ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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ついに不死鳥の騎士団に突入!
みんな大好きあの魔女も出てきます!


不死鳥の騎士団
case70 Toad that started to move〜アンブリッジの企て〜


男は死喰い人もどきの半端な人間だった。

 

死喰い人というのはヴォルデモート勢力の中でも実力を認められたか、もしくは、何かしらの功績を残した魔法使いのことである。

要するに幹部なのだ。

 

だが、その男は野蛮で下品な上に実力も無かった。

故にヴォルデモート全盛期も大した戦績を残した訳でもなく、ひたすらにマグル狩りをして過ごしていた。

 

騎士団や闇祓いを相手にしたら即倒されるが、マグルの一般市民なら簡単に狩れる。

 

男にとってヴォルデモート勢力が英国魔法界を支配していた時期は天国だった。

大勢のマグルを殺し、略奪し、陵辱し放題。

 

「いいねえ。闇の帝王が復活したってことは、またやりたい放題できらぁ」

 

男は舌舐めずりする。

 

彼は今、ロンドンから遠く離れた田舎町の片隅にある民家を襲おうとしていた。

 

民家には若い夫婦が暮らしている。

農業で生計を立てているのだろう。

近くには小さな畑があった。

 

「どうする?男はすぐに殺すか?」

 

男は一人では無かった。

同じく血と女に飢えた死喰い人もどきが彼の他に3人居た。

 

皆、ヴォルデモートがハリーに倒された後、地下に潜り、泥に塗れて生きてきた連中だ。

 

「いや、奴らはどうも新婚らしいからな。男の前で嫁をめちゃくちゃにしてやるってのも面白そうだ」

 

彼らは民家から10メートルも離れていない林の中に隠れている。

民家は夏の暑さを和らげる為に窓を全て開放しているが、その窓から楽しそうに晩餐をする若い夫婦の姿も見えた。

 

「あの手の幸せそうな夫婦が絶望する顔、見たいだろ?」

 

「ああ。それも良い。俺はここ10年、殺しも女も我慢してきたんだ。我が君が復活したとなれば、もう暴れるしかねえだろ」

 

下品な笑いをしながら、4人の野蛮な男たちは杖を構えて林を出る。

 

時刻は午後8時。

夏とは言え、月が無ければ真っ暗闇だ。

 

彼らは民家に近づき、一斉に杖を構えた。

 

家の中の夫婦は男達に気づいていない。

 

「まずは窓を吹き飛ばしてやるか。"コンフリン………………」

 

 

 

プシュ

 

 

 

「え?」

 

缶ジュースのプルタブを開封した時の音が聞こえたと思った瞬間、男は意識を失った。

 

「は?」

 

今まさに爆破魔法を使おうとしていた仲間が、急に血を吹き出して倒れた。

その事実を他の3人の男が理解する時間は無かった。

 

 

プシュ

 

プシュ

 

プシュ

 

 

音と共に、4人の魔法使いは絶命した。

 

夫婦たちは自分達の家の外で4人の魔法使いが頭から血を流して死んだ事に気付かない。

 

明日の朝、玄関の扉を開けてはじめてその事に気づくだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死体を処分する必要は無い。そいつは警察の仕事だ。撤収するぞ」

 

魔法使い達の死体が散乱する場所から500メートル離れた雑木林の中に、ギリースーツを着て、狙撃銃や小銃を手にした軍人達が潜んでいた。

 

「小隊長。連中は本当にテロリストだったんでしょうか?銃も持っていないですし、奇妙な格好でした」

 

サイレンサー付きの狙撃銃を担ぎ上げながら狙撃手が尋ねる。

夜間であるにも関わらず、500メートルも離れた4人の男を瞬時に処理したのは彼だった。

 

彼は暗視ゴーグルとスコープ越しに彼は4人の目標(ターゲット)を視認していた。

変な棒切れを持ち、まるで絵本に出てくるような魔法使いの格好をした奇妙な連中だったのである。

 

「知らん。だが、我々に与えられた命令は、今日、この時間にこの場所に来た黒いローブ姿のテロリスト4名を処分しろ、と言うものだ。それ以上でも以下でも無い」

 

「しかし……たった4人の武装もしていないカルト集団に第40コマンドーに所属する1個小隊が出動なんて前代未聞です。警察組織ではなく海兵隊を即時投入するなんて」

 

狙撃手の後ろに居た通信士も言う。

 

「考えるな。我々は与えられた命令に従うまでだ」

 

そう言った小隊長も今回の任務には疑問を持っていた。

彼が指揮する部隊は英国海兵隊第40コマンドーに所属する1個小隊だ。

そもそも、海兵隊の任務は強襲作戦などであり、水陸両用戦や山岳作戦を得意としている。

テロリストの暗殺をするのは、それこそSASとかの組織だ。

何故、我々がこんな任務をするのだろうか、と彼は首を傾げた。

 

「噂では我々だけでなく、英国全土のあらゆる部隊が同じような任務で出動しているとのことです」

 

小隊の中では最古参である軍曹が暗視スコープを上げながら話しかけてくる。

 

「そうらしいな。私も聞いた。同期の間でも噂になっていたからな。海兵隊だけでなく、陸軍の歩兵師団の中にも同様の命令をされた部隊があるそうだ」

 

「陸軍が?一体、命令系統はどうなっているんだ?」

 

海兵隊は海軍傘下の部隊であり、陸軍とは命令系統が異なる。

同じ任務を与えられる事はまず無い。

 

「これはひょっとして、20年前の……」

 

「軍曹。そんな与太話は信じるな」

 

「そうですな」

 

隊員たちは雑木林から出て、村外れに駐車しておいたカーゴトラックに乗り込んだ。

 

実はこの村の近くには軍の演習場が存在している。

故に軍用車輌が夜中に走っていても村人は驚かない。

 

トラックの荷台に乗りながら小隊長は半ば伝説となっている20年前の噂を思い出していた。

 

20年前。

 

陸海空軍と警察組織の全部隊に一斉招集がかけられた。

 

「大規模統合演習を実施するため、隊員は休暇中の者も含め、速やかに部隊に帰投せよ」

 

この様な内容の命令により、軍人や警官達は軍属も含めて総員が部隊に集められ、すぐにでも戦闘が行えるように配置についたのである。

 

結局、演習など行われず、数年の間、無駄に各部隊は戦争の準備をしていた。

 

軍人達はソ連との戦闘が始まるのでは無いかと不安になっていたが、そうでも無いらしかった。

だが、あの時期、幾つかの部隊が謎の任務に参加し、少なくない戦死者を出したという噂も語り継がれている。

 

 

「我々の知らないところで、何かがまた起きているのかもしれんな」

 

だとしても我々は上の命令に従って訓練通り戦うまでだ。

士官学校を出てまだ数年しか経っていない若手の小隊長はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

魔法省内。

 

ブラッドリーと呼ばれるとある職員が執務室で胸を撫で下ろしていた。

 

彼の魔法省での役職は魔法犯罪者管理局アズカバン整備部吸魂鬼係1係長だった。

簡単に言えば吸魂鬼の管理(など出来る筈も無いのだが)をする役職だ。

 

シリウス・ブラックの脱獄以降、仕事は忙しくなり何枚の始末書を書かされたことが分からない。

1年半前、ホグワーツ敷地内で200体もの吸魂鬼が行方不明になった時は1週間も寝ることが出来なかった。

 

無論、これは表の顔。

ブラッドリーは裏の顔がある。

 

彼はマグルの軍隊と通じていた。

 

元々、マグルの事なんてあまり知らなかった魔法使いの彼はマグルの軍隊について良く知らない。

だが、彼が連絡を取るエージェントであるジョン・スミス(多分偽名だ)との会話から"SAS"だとか"MI6"だとかの名前が出て来るがそれが何の組織かは見当もつかない。

 

マグルの軍隊に協力する魔法使いは彼だけでは無い。

魔法省の中には何人も居るし、ホグズミード村にもダイアゴン横丁にも、その他多くの場所に居る。

魔法使い、魔女、スクイブ、魔法生物とのハーフ。

様々な魔法界の人間達であったが、彼らには共通した事項があった。

 

それは、親しい人間を死喰い人、もしくは、ヴォルデモート配下の人間に殺されているということだ。

 

ブラッドリーは16年前に両親を死喰い人に殺された。

 

それ以来、彼はヴォルデモート勢力の殲滅を企てる英国マグル界の組織に協力するようになったのである。

 

ブラッドリーは魔法省の中で英国魔法界の情報を入手し、スミスをはじめとしたマグルの軍人たちにそれを渡す。

先日、渡したのはノクターン横丁に潜伏していた協力者の入手した「死喰い人もどきの連中がマグル狩りの計画をしている」という情報である。

その前は、ホグズミード村にいる協力者の入手した「3校対抗試合でセドリック・ディゴリーが死亡した」というものだ。

 

エスペランサがバジリスクを倒したり、魔法省内でダンブルドアがヴォルデモートが復活したというホラを吹いていると噂になっていることをスミスに伝えたのもブラッドリーである。

 

そんな彼を今、悩ませているのが……

 

 

「んんっ。こんなところに居たのね。ブラッドリー」

 

 

このガマガエルの様な女。

 

ドローレス・アンブリッジだった。

 

 

ドローレス・ジェーン・アンブリッジに好感を持っている職員は少ない。

ファッジくらいなものだろう。

しかし、ファッジはアンブリッジの操り人形になっているようなものなのでノーカンだ。

 

ガマガエルの様な顔という表現は同僚のウィンストンが考えたもので、あっという間に省内に広まった。

 

人は見かけによらないという言葉があるが、アンブリッジを前にしてもその言葉を信じられるか、と言えば否である。

 

ピンクの服にピンクのリボンに靴までピンク。

体型はボンボンボン。

ガマガエルがピンクの服を着て歩いている、とはよく言ったものだ。

 

省内で叩かれる陰口の8割がアンブリッジ。

早く冬眠してくれ、永久に。

ファッジと結婚したらリータが喜ぶ。

ピンクという色の熱い風評被害。

死喰い人すら引く差別主義者。

声だけは可愛いから余計に邪悪。

 

とまあ、散々な言われようである。

 

が、実際、アンブリッジは悪い人間だった。

 

彼女の父親は魔法省で出世に縁のない魔法ビル管理部の役人だった。

母親はマグルのようだが、離婚しているらしい。

アンブリッジはこの出自が気に食わないらしく、手始めに父親を退職させた(これに関しては平和に行ったらしい)。

彼女の血筋は彼女の情報操作(という名の実力行使)によってヴィゼンガモットの父親が居る純血家系ということになっている。 

 

そして、同僚を陥れ、上司に媚を売り、色々汚い事をしてアンブリッジは高級官僚になってしまったのだ。

 

ちなみに、当たり前だが彼女に夫は居ない。

どうやら有能な上司を夫にしようとアンブリッジは色々と努力したようだが、酒一杯飲むだけで反マグル生まれの過激思想を口にする彼女を好きになる男は残念ながら元死喰い人にすら存在しなかったようだ。

 

そりゃそうだ。

誰だって子供がオタマジャクシってのは嫌だからな。

これもブラッドリーの同僚が言っていた事である。

 

「何の用件ですか?アンブリッジさん」

 

「実は吸魂鬼を貸して欲しいのだけど」

 

ブラッドリーは自分の執務用の机越しにアンブリッジの意地の悪そうな顔を見た。

絶対に悪いことを考えている。

同じ部屋で仕事をする他の同僚達は気の毒そうにブラッドリーを見ていた。

 

「なるほど。手続きには時間がかかります。えーと、まずはこちらの書類に必要事項を」

 

彼は机の中から一枚の紙を取り出した。

 

"吸魂鬼借用書"と書かれた紙だが、記載事項が非常に多い。

 

「あら?こんな紙要らないでしょう?私が命令してるのよ?」

 

無駄に高い声にイライラしつつ、ブラッドリーは説明し始めた。

 

「そうは言いますが、吸魂鬼1体を動かすだけでも大変なんです。まず、この借用書を元にして私が吸魂鬼使用に関する起案書を作成して、各部に合議をもらって、アズカバンとも調整し、最終的に魔法大臣の決済があって初めて吸魂鬼を動かせるんです」

 

「そんなに大変には思えないけど?」

 

「ええとですね。まず、今、アズカバンに居る吸魂鬼は不足しているんです。2年前にホグワーツで200体も吸魂鬼が消えてしまったので。ですから、吸魂鬼をアズカバンから動かすのは非常に難しい。まあ、2体くらいなら出せますけどね」

 

「2体で十分よ?」

 

「それから、アズカバンに役人を送って吸魂鬼と調整。これには移動手当てと危険手当てが出るので予算委員の方にも合議が必要ですね。それに、派遣地域担当の魔法事故巻き戻し部隊にも派遣を要請しないといけません。合議だけでも10箇所は回らなくてはいけないんですよ」

 

ブラッドリーは溜息をついた。

 

吸魂鬼が200体も消えなければこんな事にはなっていない。

吸魂鬼を消した奴を一発ぶん殴りたいと彼は心の底から思っていた。

 

「あー。そう言えば吸魂鬼はどこに派遣するんですか?あと、何の任務で?」

 

「あなたがそれを知る必要は無いの」

 

「そうは言っても書類を作らないといけないので」

 

「そうね。サレー州に派遣するの。任務はシリウス・ブラックの調査で」

 

「サレー州ですか。あそこは確かハリー・ポッターの居住地でしたね。なるほど、確かにブラックが出そうな地域ではある」

 

ブラッドリーは納得したが、アンブリッジの目が細くなったのを見て考えを改めた。

 

これは間違いなく碌でもないことに吸魂鬼を使うつもりだ。

 

「今回の吸魂鬼の派遣は魔法大臣の命でもあるのよ?あなたはそれを無下には出来ないでしょう」

 

「むっ。魔法大臣の命ですか。それなら決裁が先にされているようなものですね。いや、待てよ、魔法大臣の命なら………………」

 

「ええそうよ。特例法第14条が適用されるの。書類なんて無くても魔法大臣が吸魂鬼を使役出来るのよ?」

 

このガマガエル、分かってたな?

ブラッドリーは溜息を吐いた。

 

魔法大臣が必要と認めた場合、所定の手続きを抜かして吸魂鬼を使用する事が出来る。

 

前例はかなりある。

 

ブラックの時にファッジが多用した。

 

「分かりました。では、以前の通り大臣のサインと命令書を持ってきて下さい」

 

「ええ。もちろん」

 

そう言ってアンブリッジは帰って行く。

 

アンブリッジが帰った事を確認し、ブラッドリーは安堵した。

 

「あの女。吸魂鬼を何に使うつもりなんだ?」

 

「さあな。知るかよ。知りたくもない。知ったら消されそうだしな」

 

同僚のウィンストンが紅茶を片手に話しかけてくる。

 

「ファッジはアンブリッジの操り人形だからな。言いくるめられるだろうね。そして、アンブリッジは吸魂鬼を自由に使えるようになるって寸法だ」

 

「ま、そうだろうな。吸魂鬼を私物化するガマガエルか。どうやら食物連鎖の一番上に君臨するのはガマガエルらしい」

 

恐らく、ファッジの命令なんて無い。

吸魂鬼はアンブリッジが私的に使いたいだけなのだろう。

 

「そう言えば聞いたか?アンブリッジはホグワーツに教師として送られるらしい」

 

「うげっ。本当かそれ?」

 

「マジも大真面目。キングズリーさんが嘆いていたから間違いない」

 

二人の話に同じ部屋にいた同僚達が興味津々といった様子で集まって来る。

 

「ダンブルドアが許したのか?」

 

「いや。だが、ファッジがダンブルドアから色々と権利を剥奪して、無理矢理決めたらしい」

 

「やることが汚いねぇ」

 

「まったくだ。んで、アンブリッジにホグワーツを監視させるんだと。ほら、ダンブルドアは最近、例のあの人が復活とか言ってるらしいからさ。もしかしたら、例のあの人が復活したという嘘を口実にして私的な軍隊を作るんじゃないかってファッジが心配してるんだ」

 

「私的な軍隊ねえ。そういや、魔法省には軍隊が無いな」

 

ブラッドリーはスミスたちマグルの軍人の事を思い出しつつぼやいた。

 

「そう言えばそうだ。ダンブルドアの言ってる事が本当で、例のあの人が復活したなら魔法省にも軍隊が必要なんじゃないのか?」

 

「無理だろ。頭数が足りないから。闇祓いが今年採用した人数知ってるか?」

 

「知ってるとも。あーあ。ダンブルドアの言ってる事が嘘であって欲しいねえ」

 

はははと笑う同僚たちを見ながらブラッドリーは複雑な表情をする。

 

彼はヴォルデモートが復活している事を、何故かマグルの軍隊伝いで教えられていた。

魔法省はこんな馬鹿げた事をしている場合では無いのだが、ファッジやアンブリッジがいる限り、どうしようも無い。

 

頼みの綱がマグルの軍隊だけだというのは嘆かわしい。

 

だが、マグルの軍隊であってもヴォルデモートや死喰い人を殺してくれるならそれで良い。

欲を言えば、魔法使いが軍隊を作ってヴォルデモートを倒してくれれば良いのだが。

 

 

ブラッドリーは普段はヘラヘラとしているような職員だが、ここ16年、死喰い人たちへの憎しみを忘れた事は無かった。




少し短いですけど、不死鳥の騎士団の導入は以上です。
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