ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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投稿遅くなりました!
誤字報告ありがとうございます!

パトレイバー2の4DXがやってるみたいですね。
行きてえ!


case77 Resistances 〜ハリーの軍隊〜

 

ホグズミード村の外れまでやってきたエスペランサはフローラと合流した。

 

元軍人のエスペランサは待ち合わせをする時、早めに現地に到着してから周囲の地形確認をして狙撃ポイントや伏兵が潜んでいそうな場所を抑えるという癖がある。

 

故に今回も彼は待ち合わせより15分も前に現地に到着したのだが、予想外な事にフローラの方が先に到着していた。

 

「早いな」

 

「常に地形確認を厳とする為に時間には余裕を持ち、常在戦場をこころがけよ。あなたの言葉ですよ?むしろ、あなたの方が遅いのでは?」

 

村外れの大木の側で佇んでいたフローラは少しだけ微笑みながら言う。

 

「こりゃ参ったな。隊員が優秀過ぎると隊長の威厳も無くなりそうだ」

 

「冗談はさておき、午前中はホッグズ・ヘッドに行っていたんでしたよね?結局、何の会合だったんですか?」

 

「ああ。それは……」

 

ハーマイオニーの計画は他言無用と本人から厳しく言われている。

だが、どの道、セオドールや他の隊員達には詳細を話さなくてはいけなくなるので、ここでフローラに報告しても問題は無いだろうとエスペランサは判断した。

 

少しだけハリーやハーマイオニー達に罪悪感は感じたが。

 

「来週の訓練前に全隊員に情報共有はするが、どうやらハーマイオニー達は闇の魔術に対する防衛術の自習グループを作るらしい。それで、俺やネビル達が誘われた」

 

「なるほど。グレンジャーさんの考えそうな事ですね。スリザリンでもOWLの実技試験に向けた自習グループはいくつか出来てますよ」

 

「へえ。だが、ハーマイオニーはOWLに向けた自習グループではなく、ヴォルデモート勢力から身を守るためのグループを作りたいらしい」

 

「身を守る、ですか。生徒主体の会合でヴォルデモート勢力から身を守る術が身につくとは思えませんが」

 

「それを言ったら俺達も生徒主体だけどな」

 

「それもそうですね」

 

生徒主体で作り上げたセンチュリオンだが、その戦力は既に吸魂鬼を殲滅し、闇の魔法使いを倒すレベルに達している。

よくもまあ2年でここまでの組織になったものだ、とエスペランサは感心していた。

 

「で、どうする?俺はいつもならホッグズ・ヘッドで酒盛りするくらいしかしてないんだが」

 

「私も3本の箒くらいしか行った事がありません。ゾンコとか少し興味あるんですが」

 

「ゾンコ?悪戯専門店のことか。意外だな。あそこに興味を持つなんて」

 

「スリザリン生はあまりゾンコに行かないんです。悪戯して減点されるリスクを考えたら悪戯グッズなんて買わない方が良いと考える生徒が多いので」

 

「確かに、悪戯グッズで遊ぶのはグリフィンドール生ばかりでスリザリン生が遊んでいるところは見た事が無いな」

 

ゾンコの悪戯専門店の顧客は7割がグリフィンドール生だ。

減点を恐れず、幼稚で、馬鹿騒ぎをするのが好きという寮の風潮がそれを物語っている。

 

廊下でクソ爆弾を破裂させたり、噛み付きフリスビーで遊ぶのもほとんどがグリフィンドール生である(特に双子のウィーズリー)。

 

「スリザリン生は入りたがらないのですが、あなたと一緒なら入れます。行ってみても良いですか?」

 

「構わないが……」

 

楽しそうに歩くフローラと一緒にエスペランサはゾンコへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪戯専門店というのはマグルで言うところの玩具屋と同類だ。

悪戯グッズだけでなく普通の玩具も置いてある。

だが、ゾンコはその顧客のほとんどがホグワーツ生の悪餓鬼という事もあって、比較的危険な悪戯グッズばかりを揃えていた。

中には明らかに殺傷能力があるものもある。

 

全英クソ爆弾売上第一位という甚だ不名誉な称号を恣にするゾンコはやはり今日もグリフィンドール生で溢れていた。

 

そんなグリフィンドール生の群れの中に突然、フローラ・カローが現れたのだから店は騒然とする。

しかも、エスペランサ・ルックウッドを引き連れているのだから天変地異でも起きたのかと誰もが疑った。

 

 

ピクシー妖精を血祭りにあげ、ピーブズに銃弾を撃ち込むエスペランサは下級生から恐れられてしまっていたし、曰く付きのカロー家の人間でいつも無表情なフローラもまた恐怖の対象だった。

 

 

「おいおい。カロー家の娘じゃないか。何でこんなところに来たんだ?」

 

クソ爆弾のコーナーに居た双子のウィーズリーが不愉快そうに話しかけてきた。

彼らからしてみたら自分達のテリトリーである悪戯専門店にスリザリン生が入り込んでくるだけで不快なのだろう。

 

「俺が連れてきたんだよフレッド。悪戯グッズに興味があるんだとさ」

 

「カロー家の娘が悪戯グッズに興味があるなんて冗談だろ?それと僕はジョージだ」

 

「すまねえ。ジョージ。冗談だと思うが、本当だ。本人に聞いてみれば良い」

 

エスペランサはクソ爆弾が所狭しと並べられた棚を興味津々に見つめるフローラを指さした。

 

「おっと。これ程までにクソ爆弾売り場が似合わない生徒も珍しいや。だが気をつけろ。そこら辺のクソ爆弾は在庫処分の特価品だからな。経年劣化してるし、いつ爆発するかわかんねえ代物だ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうさ。だが、僕らは貧乏だから不良品や在庫処分品のクソ爆弾しか買えないのさ。まあ、カロー家の御令嬢ならここの店のクソ爆弾を買い占めるくらい出来そうだがな」

 

フレッドがスカスカの財布をヒラヒラさせながら嫌味ったらしく言った。

 

「クソ爆弾って高いんですね。スリザリン生は滅多に買わないので知りませんでした」

 

「安いのから高いのまでピンキリだ。僕らが廊下でいつも炸裂させてるのはこの通常タイプ。腹を下した時のクソに似せたクソ爆弾はもう少し高いし、最高級のクソ爆弾はホーミング機能までついてる。一回、小遣い叩いて買ってスネイプの研究室に直撃させた事がある」

 

「あの時のスネイプの顔は忘れられないね。今でも夢に見る」

 

ホーミング機能、つまり精密誘導可能なクソ爆弾が売られているとはエスペランサも知らなかった。

湾岸戦争において米軍がレーザー誘導爆弾を使用して精密爆撃をする光景をクソ爆弾が思い出させてくれるとは、何というか複雑な心境だ。

 

「どうやって爆弾を誘導させるんだ?魔法界には有線誘導や熱源誘導やレーザー誘導といった技術はない筈だ」

 

ホーミング機能付きクソ爆弾の値段は1ガリオンもする。

使い捨ての爆弾に1ガリオンも払う生徒はいないらしく、売れ残りが大量に積み上げられていた。

 

「こいつを買ってアンブリッジの部屋に投げ込みたいんだが、値段が高くて手が出せない」

 

「ああ。だけどアンブリッジの部屋でクソ爆弾を炸裂させるためなら1ガリオンだって安いもんさ」

 

「アンブリッジの部屋でクソ爆弾を炸裂させたらさぞ面白いんでしょうね」

 

フローラは不意にホーミング式クソ爆弾を数個掴みレジへ向かった。

ジャラジャラとガリオン金貨をカウンターに居た店主に渡し、抱えるほどあるクソ爆弾を彼女は持って帰ってくる。

 

「フローラ。お前その爆弾どうするつもりなんだ?」

 

「これですか?こちらの二人に差し上げます」

 

フローラは抱えていたクソ爆弾を全てフレッドとジョージに渡した。

これには双子も驚いたようである。

 

「正気か?僕たちにクソ爆弾を譲渡するなんてイカれてるとしか思えねえぜ?」

 

「ああ。おいエスペランサ。こいつは本当にカローなのか?」

 

目を丸くする双子を他所にフローラは言葉を続ける。

 

「こんなご時世ですし、今のホグワーツには笑いが足りていません。あなた達がこの大量の爆弾をアンブリッジの部屋に投げてくれれば少しは笑いが取り戻せそうな気がするので」

 

ニコリともせずにそんなことを言うフローラを見て双子は笑い始める。

 

「誰かさんも同じ事を言ってたぜ?ま、そういうことなら任せておきな」

 

「ああ。この爆弾は有効活用させてもらう事にするよ。楽しみにしてくれ。数日後にはアンブリッジの部屋が糞まみれになるからな」

 

両手に爆弾を抱えた2人は満足そうに店を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンコを出たエスペランサとフローラは再び村外れに来ていた。

 

村外れの空き地からは叫びの屋敷やホグワーツ城等が一望出来る。

 

「21世紀の英国にこんな所があるなんて、今でも不思議に思うよ」

 

夕陽に照らされたホグワーツ城の幻想的な光景を眺めながらエスペランサは言う。

マグル出身の彼は、魔法界の風景を見る度にまるで御伽噺の世界に迷い込んだような、そんな感覚に陥るのだ。

 

「マグル界で育った人はよく口にしますね。私はマグル界を少ししか見たことがありませんが、それでも、こういった風景を見ることの出来る魔法界の方が居心地が良いです」

 

夕陽に照らされたフローラもまた、ホグワーツ城と同様に幻想的に見えた。

茜色に染まる金色の髪や白い肌は本当に御伽噺に登場する妖精のようだ。

 

「俺も同感だ。俺は生まれてこの方中東の駐屯地内で育ったから、こんな幻想的な光景は魔法界に来てからしか拝んでいないが、それでも、なんだろう、ノスタルジックな気分になれる」

 

英国特有のどんよりとした雲から顔を覗かせる夕陽に手を翳してエスペランサは言う。

 

「物心ついたときには軍の塀と有刺鉄線に囲まれた駐屯地で生活していたというのに、何故、魔法界の風景に懐かしさを感じてしまうのだろうか?」

 

「さあ。でも、こんな美しいホグワーツ城を見ていると、今の魔法界が戦争の一歩手前だという事を忘れてしまいそうになります。こんな平和な光景が広がる世界で戦争が起こるなんて嘘みたいです」

 

「そうだな。だが平和な光景ってのは血生臭い争いの上に出来ているんだ。平和な時代なんてものは有史以来一度だって無い。あったのは偽りの平和だけだった」

 

全てを失った"あの日"。

エスペランサはそれを実感した。

 

平和なんてものはすぐに崩れ去る。

いや、この世に存在する平和なんてものは全て、簡単に崩れ去るような偽りの平和に過ぎないのだ。

 

だからこそ偽りでない平和を模索したいと彼は思ったのである。

 

 

「偽りの平和、ですか。でも、私は偽りの平和であっても、それを享受するのは悪くないと思います」

 

「え?」

 

「偽りの平和を本物の平和にする為にはそれ相応の対価を払わないといけないんです。つまり、血を流して、誰かを殺して、殺されて、そうしないと平和は手に入らない。そうですよね?」

 

「それは……」

 

「あなたはよく知っている筈です。平和な世界を作るには平和の足枷になる存在を殺す必要がある。そして、その過程で大勢の味方が死ぬ。あなたの理想は素晴らしいですが、その理想の実現には多くの犠牲が必要なんですよね。そして、その犠牲というのはもしかしたら、貴方になってしまうかもしれない」

 

フローラは一歩前に進み、回れ右をしてエスペランサの正面に立つ。

そして、彼の目を真っ直ぐに見た。

 

その瞳は真剣だった。

 

「私は貴方を犠牲にしてまで手に入れる平和に興味が持てません。それならば偽りの平和で結構です。貴方は大勢を、いえ、自分を犠牲にしてまで平和を手に入れたいと本気で思いますか?」

 

「…………………ああ。勿論だ」

 

「そう。ですか」

 

エスペランサの回答は肯定であった。

 

彼自身、大勢の犠牲の上で今まで生き残ってきている。

戦死した仲間たち。

巻き込まれた一般人。

そして、セドリック。

 

彼等の死を無駄にしない為にも、エスペランサは本気で世界平和というものを目指していた。

その為に自分が犠牲になる事も当然、覚悟の上。

 

平和の為には自分の死すら受け入れる。

 

それが、彼の生き方なのだ。

 

そして、その生き方を止める事はもう出来ないのだとフローラは実感した。

 

 

陽はさらに傾き、夜の闇がホグワーツ城を覆い始めてきた。

まるで、この世界を徐々に闇が支配していくように。

 

じわじわと闇は広がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月曜日の夜。

 

必要の部屋にセンチュリオンの各指揮官とハーマイオニーに防衛術の自習に誘われた隊員達は集まった。

 

エスペランサはその場でセオドールに事の経緯を詳しく話して聞かせた。

 

「つまりグレンジャーはヴォルデモート勢力から身を守る為の防衛術を生徒に学ばせようとしているわけだ」

 

「そうだ。教師役はハリーで、センチュリオンの隊員からは俺やネビル、チョウ、アンソニー、ハンナ、スーザン、アーニーが誘われている」

 

「ふむ。なるほどな」

 

セオドールは腕組みをしたまま目を閉じて暫し考え込んでいた。

が、やがて結論を出したようで、目を開く。

 

「隊長以下7名の隊員はグレンジャーの企画したこの会合に参加してもらいたい」

 

「おいおい。副隊長。正気か?」

 

アーニーが目を丸くした。

 

「正気だ。この会合に参加する意義は十分にある」

 

「それは、やはり守護霊の魔法をハリーから学べるからか?」

 

エスペランサはセオドールに聞いた。

 

「それも一つの理由だが、もっと重要な事がある。まず一つにポッターはあのヴォルデモート復活の場から生き残った唯一の味方陣営の人間だ。つまり、現在のヴォルデモートやヴォルデモート勢力の容姿、戦力について最も情報を持っている事になる。この情報を引き出すには会合はもってこいの場だ」

 

「確かにそうだが、こう言っちゃなんだが俺はハリーとそこそこ親密な仲だ。会合の場で無くても情報は引き出せる。現に、ハリーからダンブルドアが結成した不死鳥の騎士団なる現行の組織についてはかなり有益な情報も入手しているし、その本部がシリウス・ブラックの実家である事や騎士団のメンバーについてもセンチュリオンには共有してる」

 

エスペランサはハリー達から不死鳥の騎士団というダンブルドア私設の軍団の存在やその任務について少なからず聞いていた。

 

シリウス・ブラックの実家に本部があり、ムーディやキングズリー・シャックルボルトなどがメンバーである事も聞き出したし、現在、騎士団のメンバーがヴォルデモートに対抗して何やら任務に就いている事も分かっていた。

そして、その情報は勿論、センチュリオンに共有している。

 

「そこだ。ポッターはエスペランサと親しい仲だからこそ情報をペラペラと公開してくれている。だが、エスペランサがその会合とやらに不参加を表明したらポッター達からの信用は少なからず無くなるだろう。そうなれば今までのように簡単に情報を引き出せなくなる」

 

「つまり、会合に参加する事でハリー達からの信用を勝ち取り、今後も継続的に情報を収集しろ、という事か?」

 

「そう。それに、ポッター達はダンブルドアに近い生徒だ。ヴォルデモートに関する情報と知識を最も持っていると思われるダンブルドアに近い人間は貴重だ。現在、我々はヴォルデモート勢力に関する情報を何一つ得ていないがポッター経由なら有益な情報が引き出せる」

 

センチュリオンにおいてヴォルデモート勢力に関する情報は不足していた。

情報戦を担当する事になったザビニがいつもそれを嘆いている。

彼はセオドールと協力し、対ヴォルデモート勢力との戦争のシミュレーションをしているのだが、敵の情報が無ければシミュレーションは上手く出来ない。

 

もっとも、エスペランサがハリー達から仕入れてくる情報も十分では無い。

というのも不死鳥の騎士団の面々はハリー達にあまり情報を流そうとしないからだ。

 

「なんだがハリーを駒のように扱っているようだな」

 

「何を今更。というか、実際ダンブルドアはポッターを駒にしていると僕は思っている」

 

「ダンブルドアがハリーを?ダンブルドアほどハリーをエコ贔屓する教師もいないと思うが?」

 

「僕はそうは思わない。エスペランサはトロッコ問題を知っているか?」

 

「勿論知っている。トロッコ問題はマグル界では有名な倫理学上の問題だ。寧ろ、セオドールはどこで知ったんだ?」

 

「僕だってマグルの学問は勉強するさ。多角的な視点を持つためにはマグル界の学問は非常に有益だからな」

 

トロッコ問題というのは、フィリッパ・フットが1967年に提起した、「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という形で功利主義と義務論の対立を扱った倫理学の問題である。

 

「トロッコ問題ってなんだ?そもそもトロッコって何だい?」

 

ネビルが首を傾げる。

 

「トロッコってのはマグル界に存在する輸送用の機械だ。ホグワーツ特急を小型化した物と言えばピンとくるか?」

 

「何となく……」

 

「よし。話を戻そうか。線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?これがトロッコ問題だ。A氏が自分であると仮定して回答をするんだ」

 

「なるほどね。5人を救う代わりに自分はBを殺さなくてはならない。5人を助けられるなら1人を殺しても良いか、ということを考える問題って訳ね」

 

「そう。そして、ダンブルドアは恐らく躊躇せずにBを殺して5人を助けるタイプだ。あの人は魔法界をヴォルデモート勢力から救う為ならハリーを切り捨てる事も出来る人だ」

 

それはダンブルドアだけでは無い。

エスペランサだってセオドールだって1人の犠牲により大勢を救えるのなら迷いはしないだろう。

だが、ダンブルドアは魔法界で神格化され過ぎている。

ダンブルドアがどこまでも理想主義者ではなく現実主義者なことを皆、忘れているのだ。

 

「つまり、ダンブルドアも我々と同類の人間、即ち、軍人気質って訳か」

 

アーニーが納得したように呟いた。

 

「少なくとも僕はそう考える。だが、そんなダンブルドアが現在、魔法界では魔法省に権力を奪われたり、闇の魔法使い達が野放しのまま何も出来ずに終わっている。死喰い人の面はポッターのお陰で割れているんだから、本来ならとっくに闇の魔法使いを討伐しに行く筈だ。魔法省だってダンブルドアにかかれば簡単に手中に入る。だが、ダンブルドアはそれをしていない。いや、出来ていない。これがどういう状況か分かるか?」

 

セオドールの問いに隊員達は顔を見合わせた。

 

「分からん。どういう状況なんだ?」

 

「簡単な話さ。戦局は芳しく無い。ダンブルドアは劣勢って事だ。ダンブルドアやダンブルドア勢力よりも敵の勢力の方が強いってことさ。しかも、連中は裏工作に長けている。ダンブルドアが行動を起こせず、魔法省に追い詰められているのは死喰い人連中に上手いこと工作されてしまっている証拠なんだ。今のダンブルドア勢力、つまり不死鳥の騎士団じゃヴォルデモート勢力にどう逆立ちしても勝てないって事だ。少なくとも僕はそう考えている」

 

彼は深刻そうに溜息を吐いた。

 

他の隊員達も顔を曇らせる。

ダンブルドアは動く事が出来ず、不死鳥の騎士団は劣勢、魔法省は敵の工作員だらけ。

 

魔法界で他にヴォルデモートとの戦闘を想定している組織はセンチュリオンだけということになる。

 

しかし、現段階で収集出来た情報を基にしてシミュレーションを行なった結果、センチュリオンがヴォルデモート勢力に勝てる見込みはほぼゼロである事をセオドールは認識していた。

そして、そんな彼の不安を知る隊員は今のところ存在しなかった。

 




クソ爆弾って単価いくらなんだろうといつも思ってました。
幻の生物とその生息地のロンの落書きから買い込むと新しい教科書が買えないくらいの金額らしいですが

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