物を壁に投げつけた。
置物は派手な音を立てて砕け散る。
「わ、私は」
「Jr.は例のあの人に元々忠誠なんて誓っていなかった!あいつはそんな奴では無かったんだ!」
「ですが!あなたも息子さんには冷たい態度を取っていたのでしょう?それに、裁判でアズカバンに投獄したのはあなただ!あの時、あなたは息子に"お前は息子ではない"と言い放ちましたよね」
クラウチはその言葉に目を泳がせた。
Jr.が入省試験で落ちた時に冷たい態度を取ったのは事実だ。
しかし、それは落ちた理由を知る前の話である。
「確かに、私にも責任はある。だから、私は息子を救済しなくてはならん」
「どういう意味です?」
「君が知る必要は無い。だが、何十年かかっても私は息子を守り続ける」
そう言ってクラウチは執務室を後にした。
ああ。
これが親父か。
これが親父の本当の姿なのか。
自分は愛されていたのか。
クラウチJr.は全てを知った。
クラウチは父親として不適切な行動をいくつも取った。
しかし、それでも、彼は息子を愛していた。
Jr.をアズカバンから救出したのは母の願いを聞いただけでは無かったのだ。
そんな父親をJr.は殺害した。
本当のことを知っていたら未来は変わったのかもしれない。
吸魂鬼は最悪の記憶や絶望を与えて魔法使いを廃人にしめしまう生き物だ。
だが、吸魂鬼も一応、生き物である。
生き物はミスをする。
吸魂鬼はクラウチJr.にとって最悪の事実を突き付けて絶望させようとしたが、そうはならなかった。
彼は最後の最後に見させられた真実によって絶望ではなく、幸福感を抱いた。
父親に愛されていたという事実を知ることで彼はこの世の未練が無くなったのである。
「これが、俺の世界の真実なのか。そうか。世界は思っていたより悪い物じゃ無かったんだな」
薄れ行く意識の中、Jr.は笑う。
「ならば、その世界をエスペランサ・ルックウッドが守り切る事を信じよう」
吸魂鬼の接吻は終わった。
クラウチJr.から魂が抜き取られ、彼は人では無くなった。
しかし、魂の抜けた彼の顔は何故か微笑んでいた。
エスペランサはキラキラと光る湖をぼうっと見ていた。
自分の身体の一部が欠けたような、そんな感覚に陥っている。
クラウチJr.の刑執行から1日が過ぎていた。
魂の抜けたクラウチJr.はファッジによって運ばれ、後に残されたエスペランサとセオドールには何もする事が出来なかった。
「エスペランサ」
「ハリーか」
「うん。君に伝えたいことがあって」
不意に声をかけられ、後ろを振り向けば、青々とした芝生の上にハリーが立っていた。
「伝えたいこと?」
「うん」
エスペランサの横に座りながらハリーが静かに話し始める。
「僕がヴォルデモートと戦った時の話は聞いてるよね?」
「ああ。ハーマイオニー経由で聞いた。ついでにダンブルドアとクソったれのファッジが決別したことも」
「あの戦いの最後で、僕はセドリックに伝言を頼まれたんだ」
「伝言?」
「うん。セドリックはエスペランサの下で戦えたことを誇りに思うって言ってた。それから、"僕は最後まで戦った。君も最後まで戦え"って」
「そうか。あいつは最後まで戦ったんだな」
セドリックは最後の最後までセンチュリオンの旗を掲げて戦った。
ならば、その旗を拾い上げ、我々も戦う。
エスペランサは決意を新たにする。
「エスペランサ?」
「ハリー。ありがとう。俺もヴォルデモートと戦う。俺の最終目的はヴォルデモートを倒す事では無いが、まずは奴を倒さなければならん」
「君も僕の言う事を信じてくれるんだね?」
「当たり前だ。仲間だろ?」
「そっか。君が居るなら心強いよ」
思えばハリーとエスペランサは1学年の時から何度も共闘していた。
「お取り込み中申し訳ありません。少し話したい事があります」
エスペランサとハリーの会話に、いつの間にか訪れていたフローラが割り込んで来た。
フローラの姿を見るなり、ハリーは露骨に敵意を表した。
「カロー。何の用だい?」
「随分と喧嘩腰ですね」
「当たり前だろう!」
ハリーは立ち上がってフローラに詰め寄る。
セドリックを殺したのは彼女の義父であるアエーシェマだ。
そして、ハリーはアエーシェマがフローラの義理の父親であることを知らない。
つまり、フローラもアエーシェマも同類の人間であると思い込んでいた。
「セドリックは君の父親に殺されたんだ!あいつは楽しみながらセドリックを殺したんだ!」
ハリーは今にも掴みかかりそうな勢いでフローラに近づく。
見れば、彼は杖を握りしめていた。
「止めろハリー。フローラはセドリックの死とは無関係だ」
「エスペランサまでそんな事を言うの?こいつは所詮スリザリンなんだ。マルフォイたちと同じで、セドリックの死を何とも思っていない。ヴォルデモートの復活を喜んでる連中なんだ」
無理も無い話だ。
ヴォルデモート復活の儀式にはマルフォイやセオドール、クラッブやゴイルの親も居たのだからスリザリン生が無関係だと思う方がおかしい。
「言いたい事はそれだけですか?」
「何!?」
「あなたはもっと私に言いたい事があるのでしょう?それなら場所を変えて二人で話しましょう」
表情を変えずに淡々と言う。
「おい。フローラ。お前は何も悪く無いんだ。なあ、ハリー。お前もフローラを誤解して・・・」
「良いんです。ここからは二人で話します」
そう言って彼女はハリーを連れ出した。
……
ハリーとフローラは校庭の隅の人のいない場所に移動した。
エスペランサは渋ったが、フローラはそれを押し切った。
校庭の隅にある箒置き場の裏へ移動した後、彼女は話を始めた。
「あなたが言いたい事は察する事ができます。セドリックの事ですよね?」
「そうだ」
「私の義父がセドリックを殺めた事は聞きました。スリザリンでも話題になっています。私の姉が話を広めていたので」
「へえ。スリザリンじゃあヴォルデモートの復活を祝福してパーティーでもしてるのかい?」
ハリーが怒りを露わにしながら言う。
「そうですね。半々といったところでしょうか?スリザリンは確かにヴォルデモート信者も多いですが、中には半純血やマグル生まれも存在しますので、喜んでいない人も多いです」
「で、君は喜んでいる側の人間な訳だ。カロー家の人間だし」
「あなたがどう思おうと勝手ですが、私はヴォルデモート信者ではありません」
フローラがヴォルデモートの名前を口にしたことにハリーは驚いた。
ヴォルデモートの名前を口にする人間は彼の知る限り、ダンブルドアとルーピンとシリウス、そして、エスペランサだけだったからだ。
「でも、君はカロー家の人間だろう?」
「ええ。そうです。私はどこへ行ってもカロー家の人間なんです。家でも学校でも。あなたがどこへ行っても生き残った男の子と言われてチヤホヤされる様に、私もどこへ行ってもカロー家の人間としか見られないんです」
「チヤホヤなんてされてない!僕が今までどれだけ嫌な思いをしてきたか分かるのか?」
「嫌な思い、ですか。私からしてみれば、あなたは羨ましい程、優遇されていると思います」
「優遇?ダーズリー家で疎まれたり、スリザリンの継承者呼ばわりされたり、何度も殺されそうになったりしているのに?」
「でも、あなたには優しくしてくれる人が大勢居るじゃないですか。カロー家の人間に優しくする人が英国魔法界に居ると思いますか?」
そこでハリーはようやくフローラの言いたい事が分かった。
ハリーは魔法界ではどこへ行っても生き残った男の子として扱われる。
それは彼にとって迷惑な話だったし、うんざりしていた。
だが、スリザリン生やヴォルデモート側の人間はともかくとして、大多数の魔法使いは生き残った男の子を悪い感情で見る事は無かったのだ。
英雄と崇める者もいれば、救世主として尊敬する者もいる。
だが、フローラはその逆なのだ。
善良な魔法使い達にはカロー家の人間だと見られて疎まれ、軽蔑され、迫害される。
スリザリンの中でもカロー家の人間は恐れられる。
どこへ行っても彼女に善意を向ける人などいなかったのだ。
「私は、何故、カロー家の人間にされてしまったのか。ずっと運命を呪ってきました。家の中にも外にも優しい言葉をかけてくれる人なんて居ない。そう思ってずっと生きてきました」
「・・・」
「私は、普通の女の子に生まれたかったんです。それこそ、魔法なんて知らないマグルの子に生まれればどんなに良かったか。そう何度も思いました。ホグワーツに入ってからも私を見る周りの目は変わりませんでした。唯一、ダフネが仲良くしてくれたことが救いでしたが」
フローラがホグワーツで周りの生徒からどのように思われているかはハリーも知っている。
残虐非道なカロー家の人間。
アエーシェマの息のかかった人間。
彼女には近づかない方が良い。
ハリーもフローラをそう見ていた頃があった。
最近はエスペランサと仲良くしている姿を見たり、フローラの姉の方が残虐である故にフローラはまだマシと思ったために少し気を許してはいたが。
「そんな中、あの人に出会いました。あの人はグリフィンドール生であるにも関わらず、私の事を助けてくれました。いえ、あの人にとって寮なんてどうでも良い事だったんでしょうね」
「エスペランサのこと?」
「ええ。そうです。あの人は寮や家で人を見たりしません。善人か悪人かでしか見ていません。単純な人だとは思いますが、はじめて私の事をカロー家の人間では無く、フローラ・カローとして見てくれたんです」
ハリーはフローラの目を見た。
相変わらずの無表情であったが、真剣な目をしている。
彼女は本当のことを言っているのだと理解出来た。
「だから、私はセドリック同様に彼の事を信頼しています」
「そうなのか」
エスペランサはフローラに絶対の信頼を置いている。
それは、ハリーたちも知っていた。
そして、フローラもまた、エスペランサに絶対の信頼を置いていた。
「ですが、セドリックの死はカロー家の人間が引き起こした事です。あなたのやり場の無い怒りは私に向けてくれても構いません。殴ってくれても結構です。むしろ、そうしてくれた方が私も楽です」
セドリックの死にフローラは関与していない。
センチュリオンの隊員たちもそれは分かっていた。
しかし、彼女の義父であるアエーシェマがセドリックを殺したという事実を聞いてから、隊員たちはフローラにどう接して良いのか分からなくなってしまっている。
セドリックの死を悲しんで夜な夜な枕を濡らすダフネやアステリアを横に見ながら、彼女は罪悪感を募らせていった。
いっそのこと、誰かに怒りをぶつけられた方が楽なのでは無いか。
そう思ってハリーに接触したものの、気が付けば何故か自分がエスペランサに信頼を置いている旨の話をしてしまっている。
「いや。君はエスペランサの仲間なんだろ?じゃあ、敵じゃないよ。僕には君を責める事は出来ない」
「そう、ですか」
「それに君を殴ったりしたらエスペランサに半殺しにされそうだし」
「そんな事は無いと思いますけど?」
「ロンが前に君の悪口を言ったことがあるんだけど、その時にエスペランサはとっても怒ってたからさ。エスペランサは君の事を大切に思っている筈だよ」
ハリーの言葉を聞いたフローラは驚いた様な顔をした後で、少しだけ顔を赤らめて目を泳がせた。
「それは本当ですか?」
「うーん。多分ね。エスペランサはシャイだから言葉には出さないけど」
フローラはすぐに表情を元に戻す。
そして、話題を変えた。
「あなたに話さなくてはならない事はもう一つあります」
「え?」
「私たちやダンブルドアはあなたの話を信じていますが、大多数の生徒や魔法省は信じていません」
「それは、知ってるけど」
「用心して下さい。あなたの事を陥れようとするのは死喰い人たちだけではありません」
「どういうこと?死喰い人以外にも敵がいるの?」
「私はアエーシェマ・カローという人間がどのような人間か知っています。彼は自分の不利益となる物は全て排除しようとする人です。そして、利用出来るものは全て利用する。この意味が分かりますか?」
「いや、全然わからないけど」
「アエーシェマは魔法省を利用してダンブルドアやあなたを排除しようとしてくる筈です」
「アエーシェマが魔法省を使って僕に攻撃してくるってことかい?そんな事が出来るとは思えないけど。ここにはダンブルドアも居るし」
「考えが甘いですね」
フローラはそう言いつつ、ローブの内側からロケット花火のような魔法道具を取り出した。
マグルのスーパーでも売ってそうな見た目である。
「何それ?悪戯専門店で売ってそうな玩具みたいだけど」
「まあ、マイナーな魔法道具なので知っている人は少ないと思いますが。フィリスターのロケット花火という悪戯グッズにホムンクルスの魔法を合わせた護身用の道具です」
「隠れん防止器みたいなものかな?」
「系統は似ています。これを上空に発射すると、発射した魔法使いの居る場所から半径数キロ以内にいる魔法使いの耳に警報を届けることが出来るようになっているんです」
「便利そうだけど、なんでこれを僕に渡すんだ?」
「アエーシェマに工作された魔法省や死喰い人があなたの事を攻撃しようとするなら、ダンブルドアのお膝元から離れる夏季休暇中です。もし、夏季休暇中に危険な目にあったら、そのロケット花火を使って下さい」
「使うって言っても、プリペット通りの周辺に魔法使いなんて居ないから意味ないと思う」
「そうでしょうか?私がダンブルドアならあなたの周囲には護衛の魔法使いを隠れて配備させておきますけどね」
ハリーは半信半疑であったが、一応、ロケット花火を受け取った。
「ありがとう。僕は君の事を疑ってた」
「カロー家の人間を疑わない方がおかしいですよ」
フローラは珍しく少しだけ笑い、城の中へ戻って行った。
炎のゴブレットはあと1〜2話です。
今は不死鳥の騎士団のプロットを書いています。