ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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case78 Dumbledore's Army 〜ダンブルドア軍団〜

ホグワーツ高等尋問官令学生による組織、団体、チーム、グループ、クラブなどは、ここにすべて解散される。

組織、団体、チーム、グループ、クラブとは、定例的に三人以上の生徒が集まるものと、ここに定義する。

再結成の許可は、高等尋問官(アンブリッジ教授)に願い出ることができる。

学生による組織、団体、チーム、グループ、クラブは、高等尋問官への届出と承認なしに存在してはならない。

組織、団体、チーム、グループ、クラブで、高等尋問官の承認なきものを結成し、またはそれに属することが判明した生徒は退学処分となる。

以上は、教育令第二十四号に則ったものである。

高等尋問官  ドローレス・ジェーン・アンブリッジ

 

 

教育令第24号が学生に告知されたのはエスペランサ達7名の隊員がハーマイオニーの企画した会合へ参加表明をした次の日だった。

 

この教育令にハリーやハーマイオニー達は少なからず動揺したようだ。

無論、センチュリオンとて無許可で編成した非合法の組織だ。

教育令24号によれば18名の隊員は漏れなく全員退学である。

 

が、センチュリオンの隊員は大して気にしていなかった。

そもそも、彼らの普段の活動は学校の規則を100は破るような事ばかりであるからだ。

それに、センチュリオンにはフィルチという強い味方がいた。

センチュリオンは校内で何をしようが、フィルチには見逃してもらえる。

今日に至るまでセンチュリオンの存在が教職員にバレていないのは、単にフィルチの存在によるところが大きい。

 

ところで、この教育令24号によってホグワーツに存在する4つのクィディッチチームは例外無く全て解散させられた。

この場合、再結成の申請をアンブリッジにしなくてはならないのだが、アンブリッジはスリザリン以外のチームの再結成を渋っているらしい。

 

ある日の魔法薬学の授業の前。

マルフォイが地下牢教室の真ん中で何やら公文書のような巻紙をヒラヒラさせながら大声でスリザリンチームがアンブリッジによって認められた事を公言していた。

 

「アンブリッジがスリザリンのクィディッチチームの再結成の許可をすぐに出してくれたんだ。今朝一番で先生に申請に行ったんだけど、ほとんど右から左さ。アンブリッジ先生は僕の父上をよく知っているし、父上は魔法省に顔が効くからね。グリフィンドールが許可がもらえるかどうかは見物だねえ」

 

よくもまあこれ程までにヘイトを溜めるようなスピーチが出来るもんだとエスペランサは感心しながら席について魔法薬学の道具を並べていた。

 

ハリーやロンは今にも飛びかかる勢いで憤っている。

ハーマイオニーが必死で宥めなければ地下牢教室で乱闘が起きかねなかった。

 

スリザリンもセオドールやダフネが冷ややかな目でマルフォイやその取り巻きを見ていた。

セオドールは無類のクィデッチファン故にこの手のスポーツマンシップに反する行動を嫌う節がある。

センチュリオンで行う図上演習や実践的訓練ではありとあらゆる手を使って敵に勝とうとするのでダブルスタンダードと言えばダブルスタンダードであるが。

 

ほとんどのスリザリン生はマルフォイ派閥であるのでセオドール達は少しアウェイな立場だ。

 

何も言い返さないハリーとロンを意地悪く見ながらマルフォイは演説を続けた。

取り巻きのスリザリン生はケラケラ笑っている。

 

「魔法省への影響力で決まるならポッター達はあまり望みがないだろう。アーサー・ウィーズリーは魔法省にクビにする口実を長年探されるくらい無能だし、ポッターに関しては狂人扱いさ。父上は魔法省がポッターを聖マンゴ病院に送り込むのはもう時間の問題だっておっしゃっている。どうやら、聖マンゴ病院には魔法で頭がいかれちゃった人の特別病棟があるらしいからね」

 

マルフォイは、顎をだらんと下げ、白目を剥き、醜悪な顔をして見せた。

クラッブとゴイル、それに、パンジー・パーキンソンが下品な笑いをした。

 

だが、このマルフォイの発言が導火線となり、ハリー達では無く、ネビルが爆発した。

 

「野郎!ぶっ殺してやる!」

 

持っていた鞄を放り投げたネビルがマルフォイに突進して、その顔面を思い切り殴り付けた。

 

メキッ

 

鈍い音と共にマルフォイが吹き飛ぶ。

彼はさまざまな魔法薬が置かれている薬品棚にぶつかり、ひっくり返った。

 

突然の出来事にスリザリン生もグリフィンドール生も呆気に取られている。

 

温厚なネビルが「野郎!ぶっ殺してやる!」と叫んでマルフォイを殴り付けた事実を誰も現実のものだと思っていなかった。

 

真っ先に現状を理解したのはエスペランサとセオドールだ。

 

「エスペランサ!ネビルを止めろ!」

 

「言われなくても!」

 

エスペランサはネビルを後ろから抑えた。

粉々になったビーカーや試験管と共に床に倒れていたマルフォイにネビルは追撃をしようとしていたのだ。

 

センチュリオンで鍛えられたネビルの戦闘力は想像以上で、マルフォイは顔面血だらけである。

どうやらネビルは顔面の急所である人中を殴り付けたようだ。

 

鼻と口との間のくぼんだ部分が人中と呼ばれている所なのだが、強い衝撃を受けると呼吸困難になったり、重度の外傷となることもある。

事実、マルフォイはヒーヒーと呼吸が乱れていた。

 

「離せ!エスペランサ!離してくれ!」

 

 

「駄目だ!落ち着けネビル!このままじゃお前、殺人者になるぞ!」

 

ハリーとロンがエスペランサに加勢してネビルを床に抑え込んだ。

 

セオドールはフローラと共にマルフォイの外傷を調べている。

クラッブとゴイルは倒れたマルフォイの前に立ち、逆にネビルを襲おうとしていたが、ダフネに止められていた。

 

「あいつ!聖マンゴの患者を頭がおかしくなったって言いやがった!許さない!」

 

「ネビル!気持ちは分かるが、このままじゃお前がマルフォイも聖マンゴ送りにしちまう」

 

「望むところだ!離してくれ!」

 

日頃、重狙撃銃を取り扱うネビルのジタバタを止めるのはハリーとロンの加勢があっても一苦労だ。

 

そうこうしている内に、地下牢教室にスネイプが入ってきた。

 

顔面血だらけで薬品と共に倒れているマルフォイと、3人に抑えつけられているネビルという光景にスネイプは少なからず動揺した。

 

 

「何をしている!誰か詳しく教えろ!」

 

「ロングボトムが、ドラコをいきなり殴ったんです先生!」

 

パンジー・パーキンソンが涙目でスネイプに訴えた。

スリザリンの生徒達はそれに同意する。

 

「そうなのか?ロングボトム!」

 

「ああそうだ!だが殴り足りないからもう一発殴らせろ」

 

「スネイプ先生!とりあえず、ネビルを魔法で拘束して下さい!」

 

エスペランサの必死の頼みを聞いたスネイプは杖を取り出すと「インカーセラス・縛れ」と唱えてネビルを縄で拘束した。

 

「グリフィンドール50点減点。それからロングボトムは罰則だ。ノット。ミスター・マルフォイを医務室へ連れて行くのだ」

 

スネイプの指示に従い、セオドールがマルフォイを運ぼうとしたが、マルフォイは意識が朦朧としているらしく、ふらついていた。

その姿を見たスリザリン生達がネビルを非難し始める。

 

「ふざけやがって。クソ!」

 

「ネビル。落ち着け。冷静になれ。マルフォイが不謹慎な悪口を言うのは今に始まった事じゃないだろ」

 

「それでも許せないんだよ!なあ、エスペランサは僕の親がどんな状態にあるか知ってるよな!」

 

エスペランサはネビルの親がかつてクラウチJr.を含む死喰い人達に拷問された挙句に廃人となり、聖マンゴに入れられている事を彼から聞いていた。

そして、治る見込みがない事も知っている。

 

「ああ。知ってる」

 

「そうさ。聖マンゴには頭がおかしくなって狂った人が隔離されてる。そして、僕の両親もそこに隔離されている。何故だか分かるか?クソッタレの死喰いに拷問されたからだよ!マルフォイの親のお友達の死喰い人に拷問されたんだよ!」

 

ネビルの叫びに何人かの生徒が狼狽えた。

スリザリンの生徒の半分は親が元死喰い人だからである。

 

「なんで僕の両親は永久に聖マンゴに隔離されて、マルフォイの親はノウノウと普通に生活してるんだよ!マルフォイだけじゃない。クラッブやゴイルの親だって、なんだったらスネイプだって元死喰い人だ!無罪放免されているけど、どうせ陰ではマグルや罪の無い魔法使いを殺してたんだろ!?そんな死喰い人の子供が聖マンゴの患者を笑い物にしやがったんだ!」

 

ネビルの言葉にスネイプは明らかに動揺していた。

彼は死喰い人時代、誰も殺していない。

それどころか、途中からダンブルドア陣営に寝返り、多くの命を救ってもいた。

 

しかし、最初は望んで死喰い人になったのだ。

 

大勢の人間の命を奪ったヴォルデモートに加勢したのだ。

その罪の意識を、ダンブルドア陣営で活動する事で都合良く忘れていた。

 

「先生。ネビルはもう授業どころではありません。俺が外の風に当たらせて頭を冷やさせます」

 

「……そうしろ。罰則は後で伝える。他の者もさっさと授業の準備をしたまえ」

 

「行くぞ。ネビル」

 

エスペランサはネビルにかけられた縛り付けの魔法を解除し、彼を地下牢教室から連れ出した。

二人が完全に地下牢教室から出た事を確認し、セオドールもマルフォイを支えながら医務室に向かおうとした。

 

「ゲホッ。ロングボトムの奴め。父上に言いつけて退学にさせてやる」

 

マルフォイがフラフラと歩きながら呟く。

地下牢教室の床に彼の血がポタポタと落ちる。

 

「死喰い人の父親にか?」

 

「それの何が悪い。父上は長年魔法界に尽くしてきたんだぞ!それを殺人者扱いするなんて許せない」

 

「ドラコ。お前は自分の親を侮辱されて憤る癖に他人の親は簡単に侮辱するんだな」

 

「当たり前だろ!グリフィンドールの連中の家族は穢れた血や血を裏切る者達なんだから」

 

その言葉を聞いたセオドールは大きく溜息をついた。

 

「良いか、ドラコ。我々の親達は大勢の命と幸せを奪った上で生き延びているんだ。我々は奪った側の人間なんだよ」

 

「……………」

 

「ドラコ。覚えておけ。あれが奪われた者たちの感情だ。我々は死喰い人の親を持つ限りあの感情を常に向けられる事になる」

 

マルフォイは何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネビルとエスペランサは必要の部屋に来た。

 

まだ興奮が冷めていないネビルを無理矢理椅子に座らせたエスペランサは懐から煙草を取り出す。

 

「吸うか?」

 

「いや、僕は良いよ」

 

ネビルはエスペランサに差し出された煙草を断る。

 

「常に感情はコントロールしないと軍人は務まらんぞ?」

 

「ふふっ。君がそれを言うの?エスペランサって結構、感情的になってトリガーハッピーしてると思うんだけど」

 

「そんなことはしてねえ」

 

「そうかな?この間だってザカリアス・スミスにキレてたよね?」

 

「………そんなことは忘れた」

 

エスペランサは煙草に火をつける。

 

「感情的になったのは悪かったと思ってる。でも、僕は両親を悪く言われるのは許せない」

 

「確か、お前の両親はクラウチJr.達に拷問されたんだよな」

 

「うん。2人とも最後まで拷問に耐えた挙句、廃人になっちゃった」

 

「そうか」

 

「クラウチJr.に関して言えば、数ヶ月前に倒したから仇は取ったことになる。でも、まだレストレンジが残ってるんだ。僕はこの手であいつらを倒したい」

 

「倒したいって言っても連中はアズガバンの中だろう?」

 

「うん。そうだね。でも、ヴォルデモートが力を取り戻した今、アズガバンから死喰い人達が娑婆に出でくるのは時間の問題だ。近い将来、レストレンジと戦う場がきっとくる筈。その時、僕は僕の力を全力で発揮したい」

 

「ネビル。復讐に燃えるのは結構だが、センチュリオンの目的は死喰い人やヴォルデモートを倒す事じゃないぞ。それはあくまで……」

 

「分かってるよ。あくまでも過程に過ぎないんだよね。僕はそこを理解してる。でも、他の隊員はそうじゃないかも」

 

「そうなのか?」

 

「やっぱり、目先の脅威に目が行きがちになるよ。ヴォルデモート勢力を倒す事を過程にして、その後の世界を考える事が出来る隊員なんて限られてる」

 

隊員達は復活したヴォルデモートとその勢力との戦闘を意識し過ぎて、当初の目的を忘れかけている節があった。

 

魔法界で育った隊員達はヴォルデモート勢力との戦闘を恐れる事は無くなって来てはいる。

だが、やはり、かつて魔法界を震撼させたヴォルデモート勢力を"過程"としては見れなかったのだ。

 

エスペランサやフナサカといったマグル界出身の者はヴォルデモート勢力よりも強大な組織、つまりは米軍やロシア軍の存在を知っている。

だがら、ヴォルデモート勢力を軍隊ではなく単なる強力なテロ組織程度に認識していたが、他の魔法界出身の隊員達は違う。

 

彼等にとってヴォルデモート勢力はこの世に存在する最も強大な勢力だったのだ。

彼等はマグル界の兵器や戦術を知っても、米軍やロシア軍の強大さまでは知らなかった。

 

そして、この認識の差をネビルは把握しているが、エスペランサは把握していない。

 

 

「弱かった僕だけど、今は違う。力を手に入れた。以前、君は僕に言ってくれたよね。銃は誰かを殺す為だけじゃなく、誰かを守る為に撃つ物でもあるんだって。僕の力はレストレンジを倒す為だけじゃなく、レストレンジから誰かを守る為に使う物にしたい。もう二度と僕のような子供を作っちゃ駄目なんだ」

 

「ネビル………」

 

「だから、今はヴォルデモート勢力と戦う事しか考えられない。奴らを全員倒したら、そしたら、世界の平和の為に戦う事を考えるよ」

 

ネビルはエスペランサにそう言って微笑んだ。

 

余談だが、スネイプからネビルが命じられた罰則は有毒ナメクジの除去(素手)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

ハーマイオニーの企画した会合にうってつけの場所がある、というハリーの報告を聞いたエスペランサは彼にしては珍しく顔を青くした。

 

ハリーが見つけた場所というのが必要の部屋だった為だ。

必要の部屋という最高の環境を発見した事にハリーとハーマイオニーは喜んでいたが、エスペランサは全く喜べない。

 

必要の部屋がセンチュリオンの隊員以外に露見するのは好ましくない状況であるし、ハーマイオニーの企画する会合と訓練が被る恐れもあったからだ。

 

この話を聞いたセンチュリオンの隊員達はエスペランサと同意見だったようで、口々に非難をしたが、どうしようもない。

 

「必要の部屋は一応公共の物であるから僕達で独占する事は出来ない。仕方が無いから、グレンジャーの企画した会合が行われる日は訓練は全面的に中止して休暇にしよう」

 

セオドールはそう提案した。

 

 

 

 

 

 

そして迎えた会合初日。

 

ハリーを先頭にして約30名の生徒は必要の部屋に集まった。

ここに来るまでハリーは忍びの地図を使って周囲を警戒しながら来たわけであるが、実は心配は無用だった。

 

エスペランサは事前に事情をフィルチに言い、必要の部屋周辺の警戒網を甘くするように頼んでいたのである。

無論、フィルチは良い顔をしなかったが。

 

普段はセンチュリオンの基地として弾薬庫や射場等が並ぶ必要の部屋だが、今日は違った。

かくれん防止器や敵鏡等の防衛道具や、失神呪文練習用の巨大クッションが無数に置かれ、「自己防衛呪文学」をはじめとした防衛関係の書籍が積まれる部屋になっている。

 

大きさはセンチュリオンの基地の半分にも満たない一般的な教場サイズだ。

 

生徒全員が揃ったところでハーマイオニーが一つの提案をした。

 

「リーダーを決めるべきだと思います」

 

彼女の言葉に生徒達は顔を見合わせる。

全員、リーダーはハリーだと思っていたからだ。

 

「ハリーがリーダーでしょ?」

 

チョウがキョトンとして言う。

 

「ええ。まあそうなんだけど、一応、民主的な方法でリーダーを決めようと思って。ええと、ハリーがリーダーで良いと思う人は手を挙げて下さい」

 

生徒達は全員、手を挙げた。

 

「じゃあハリーがリーダーね。それから、組織の名前をつけたいと思うの。名前があった方が一体感が高まって団結すると思わない?」

 

「それなら反アンブリッジ同盟ってどう?」

 

「魔法省は皆間抜けの頭文字を取るのはどうだ?」

 

アンジェリーナとフレッドが言ったがハーマイオニーはそれを却下した。

 

「もっと活動の趣旨が分からないような名前が良いわ」

 

「防衛協会(ディフェンス・アソシエーション)というのはどうかしら。略してDA」

 

「DAっていうのは良いかもね。ダンブルドア・アーミーって略にもなるし」

 

チョウとジニーの発言にあちこちから賛同の声が上がった。

エスペランサはそんな生徒達を複雑な感情で見ていた。

 

ダンブルドアは生徒にここまで慕われている。

しかし、セオドールの話を信じるならばダンブルドアが仮に軍隊を作ったら兵士を駒の様に使い捨てることも厭わないかもしれない。

 

「では今からこの会合はDAと呼ぶ事にします。じゃあ、ハリーお願いね」

 

ハーマイオニーに代わってハリーが皆の前に出てくる。

 

「第一回目の今日は何を練習するべきか悩んだんだ。それで、今日は武装解除呪文、つまり、エクスペリアームズを練習しようと思う」

 

「武装解除呪文だって?君、僕らをなめてるのかい?例のあの人に向かって"武器よ去れ"なんて効く筈がないだろ」

 

ハリーの提案にザカリアス・スミスが食ってかかった。

 

「僕はそうは思わない。事実、武装解除呪文はヴォルデモートから逃げる際に僕が使って有効だった。初歩的な魔法かもしれないけど充分に役に立つ。それでも僕に教わる必要が無いって言うのなら出て行ってくれて構わない」

 

「…………」

 

「じゃあ、二人組を作って練習してみようか」

 

ハリーの指示に生徒達は二人組を作って練習を始めた。

 

武装解除の術はかなり応用の効く魔法だ。

魔法使い相手に使えば杖を奪う事が出来るが、マグルの軍人に使うと銃を奪う事が出来る。

銃と杖で武装したセンチュリオンの隊員に使うと、杖が吹き飛ぶ。

2回目に使えば小銃が飛び、3回目に使うと手榴弾が飛ぶ。

 

要するに杖が勝手に敵の持つ武器の脅威判定をしてくれて、脅威度の高いものから順に武装解除してくれるのだ。

ちなみに、武器を持たない敵に対して使えば、敵の拳を武器と判定して、敵の身体が吹っ飛ぶ事になる。

 

スネイプがロックハートにエクスペリアームズを使った際に、杖だけでなくロックハート自身も吹っ飛んだのはそれが理由だ。

スネイプの杖はロックハートが杖を持っていても脅威では無いと判定してロックハートの身体を吹っ飛ばしたのである。

 

というわけで、この魔法は武器を隠し持っている敵に対して非常に有効なのだ。

 

エスペランサはネビルとペアを組み武装解除呪文の練習を行った。

 

本来、魔法力というのは才能によるところが大きい。

そして、ネビルはかなり才能があった。

ここ2年間で成長したネビルの魔法力はエスペランサを圧倒している。

 

エスペランサとネビルは6メートルほど距離を離して対峙した。

 

「「 エクスペリアームズ・武器よ去れ 」」

 

二人は同時に呪文を詠唱する。

いや、コンマ1秒ネビルが早かった。

 

ネビルの杖から放たれた閃光がエスペランサに襲いかかる。

だが、彼もただやられる訳では無い。

 

左足を半歩交代させ、上半身を捻り、閃光をギリギリのところで躱す。

 

エスペランサの放った武装解除呪文による閃光もネビルに襲いかかった。

しかし、ネビルは閃光が直撃する寸前に自身の杖を頭上に放り投げる。

武装解除呪文はネビルに直撃したが、杖を持たないネビルから杖を奪うことは出来ない。

代わりに彼が隠し持っていた拳銃が吹っ飛んだ。

 

「流石だなネビル。あの一瞬で杖を放棄して他の武器を武装解除される事により杖を奪われないようにするなんて」

 

「まあね。君に勝とうとするなら工夫した戦い方をしないといけない」

 

落下してきた自身の杖をキャッチしながらネビルが言う。

 

「面白い事を言うじゃねえか。折角の機会だ。どちらが先に相手の杖を奪えるか勝負しようぜ」

 

「望むところさ」

 

「「 エクスペリアームズ 」」

 

再び同時に武装解除呪文が唱えられた。

 

すかさずエスペランサは匍匐の体制をとって閃光をやり過ごす。

ネビルは積まれていたクッションの一つをエスペランサの杖から放たれた閃光にぶつけた。

クッションは粉々になる。

 

粉々になったクッションで視界を遮られたネビルに僅かな隙が出来たのを確認したエスペランサは走り出す。

 

「やっぱり、そうくると思ったよ」

 

自分に向かって走り出したエスペランサを見ながらネビルは冷静に杖を構えた。

 

エスペランサはネビルに近接する。

そして、杖を構えた腕を掴みあげた。

 

「どうだ?これなら狙いを絞る事も出来ない。この勝負、俺の勝ちだ」

 

掴み上げたネビルの手から杖を奪いとりながらエスペランサは勝利を確信していた。

 

しかし。

 

「残念だけど、君の負けだよ」

 

「なにっ!?」

 

エスペランサがネビルから取り上げた杖は突然、オモチャの蛇に変化してしまった。

 

「これは…騙し杖か!」

 

「そうだよ。そして、僕の勝ちだ!エクスペリアームズ・武器よ去れ」

 

ネビルはエスペランサに掴まれていなかった左腕のローブの内側に隠していた本物の杖を取り出しで呪文を唱える。

 

呪文によって射出された閃光はエスペランサに命中し、彼の杖を吹き飛ばした。

 

 

ネビルはただ防御の為だけにクッションを閃光に当てたのではない。

粉々になったクッションによって視界が不良になったのはネビルだけでなくエスペランサもだった。

エスペランサの視界を奪ったその一瞬でネビルは本物の杖を隠し、その代わりにウィーズリー製の騙し杖を取り出したのである。

 

「こりゃ完敗だ。しかし、よくもまあ次から次へと突拍子もない戦法を考えるもんだ」

 

「君との実力差は戦術でカバーするしかないからね。それに、僕は君が突拍子もない戦法を使うのを見習っただけさ」

 

ネビルは得意げにそう言った。

 

 




武装解除呪文関連は独自設定です。
武装解除呪文は映画によって描写が異なるのでその補完ということで。
原作では呪文によって杖から閃光が飛び出るとされているので本作でも閃光という表現を使わせてもらっています。
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