ハリーポッターと機関銃   作:グリボーバルシステム

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エヴァが3.8に公開決定して嬉しい限りです!


case79 Lonely battle 〜孤独な戦い〜

DAの活動は週に1から2回。

 

時間は2時間程だ。

その短期間であれど、生徒達はめきめきと成長していった。

 

粉粉呪文や妨害の呪文、失神光線。

あらゆる防衛もしくは攻撃呪文を多くの生徒が習得している。

 

センチュリオンの隊員達もハリーの防衛術の教官としての能力には一目置いたようで、アーニーは暇さえあればハリーに呪文のコツを教えて貰おうとしていた。

 

センチュリオンは対魔法使いの戦闘の経験が少ない。

防衛呪文は一通り使えるが、実戦でそれらを使った事はない。

対してハリーは3校対抗試合と対ヴォルデモート戦を通じて魔法を駆使した戦闘のノウハウを得ていたのだ。

だから隊員達はハリーから学ぶ事も多いと判断したのである。

 

 

そんなこんなで月日は流れ、いよいよクィデッチの1回戦が行われる日がやってきた。

 

朝食後。

エスペランサはクィデッチには興味がなかったので今回こそは観戦せずにのんびりと過ごそうと寮へ戻ろうとした。

 

そんな時、階段下で顔を青くしているロンと出会したのである。

 

 

「どうした?こんなところで。もうじき試合が始まるんだろ?」

 

「ああ。エスペランサか。僕、僕、試合なんか出ない方が良いんじゃないかと思って」

 

「あ?何を言ってるんだ?」

 

見ればロンは顔が青いだけではなく、手足が小刻みに震えている。

エスペランサは戦場に初めて出る新兵を思い出した。

 

どうやら緊張しているらしい。

 

「僕、クィデッチ下手くそなんだ。練習でも上手くいかなくて。今日は全校生徒の前で恥を晒す事になるし、スリザリンの連中は朝から揶揄ってくるし、どうすれば良いか」

 

「そうか?俺に比べれば下手じゃないと思うぞ」

 

エスペランサの箒捌きはコーマックが頭を抱えるほど酷かった。

 

「僕…自信が無い。なんで代表選手になんてなったまったんだろう」

 

「お前が代表選手に立候補したからだろ。自分の意思で代表選手になって、それで選ばれたんだ。胸を張って試合に出れば良い」

 

「まぐれだよ。あんな選抜。僕、何をやっても上手くいかないんだ。ハリーみたいにクィデッチが上手い訳じゃないし、ハーマイオニーみたいに勉強が出来る訳でもない。そんな僕にクィデッチのキーパーなんて出来っこ無い」

 

「ハリーもハーマイオニーも天才的な才能を持ってるからな。それに比べたらロンは凡才だ」

 

エスペランサの言葉にロンは肩を落とす。

ロンが劣等感に悩まされているのはエスペランサも知っていた。

魔法界の英雄であるハリーや秀才のハーマイオニー、それに、優秀な兄弟に囲まれれば劣等感を持つのは当たり前だ。

 

「でもな、ロン。才能なんて物はほとんどの人間が持ってないんだ。非凡な才能を持ってるのなんて一部。最初から取り柄を持ってる奴なんて一握りもいない。ロンは偶々周りに才能がある奴が多いから劣等感を感じているだけだ」

 

「そ、それは分かってるけど」

 

「俺が所属してた軍にも居たよ。ロンみたいな奴。自分に才能なんて無いって思い込んで自信を無くして、戦場ではガタガタ震えて何も出来ずにいた」

 

「……………」

 

「だがな、ロン。お前は監督生に選ばれ、クィデッチの代表選手に選ばれた人間なんだ。お前を馬鹿にするスリザリンの連中は監督生に選ばれたか?クィデッチの選手に選ばれたか?」

 

「いや、選ばれて……無い。マルフォイ以外は」

 

「そうだ。お前を馬鹿にしてるスリザリンの連中はお前より家柄が良くて金持ちだが、監督生にも選手にも選ばれてないだろ。所詮、その程度の連中なんだ。そんな連中の目を気にして緊張するなんて馬鹿みたいじゃねえか。自信を持て、胸を張って戦ってこい」

 

「エスペランサ。僕、なんか元気出たよ。ありがとう。頑張れそうな気がする」

 

そう言ってロンはクィデッチキーパー用のグローブを手に取り、走り出した。

 

それを見送ったエスペランサもクィデッチ競技場へ向かう。

本来なら観戦に行かないつもりであったが、励ました以上、最後までロンの戦いを見届ける必要があるだろうと考えた為だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クィデッチ競技場のスタンドは生徒で溢れていた。

 

その隅に座るセオドールとフローラの姿を見つけたエスペランサは2人のところへ行く。

 

「よう。こんな端で見てたのか」

 

「ああ。エスペランサか。まあね。スリザリンの観戦態度はスポーツマンシップに反するから好きじゃないんだ。だから、こんな隅で観戦してるって訳だ」

 

エスペランサはスリザリン生の座るスタンドへ目をやった。

スリザリン生達は緑色の旗やタオルを振りながら何やら歌を歌って選手を応援している。

 

『ウィーズリーは守れない。万に一つも守れないだから歌うぞ、スリザリン。ウィーズリーこそ我が王者。ウィーズリーの生まれは豚小屋だ。いつでもクアッフルを見逃したおかげで我らは大勝利。ウィーズリーこそ我が王者』

 

応援歌だと思えば、ロンを侮辱する歌だった。

 

「な。下品な歌だろ?スリザリン生の質も低下したもんさ」

 

「そう思ってるなら止めてくれば良いのに」

 

「僕が止めろって言ったところで連中は止めやしない。それでも最近のスリザリン生の下劣な振る舞いは目に余る。何より、教師陣が許容しているのが理解出来ない」

 

教師用に設けられたスタンドに座る教職員達はスリザリンがロンを侮辱する歌を歌っているのが聞こえているにも関わらず止めようともしていない。

スネイプやアンブリッジはともかく、他の教師は少なくともスリザリンを注意すべきだろう。

 

「ホグワーツの教師達はスリザリン生は"そういう下劣な事をする生徒"だと認識してしまっているんですよ。そういう連中だから何を言っても無駄なんだと思って指導しないんです」

 

フローラが人事のように言った。

 

ホイッスルが鳴り、試合が始まる。

 

スリザリンチームとグリフィンドールチームでは箒の性能に差がある。

グリフィンドールチームはその差を技術で埋めていた。

しかし、グリフィンドールチームの技術力を底上げした功労者のウッドは既に卒業している。

ウッド抜きのグリフィンドールチームがスリザリン相手にどこまでやれるか……。

 

『さあ、ジョンソン選手!ジョンソンがクアッフルを手にしています。なんという良い選手でしょう。僕はもう何年もそう言い続けているのに、あの女性はまだ僕とデートをしてくれなくて――すみません!ほんのご愛嬌ですよ、先生。そして、アンジェリーナ選手、ワリントンを躱しました。モンタギューを抜いた。そして――』

 

リー・ジョーダンの実況を聞く限りグリフィンドールは善戦しているみたいだ。

 

「グリフィンドールの選手は練度が高いな。スリザリンは選手層が薄い。チェイサーとキーパーはベテランだがビーターは明らかに人選ミスだ」

 

セオドールが嘆く。

 

今回、スリザリンのビーターはあろうことかクラッブとゴイルだった。

 

「あの二人の選手にはスリザリン生の多くが反対でしたが、モンタギューが押し切ったらしいですね」

 

「本当に何を考えているんだか」

 

チェイサー同士の戦いは白熱する。

スリザリンのチェイサーの一人であるワリントンがクアッフルを掴み、ゴールへ突進した。

 

ワリントンはその巨体を最大限に活かした強烈なシュートをゴールに決めようとしたが、ロンがこれを防ぐ事に成功する。

 

グリフィンドールの応援団は歓声を上げ、逆にスリザリン応援団はブーイングと"ウィーズリーは我が王者"の歌をさらに歌い続けた。

 

ロンは自信を持って戦えている。

練習の時ほどの腕は見せていないものの、十分に戦えるレベルだ。

 

逆に本番で練習以上の技量を見せていたオリバー・ウッドは凄過ぎた。

 

続く第2撃をセーブしたロンだったが、第3撃でミスをした。

スリザリンは歓声を上げる。

 

『ウィーズリーの生まれは豚小屋だ。いつでもクアッフルを見逃した』

 

『そしてボールは再びグリフィンドールに戻りました。ケイティ・ベル、ピッチを力強く飛んでおります――』

 

実況とスリザリンの歌が響き渡る。

 

チェイサーの争いはスリザリンがリードしていたが、5割の確率でシュートをセーブするロンのおかげで点差は開かない。

 

そもそも、スニッチを取れば150点獲得というぶっ壊れたルールの為に、チェイサーの争いは茶番と化している。

せめてスニッチによる得点が50点とかならスポーツとして成り立つのでは無いか、とエスペランサは常々思っていた。

 

「ポッターがスニッチを見つけたみたいですね」

 

フローラが心底どうでも良さそうに報告する。

見ればハリーが競技場の地面へと急降下しているのが見えた。

 

マルフォイもそのハリーの動きに気付いてスニッチの方へ急降下を開始する。

だが、ファイアボルトという世界最高級の箒のスピードとハリーの力量に勝てる筈もない。

 

結局、ハリーがスニッチを手にして試合は終わった。

 

競技場はグリフィンドールの歓声に震え、選手達は抱き合ったり、握手をしたりしている。

 

「チェイサーは悪く無いんだが、ポッターが強過ぎる。今年もグリフィンドールが優勝かな」

 

セオドールが溜息を吐きながらぼやいた。

 

エスペランサは地上に降りたロンがエスペランサの方へ嬉しそうに手を振っているのを見つける。

一方で地上に降りたマルフォイがハリーに向かって何か悪態をついているのも目の端に入った。

 

悪態を吐くマルフォイにハリーと双子のウィーズリーが殴りかかろうとしている。

 

「やばい雰囲気だ。仲裁に行ってくる」

 

エスペランサは腰のホルスターから拳銃を取り出して立ち上がった。

今の情勢下でハリーが暴力沙汰を起こすのは非常にまずい。

魔法省につけ込まれる口実になりかねない。

 

「仲裁?君が行ったら怪我人が増えるだけだ。やめておけ」

 

「何故だ?俺は別にマルフォイを心配している訳じゃないが、このままだとマルフォイは今年2回目の医務室送りになるぞ?」

 

「それがドラコの狙いだ。わざと挑発してポッターに暴力を振るわせる。狡猾で実にスリザリンらしいやり方だ。それに、ほら。もう手遅れだぞ」

 

再び競技場に目を戻したエスペランサは力無くスタンドの席に座り込む。

 

ハリーとフレッドかジョージかそのどちらかがマルフォイを血祭りに上げている最中だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故ハリーとジョージがマルフォイを血祭りに上げたのか。

答えは簡単。

マルフォイが試合の後、ハリーとウィーズリー家に対する思いつく限りの暴言を吐いたからである。

 

ウィーズリー家を豚小屋と言ったり、ハリーの母親の悪口を言った訳だ。

それに刺激されたハリーとジョージはマルフォイを2人がかりでリンチした。

 

結果としてマルフォイは今学期2度目の医務室送りとなり、ハリーとジョージはマグゴナガルに連行された。

フレッドもマルフォイに殴りかかろうとしていたが、グリフィンドールのチェイサー3人に抑え付けられていたため、リンチに加わる事が出来なかった。

 

職員室に連行されたハリーとジョージはマグゴナガルにこっぴどく叱られていた。

 

「あんな恥曝しな行為は、見たことがありません。一人に二人がかりで殴りかかって!申し開きできますか!」  

 

顔を真っ赤にしたマグゴナガルがハリーとジョージに言う。

 

「マルフォイが挑発したんです」

 

「挑発?ミスター・マルフォイは負けたばかりでしょう。当然、挑発したくなる筈です!」

 

マクゴナガルは怒鳴りながら机を拳で叩く。

机の上に置かれた缶が床に落ち、蓋がパックリ開いて、生姜ビスケットが床に散らばった。  

 

「先生。マルフォイは僕の両親を侮辱しました。ハリーの母親もです」

 

「しかし、それなら何故、フーチ先生にその場を仕切っていただかないのです!暴力を振るわなくとも理性的に対抗すべきでした!」

 

「マグゴナガル先生、その二人だけを責めるのはフェアではありません」

 

「!?」

 

突然の声にマグゴナガルもハリーもジョージも職員室の扉の方へ振り向く。

そこにはいつの間にかセオドールが立っていた。

 

「ミスター・ノット。今は取り込み中です。私に用件があるのなら後程………」

 

「いえ、先生。僕はその二人の弁護に来たんです」

 

「弁護?あなたがですか!?」

 

セオドールの発言にハリーもジョージも目を丸くした。

ハリー達はスリザリン生をよく思っていないが、エスペランサと仲の良いセオドールやフローラ、ダフネ達は比較的マシとは思っていたものの好意的な感情を抱いた事は無かった。

 

「まず、うちのドラコが非常に無礼な誹謗中傷をした事を詫びる。他の連中に聞いたところポッターの亡き母君を悪く言ったそうだな」

 

「え、う、うん。まあ、そうだ」

 

「正直言ってドラコの言動は目に余るところがある。監督生として不適格と言わざるを得ない。今回、ドラコがポッターの母君とウィーズリー家を罵倒した件に関しては厳重な処罰を受けるに値すると考えたから、スネイプ先生に報告しておいた」

 

「スネイプに言っても意味無いさ。あいつ、マルフォイ贔屓だもの」

 

「僕もそう思ったんだが、どうも今回の件だけはスネイプ先生の逆鱗に触れたらしい。あの人にしては珍しくスリザリン生であるドラコに罰則と減点を与えていた」

 

ことクィデッチに関してはフェアを目指し、スポーツマンシップを重んじるセオドールはマルフォイの言動を問題視してスネイプに一連の出来事を報告した。

無論、セオドールもスネイプがスリザリン生(特にマルフォイ)を贔屓することは知っている。

それでも、悪化するスリザリンの質の低下を防ぐ為に彼はスネイプに問題提起をしようとしたのだ。

 

ところが、マルフォイがハリーの母親の悪口を言ったという報告を聞いたスネイプは怒りを露わにした。

そして、医務室で治療を受けていた最中のマルフォイの元に赴き、彼に罰則と減点を与えたのである。

 

その場に居合わせたスリザリン生達は天変地異を目の当たりにしたかのような顔をしていた。

スネイプはその後、マルフォイに厳罰を与えた事をマグゴナガルに報告するようにセオドールに命じたのである。

 

「ともかく、ドラコは人の尊厳を踏み躙る様な発言をしました。実際に暴力を振るった点はポッター達に非があるが、ドラコの発言も看過出来ません。ついでに言えば、審判のフーチは違反行為をしたクラッブへの口頭注意に夢中でその場を仕切る事は不可能です。ポッターとウィーズリーを一方的に責めるのは如何なものでしょうか?」

 

セオドールの言葉にハリーもジョージも、そして、マグゴナガルも驚愕した。

彼らにはセオドールが何を思って行動をしているかがさっぱり理解出来ていない。

 

「ェヘンェヘン」

 

誰が聞いても不快に思える咳払いが職員室の入口から聞こえた。

 

3人が振り向くとピンク色のガマガエルことアンブリッジが気味悪く笑いながら立っている。

 

「ミスター・ノットは弁護しているようですが、私はポッターとウィーズリーには更なる厳罰が必要だと考えていますのよ?」

 

「ドローレス。ポッターもウィーズリーもグリフィンドールの生徒です。罰則は寮監である私が決める事です」

 

「それがそうでも無いのですよ?先程、魔法大臣からこちらが送られて来ましてね」

 

アンブリッジは羊皮紙を一枚引っ張り出し、読み上げた。  

 

「ェヘン、ェヘン……教育令第二十五号」

 

「まさか、また教育令ですか」

 

マグゴナガルは呆れたように言う。

 

「ミネルバ、あなたのおかげで、私は教育令を追加することが必要だと思いましたのよ?私がグリフィンドールのクィディッチチームの再編成許可を却下しようとしていた時、あなたはダンブルドアにこの件を持ち込み、ダンブルドアがチームの活動を許すようにと主張しました」

 

「ええそうです。却下する理由がありません」

 

「さて、それは私としては承服できませんでしたわ。大臣に連絡しましたら、高等尋問官、つまり私は生徒の特権を剥奪する権利を持つべきだと考えていたようです。そこで、新たな教育令が発令されました。『高等尋問官は、ここに、ホグワーツの生徒に関するすべての処罰、制裁、特権の剥奪に最高の権限を持ち、他の教職員が命じた処罰、制裁、特権の剥奪を変更する権限を持つものとする。署名、コーネリウス・ファッジ、魔法大臣、マーリン勲章勲一等、以下省略』」  

 

アンブリッジは羊皮紙をしまいながらニタァと笑った。

 

「さて、私の考えでは、この二人が以後二度とクィディッチをしないよう禁止しなければなりませんわ。今後、このような事が起こらないようにね」

 

「禁止!?クィデッチをですか?永久に!?」

 

ハリーが狂ったように叫ぶ。

 

「ええ。そうです。あなたとミスター・ウィーズリーもです。それに、安全を期すため、双子のもう一人も禁止にしましょう。チームの他の選手が押さえていなかったら、きっと、もう一人もミスター・マルフォイを攻撃していたに違いありませんからね。箒も当然没収です。私の禁止令に決して違反しないよう、私の部屋に安全に保管しましょう」

 

「何という横暴だ!それは魔法省の越権行為です!」

 

勝ち誇るアンブリッジに憤慨したのはセオドールだった。

 

「あら?ミスター・ノットはグリフィンドールの生徒の肩を持つのかしら?」

 

「別に肩を持つつもりはありません!ですが、クィデッチの長い歴史の中で選手同士の暴力沙汰は数多く存在する。だが、該当選手は裁判という過程を経て罰を受けている。突然、選手としての地位を剥奪されるなんて判例は存在しない」

 

「今まではそうでしょうね。ですが、私には地位を剥奪する権利があるのですよ?ホグワーツではね」

 

「だが、そうだとしてもその権限はホグワーツ内のホグワーツの生徒を対象にした場合のみ有効な筈です。永久にクィデッチをする権利を剥奪する事は出来ない。それに、箒を没収するのも違法だ。魔法省が一個人の財産を手続きも無く没収する事は出来ない」

 

セオドールの言葉にアンブリッジは詰まった。

アンブリッジの権限が及ぶのはホグワーツ内のみであり、対象はホグワーツの生徒と職員に限られる。

 

故にクィデッチの永久禁止は強制出来ない。

また、政府が不当に個人の財産を没収する事が出来ないのは法で決まっている。

アンブリッジの権限より法の方が優先されるのは明らかだ。

 

だが、アンブリッジは教育令を盾にしてセオドールの意見を跳ね除けた。

 

「ホグワーツ内であれば全ての制裁や処罰に対して私が最高権力を持つように教育令では定められました。この教育令は魔法大臣が特例で出した法そのものです。私がポッターの箒を没収することを処罰にすれば何の問題もありません」

 

「それが、魔法省のやり方なのか。腐敗しているのは新興純血主義者だけかと思っていたが、どうやら政府も腐っているみたいだな」

 

「いいえ。今の魔法省と魔法大臣は正しく、そして正義なのよ?あなたも私と同じ純血の人間なのだから分かるでしょう?」

 

「純血?あなたが?」

 

「ええ。私の父はウィンセンガモットの魔法戦士で純血だったのよ?」

 

「は、はは。なるほど。あなたの行動原理が分かった気がします」

 

「??」

 

「先生。僕はこれでも古典的な純血主義を重んじているので、現存する純血だけでなく、過去の純血家系もある程度は暗記している。そして、僕の記憶ではアンブリッジという家系が純血であった事実は無い」

 

「なっ!!何を言って……」

 

「嘘で塗り固められたような人間であるあなたに牛耳られる魔法界にもホグワーツにも未来は無さそうだ。これ以上議論の余地は無いだろうし、自分は帰ります」

 

セオドールはアンブリッジ達を残して職員室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室を出たセオドールは真っ直ぐに必要の部屋へ向かった。

 

必要の部屋に彼が入ると部屋はセンチュリオンの基地に変わる。

その基地の中に新たに設置されていた情報部用の部屋に彼は一人で入った。

 

情報部の部屋は3つばかりのデスクと秘密文書の入った金庫やファイルが入った棚、通信機器や記録装置が並べられた机が雑然と置かれている。

 

ザビニが入手した魔法界の戸籍一覧や死喰い人候補一覧、地下に潜っている人攫いや狼男等の分布。

"黄金虫"が手に入れてきた魔法省内部の人事や工作員候補一覧。

その他、あらゆるメディアの書籍等がこの部屋には格納されている。

 

セオドールはそれらの資料を1ヶ月がかりで分析した。

 

対ヴォルデモート勢力に対して戦争を仕掛けた際、味方になりそうな勢力、敵になりそうな勢力。

また、それぞれの勢力の戦力。

 

(1ヶ月で英国魔法界の勢力の分布と戦力を分析し切ったのは我ながら上出来だ)

 

セオドールは椅子に座り、デスクライトをつけ、資料に埋もれた机の前に掲げられた英国魔法界の地図を見た。

 

地図にはどこにどの勢力がどの程度の戦力で分布しているかが詳しく書き込まれている。

そして、その地図の中にあるホグワーツと魔法省の箇所にマジックペンで『戦力にならない』と書き込んだ。

 

(魔法省を味方勢力にカウントする事は出来ない。そして、魔法省に牛耳られたホグワーツも同様に戦力にならない。となると懸念事項は……)

 

セオドールは地図上の北海を睨んだ。

そこにはアズカバンがある。

 

(アズカバンの吸魂鬼、そして、確認は出来ないが巨人もヴォルデモート勢力に奪われる可能性がある)

 

彼はアップデートされた敵味方陣営の戦力を分析してシミュレーションを開始した。

 

ここで使っているのはランチェスターの法則というものだ。

旧日本軍が真珠湾攻撃を起案する際にも使われた戦争における戦闘員の減少度合いを数理モデルにもとづいて記述した法則である。

剣や弓矢で戦う古典的な戦闘に関する1次法則と近代兵器を利用した近代戦を記述する2次法則がある。

今回利用するのは2次法則であり、実例としては、硫黄島の戦いを米軍が解析した事が有名だ。

 

このランチェスターの法則は微分方程式を利用する必要がある為、普通の魔法使いでは解析する事が出来無いのだが、セオドールは独学で微分方程式を理解する事が出来ていた。

 

(計算するまでも無いか。そもそも、敵勢力に比べて動ける味方勢力が少な過ぎる。不死鳥の騎士団と戸籍一覧から選んだ戦力になりそうな魔法使いや魔女、そして、センチュリオンの18名。その他諸々を含めても敵勢力の戦力の半分にも満たない戦力だ)

 

「くそっ!」

 

セオドールは丸めた資料を壁に叩きつけた。

 

「勝てねえ!人が足りない。火力も武器も足りない。世論が味方しない。魔法省は使えねえ!これで勝てる訳が無い!」

 

彼は机を拳で叩いた。

あらゆる困難からセンチュリオンを救い、突破口を見つけてきた彼がはじめて挫折していた。

 

「土台、無理な話だったんだ。生徒だけの寄せ集めで作った18名しかいない軍事組織の火力だけではヴォルデモートを倒すには余りにも弱すぎる。戦術でカバーするには戦力に差があり過ぎる」

 

戦力差があっても戦術でカバーし、敵に勝つ。

セオドールはその考えを基にして対ヴォルデモート戦を考えてきた。

しかし、勝つための戦術にはセンチュリオンの戦力だけでなく、魔法省の協力や闇払いの加勢が必要不可欠だという結論に達してしまった。

 

18名の隊員。

武装は最大火力のものでも迫撃砲や誘導弾の類のみ。

魔法力はOWLを少し超えるレベル。

 

ヴォルデモート勢力の殲滅をする事も、果ては世界平和を達成する事も無理だ。

そして、セオドールの理想とする純血主義、すなわち、純血家系がノブレスオブリージュの精神を持って全ての魔法族の生命と安全を保障して、魔法界を永続的に存在させる事も達成出来ない。

 

いや、そもそも今の魔法界は守るに値する世界なのだろうか。

 

 

「勝てる可能性が0.1でも0.01でもあれば良かったんだ。だが、こればかりは可能性がゼロだ。ゼロには何をかけてもゼロにしかならん。エスペランサ。教えてくれ。これでも我々は血を流して戦わなくてはならないのか?」

 

セオドールは一人問いかける。

 

しかし、彼に返答する人物は今、必要の部屋には存在しなかった。

彼は一人だった。

 

孤独な自問自答。

 

セオドールの精神は崩れていく。

 

 

 

 

 




やっと不死鳥の騎士団も中盤戦です!
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