炎のゴブレット編は今回でラストです!
キングスクロス駅に向かうホグワーツ特急の中で、エスペランサは今後の魔法界の行く末を考えていた。
彼が、ホグワーツ特急が実はマグルによって作られたものであると知ったのは最近のことである。
それはさておき。
ヴォルデモートの勢力は魔法省の内部まで及んでいる事は魔法界にまだ疎いエスペランサでも理解出来る。
セオドールの指摘通り、ヴォルデモート勢力は魔法省内で工作を行い、ダンブルドア勢力の弱体化を謀ると考えられる。
ダンブルドア個人の魔法力は強いが、彼は一教師でしか無く、魔法省がその気になればその行動に制限を設けることも不可能では無い。
加えて、魔法大臣のファッジは非常に操り易い人物であるから、ヴォルデモート勢力が英国魔法界をコントロールするのは容易い、というのがセオドールの意見であった。
とすれば、現段階でまともにヴォルデモート勢力と戦える組織は存在しない。
最も、ヴォルデモート勢力も全盛期より弱体化はしているので表立った行動はし難いが、それもいつまで続くかは分からないのだ。
魔法省を内部から麻痺させ戦力を整えれば、血の気が多い死喰い人集団はすぐにでも戦い始める。
敵が行動を起こすとしたら遅くても半年後。
セオドールは断言していた。
ダンブルドアの息のかかった人間が警戒する現段階では如何に死喰い人と言えど、仲間を集めるのは簡単では無い。
それに、ヴォルデモート復活を信じていない魔法省上層部を利用するのは死喰い人側にとってもメリットであるから、あと半年は戦力を整えることに集中するだろう。
その半年でエスペランサはセンチュリオンの戦力をヴォルデモート勢力と互角に渡り合える程度まで強化しなくてはならない。
エスペランサはハリーたち3人とコンパーメントを共にしていた。
普段ならセオドールやフローラと過ごしているのだが、今日は違う。
ヴォルデモートとの死闘を繰り広げたハリーの精神が病んでいないか心配になったエスペランサは、ここ最近、ハリーの側に居ることが多い。
それに加えて、ハリーの側に居ればダンブルドア勢力の情報が入ってくる事も多いだろうと考えていた。
「で、日刊預言者新聞には何も書いていないんだね?」
「ええ。小さい記事でハリーが優勝したことだけ書いてあるわ。セドリックのことはおろか、例のあの人についても何も書かれていないわ」
ハーマイオニーが手に持つ日刊預言者新聞の見出しには「ルード・バグマンと小鬼」というどうでも良さそうな見出しが記されていた。
「ファッジが情報操作してるんだろうな。ロンの父親は魔法省の役人だろ?何とか出来ないのか?」
「無茶言うなよ。マグル製品不正取り締まり局に何が出来るって言うのさ」
「パーシーはどうだ?」
「パーシーは魔法省大好き人間だぜ?魔法大臣に意見するなんてあり得ないさ。エスペランサはファッジに噛み付いたらしいじゃないか」
「ああ。なんなら銃口も向けた」
「こりゃマーリンの髭だ!その事、絶対にパーシーに言うなよ?」
「あ、ああ。肝に銘じておこう」
「でも、あれだけの事があったのにリータが記事にしないなんて珍しいね」
ハリーが気付く。
そういえば、最近はリータのゴシップ記事を見ていない。
「そのことなんだけれど。ふふふ。あの女は当分、記事をかけないわよ?」
やけに自信満々に言うハーマイオニーにエスペランサは怪訝な顔をする。
「どういうことだ?まさか、ハーマイオニー。お前、リータを殺………」
「あなたじゃないんだからそんなことしないわ。でもね、私、あの女の秘密を掴んだのよ」
「秘密?」
「ええ。実はリータはね。動物もどきなのよ。非正規の」
ハーマイオニーは小瓶を取り出す。
小瓶の中には1匹の黄金虫が入っていた。
どうやら、その黄金虫こそリータ・スキータらしい。
なるほど、とエスペランサは思った。
この大きさならあらゆる所に侵入して情報収集が出来るだろう。
そう言えばクリスマスダンスパーティーの日にエスペランサは黄金虫を見ていた。
「ほう。じゃあ君は哀れな新聞記者を捕まえたって訳かい?」
唐突に嫌味な声がしたと思えば、コンパートメントの入り口にマルフォイとその腰巾着が立っていた。
「その口ぶりだとマルフォイ達はリータが動物もどきだと知っていたみたいだな」
「ああ。あのウスノロ教師を辞めさせるのに使えるかと思ったんだが、期待外れだったみたいだ。お陰で一年近くあの尻尾爆発スクリュートの面倒を見る羽目に」
魔法生物飼育学を履修していないエスペランサは尻尾爆発スクリュートがどの様な生物なのかは分からなかったが、ハリーたちの反応からして、まともな生物では無さそうだった。
「で、君はそんな事を言いに来たのか?悪いけど出ていってくれないか?不快だから」
ハリーが辛辣に言い放つが、マルフォイは聞いていない。
「ふん。ポッター。偉そうにしていられるのも今のうちだぞ。あの人が復活したからには、まず狙われるのはお前達だ。穢れた血と血を裏切る者」
「良かったな。ハリー。少なくともマルフォイはヴォルデモートの復活を信じているらしいぞ」
エスペランサは皮肉を込めて言い放つ。
マルフォイの父親も死喰い人としてヴォルデモート勢力に加わっているのだろう。
となれば、センチュリオンの敵に違いない。
エスペランサがヴォルデモートの名前を口にしたことにマルフォイは動揺していた。
「最初に言った筈だ。付き合う人間は選べ、と。ポッター。君はそいつらを選んだんだ。愚かだったな」
「それで?マルフォイ。お前の家族はヴォルデモートに狙われないという保証があるのか?」
「なにっ?」
「俺の見立てが正しければ、ヴォルデモートは気分次第で配下の人間も容赦無く殺す野郎だ。お前の家族だってヴォルデモートに殺される可能性はゼロでは無い」
「そんな事はない。僕の家は闇の帝王にも認められた聖28族だ」
その理論ならばウィーズリー家も正統な純血であり、ヴォルデモートに認められるべき存在になってしまうのではないだろうか、とエスペランサは思った。
「で、純血ばかりが生き残って、他の人間は片っ端から殺される世界をお前は望むのか?」
マルフォイの目が一瞬だけ泳ぐ。
彼はヴォルデモートの支配する世界について深く考えたことが無いのかもしれない。
マグル生まれを差別していても、大勢のマグル生まれやマグルが虐殺される世界を彼が望んでいるかと言われれば、その限りではない筈である。
「付き合う人間は選べ、か。ヴォルデモートや死喰い人と付き合うか、ダンブルドアと付き合うか。お前も付き合う人間は選んだ方が良いんじゃないか?」
「後悔することになるぞルックウッド」
「それはこっちの台詞だ」
マルフォイはクラッブとゴイルを連れてコンパートメントを出ていった。
ハリー達だけなら兎も角、エスペランサを相手にするのは得策では無いと判断したらしい。
「エスペランサが居るとマルフォイもすぐ退散するから楽で良いね」
「そりゃどうも。そんな事より、ハーマイオニー。リータはどうするつもりなんだ?まさか、死ぬまで小瓶に詰め込んでおく訳にもいかないだろう」
「あー。そうね。私、リータに少なくとも1年は記事を書かない約束をさせてあるの」
「あの女はその約束に応じたのか?」
「ええ。約束出来ないなら小瓶から出さないわよ?って言ったら従ったわ」
「お前、それは約束じゃなくて脅迫だろ。怖っ」
「あら?古今東西、魔女なんてそんなものよ?」
ハーマイオニーがゾクッとするような笑いをする。
小瓶にはどうやらガラスが割れないようにする特殊な魔法がしてあるようで、リータはどう足掻いても脱出する事ができないみたいだ。
「なあ、ハーマイオニー」
「何かしら?」
「その黄金虫なんだが。この1年間、俺に貸してくれないか?」
エスペランサの申し出にハーマイオニーは戸惑った。
「どうするつもり?」
「どうせ、その女は1年間無職になるんだろ?なら、俺が雇用してやろうと思ったんだ。性格は兎も角として、未登録の動物もどきは何かと使えそうだ」
ハーマイオニーはエスペランサがリータを使って何をしようとしているのかを察した。
恐らくは諜報活動。
今後、ハーマイオニーにとってもヴォルデモート陣営の情報は欲しかったし、エスペランサならリータを有効活用も出来るだろうと考えた。
「まあ、あなたなら任せても大丈夫そうね。間違っても黄金虫を潰したりしないようにね」
「勿論だ。こいつは有効活用させてもらう」
薄気味悪い笑顔を浮かべたエスペランサは小瓶を手に取り、コンパートメントを去った。
列車の最後尾に存在する男子便所の個室に入ったエスペランサは小瓶から黄金虫を解放した。
黄金虫は待ってましたとばかりに逃げようとしたが、彼はそれを逃さず捕らえた。
「潰されたくなければ元の姿に戻れ」
人差し指と親指でつままれた黄金虫は仕方なく、元の姿、つまりリータの姿に戻った。
列車内の個室は思ったよりも狭く、リータが元の姿に戻ると、鮨詰め状態となってしまう。
「思ったよりも狭いなっ!くそっ。て、臭い!」
黄金虫から中年女となったリータであったが、その姿は悲惨であった。
ハーマイオニーに小瓶に閉じ込められてからかなりの時間が経っているからだろう。
痩せこけている上に、シャワーも浴びていないなら酷く臭った。
戦場に出ればシャワーなど浴びないから臭いには鈍感なエスペランサも、流石に便所の個室の中で数週間風呂に入っていない人間と閉じ込められれば顔を顰めたくもなる。
「なっ!それは、あの小娘がっ」
「馬鹿!声を出すな!」
エスペランサは急いで隠し持っていたナイフをリータの腹部に押し付ける。
「ひっ!私を殺すざんすか?」
「それならもっと前に殺している。だが、声を上げて助けを求めたり、逃げようとはしない事だ。線路に転がる肉塊になりたくなければな」
「よ、要求は?1年間、記事を書かないと言うことは小娘に誓った筈………」
「それもあるが、ここは狭過ぎるな」
エスペランサは個室の扉を開け、便所の中に彼ら以外誰もいない事を確かめると、耳塞ぎの呪文と人避けの魔法をかけた。
セオドールに教えてもらった人避けの魔法はかなり使い勝手が良い。
個室から出たエスペランサはリータにナイフを突きつけるながら話を進めた。
「お前の記事、読んだぜ?」
「え、ええ。ホグワーツ生なら皆読んでいると思うざんす」
「あー。違う違う。20年程前の記事だ。偶々見つけた、三流雑誌のバックナンバーを読んでいたら、あんたの記事があったんだ」
「20年前…………」
「今のゴシップ記事とは比べ物にならないクオリティだった。少々危ない記事だったがな」
リータが若い頃の記事を見つけたのはかなり偶然だった。
ホグワーツの廊下に爆薬を仕掛けている時に、埃を被った20年前の雑誌が出てきたのだ。
既に廃刊になった雑誌であり、どうも政権批判を中心に書かれたものらしかった。
「20年前の記事、ということは"連載・魔法省の実態を暴く"ざんすね」
「それだ。記者、つまり若い時のあんただが、の経験不足と知識不足から考察はお粗末なものだったが、情報収集と整理は大したものだった。魔法省が台頭してきた死喰い人に牛耳られている事実も追及してたしな。何で、今はゴシップ記事なんて書いているんだ?」
「何故か?何故かって?そりゃ、現実を知ればそんな記事に情熱をかけたくなくなるからね」
「現実?」
「記事っていうのは誰の為に書くか分かるかい?」
「読者、と言いたいところだが、まあ、スポンサーの為だな」
「そうざんす。新聞も雑誌もスポンサーの金が無ければ発行出来ない。魔法界の売れる雑誌のほとんどは魔法省がバックについている。週刊魔女も箒の選び方も。ついていない雑誌は部数も刷らせてもらえず、売れないざんすよ」
「なるほど。クィブラーとかか?」
「あれは、まあ、もっと根本的な所がおかしい雑誌なんざんすけど。とにかく、魔法界の雑誌や新聞なんてそんなもん。魔法大臣がゴシップ記者のリータ・スキータの記事を鵜呑みにしている事からも酷さが分かるってもんさ」
リータはナイフを突きつけられているからか、はたまた、数週間監禁された疲れからか本音を吐露した。
「魔法界は狭い社会だからな。で、そんな魔法界でまともな記事を書く気力を無くした、と」
「ま、ゴシップ記事が楽しいっていうのも嘘じゃ無い。馬鹿な魔女たちを操作するのも一興ってね」
エスペランサはナイフを仕舞い込んだ。
ここまで聞き出せれば十分だ。
リータ・スキータはまだ完全に腐り切ってはいない。
「リータ。あんたはそんな魔法界を変えたいとは思わんのか?」
「そんな力はあたしには無いし、変えようとも思わない。少なくとも、今の記事でも金は取れる」
「ほう。では、質問を変えようか。今の英国魔法界をぶち壊すレベルの記事が書ける、もしくは、ぶち壊す情報が手に入るとすれば………。あんたはどうする?」
「ぶち壊す?言っておくけど、例のあの人の復活って情報だとしたら乗らないよ。金にならないざんす。エビデンスも無いし」
「あんたからエビデンスなんて言葉を聞けるとは思えなかった。だが、そんな情報じゃない。いや、必ずしも関係が無いと言うことでは無いが」
リータは既に助けを呼ぶ事も、逃げることもか忘れていた。
このルックウッドという少年はリータを利用しようとしているのだろう。
それは、理解出来る。
だが、彼の持つ情報とやらは禁断の果実だ。
知ってはならないと思いつつも知りたい。
曲がりなりにもジャーナリストであるリータの性であった。
「俺に協力しろ。どうせ1年間は給料も無いんだろ?なら、その1年間、俺が雇ってやる。その動物もどきの能力を見込んでな」
「え、得られる情報によるざんす」
「ああ。そうだな。もし、もしもだ。マグル界が魔法界を攻撃する算段を立てていたら、どうする?」
エスペランサはもう笑ってはいなかった。
そして、彼から引き出された情報はリータの想像を遥かに超える禁断の果実であった。
ホグワーツ特急は無事にキングスクロス駅に到着した。
生徒たちは家族と久々の再会を喜んでいる。
喜んでいないのはハリーくらいなものだろう。
エスペランサは魔法のゲートをとっとと潜り抜け、マグルの人混みの中へ消える。
やはり、マグルの世界の方が落ち着く。
1年間でマグル社会もかなり変わっていた。
エスペランサは魔法使い達の群れを離れ、トランク等の大荷物をロッカーに預けた後(ロッカーを4つほど使用した)、駅内にあった売店でマグルの新聞や雑誌を読み漁った。
オーストリアやフィンランドがEUに加盟したり、世界貿易機関WTOなるものが発足していたり、ベトナムがASEANに加盟しているのは興味深い。
極東の国では大地震が起きたり、サリンによるテロが起きていたりと大変だったようである。
ベトナムと米国が国交を正常化させたのはついこの間だ。
また、コンピュータ系の雑誌が増えている事にも驚いた。
Windows?なんだそりゃ。
エスペランサは気になった雑誌と書籍を数冊、購入した。
また、久々にマグルのジャンクフードも堪能する。
同じく駅の中にあったコーヒーショップで雑誌の一つを読みながら、砂糖を大量投入したコーヒーを飲む。
文明の味、文明の匂い。
魔法界は昔ながらの良さがあるが、エスペランサはやはり文明化された社会の方が安心出来た。
コーヒーを啜りながら人混みを見ていると、やはり、魔法使いが目立つ。
巨大なカートを引き、ローブを着て、フクロウを抱える子供が何人も通るのだから、マグル達だって驚くだろう。
「よくもまあ、あれで何世紀もバレなかったな」
溜息を吐くエスペランサだが、そのカラクリは簡単で、キングスクロス駅には常に魔法省の職員が居るのだ。
彼らはマグルの記憶を改竄して魔法界の存在がバレないようにしている。
ついでに言えば、9と4分の3番線以外にも魔法界に繋がるホームは存在した。
「失礼するよ」
エスペランサの座るカウンター席の横にスーツ姿の男が座ってくる。
やはり来たか、とエスペランサは思った。
「久しぶりですね。来るとは思ってましたよ。だから、こんなコーヒーショップで座ってたんだ」
「そうか。それならありがたいね」
スーツ姿の男も購入したコーヒーをカウンター式のテーブルに置いた。
カウンターは駅の通路に面しているから、駅中が見渡せる。
「コーヒーか。英国紳士なら紅茶でも飲むのと思っていたが」
「私にはこちらの方が合っている。弁当忘れても傘忘れるなと言われる英国紳士だが、私は傘よりもレインコートを羽織る人間だ」
「つまり、英国人では無いということか?」
「ノーコメントだね」
男の名前はジョン・スミス。
魔法界を知るマグルで、恐らくは軍隊の諜報機関に居る人間だ。
階級は大尉。
戦えばエスペランサが負けるだろうと思うくらいには危険人物である。
紳士的な態度を取ってはいるが、エスペランサは彼に自分と同じ臭いを感じていた。
「魔法使いっていうのは毎年、ここに来れば見る事が出来る。風物詩みたいなものだね」
「そうでしょうね」
「彼らは自分たちがマグルに存在を知られていないと本気で思っているのだろうか?」
「思っていますよ。だから、あんな格好で駅を彷徨うことが出来る」
「甘く見られたものだな。私達は彼ら以上に魔法界のことを知りつつあるというのに」
「………………。スミスさん。あんた達、まさかと思うが」
「ヴォルデモートの復活かい?そんな事はとっくに知っているさ」
やはり、な。
エスペランサは思った。
スミスの仲間は魔法省の内部にも居るらしいから、セドリックの死もヴォルデモートの復活の噂も耳にするだろう。
それに、エスペランサにスミスがわざわざ接触してきたのも偶然では無いだろう。
「で、あんた達は計画通り、英国魔法界を潰しにかかるのか?」
「さあ、それを君が知ってどうする?」
「前にも言ったが、俺は罪の無い魔法使い達は救うべき存在だと思っている。最悪、抵抗する」
「出来れば、君には死んで欲しくは無いね。あの人も悲しむだろうし」
「ん?何の話だ?」
「こちらの話だ。忘れてくれ。まあ、まだ我々も魔法界を攻撃しようとは思わんさ。作戦も部隊も何も準備していないし。だが、ヴォルデモートの復活は我々でも観測した」
「観測だと?」
「リトルハングルトン村という寂れた村に専門の部隊を展開させてある。昨年のワールドカップでの出来事もあるし、我々も警戒はしていた。そして、つい1ヶ月前にリトルハングルトン村で強力な魔法が使用されたことを観測した」
「リトルハングルトン村か。ああ。恐らくそこでヴォルデモートは復活した。俺には防ぐ事も出来なかった」
「そうだね。君に防いで欲しかったというのも本音だが。我々の上層組織は少し意見が違ってね。もし、ヴォルデモートが復活するのなら、復活させておくのも良いと思っているんだな」
「そんな馬鹿な」
「君なら分かると思う。国内に死喰い人やヴォルデモート派の人間、アウトローな人外が隠れ住んでいるとして、こいつらを殲滅させるにはどうすれば良いと思う?」
「なるほど。ヴォルデモートを復活させ、ヴォルデモートの元に集まった死喰い人や闇の魔法使い達をまとめて叩くって訳か」
「そう考える連中も我々の中には少なからず居た。異なる意見がいくつもあると計画は上手くいかないのさ。で、だ。ヴォルデモートが復活したのなら死喰い人達は活動をし始める。我々の組織はこれを叩けば良い」
「そう上手くはいかないだろう。ヴォルデモートもそうだが、死喰い人達も一筋縄では倒せないぞ」
エスペランサはアエーシェマやクラウチJr.の事を思い出した。
あのレベルの死喰い人が大勢居るとは思えないが、少なくともアエーシェマやクラウチJr.はマグルの軍隊が相手でも戦えるポテンシャルを持っている。
「うん。我々も簡単な任務だとは思っていない。それに、ヴォルデモートの勢力を潰すのが困難だと認められた時には、やはり、計画通り、総力戦をもって魔法界を潰す」
「つまり、ヴォルデモートの勢力が強過ぎて、隠密に殺す事が出来ない場合、核でもNBCでも使って魔法界自体を消すってことか」
「君にはそうならないように働いてもらいたいところだ」
スミスはそう言って席を後にした。
彼の飲みかけのブラックコーヒーがテーブルに残されている。
砂糖まみれのコーヒーを飲むエスペランサを前にして、これ見よがしにブラックコーヒーを飲むスミスに苛立ちを感じていたエスペランサだったが、スミスが店を出た後でニヤリと笑った。
「油断大敵………ってことだ」
コーヒーショップを出て、駅の中に消えつつあるジョン・スミスの背中には1匹の黄金虫がピタリとくっついていた。
炎のゴブレット編は94年から95年の話ですね。
キングスクロス駅にスタバとかその他の店があるかは分かりませんが、あるという設定で